第12話 ぐるぐる巻き魔女
side レイ
漫画でよくある表現として、お縄についた泥棒とかが、長いロープでぐるぐる巻きにされている場面があるだろう……
結構ベタというか…脳筋な感じの拘束方法だけど
実際…手と足さえ使用不可にしてしまえばほとんどの人間は自力で逃げることはかなり困難であろう。
さて…なぜ僕が今この話をしたのかといえば…
僕は今現在……
……そんな感じで縄でぐるぐる巻きにされているからである。
ちなみになぜかついでに僕の頭の猫耳部分まで縄でぐるぐる巻きになって覆われていた…………これについては意味あるのかなぁ……
「ぐるぐる巻きレイちゃん…紐巻いたコマみたいになっちゃった…」
「僕相手にここまでする必要あったかな……?」
「しかたないでしょ…
あたしらはこれからねるんだから……
さすがのあたしでも…一晩中ねずにみはるのはムリよ?」
うん…まあ……たしかにそうなるよね……
……たとえ僕らが悪い魔女だったとしても返り討ちにすればいい……っていう脳筋理論をリスティアはさっき言ってたけど、寝てる間はさすがにそれはムリだもんね……
……でもやっぱりなんか雑じゃない……?
「なんかこうして見ると、ちょっと可哀想に見えてきたかも……」
「フィーナ………たしか二日前に、道端に落ちてるセミの死骸を見て一言一句同じこと言ってましたよね?」
「セミレイちゃん……セミリングみたいな…?」
えっ………この子にとって、僕って道端で死んでるセミと同等なの?
「もー、お兄ちゃん…
変なこと言わないでよ…
この子結構ショック受けちゃってるじゃん………」
え……僕そんな見てわかるほど顔に出てたのかな…
「……………はぁ……こうして見ると普通の子供にしか見えないんだけどね…」
今……緑髪の少女が…そう小さく独り言を漏らしたのを僕は聞き逃さなかった…
………やはりというべきか、あの緑髪の少女の中では、僕はほぼ確で魔女なようだった……
そしておそらく隣も緑髪の少年の方も、きっと同じようなことを思っているに違いはなさそうだった…
まあ……冷静に考えて……かなり妥当な判断である……
僕らみたいな血まみれネコミミロリと半透明空中浮遊ロリとかいう圧倒的不審者コンビに対して、推定無罪の原則を持ち出すリスティアがおかしいだけだ…
ほんとあのネコミミ幼女は……何を考えているのだろうか……
あの二人からの態度を見るにそこそこ信頼されてるようだから……実は僕と同じ魔女仲間………というオチの線もあんまりなさそうだし……
………いやでも……今"あんまりなさそう"ってむやみに言っちゃうと……後々フラグになりそうでやだなぁ……
「ところでリスティアさん……
たしか魔女は……触手を使えるって話でしたけれど……それについては……?」
……あー……そういえば……あの猫耳の触手って…
前使ったときには……体から直接飛び出るんじゃなくて……近くの地面から飛び出てたなぁ……
あれ?……じゃあそれなら魔女に対しては縛るとか関係ないんじゃ……
「あぁ……あれね……
げんりてきには……ま女のあたまについてる猫耳から、目に見えないサイズの小さな胞子がほーしゅつされて……
その胞子が地面についたら、そこから猫耳の触手が生えてくるっていう感じなのよ……」
「なるほど……だから…」
あー……だから僕の猫耳は縄でぐるぐる巻きにされてるのか……
胞子の発生源を塞いでしまえば…触手は使えないと……
………でもやっぱ………なんか脳筋だなぁ
「……あんたら…もーそろそろねるわよ……
あんまり明日おきるのおそくなったら……そのぶん馬車のレンタルりょーがのびちゃうわよ……」
あぁ……リスティアたちはもう寝るのか……
………ん?……ちょっと待って……?
「いやいやいやいや…え?……ノアは?
…ノアはそのまま野放しなの?」
寝てる間は僕たちのことを見張れないから…という理屈で僕が今縛られてるのに……ノアは野放しなの、普通に考えておかしくない?
「たしかに…わたし今めっちゃ自由だね…?」
「いや…ゆーれいなんて、どーやってこーそくするのよ…
ぐるぐるまきにしたって、フツーにすりぬけてくるだけじゃない……」
確かに幽霊ってどうやって拘束すればいいのかわからないな……
「……でもだからって野放しは普通におかしくない……?
……憑依とかされたらどうするつもりなの……?」
「???……ひょーいされた人間の体から…ゆーれいを追い出すのは……わりとかんたんじゃないのよ…」
割と簡単?……どうやるんだろうか?…塩でも食べさせるとか?
「そりゃそんなの…一発ぶん殴ってやれば解決よ……」
「力技すぎない?!!…」
地球で活動してるエクソシストが号泣しそうなレベルのシンプル暴力解決じゃん……
……そんな乱暴な方法でホントに行けるの?
「ちからわざも何も…………ぼーけんしゃギルドの…しょきゅーしゃよーマニュアルに書いてるレベルの…きほんてきなことよ?
"同伴者に幽霊が憑依した時には、迷いなくぶん殴ろう!!ただし顔面を殴るのは非推奨(過剰な暴力として規則に抵触する可能性あり)"…ってぶぶんよ」
えぇぇ……何そのマニュアル………
「そんでもって………ゆーれいは…ひょーい以外の物理的なかんしょーはできないのらしーじゃないのよ……
つまり…大したきょーいじゃないってことよ……」
あれ?………ノア、ちょっと前にポルターガイスト起こしてなかったけ?
もしかして……これに関してもノアが例外なだけで……普通の幽霊はポルターガイストを起こせないのものなのだろうか?
「…確かに一理有るかも!
……わたしもポルターガイストとかそーゆーのは使えないしね…」
ノア……なんか結構ナチュラルに嘘つくなぁ……
……まあ……咄嗟の判断でアーバ・キューティー・ブルーアイズが出ることを考えると……たぶん嘘をついた経験自体はあまり無さそうだけど……
「ひっ……ポルターガイスト…!
もぉ…………あたしにそーゆー…こわい話思い出させないでよぉ……!
作り話だって分かってても…こわいものはこわいんだからぁ……ねれなくなるでしょーがぁ…!!」
「リスティアちゃん……?」
「リスちゃん大丈夫ー?」
「これ…本当に大丈夫なんですかね?」
……ところでこのネコミミ幼女……自己申告通り本当にちゃんと20歳なのだろうか……?
……どう考えても絶対に嘘だよね……?
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それから数十分が経過した……
どうやら彼らは現在、全員眠りに落ちたようだった……
そして、僕に関しては…今現在……
全身を尋常じゃない疲労感が襲っている最中であった。
魔女とはいえ、元の体は11歳の少女なのだ……
こんなに歩き回っていれば…当然それだけ疲れは溜まる。
体を癒すために、可能なら一刻も早く僕も眠りにつくべきなのだろう………しかし……
「寝れない…めっちゃ眠いのに全然眠れない………なんで……?」
『…レイちゃん……眠れなそー?』
僕が魔女だからだろうか……
それともここが明るすぎるからだろうか…
……後者ぽいなぁ
……ちなみに補足として、なぜこの馬車の中がこんなに明るいのかというと……黒猫対策らしい……
つまりは黒猫のせいで僕は今寝れないということだ……黒猫許すまじ…
「………ていうかノアは……寝るつもりないの?」
『え?…わたし……?
あー……わたしはねー……幽霊だからかな?
なんか夜なのに全然眠くないんだよね……』
まあよく考えたら……夜に眠る幽霊なんていないか……
深夜の廃墟に肝試しに行ったけど肝心の幽霊たちは実は夜なので全員寝てましたとか……さすがにギャグすぎる……
……というか、夜眠らなくていいってことは…
その分、一日のゲームとかに使える時間が増えるってこと…?
……なにそれめっちゃ羨ましい……
「そうなんだ……なんか羨ましいなぁ……」
『羨ましいの……?なら……
レイちゃんも一旦わたしと同じ幽霊になってみたらどうかな…?』
もしかして…これ、遠回しに死ねって言われてる?
そんな屈託のない曇りなき笑顔で怖い事言わないで欲しいんだけど…
「……というかこの縛ってる縄……めっちゃ土と泥で汚れててなんか嫌なんだけど…」
『泥泥ジメジメレイちゃん…』
ちなみに現在僕をぐるぐる巻きにするのに使われているこの縄は……さっきリスティアが引っ掛かって宙吊りになってたあのくくり罠に使われていたものが流用されている。
しかも雨のせいでめっちゃ湿ってるやつだ。
にしても……人を縛るにしてももっと綺麗な縄はなかったのだろうか……
しかも…その縄の下には……
血まみれ泥だらけのままのワンピースだというのだから……
二重でジメジメしてて…正直めっちゃ気持ち悪い……
……ちなみにこの血まみれの服に関しては……
……さすがに着替えたほうがいいのでは…と何度も言われたが……もちろん頑なに拒否した……
一応今の自分の体とはいえ……断固としてロリの裸なんて見るわけにはいかないし……
……そういえば……さっきのあのくくり罠って……
話を聞いてる限り……どうやらの駄馬とか老害とか呼ばれていたあの馬が仕掛けたものらしいんだけど…
馬の体でどうやってあんな高度な罠を仕掛けたんだろうか……?
馬の体の構造を考えるとなんか物理的に不可能感が強いけど……
「ほっほっほっ……人間に魔法が使えて…ワシには扱えない理由が何処にあるのじゃ?」
『えっ…ロバちゃん…まだ起きてたの…?!
…というかロバちゃん…ロバなのに魔法使えるの?』
話をすればなんとやら、さっきの駄馬が馬車の窓枠から物理的に首を突っ込んできて話しかけてきた。
というかさらっと僕の心読まないでよ……
無駄な高等テクニックすぎるって……
「アーバンティアの嬢ちゃんや……
別に動物だからと言って…全員が魔法が使えないわけじゃないぞい…
あとワシはロバじゃなくて馬じゃよ…」
『ロバちゃんって……どんな魔法使えるの?』
まあ……馬が扱う魔法はちょっと見てみたいかもしれない……
「ふっふっふっ……………
ちなみに……思わせぶりなことは言ってみたが……
ワシが魔法を使えるとは一言も言っとらんぞ。」
『えぇ……?!』
……はぁ?
この馬…なんかちょっと腹立つんだよなぁ…
「あと、もう一度言うが
……ワシはロバじゃなくて馬じゃ…」
『分かったよ!…ロバちゃん!』
うーん……分かってなさそう……
「……ワシにも一応………"トラ"という…我が父上から授かった立派な名前があるんじゃが……
じゃから……ワシのことはロバちゃんじゃなくて…トラちゃんと呼んでくれないか?」
…馬なのにトラなのか……
ウミネコとかヤツメウナギみたいな感じのネーミングセンスだ……
『トラちゃん………?え…トラちゃん……?
………苗字は?』
馬に苗字とかあるのかな?
いやまあ……馬がしゃべる世界だしそういう文化もあっておかしくないか………
「わしの苗字かね?…ふーむ……その答えは…
……ワシよりもお主の隣にいる嬢ちゃんに聞いたほうが早いと思うぞい……」
『え……?レイちゃん知ってるの?』
「いや知らないけど……?」
ほぼほぼ初対面な馬の苗字なんて僕が知ってるわけないだろうに……
この馬は何を言ってるんだろうか……
「ほほぅ……なるほど……
……理崎の嬢ちゃんが答えられないのなら……
ワシはもう何も言うつもりはないぞい……」
えぇ……どういうことなの……?
……言ってることが意味不明だなぁ……
やっぱりこの馬…駄馬だ…
「……ところで……ワシは今……
アーバンティアの嬢ちゃんからの質問に一つ答えたじゃろう…?
ならば……ワシからも…一つ質問をすべきじゃろう…?」
いや……どう考えても今の答えてなかったよね…?
明らかに論理として破綻してるよね……?
「特に……ワシが一番気になっとることは……
理崎の嬢ちゃん……お主に関してじゃ」
「…………僕に?」
『レイちゃんに……?』
「自慢じゃないが……
ワシは……大抵のものごとの原因は…大体知っとる……
もちろん……知ったかぶりではないぞい……魔素の運動方程式すら知らんで経験則だけで魔法を使うような蒙昧な人間どもとは違うからなぁ……」
……急になんの話だろうか?
ていうか………これ…絶対虚言だよね……?
こんなそこら辺の馬が……そんな博識で何でも知ってる賢人(賢馬?)なわけがないだろうに……
「じゃが……そんなワシにも……今……
一つだけ……理屈が分からないことがあるのじゃよ…」
いや………理屈がわからないようなことなんて……
普通、余るほどたくさんあるものでしょ……
「一つ問おう……お主は……
……今…なぜ……ここにいるんじゃ……?」
えぇ……なにその質問……?
「……哲学?」
『……なんかすっごい変な質問だね?』
……マジで何その質問………?
一体それは何を聞こうとしてる質問なの?
どんな答え方を想定してるのか全く予想がつかないんだけど…
なに…?人生のこれまでの旅路とか喋ればいいの?
それとも…"僕は親に望まれて生まれてきました"…みたいな類の中身のない回答をすればいいの?
「今のはワシの聞き方が悪かったかもうしれんな……聞き方を変えるとしよう……
……お主は今……なぜ……生きとるんじゃ……?」
えぇ……
「……むしろ悪化してない………?」
『………もっと変な質問になったね…?』
本当に何を聞きたいの?…その質問……もしかして遠回しに死ねって言われてる…?
「……答えられぬなら…まあそれでよいじゃろう……
……あぁ……あと…もう一つ質問があるんじゃが…」
えぇ……また質問?……さっきみたいな答え方に困る質問は本当やめてほしいけど……
「なあ……理崎の嬢ちゃんや……
お主をそこに縛り付けている……その縄……
……ワシが今…ほどいてやると言ったら……どうするんじゃ?」
「 『え…?』 」
き……聞き間違いかな……?
この馬が僕の縄をほどくって言ったような……
そんな訳ないよね……きっと聞き間違いだよね……
「なんじゃ…お主ら…そこから逃げたくないのか…?
……特に理崎の嬢ちゃんの方は…魔女じゃろう?」
『……トラちゃん?………何言ってるの?』
……え?………いやいやいやいや……え?……え?
……なんで?
この馬って一応リスティアたちの味方側じゃないの…?
なんでそんな魔女陣営みたいなこと……
「ふむ……?ワシの目が曇っとったのかのぅ……
魔女で間違いないと思ったんじゃがのう………
ワシはただ……お主らの手助けしようと思うただけじゃが……」
……その時であった……
突然、まるで…一筋の突風が一瞬で突き抜けたように感じた。
馬車の中を…あるひとつの小柄な影が目にも留まらぬ程の超スピードで動き出し…
窓から首だけを出しているその駄馬へと急接近したのだ。
『えっ…?!リスちゃん?!……すごい早い……』
「リスティア?!……」
「ねえ……あんた…今の言葉……どーゆー意味?
さすがのあたしでも…それはかんかできないわよ……」
突然の突風の正体は……異様に背の低い茶色い不格好な服装をした鋭い目付きのネコミミ幼女……リスティアだった……
「ほっほっほっ……なんじゃ……お主……
……まだ起きとったのか……」
馬車の窓から車内に首を突っ込む駄馬……
その首元すんでの位置に……ムラサキ色の巨大なカマの刃先が…脅すように差し出されていた…
リスティアの身長の1.4倍くらいある巨大なカマ……
その持ち手部分には…暗い灰色の鎖のような装飾が三重らせんで巻き付いており…
その刃先は紫色に発光していた。
正直重くてすっごい持ちにくそうな印象を抱くカマだ……
一体どこからこんなデカいカマ出したんだろうか…?
というかこの子……さっきまで寝てたはずじゃ……
『えっリスちゃん……もしかして………寝たフリしてたの…?』
なるほど……この子…実はさっきまで寝たフリしてて、今の駄馬の話もちゃんと聞いてた……ってことかな……?
まあたしかに……僕をぐるぐる巻きにしたからといって……推定魔女の僕の目の前で安心して寝れるかといったら否だもんなぁ…
あれ?……じゃあなんで……僕ぐるぐる巻きにされてたの……?……なんで……?
「あたしは…今のあんたの言葉がどーゆー意味かって聞いてんのよ……
今のあんたの言葉は…魔女へ利しようとする明らかな意思があったように思えるけど?」
「ふむ……ラピトールの嬢ちゃんや……
ワシは魔女の味方になるつもりはないんじゃ……
ただ……我が父上の手助けをしたかっただけなんじゃが……」
『トラちゃんのパパちゃん……?』
この馬……ずっと何言ってるか分からない気がするなぁ……やっぱり駄馬なのかもしれない……
「……はぁ?……あんた……まじめに答えてくんない……?」
「ワシはいつだって真面目に答えとるぞ…?」
「どこがまじめなのよ……?
あんた…ちほーしょーで脳みそどっかに落としたんじゃないの…?」
『脳みそ空っぽトラちゃん……?』
「はっはっはっ……ワシが痴呆症じゃと…?
面白いことを言うじゃないか……」
……脳みそどころか首ごど無くなりそうな危機的状況なのに……なんでこの駄馬はこんな余裕そうなのだろうか
「…痴呆症なんて…ワシからしてみれば、むしろ羨ましくてしょうがないもんじゃというのに…」
……? 痴呆症が羨ましいなんて……本当に…この馬は何を言ってるのだろうか……
「は……?あんたほんとに何言ってんのよ…?」
「…忘れたいことを忘れられるとは……
あまりに羨ましいことじゃ……そうじゃろ…?」
「チッ……」
『…リスちゃん……大丈夫?』
…忘れたいことを忘れられることが羨ましい……?
うーん……まあ…たしかに言いたいことは分かるけど……
「お主じゃってあるじゃろ…?忘れたくても忘れられな…「それいじょーじゃべったら本気で馬さしにしてやるわよ…?!」
リスティアの……忘れたくても忘れられないこと?
地味になんかちょっと話が気になるなぁ……
でも…リスティア……すごい怒ってみたいだし……
この馬…これ以上喋ったら本当に馬刺しになってしまうのではないだろか……
「ほっほっほっ……やはり……まだ引きずっとるのじゃろう…?…14年前の…「警告はしたわよ…!」
「リスティア?!」『トラちゃん大丈夫?!』
………えっ?!?!…マジで馬刺しにするの?!
その馬の首元に据えられていたカマが静かに振り下ろされ、馬の首は根元から真っ二つに吹き飛んだ……
吹き飛んだ馬の首はそのままの勢いで横の壁まで跳んでいき……
…血と頭からこぼれた赤い組織による形容しがたい軌跡を壁にベチャっと残しながら……頭は床まで滑り落ちる……
なんか……グロ注意な……ものすごいすごいショッキングな感じになっていた……
その様相は残虐なホラー映画の1シーンのようだった……マジで…
「うっ……なんか……ちょっと……見てると吐き気が……」
『なんか…………いちごジャムみたい……』
「え?……ノア………?」
……ノア……?……何その感想?
…いきなり馬の死体見て出てくるセリフでは絶対なくない…?
ノアって……もしかして…実はサイコだったりする…?
「なるほど……いちごジャムか……
なんとも…富裕層的な例え方って感じじゃな…」
え…?……え?……え?……え?!
馬の頭が喋った……?!
……死んだはずじゃ……?
「しゃ……喋った……?!」
『え?!トラちゃん…生きてたの?!』
「……これでも全然生きとるとも……
老馬の生命力…舐めとったら痛い目見るぞい…?」
頭だけになっても余裕綽々としてるのは……
もはや生命力とか……そういう次元で片付けていいものなのだろうか?
バケモノ?……それともゴキブリの近縁種?
「はぁ……これだから…ほんと……だ馬は嫌いなのよ…」
なんか反応薄くない……?
もしかしてこれ……割とよくあることなの?
「……あぁ……あんたら………
なんかごめんなさいね……ずいぶん見ぐるしいもの見せちゃったみたいで………」
見苦しいどころの騒ぎじゃない気がするけど…?
悪趣味なスプラッタホラーの1シーンみたいになってるけど…?
首だけで喋る馬とかいう……前代未聞の気持ち悪い光景が広がってるけど……?
『トラちゃん……それ……大丈夫なの……?』
「……あぁ?……まだワシの心配をしとるのか?
これくらいは……追い打ちを食らわなければ…
まぁー…二・三ヶ月程度で完治するわい…
ワシはな…人間とか小動物や魔女みたいな…軟弱な生命体とは……質からして違うもんでな…」
『なんかトラちゃん…すごいんだね……?』
これ……質の問題かな……?
本当に質の問題かな……?
量より質とは言うけど……質だけでそこまで行くことあるかな……?なんか限界突破してない……?
「…なによ…だ馬のくせして……なんかえらそーね……
もしかしてもう一発くらいたいの?」
「はっ……もう一発はさすがに勘弁じゃな……
さすがのワシでも……一気に何回も断頭されりゃ死にかねん……」
断頭はそもそも…人生で何度もされるようなものじゃないと思うんだけどなぁ……
「で……あんた……あたしの最初の質問に答えてないわよね……?」
あぁ……そういえば……この馬……おちょくるだけおちょくって……結局最初の質問には答えてないなぁ……
「ほぅ……お主の最初の質問か……
ふーむ…しまったのう……何じゃったか忘れてしまったわい…」
やっぱりこの駄馬……終始ふざけてる気がするなぁ……
「はぁ……あんた……答える気がもーとーないよーだし……別の質問にするわ……」
えぇ……
この駄馬…話通じなさすぎて諦められてる…
まあ駄馬への対処としてはこれで正しいかもしれない……
「あんた………さっきまでの会話で……
アーバンティアのじょーちゃん…とか……
理崎のじょーちゃん…とかって…
……この子らのこと……よんでたわよね……?
………そのよび方は……本当になんなのよ?」
ん……?
……その呼び方に別に変なところはない気がするけど……?
アーバンティアは普通に……ノアの家名だし……
理崎ってのも…僕の苗字だよね……?
「ふむ…何かおかしなことでも…あったかね……?」
『……あっ!!……えっ!!……
トラちゃん……なんでわたし達の苗字知ってるの?!』
え……?……あっ!!!!
そうじゃん……!
僕もノアも…この人達に対しては本名言ってないはずじゃん……!!
なんでこの駄馬は僕らの本名知ってるの?!
「ワシのような賢い馬の前では…隠し事など意味をなさない………
ノア・アーバンティア……そして……
理崎 玲よ……
お主らもそう思うじゃろ……?」
たしか……僕の苗字の理崎って……
ノアと初対面した時の…あの自己紹介の一回以降に……僕一度も口に出してすらないよね……?
本当に……なんでこの駄馬は僕の苗字まで知ってるの?
……なんかストーカーの極致みたいで、正直気持ち悪いなぁ……
「え?……あんたらのみょーじって…アーバ・キューティ・ブルーアイズじゃなかったの…?」
『えぇ……リスちゃん?』
え………?
あの時のノアの苦し紛れの嘘……まさかあれ本当に信じてたの……?
『………リスちゃんってもしかして………
……サンタさんとか信じてるタイプ……?』
「…いや……子どもじゃないんだから……
そんなおとぎ話…信じてるわけないでしょ……
……とゆーか……そもそも信じるとかいぜんに…
あたし今年で20才だし……サンタとか来るわけないわよ……?」
あぁ……そうだった……この子……自称20歳だった……
「それにそもそも……あたし………
実親からのクリスマスプレゼントなんて……
もらったことなんてないし……」
『 「えっ………?」 』
えっ………?……あっ…………
………えっ?………えっ………?……えっ………?
『なんか………変な事聞いちゃってごめんね…?』
「………なによ………?
別に虐待とか…そーゆーのじゃないわよ…?」
うーん……………本人がそう思うなら……
そういうことにしておいたほうが良いのかなぁ……




