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距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる  作者: 歩く魚
東堂涼

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パキモンの世界へようこそ


 世界的な人気を誇るパキモンの公式ショップが、渋谷という大都市にあるのだ。

 日本人だけでなく国外からの客も多く、店内を自由に歩き回ることは困難だった。


「す、すごい人ね……こんなにファンがいるだなんて思わなかったわ」

「ゲーム界のトップとも言える存在だからね」

「ゲームなんて……上から降ってくるブロックを積むやつしかやったことないわ」


 あれは積むやつっていうより消すやつなんだけどね。


「涼ちゃんはゲーム得意じゃなさそうだね」

「もちろんよ。自慢じゃないけど、何をすればいいのか全く分からないし」

「逆にカッコいいよ」


 人の流れに身を任せる。

 壁際には何十何百といった種類のパキモンぬいぐるみが並び、内側にはアクセサリーや小物の棚。

 ふと、先輩がグッズの一つを指差した。


「これなら知ってるわよ。パ……パキチュウ? とかいうやつよね」

「あー……これは実は違うんだよ。パキチュウは向こう側にいるやつだな」


 先輩がパキチュウと言っていたのは「ドドンノ」だ。

 パキチュウから遅れること十年ほど、彗星の如く現れた新規マスコット枠。

 いや、実際にはプレイヤーじゃなければパチモンにしか見えないし、マスコット枠も獲れていない。先輩も罠に嵌められたわけだ。


「…………どっちも同じじゃないかしら?」

「それをファンに聞かれたら殺されるからやめようね」

「そ、そんなに殺伐とした世界なのね……」


 色々違うからね。能力値とか。


「涼ちゃんも、自分の好きなパキモンとか見つけてみたらいいんじゃない?」

「それも面白いかもね。ちなみに、悟にも好きなパキモンっているのかしら」

「俺? 俺は……」


 周囲を見回すが、俺のお気に入りはいない。

 仕方なくスマホを取り出して画像を見せる。


「このデカグモマルってやつが好きかな」


 デカグモマル。ファンタジーなデザインが多いパキモンの中でも異色なガチの蜘蛛である。しかもデカい。

 女子からしたら鳥肌ものかもしれないが意外と人懐っこく、侵入者を糸でグルグル巻きにしてシバいてくれるらしい。


「悟って虫とかイケるタイプなのね」

「蜘蛛はあんまり虫って感じしないなぁ。カブトムシとかと同じカテゴリ分けしてるかも」

「独特ね」


 どうやらデカグモマルは先輩に刺さらなかったようだ。


「それじゃあ……これなんて涼ちゃんに似合うと思う」


 壁際のぬいぐるみの一つを手に取る。


「ユキナンっていうパキモンだな」


 ユキナンは雪女がモチーフになっている。

 クールな目元と人間に近いフォルムから、色々な意味で虜になってしまう人も多い。

 先輩にユキナンを手渡すと、なんとも言えない顔をしている。


「……私って、そんなに冷たそうに見えるのかしら」

「え? 涼ちゃんはクール美女って感じだから似合うと思ったんだ――」

「なるほどね。確かにその通りだと思うわ。さすがじゃない。私の魅力に気付いていたなんて、悟も日々成長しているようね。その通り、この子……なんていうんだったかしら」

「ユキナン」

「――ユキナンは私にピッタリのパキモンよ。買うわ。買い占めてもいいかもしれないわね」

「他のお客さんもいるからやめようね」


 突然元気になり出して、どうしたんだろうか。

 結局、先輩はユキナンを気に入ってくれたみたいで、ぬいぐるみを買うらしい。

 二人でレジ待ちの長い列に並ぶ。


「あっ……悟の好きなデカグモマルも買えば良かったわね」

「好きでもないデカい蜘蛛のぬいぐるみなんて買ってどうするんだよ」

「な、並べるだけよ。葉音の好きなパキモンも聞いて揃えるだけ」


 知り合いの好きなパキモンでパーティを組むとか、そんな感じか。

 縛りプレイの一環でタイプ統一とかする人もいるしな。

 余談だが、隆輝の好きなパキモンはガチムチの「マンリキー」だ。


「そういえば、街中でパキモンのスマホゲームをしてるおじさんもいるわよね」

「パキモンDOね。一応俺もやってるんだけどね」

「……なんか、申し訳ないわね……」


 散歩中とか楽しいんだよあのゲーム。

 確かに、今ではプレイヤー比率がおじさんに傾きまくってるけど。

 自転車にスマホ五台くらい貼り付けてる人もいるけど。


 俺が心に浅い傷を負っていると、ついにレジの順番が回ってきた。

 ユキナンを迎え入れるための対価が表示されると、俺は財布から千円札を三枚取り出してキャッシュトレイに置く。


「えっ……自分のなんだから私が払うわよ」

「まぁまぁ、いいから」


 先輩をスルーして会計を済ませ、袋に入れられたユキナンを受け取り、パキセンを出る。


「はい、どうぞ」

「そんな……悪いわよ」

「最初に好きになったパキモンの記憶はずっと残るんだよ」


 受け取るのを渋る先輩に向けて笑顔を作る。


「それに、今日はデートの練習なんだから、プレゼントくらいする。――パキモンの世界へようこそ」

「そ、それなら遠慮なく受け取るわよ? ありがとう悟。本当に嬉しいわ」


 先輩は頬を染め、ユキナンを大切そうに抱いてくれる。

 本音を言ってしまえば「パキモンの世界へようこそ」が言いたかっただけだが、喜んでくれたなら良かった。


「今日から一緒に寝ようかしら」

「そこまでしてくれるのか」

「もちろん。彼氏からのプレゼントなんだから」


 ウインクする先輩。

 俺を揶揄うための仕草が様になりすぎていて苦笑する。


「それじゃあ、他にこの階で見たいものはないし、本題に向かうか」

「今度は行き過ぎないから安心してほしいわ」


 俺たちはパキセン横のエスカレーターに乗り、服を見にいくことにした。

 

実在のアレコレとは関係ないです。見逃してください。

そして評価ポイントをいただけなくてモチベ下がり中ですので、お手数ですが作品作りにご協力いただけると幸いです!

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