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『あこがれ』
一人の男が神の前で言いました。
「私はあの鳥たちのように空を自由に飛んでみたいのです。神よ、どうか私に翼を与えてはくれないだろうか」
神様は男の願い通り、翼を与えることを約束しました。
すると男の腕にはみるみると羽が生え、気がつくと腕は立派な翼へと変化していました。
男はその翼で大空を自由に飛びまわりました。
それを見ていたほかの人間たちも大空を飛ぶ男を羨ましく思い、皆で神様に翼をくれるように頼みました。
そこで神様は人間には生まれつき翼が生えるようにしました。
そうして人間には腕の代わりに翼が生え、大空を自由に飛びまわれるようになりました。
それから数千年後。
一人の男が言いました。
「私はあの猿たちのように物を自由に掴んでみたいのです。神よ、どうか私に腕を与えてはくれないだろうか」
神様もそろそろ、人間のあこがれの愚かさに嫌気がさすのではないでしょうか。