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3/7投稿分、二話目です。

明日は三話投稿し、一章(短編【狂犬の初恋】部分)を終わらせます。

「まぁ、気持ちは分からんでもないが。

 ちなみにジル、あちらはどんな感じだ?」


「……実はあちらも似たような感じなのです。

 セリン家として助けて頂く予定だった。

 それを勝手に暴走した挙句作戦失敗させたことに責任を感じているらしくて。

 ニフェール様も気にしないと思うと伝えたのですが」



 あぁ、気持ちが分かってしまう。

 自分が悪いんじゃないけど、責任は取らないといけない。

 そしてその悩みを解消させる方法に困る。




 僕そっくりじゃないか。




「ジル嬢、改めてラーミル様に会わせていただきたい。

 互いの背負っている責任をこの機会に全て無くしてしまいたいのです」


「そして責任無くしたら次は告白?」



 ジル嬢、笑顔がいやらしいからやめなさい。

 フェーリオ、笑顔がエロ親父にしか見えないからやめなさい。



「そこまで考えておりません。

 告白前に罪悪感という荷を下ろしたいのです。

 まぁ、実際どうなるかはわかりませんが期待はしないでください」 




「え~」

「ブー、ブー!」




 ジル嬢、拗ねない。

 フェーリオ、なんだそのブーイングは?



「あ、それと昨日フェーリオが言ってたジーピン家の当主交代。

 そっちも朝に手紙を送ったから数日で当人たちが王都に来ると思う」


「なら、ラーミル様の件と合わせて来たときに一通りやればいい。

 多分アゼル殿だけでなくマーニ殿も婚約者に会いに来るだろうから」



「え?

 アゼル兄は分かるが、マーニ兄がなんで?」


「ん?

 婚約者に会いにだろ?」





「……聞いてない、婚約者、いるの?」





 ザ ワ ザ ワ ッ




「……嘘だろ?」


「嘘ならどれだけよかったか。

 ちなみにお相手はどなた?」



 フェーリオとジル嬢が顔を見合わせた後、意を決してフェーリオが説明する。



「セリン家との会談後チアゼム家で状況説明したろ?

 その時ラーミル様が知った顔かもしれないと発言したメイドがいたろ?

 あれがマーニ殿の婚約者」




 うっそだろぉ!!!




 え、僕、知らない間にマーニ兄の婚約者と会ってたの?

 それもその時の話題がラーミル様の胸の大きさ?



「あ、ありえねぇ……」



 頭を食堂のテーブルにつけて半泣きの声でぼそりと呟く僕。


 二人して僕を哀れんで黙っていてくれる。

 今はその優しさが嬉しくて辛いよ。



 僕が落ち着いたところでフェーリオが大事なところを聞いてくる。



「ニフェール、ジーピン家では情報を共有しないのか?

 家族の婚約者の有無なんて大事な話を隠すのはなんでだ?」


「僕が聞きたいよ……(泣)」



 本当になんでだろう。



「とりあえず、うちの一家が王都に来たときにでもちゃんと話してみるよ。

 最悪、家族相手であっても噛み付く覚悟はできている」


「まて、それは止めろ!

 話し合いまでにしておけ!」



 フェーリオが止めようとするが、正直止められる自信がない。

 なんせ、今回のセリン家との話も事前に知っていれば……。


 もう少し騒ぎは小さく済んだのに。


 ラーミル様を悲しませずに済んだのに。



 自分の心が(すさ)み、目が死んでいくのが分かる。

 アゼル兄ともマーニ兄とも仲良いつもりだったけど、流石にこれは許せない。



「ニフェール、フェーリオ・ジャーヴィンとして命ずる。

 お前の家族に牙を剥くのは止めろ」


「それは……」


「お前の兄たちは婚約者を教えないなんてくだらない嫌がらせするような奴らか?

 違うだろ?

 多分だが一番やらかしそうなのはお前の父親アダラー殿だと思う。

 ただ、アダラー殿は今回我が父からの当主変更指示に従うのなら……。

 以降隠遁生活になるのだろう?

 なら牙を剥く必要は無い。

 最悪、アダラー殿が指示に従わないのならもう止めない。

 その時は遠慮なく牙を剥け」



 フェーリオの珍しく真面目な発言に僕は黙るしかなくなる。

 まぁ、フェーリオの側近が親殺し兄殺しなんてなったらまずいしな。



「……わかった。

 処分は保留としておく」



 正直ムッとする気持ちはあるが今は大人しく受け入れておく。

 今は、ね。

 まともな回答貰えないのなら……処するか。



 その数日後、グリース嬢が学園退学した話が聞こえてきた。

 できることなら暴走癖と虚言癖を抑えまともになってくれることを願う。


 それと同時にジャーヴィン家、チアゼム家の側近交代の情報が飛び交ってきた。

 両家とも本格的に邪魔な寄り子を見捨てる方向で進むのだろう。


 なんせ――



「いよう、ニフェール。

 ちょっと顔貸してくれねぇか?」



 ――やっぱりと言うか、レスト、トリス、カルディアの三人が声かけてきた。


 噂では取り巻きから外されたと聞いていたからもしかしてとは思ったが。



「なんだ?

 愛の告白とかは勘弁してくれよ?」


「いや、それは俺たちも勘弁してほしい」



 トリス、真顔で返すな。

 ボケた側としてはかなり恥ずかしい。




「え?

 ダメなの?」




 カルディア、ボケにボケで返すとは成長したな。

 でも、レストとトリスがガチで引いてるぞ?


 ……ボケ返しだよな?

 ……ガチじゃないよな?



 グダグダになりながらも校舎裏に移動する。

 話を聞くと予想通りの反応が返ってきた。



「フェーリオ様にちょっと聞いてみてくれねぇか?

 急に取り巻きから外されて困ってんだよ」


「外された理由は?」


「わっかんねぇ。

 説明も何も無ぇんだ」




 は?




 理由聞かずに困っている?

 聞けばいいじゃん。



「理由聞かなかったのか?

 話は理由聞いてからだろ?」



 こういうと、三人とも妙に視線を彷徨わせる。

 お前ら、何かやらかしてるのか?



「いやそりゃそうなんだけどさ、言いづらいじゃん」


「なんだお前ら、まさか言えないような何かをやらかしたのか?

 それじゃいくら顔繋いでも無駄だろう」


「いや、そんなことはしていない……はずだ」


「なら、まずは理由聞いてこい。

 そんなこともできない奴を取り巻きにしたがるとはとても思えないぞ」



 レストが頭をボリボリと掻きつつつぶやく。



「ん~、言いたいことは分かるんだが、教えてくれっかな?」


「さあ?

 でも僕が聞いても教えてはくれないだろうね。

 第一誰を取り巻きにするかなんて僕が関われるはずないもの」



 まぁそりゃそうかという雰囲気が漂う。

 全くたかが男爵家三男に何期待してるのやら。



「ちなみに自分たちがやらかした自覚は?

 例えばフェーリオ様の不利になるような行動を取ったとか?

 取り巻きの間で火種となるような行動を取ったとか?」



 三人ともウンウン悩んでいるが思い当たらないようだ。

 まぁ、僕の婚約破棄騒動で悪口言いだしたんだろ?

 悪いとも思ってなさそうだけど。



「正直、自分たちが外された理由も知らない、確認しようともしない。

 この状態で僕が聞いてもフェーリオ様からの評価は下がるだけだと思う。

『こいつら、自分で確認もできないのか』ってね」



 苦虫を噛み潰したような表情をしている。

 だが、そこちゃんとできないと意味ないだろ?



「さっきも言ったけど、まず理由聞いてきな。

 全てはそこからだと思うよ」



 僕の説得に納得したかは分からないが、一応大人しく帰っていった。

 あいつら、多分フェーリオに何も聞けずに消えるんだろうな。



 さて、僕が手紙を実家に出して十日。


 ジーピン家が王都にやって来た。

 しかも全員。


 母であるキャル・ジーピンまで来るとは正直予想してなかった。



 フェーリオから連絡を貰い急ぎジャーヴィン家に向かう。


 案内され応接室に向かうと関係者が大量に集まっていた。


 ジャーヴィン家からは当主であるアラーニ様。

 侯爵夫人であるサプル様。


 ご長男、というか嫡男のシェルーニ様。

 もう何度も会っている三男のフェーリオ。


 そしてフェーリオの姉でアゼル兄の婚約者カールラ様。


 なお、僕とアムルは「カールラ姉様」と呼ばないと拗ねられる。

 呼ぶと性犯罪者顔になるが。



 めっちゃ喜んでますねぇ、カールラ姉様。

 アゼル兄とさっさと結婚から子作りのコンボを決めたいとか言ってたもんね。

 それなのにどっちの親もまだ早いとか言われイラついておられましたから。


 こりゃ、本件収束したらアムルを避難させないと。

 夜が激しそうでアムルの教育に悪い。



「本日、王宮に爵位をアゼルに譲る旨報告いたしました。

 以後アゼルがジーピン家当主として対応することとなります」


「アゼル・ジーピンと申します。

 今後もジーピン家はジャーヴィン家の寄り子として誠心誠意お仕えいたします。

 よろしくお願いいたします」



 父上とアゼル兄の口上を聞き侯爵様、ご長男とも頷き受け入れた。


 ……いや、アラーニ様は少し苦々しそうな雰囲気を纏っている。

 よほど父上の報告がダメだったのか?


 そんなことを思っているとサプル夫人からアラーニ様に声を掛けられた。



「まぁまぁ、これでカールラが嫁ぐ条件は満たされましたわね、あなた?」



「まて、それは今しばし様子を見てからだ!」


「然り然り、そこまで慌てずとも良いではありませんか?」



 アラーニ様、そして父上が結婚の様子見を言い出す。



 失礼ながら……馬鹿ですか、あんたたち。



 父上、もうアゼル兄が男爵なのですからくだらないことで迷惑かけない!

 アラーニ様、ただでさえ結婚待たせられてカールラ姉様に嫌われてるのに。

 まだ嫌われたいのですか?


 そんなことを考えていると、サプル夫人が一喝!



「いつまで様子を見るつもりですか!

 カールラを結婚させないおつもりですか!!

 カールラもアゼル様も乗り気なんですよ?

 それをあなたが邪魔をしているのがまだ分からないのですか?

 だからカールラから嫌われるのですよ!」



 アラーニ様タジタジです。


 ご長男シェルーニ様は……あ、視線逸らした。

 まぁ、お気持ちは分かります。


 カールラ姉様は……めっちゃ怖いです。

 そんな無言でじっとアラーニ様を睨みつけて、父親なのにビビってますよ?



 うちの家族は……あ、はい、怖いのでもう見ません。


 母上、父上のことはそっちで処置しておいてください。

 耳引きちぎる程度ならアリでお願いします。


 アムル、そっち見ちゃダメだよ~。

 今【魔王】と【死神】が降臨しているからね~。



 それからしばし夫人無双の時間が続き……。

 その結果、アゼル兄とカールラ姉様の結婚式を半年後にすることが決まった。


 なお、王都と領地の両方でするそうだ。

 金が飛ぶとアゼル兄の表情が引きつっていたが、些細なことだ。



 最大の懸案(結婚)が整理付いたことで双方の家が皆落ち着き始めた。

 そんなところに僕は空気を読まずに父上に追い打ちをかける。



「父上、ちょっと確認なのですが?」

「お、おぅ、なんだ?」




「アムルが婚約していたことを僕に教えなかった本当の理由をお教えください。

 それと、先日フェーリオ様からマーニ兄に婚約者がいると初めて聞きました。

 なぜ家族の婚約を家族に教えないのかご説明頂きたい」




 ピ シ ッ




 一気に場の空気が冷え切った。


【ジーピン家:国王派武官貴族:男爵家】

 ・キャル・ジーピン:作品開始時点で男爵夫人、出演時点で元男爵夫人、主人公の母

  → ニカルジピン(高血圧の薬)から


【ジャーヴィン家:国王派武官貴族:侯爵家】

 ・アラーニ・ジャーヴィン:侯爵家当主

  → アラニジピン(高血圧の薬)から

 ・サプル・ジャーヴィン:侯爵家夫人

  → アラニジピンの商品名サプレスタから

 ・シェルーニ・ジャーヴィン:侯爵家長(嫡男)

  → シルニジピン(高血圧の薬)から

 ・カールラ・ジャーヴィン:侯爵家長女、アゼル・ジーピンの婚約者

  → アゼルニジピンの商品名カルブロックから

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