創世神話『環界創典』
創世神話『環界創典』
――これは、万象の理、いまだ形を持たず、虚無の彼方に漂ひし時の物語なり――
遥かなる古の世、未だ星も海もなく、音なき深淵に、ただ混沌のみ渦巻きて在りけり。
いづれのほどにか、四柱の始源なる神、姿を顕はしたりとぞいふ。
光の神、シフェリオン
闇の神、ネレファス
大地の神、ゴウルマグ
精霊神、フィリュエル
これらの神々、混沌に秩序を与へ、物質の界を創り出だしたまふ。
光と闇との力は、調和を保ちつつも、相容れず、遂には神々の間に争ひ生まれぬ。
光は清浄を求め、闇は多様を許したまふ。二柱の対立、次第に激しくなりて、世界を割らんばかりの力、相撃ちたり。
これを見かねし大地の神、ゴウルマグ、己が身をもって争ひを鎮めんとて、立ちはだかりたまふ。
されど、光と闇の力をその身に受けし巨躯は砕けて、大地となりて崩れ落ちにけり。
かくて山となり、谷となり、海となり、大気となりて、世界を満たしたり。
この地、やがて地上界と呼ばるるに至れり。
互ひに傷つきし光の神と闇の神は、それぞれ天界、魔界に己が身を封じたまふ。
精霊神フィリュエルは、ただ見守るのみなりし己が無為を悔やみて、
その存在を精霊界に封じたまふ。
そこは火、水、風、光、闇の精霊たち住まふ世界となりにけり。
しかして、神々の去りしのち、大地の奥深くより、新たなる存在、生まれいでたり。
すなはち、
大地の神・ゴウルマグの四肢より生まれ出でし竜神たち、
また、その御指より生まれ出でし獣王たちにこそありける。
竜神たちの降臨
大地の命脈より姿を顕はしたるは、四柱の竜神にてありけり。
彼ら、大地に息吹を与へ、天を翔け、海を揺らし、風を駆けたり。
焔竜神ヴァリオスは、燃ゆる尾をたなびかせて地を駆け、火山を噴き上げて、大地を形づくりたまふ。
氷晶竜神シルフィエルは、吹雪の翼を広げて寒き地を産み、空に雪の舞を贈りたまふ。
海渦竜神リュザークは、鱗に波を宿して深淵の海に命のゆりかごを満たしたまふ。
蒼天竜神アステリオンは、雷光と光を身に纏ひて天を統べ、空に風と光を放ちたまふ。
かくて彼ら、世界を「整へる者」としてその役目を果たし終へ、
おのおの力の座たる異界へと還り、
自らの眷属と共に、静けき眠りへと入りたまひき。
獣王たちの創生
竜神たちの去りし後、次に大地に降り立ちたるは、五柱の獣王にてありけり。
剛獅王ライザンは、雷鳴のなかに咆哮し、猛き魂を宿せる獣を生み出だしたまふ。
深林王グリムアは、樹々の影に佇みて、森を護りし獣どもを育てたまふ。
焔牙王フェルガルフは、灼熱の地を歩み、焔を纏ふ狼たちを世に出だしたまふ。
鋼翼王ハルケオンは、風の頂に立ちて、空を翔く鳥獣を生みたまふ。
碧鱗王オルカーディアは、海の底にて歌ひ、水の獣、魚どもを産み落としたまふ。
彼らは地に命を授くる“育みし者”として、世界に獣の命脈を刻みたまひき。
獣王たちもまた、各々結界に護られし異界を築き、
今もなほ、己が眷属と共に静かに住まひ給ふといふ。
四界と回廊の誕生
物質界の創世と共に、神々の去りし後に遺されし“繋がり”は、
やがて世界を越えし回廊――カイロス――と化せり。
聖火塔アウロラ:天界へと至る天空の門なり。天の御使ひ、その頂を守護せり。
奈落城ゾルディア:魔界へ通ずる深淵の迷宮なり。魔王、その最奥にて眠り給ふ。
世界樹イグラン=エレオス:精霊界の門たる巨樹なり。精霊ども、その枝を渡りて往き来す。
それらの構えは、一国を呑むほどに巨なるものであり、
其処には本来の界に近き者――天の御使ひ、魔人、妖精など――棲まひて、各々の文化を育みたり。
かくして界と界とを結びしは、いくつもの回廊なり。
此の回廊こそ、三界と地上界を繋ぎ、世界を巡らしむる理そのものなるぞ。
そして今もなほ、此の世界は神々の遺せし理のもと、巡りつづけて候。
竜神は天を見守り、獣王は地を歩み、精霊は風にささやき、
回廊の彼方には、また異なる理、未だ見ぬ定めの在りけるなり。
この世界の名、人々は畏れ敬ひてかく呼びならはす――
環界アルケオナス
——神々の環、命の環、運命の環——




