第二話「人生っていうのは楽しいものだと思う?」
翌日、食堂のテラスで私はローちゃんとアンちゃんと一緒にお昼ご飯を食べていた。
今日もお日様はポカポカと気持ちいい……なのにどうしても魔女会の課題が頭から離れない。
特に、会議の後のエラ姉の顔。どこかがすごく痛そうな顔をしていた。
「ねぇ、二人とも。人生っていうのは楽しいものだと思う?生まれてよかったな〜って思うことある?」
「なんだ、突然哲学的になって。その空っぽの頭、またぶたれたのか?メルちゃん、怒りプンプンで手加減なしって感じ?」
二人は眉をひそめる。
「まあ、いっか。それはおいといて、二人の基礎値ってどれくらい高かったっけ?」
「魔力の?ひ、人並みだと思うわ。か、かなり高いとも言えるかも。だってこの学校の魔女だもん。オリゴの魔女が弱いはずはないだろう。はっはは……」
ローちゃんは変な笑い声を出す。
「私、600ぐらい。自慢できる数字じゃないけど、もっと弱い魔女っ子ならいくらでもいる」
「アンちゃんすっごい!それ、高いでしょ?正常値よりずっと高いよ!あ、正常値じゃなくて……平均値?あれ、平均って何だったけ?」
「みんなの値を足して、人数で割る。と説明しても、どうせテルピちゃんは理解できないよ。バカだし」
ちょっと考えてみる。
「ふむふむ。やっぱ、無理」
「あと私、基礎値そんなに高くないよ。普通の人と比べたら、まあ当然、高いと言えば高いんだけど、魔女の平均に対してはちょっと低い。ちなみにローちゃんは私よりも低い」
ローちゃんは自分の頭を抱えてうめき声を上げる。
「んで?なんで私たちの基礎値聞いたの?テルピちゃんはその無駄にすごい魔力を自慢したいわけ?」
「ちょっと待ってね」
百単位の数字なら確かに0を無視していい、と先生が言ってたね。
それじゃあ、600は6本の指まで数えていい。
課題に必要な基礎値は700だったよね。
600より大きいのか小さいのか、ちゃんと確認しないと。
いや、900だったっけ?まさか私が数え切れないほどの数字なの?
指で数えてみるとこんがらがって、頭が真っ白になる。
「計算のつもりか?」
「うん。実は、魔女会の課題のために七つの強い受容体も集めなきゃ。私一人で集めないとダメなの。魔女会の友達が代わりに集めるのはダメ」
みんなの暗い顔を見るのはすごく辛かった。
「テルピちゃん。魔術師の受容体を取るとその魔術師は死ぬってことは知っているよね。心臓より大事な器官」
「もちろん、知ってるよ。取る時は持ち主を殺さなきゃいけない。だからアンちゃんとローちゃんにとって人生って何だろうって聞いたの。死んでも構わないかなぁと思った」
「テルピっち、時々暗い冗談言うよね。はっはは……」
「だって、エラ姉のためになにかをしてあげたいじゃん!」
アンちゃんは突然怖い顔になる。
「へー、魔女会の仕事内容には人殺しも含まれてるのね……」
でも突然、面白いことを見つけたように笑う。
うん怖くない。
「そうだね。驚くよね。昨日まで私だって知らなかったよ」
「驚くね。人殺し頑張ってね」
「うん。がんばる」
「ってんなわけあるかぁぁぁぁ!!」
「痛いよ、アンちゃん!」
アンちゃんがぐりぐりしてくるこぶしがかなり痛い。
「なんで人ん命そんなに軽々しく扱えるか!」
「だってだって……」
「テルピっち……友達のために悩んでるね。辛いわよね……」
ローちゃんは自分の涙を拭う。優しい人だね、ローちゃんは。
「うん、すごくつらいよ」
「私たちも友達だと思ってたけど、違うの!?この知能皆無の大バカが!」
アンちゃん、そんなに怒らなくてもいいよ……頭をぐりぐりするのをやめてください…
「あ、そうだったね……友達ではない人を見つけないと」
「それもダメ」
お昼が終わった後も課題が頭から離れない。
エラ姉のことだけではない。
普段、会議に顔を出さないニアーちゃんの言葉も。
「うちは楽しみなんだ。だって、あんた達の殺し合う姿、もうすぐ見れるし」




