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ファーヴィス  作者: 芦屋 瞭銘
第二章 ファーヴィス
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第4話 賭けのような旅

「見えない、そして簡単に行き来できない。でも自分が生きるものとは違う世界はいくつも存在する。皆はそれを異世界と呼び、今の全てを捨ててでも行ってみたいと望むこともある」


 話を聞けば聞くほど、馬鹿馬鹿しいと思うと同時にこれが現実なのではないかという考えも膨らんでいった。


「ファーヴィスはその異世界同士を繋いでいる中継地点なのさ。異世界に行くなら、ほとんどのものがここを通る。さっきも言った通り、ここはその道案内をするところだ。迷える者たちに、元いた異世界から次に行きたい異世界までの道を示す」


 異世界が出てくる物語は嫌いじゃなかった。でも別の世界に行きたいと強く望んだわけもない。



 だけど、帰りたいって強く思っていない自分もいる。



「僕は異世界なんて、まだ嘘だと思っているくらいです。……どうしてこんなことになってしまったのでしょうか……」

「さあねぇ。その怪しげなの男に連れてこられたんだろうけど……」


 サイリィが言うには、異世界という場所は望んだからといって来られるものではないらしい。もちろん望んでその方法に辿り着くものもいれば、望んでいなくても飛ばされることだってある。僕のように望んでいないまま飛ばされた時、それが事故でも誰かの故意的な要因があっても、自分の世界から異世界へ渡るとうことは簡単には有り得ないことなのだと。


 ここに来る者たちはその原則を破り、ほとんど賭けのような旅をする。

 概念や摂理、そして時間軸が異なる世界を渡るのは奇跡だという。本来の生まれた世界で生きていくことがその者の使命であるから。


「異世界自由に帰ることも、望む世界に行くことも本来はすごく難しいわけですね」

「そう。だからこのファーヴィスがあるんだ。異世界の旅人たちが、できるだけ望む世界に辿り着けるようにね」


 彼は数秒僕を見つめてから、「あ」と何かを思いついたように顔をぱあっと明るくさせた。


「君、その顔……もうしかして、別に元の世界に帰れなくても困らない感じかな」

「…………」

「衣食住と仕事と空いた時間に好きなことでもできれば、過ごす世界にこだわりなし??」


 まるで心を読まれているみたいだった。多分僕の表情に必死さがないからだろう。家族は、友人は、仕事は……と元の世界のことを思い出して取り乱しもしない。だんだんとサイリィの目の輝きが増してきている。彼に言われた通りだ。困ったことに……どうしても帰りたい程の理由がない。


「ボク、君みたいな人をずっと探していたんだ!」


 そう言って微笑んだその人の顔は本当に心から嬉しそうで、こんな僕でも役に立てるのならとこれから彼が口にする内容をドキドキしながら待ってすらいる。


 サイリィはテンションが上がったまま、甲高い音を立てて息を吸った。


「タツキ、君……ボクの後継者になってよ!」



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