体格の良さは女体化における胸のデカさなんだよッ!
「おう悟。昨日は東堂先輩と一緒だったってマジか?」
購買でパンとミルクティーを買い、足早に教室に戻ると、隆輝が先に席で待っていた。
そして、また面白い事を知ってしまったと言いたげな顔をしている。
「……なんで知ってんだよ」
「目撃情報だよ。超美人と並んで歩いてる七里ヶ浜悟がいたって」
「指名手配者並みにウォッチングされてない?」
「東堂先輩」とは言わずに「超美人」と表現しているあたり、妙にリアルだ。
「プレゼント選び手伝ってもらっただけだよ」
「巻島さんの?」
「ああ」
そう答えると、隆輝はなぜか「んぐっ」と変な声を出し、口にしていたコロッケパンを半分くらい噛みちぎった。
「確かに……確かにだ。俺たちみたいな陰の戦士には分からない。女子へのプレゼントはギャンブル。ギャルゲーでヒロインの好感度が上がりやすい贈り物を試していく、あの感覚と同じよ」
「へぇ、隆輝ってギャルゲーとかやったことあるんだな」
「ないぞ」
じゃあ、その例えはどこから湧いてきたんだよ。
俺の問いに答える事なく、隆輝は言葉を続ける。
「……でもお前、気をつけろよ?」
「なにをだよ」
「そういう、ただの買い物から男と女の関係って崩れてくるんだぜ。絡み合い、もつれて、気づいた時には詰んでるわけだ」
「誰情報なんだそれ?」
「ウチのおばあちゃん」
「おばあちゃん恋愛経験豊富だな」
「俺も教えてもらいたいな」とふざけると、隆輝は「いやマジで」と顔を引き締める。
「巻島さんってアイドルだから恋愛経験あんまりないだろ? いや、あるって言われたら俺を含めた全男子が死ぬんだけどよ」
「ないと思う」
「オーケー助かった。んで、恋愛経験はなかったとしても行動力とか洞察力はあるタイプだから、嫉妬とか扱い方を間違えたらヤバい」
「……巻島、俺が先輩と会ってる事に気づいてるかな?」
「気づいてなくても、なんとなくで察するのが女の子だ。俺が女だったら絶対に不安になるし、お前のこと鍵かけて飼い慣らすね」
「柔道家みたいな体格のやつに監禁されるって、想像したら怖すぎるだろ」
「馬鹿野郎お前ッ! 体格の良さは女体化における胸のデカさなんだよッ! 俺は! ナイスバディだッ!」
なにを叫んでいるんだこいつは……。
とはいえ、隆輝の言うことは意外と当たっている。
巻島は何も言ってこないけど、それが逆に怖い。
「まぁ、巻島さんも可愛いけど東堂先輩もアリだよな」
「アリって……そうかぁ?」
「よく考えてみろ。普段はツンツンしてる氷の女。しかし惚れた男には尽くすタイプと見たね俺は」
「隆輝って彼女できたことないよな?」
「ん? ないよ?」
言うだけ野暮というものか。
「尽くすタイプねぇ……」
男ではないが、巻島には何かと世話を焼いているのは事実。
「……案外、クズ男に引っかかりそうだよな」
「だろぅ!? パチンコ代とかくれると思うね」
漫画の読みすぎな気もするが否定はできない。
東堂先輩に好かれる男なんてそうそういるわけもないし、現実が確かめられないのは惜しいところだな。
「あとは天王洲さんとかな」
「お前っ……聞こえたらどうするんだよ」
「大丈夫だって」
天王洲の席は遠いと近いの中間。
俺たちの会話は基本的に聞こえていないだろうが、隆輝の声のデカさを考えたら安心できない。
横目でチラリと彼女の方を確認してみると、取り巻きの女子たちにチヤホヤされていて、どうやらセーフみたいだった。
「平気だったろ? いやぁ、男嫌いの天王洲さんに意中の相手ができた時、一体どうなるんだろうなぁ」
「それを確かめるのが隆輝の目標ってことか?」
聞いてみると「まさか」と両手をフラフラされる。
「俺は平穏に生きて平和な彼女が欲しいんだよ。天王洲さんと付き合ってみろ、周りの子たちに消されかねん」
「同意できる」
「危ない恋愛は悟の担当だしな」
「同意できない」
俺も安心安全な恋がしたいです。
「考えてることは分かるけど、悟は無自覚にフラグ立ててくからな。無理だと思うぞ」
「お前に優しさはないのか?」
「優しさか……なら一つ予言してやろう」
「予言?」
隆輝は「賢さ」とは無縁そうなゴツい指で、架空メガネを上げるような仕草をしながら言う。
「今日の帰り、お前には恋愛イベントが待っている」
パンの袋を握りしめながら、俺はため息を吐いた。
適当言いやがって。
予言は当たるのか
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