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第8話 雨からの刺客たち

強風の中、雨が横に強く打ち付ける。

目の前に浮かぶ4匹のフェレット、その計8つの黒い瞳がこちらをを見ていた。


僕は、ペンダントを首から外して臨戦態勢に入った。


フェレットのうち一匹がこちらに向かってきた。


『うわ、こっち来た!』


こちら目掛けて振り下ろしてきた鎌をペンダントで弾く。その一匹は反動で後ろへと後ずさる。


『おー、レイちゃんすごい身体能力! 生前のわたしじゃこんなに早く動けないよ!』


だが、すぐにもう一匹が別方向から一撃食らわせんと振りかぶってくる。

それを弾いても、またもう一匹が攻めてくる。


(こいつら、三匹でローテ組んできてる!)


フレンドリーファイアを警戒してなのか、同時には攻撃してこないのは、少し救いであった、が、しかし反撃の隙はほぼないようだった。


(しかもさっきから全部が全部向かい風で弾きづらい!)


さっきから風の方向がコロコロ変わっていた、おそらくこれもあのフェレットたちの能力であろう。4匹分合わせてかなり強力になっている。


(このままだと埒が明かない……)


このまま戦えばこちらが疲弊していくのは目に見えていた。


ノアに何か助力してもらえないだろうか?


(光の刃 ……はノアが気絶しちゃうからできれば使いたくないな…)


光の刃とは、ノアの固有魔法の一つで、非常に強力な一振りを放つことができるが、その後気絶してしまうという技らしい。 


ちなみに、ノアによれば、今の状態で光の刃を使う場合、おそらくは霊体のノアだけ気絶して、僕は何ともないという感じになるであろうとのことであった。


「ノア! 幽霊なんだからボルターガイストとか起こせない?」


『うん? あー、たしかにできるかも… 試してみる!』


そういって、ノアがフェレットの一匹を抱っこで捕まえようとする。


『いい子いい子……』


「シュー!!シュー!!」


フェレットは暴れて威嚇音を発した。


『うわうわ! あば、暴れないで!!』


ノアはあわあわ抵抗されながらも、なんとかその1匹を抑え込むことには成功していた。

とりあえずは1匹は、これで無効化できるだろうか…


実質的に3匹に減ったおかげで、ローテーションが誤差レベルではあるが緩くなる。

風の勢いも若干減った気がする。


(4匹同時よりは相対的にはマシ、たけど…)


あんまり戦況はかんばしくない。


(ここは何か策が欲しいところ…)


しかし、策などそうそう思いつかない、

場所を変えようにもフェレットたちの全方位からの猛攻によって、それを為すことは困難であった。


そうやって、防御一辺倒のまましばし思案していると、突如、一刻の秒、猛攻が停止する。

否、停止というのも表現としては不正確かもしれない、これは準備であった。


(3方向から同時に来る!)


攻め手に欠けると判断したのは、相手も同じだったようだった。3つの刃が渦のように3方向から迫ってくる。


僕はペンダントのチェーンを横に伸ばし、2匹分を防ごうとする。


(後ろは、これで何とか……)


猫耳を背後の地面から生やそうとする。


(これ制御するの無理なやつだ!)


しかし生えてきた猫耳は、まったく見当違いの場所から、まったく見当違いな方向に伸びていく。


「ごふっ!」 『レイちゃん?!』


肥大化した猫耳の触手は僕を横っ腹から宙へと吹っ飛ばした。


姿勢が崩れたせいで、フェレットが振り下ろした鎌が右足に当たってしまう。

そして僕はそのまま、湖へと投げ飛ばされた……


(もう二度と使わない!!)


僕はなんとか姿勢を整え浮かび上がる。


一応場所を変えることには成功したが……果たしてこれは良い変化だろうか?

体はズタボロ、しかも水の抵抗でさらに動きずらくなっていそうだ。


さっき切られた右足は、かろうじてつながっているが、明らかに骨はつながっておらず、もうそれは取れる寸前の歯みたいなもう実質切れてるような状態であった。


(!!、ペンダントは?!)


さっきまで手に持っていたはずのペンダントがなくなっている。さっきふっ飛ばされたときにどこかにぶっ飛んだのだろう。


辺りを見回してもペンダントらしき影は見当たらなかった。


「ノア!そこからペンダントどこ飛んでったか分かる?」


僕は、ノアに大声で呼びかける。

そして同時にフェレットたちがこちらに向かってくるのが見えた。


『ペンダント? 今つけてるでしょ!?』


はぁ?何言ってんだこいつ と思いそうになったが、確認してみるとホントに首にかかっていた。


(なんで!?)


ペンダントを首からずくに外し、飛びかかってきた一匹の鎌を弾く。


『あ、そのペンダント、手放してもテレボートして勝手に戻ってくるやつだから!』


なにその呪いの人形みたいな仕様は……


(そういう大事なことは早く言って欲しかった…)


3匹が斜め上から、さっきのようにローテを組んで1匹づつ順番に攻撃してくる。


しかし、あのままならおそらくそのうちこちら側の体力切れで勝てていただろうにさっきは3方位から同時になどと攻めたことをしたのか、そこがちょっと引っかかる。

前の戦いのことを考えると、フェレットの攻撃が誤って別のフェレットに当たれば普通に仲間に致命傷を与える事態になってもおかしくはないように思える。

いや、そもそもこんな小さい獲物1人を4匹がかりでここまでして殺す価値があるのだろうか。


(ファンタジー生物に、論理を求めるのもちょっとおかしな話かもだけど…)


そう思っていると、再び攻撃が一瞬停止した。


(また来る!)


そう思って身構えるが、攻撃は来ない。


そうして見上げると、上空にはフェレットが1匹しか見当たらないことに気がつく。


(これはブラフだ!)


雨による視界不良と騒音で気が付かなかったが。

水中から、1匹のフェレットがこちら目掛けて鎌を振りかぶってきていた。


(ちょっと!!)


なんとかその鎌をペンダントで弾くことには成功した。

しかし、さっき確認したときいなくなっていたのは2匹、つまりはもう1匹がおそらく後ろから来てるはず。

そう思い後ろを振り返ったが、その考えは杞憂であった。


(ノア?! なんでこっちに?!)


ノアがその1匹を水中に取り押さえていたのだ。


『お願い! このまま溺死して!!』


その一匹は暴れながら水面へ逃れようとするがノアによってそれは阻まれる。


今にも溺れ死にそうな様子の1匹に、残りの3匹も流石に怖気おじけづいたのか逃げ出した。


というか、1匹死にそうになったら他の3匹も逃げ出すなら、 初手で光の刃で1匹殺してもよかったかもしれない。


─────────────────────


雨雲が空を未だに覆い隠してる下で

僕は、湖から陸地へと泳いで戻ってきていた。


(僕、水泳の時間、泳ぐのは下手だったはずなんだけど……)


『なんでそれで泳げてるの?』


どうしてかは分からないが、僕は溺れてるともとれるようなクソみたいなフォームで泳いでいた、しかもちゃんと進めてる。結構速い…


(魔女だからか、異世界だからか………

ノアの発言的に、前者かな…)


そうこう考えてるうちに、僕は陸地にたどり着いた。


………


「ノア、これ、治せる?」


『うん、もう辺りも暗いし、できると思うよ。』


辺りも暗くなったと言われると、黒猫が怖いところではあるが、雨が降っていて火を付けることは無理そうであった。


僕の身体に憑依したノアは、途中から先が無くなった右足に対して、魔法陣を展開する。

固有魔法の治癒とやらである、


「この明るさなら、だいたい1分半ぐらいかかるかな…」


………


足の治療も兼ねて、僕らが足を休めていると。

突然、森の方から重い咆哮が大地に轟いた……


「この声は…… メトリック・ベア!?」


「何、それ?」


「それは…… はふう!」


突然のドスンと言う振動に、ノアは舌を噛む。


目の前に現れたのは巨大な影。


それは、黄色い目をした紫色の熊であった。


敵はおそらく一匹のみ…

ノアの話によれば、光の刃は使うとすぐに気絶してしまうため、単体の敵に対してしか使えないとの話であった。

光の刃の正確な威力は知らないのだが、もしかしたらあの熊を倒せるぐらいの威力はあるのかもしれない。


「ノア、光の刃ならあの熊、倒せるかな?」


「……………」


「…ノア?」


「………ごめん……今は……使えないの…」


「…え?」


軽い沈黙の後に返ってきたのは、予想していた2つの答えのどちらとも違う、そもそも今は使えないという答えだった…


熊が動き出した… その巨体は等加速度運動で滑るようにこちらに向かってくる…


「何そのキモい動き!!」


僕はペンダントでその巨体を弾く。


「グルルルル……」


熊がうめいた。


『レイちゃん、後ろ!!』


後ろを見ると、十数もの大小さまざまな石が宙に浮びながら、こちらに飛んできていた。


「ちょ、ちょっと!」


僕はペンダントで弾こうとする、しかし数が多く防ぎきれない。

一つの大きい石の打撃を喰らってしまい、姿勢が崩れる。


「ぐはぁ」


熊が再びこちらに向かってきている。


(しまった!)


この体勢からでは、熊をペンダントで弾くことはできない。


(やばい!)


『レイちゃん!』


寸前まで迫ったクマを前に、僕にできることは何もなかった……


─────────────────────

side ?????????


地に伏せて気絶している血まみれでボロボロのアルビノの少女。


まるで死体のような有り様の少女を前に紫色の熊は、この食材をどう調理するかを考えていた。


(挽肉も良いが、少し面倒だろうか?)


(ん?てっきりもう死んでるかと思っていたが、これでもまだ息があるのか…)

(ならばとどめを刺してやろう…)


そんなことを考え、熊は少女の頭を噛み砕こうとした。


その時、背後から「みゃーう」などという鳴き声がした。

熊は振り返る、背後には深淵のように黒い影が青い目でこちらを見つめていた、黒猫である。


黒猫は倒しても霧のように霧散して消えてしまうため、食材としての価値はない。

それに、熊の経験上、黒猫が熊の食材を横取りしようとしたことは一度もなかった。

だから、熊は黒猫は無視しても問題がないと判断した。

しかしそれは間違いであった。


突如、一匹の黒猫が草陰から飛び出し、少女の体を口先でくわえて攫っていった。


(おい!それは我のだぞ!!)


熊は追いかけようとする、速度を考えるとどこかで熊が追いつくだろう。


だが、その時、道中の草陰から別の個体の黒猫が飛び出してきた。

熊は勢いよく黒猫にぶつかり、大幅に減速する。

ぶつかられた黒猫は霧散して消えた。


熊はまた追いかけようとした…

しかし、何度追いかけようとしても、別の黒猫が、また別の黒猫が現れ、その度に足止めされる。

石を投げても、素早く動くまとに当てるのは困難を極め、一切当たる様子はなかった…

そして、ついには熊は少女の姿を見失ってしまったようであった。



しかし……はぁ………………逃してしまったか……

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