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さてさてそんなでジャーヴィン侯爵家に集合する日。
ジーピン家は全員集合しているが、それ以上に「これはなんなんだ?」と言いたくなるくらい女性陣が集まっている。
とはいえ、これでも一部らしい。
一部の時点でジーピン家の人数超えてるのって……。
なので急遽パーティを行うような広い部屋に皆が集まった。
あ、先生方も来てた。
いや、手を振らんでよろしい。
そんなことを考えているとカールラ姉様が話始めた。
「まず、ジーピン家の皆さん。
数日後の裁判についてジャーヴィン侯爵家とチアゼム侯爵家とで情報共有するために集まっていただきました」
ジャーヴィン家はアゼル兄が、チアゼム家は僕から報告してるけど追加情報あるから共有って感じかな?
「また裁判時にニフェールちゃんとアムルちゃんが予定している件について、これ以上ない強力な助っ人たちを呼んでます。
彼女らに協力してもらいニフェールちゃんの作戦を、より高みを目指せればと思います」
こちらを見てにっこりするカールラ姉様。
でもねぇ……。
「カールラ姉様、言ってる言葉は素晴らしいんだけど、内容は女装する際のドレスの選定とそれに合った化粧の検討ってとこじゃないの?」
ザワッ!
「いや、そうなんだけど、ちょっとカッコよくいってみたいじゃない!」
「そこまで皆さんを待たせてどうするんですか?
ただでさえ集合求めた際に『お楽しみ』としか伝えてないんでしょ?
サッサと教えてあげなよ。
我慢できずに暴走されるよりマシだと思うけど」
カールラ姉様がぶんむくれるが、途中であることに気づく。
「ねぇニフェールちゃん?
なぜ手紙の内容を知ってるの?」
「すべては知らない。
けど、とある人物に『明日来るの?』と聞いたら少し教えてくれた。
なお、僕からも詳細は教えてないから十分驚いていると思うけど?」
視線をオーミュ先生とティアーニ先生に向けると「うんうん」と首肯する。
「あぁそうか、二人は教師だから学園で接点持っちゃったんだね。
これはちょっと読みが甘かったかな」
「いや、あまり驚かされても僕も困りますけどね。
ちなみに、情報共有はどうするの?
親世代とアゼル兄あたりでいいのかな?」
チラッとアゼル兄を見ると、捨てられた子犬のような表情をしている。
そんな表情をされると、頭撫でてしまいそうでちょっと困る。
アゼル兄の表情をチラッと見た母上が溜息を付きつつ発言する。
「ニフェール、情報共有はジーピン家全員参加だ。
裁判ではアゼルが主に発言することになるが、ここではお前も入ってくれ」
「了解。
んじゃ、情報共有始めましょうか」
◇◇◇◇
私は何を見ているのでしょう?
私はオーミュ・ルーオン。
学園では歴史を担当してます。
本来学園生のニフェール・ジーピン君がなぜか裁判までの経緯と、その方針を説明されてますわね。
そして、私たちの世代でとても有名な【魔王】がニフェール君に教わり、【女帝】がニフェール君と作戦を話し合われてます。
って、いやいやいや!
普通逆でしょ?
いや、【魔王】が実際はただのぼっちであることは知ってましたけど、これは流石に想像もできませんでしたわ。
隣のティアーニも目をまん丸にして見てますね。
そりゃ驚きますよねぇ。
「え、これが【魔王】の普通なの?」
「あの子、【女帝】とガチで会話出来ちゃうの?」
周りも困惑しているようで小声ですが色々聞こえてきてますね。
その中でティアーニが小さな声でポロっと一言。
「あれ、オーミュさん。
ニフェール君のそばにいる女性、【才媛】じゃないですか?」
え、【才媛】?
嘘、なぜここにいるの?
よく見てみると確かに【才媛】がいた。
確か、私が教師になって最初に指導した学生の一人。
そして学園で初めて三科の試験を受け、卒業時に総合一位(文官科だけ五位、他各科一位)を成し遂げた生徒。
畏敬の念を込めて【才媛】の名を皆が付けていた。
「噂ではニフェール君の彼女だったか婚約者だったかになったと聞いてますから家族扱いされてるんですかねぇ」
婚約者になったの?
現在の学園生で一番面白そうな【狂犬】ニフェール君と【才媛】がくっつくんだ。
「もしかして【才媛】が教えて【狂犬】の成績が上がった?」
「う~ん、付き合ったのがつい最近と聞いてるのでそれは無いと思いますけど?」
となると、あの学力は自力?
確かに【女帝】との会話を聞いていると【才媛】の後ろ盾無くやり取りできているように見える。
もしかしてニフェール君ってジーピン家の異端児?
他の面々があまりにも戦闘全振りに見えるから特にそう思ってしまうわ。
あぁ、弟君はニフェール君側かもしれない。
となると、先に力に秀でた子が生まれ、後に頭に秀でた子が生まれた?
ジーピン家の七不思議とか?
ざっと裁判の方向性は決まったようで、【魔王】がやり取りを暗記しようとしているわね。
裁判対応って暗記でどうにかなるものなの?
そして【女帝】が仕事から解き放たれたかのような晴れやかな笑顔を見せているわ。
同時に【女教皇】が舌なめずりしそうな笑顔になっているわ。
二人とも、傍から見てると変質者よ?
いや、私も少々その気はあるけど、流石に夫や婚約者の前でその顔はできないわ。
私にも女としての誇りがあるもの。
まぁその辺りを捨て去っているから【女帝】やら【女教皇】なんて呼ばれるんでしょうけど。
◇◇◇◇
姉様が(いつも通り)暴走し始めた。
まぁ、これからがお楽しみの時間だから止まれないんだろうけど。
「さて、次は裁判でニフェールちゃんとアムルちゃんが女装した姿で法廷に出る予定なの。
その際の服を選ぼうと思います♪」
めっちゃ嬉しそうですね。
音符記号が目に見える様ですよ。
そんなことを考えていると、オーミュ先生が質問してきた。
「カールラ、とても喜んでいるのは分かるけど、ちょっと教えて。
今回二人が女装するのは犯罪者を捕らえたシチュエーションを理解してもらうためと思ったのだけど、なぜここで服を選ぶの?
捕らえたときの服にすればいいじゃないの?」
おぉ、予想以上にまともな発言!
「あぁ、それは捕らえたときは女性用のパジャマ姿だったのよ」
ゴ ク リ !
え?
皆さん落ち着いて!
そこ生唾飲むところじゃないよ!
「でも法廷にパジャマ姿で入るのは失礼かなと思ったのと、どうせなら着飾らせたいじゃない。
なんで、今回は常識的な装いで法廷に入れればと思ったの」
「なるほど、分かったわ」
え、分かっちゃうの?
「そんなわけで、皆、良さげな装いを提案してくれるかしら?」
直後、一斉に衣装案を叫び出す女性陣。
ゴスロリ? 園児服? ジャンプスーツwithおしゃぶり?
それは流石に無理だ!
ちょっと真面目に考えてくださいよ!
誰だ、バニースーツなんて言ったの!
カールラ姉様も制御できていないようで微妙に慌てている。
ロッティ姉様は……何、そのブラジャー見せてんの?
水着?
そんなの着て法廷連れて行く気かよ!
色々と呆れていると、フェーリオがこっそりこちらに近寄って来た。
「おい、ニフェール。
このままイカれた服装にするつもりか?」
「んなこたない。
とはいえ、どのような服装がいいのか頭に浮かばなくて検討中」
「早めにした方がいいぞ。
ジルもなんか暴走しかけてるし」
「そっちは婚約者が止めろよ!」
「止まるようなら苦労はしてねぇよ!」
いや、全くその通りなんだけどさ。
流石にこの人たちに任せたら最悪全裸で法廷に行くことにもなりかねない。
方向性を僕の方で決めないと!
相手側に罪がありこちらは被害者であるという立場を明確に。
そしてこちら側は……貞淑さ、清楚さ、可憐さあたりを軸に考えてみるか。
それなら相手側の卑劣さと比較しやすかろう。
どうせ、あの男はいやらしい顔してこちらを見るだろうから、そこでこちら側が「いやらしい顔で私を見てくるのです!」なんて言ったら法廷の方々は確実に信じるだろう。
そして――
「ニフェール」
思考の海に深く入り込んでいたら母上が声を掛けてきた。
それと同時に大騒ぎしていた女性陣もピタッと騒ぎが収まる。
「何か考えていたようだが、説明できるか?」
「まだ本決まりではないけれど、概要でよければ」
「あぁ、それでいい。
カールラ達に説明して方向性を示してやれ」
感づいているんですね。
流石母上、【邪神】なだけはありますね。
「簡単に言うと、相手側とこちら側で比較できるような衣装がいいかなと思います。
ここでいう比較は犯罪者側と被害者側。
なので肌を多く見せるようなものは犯罪者側に阿るように捉えられかねません。
こちらの方向性としては清楚・貞淑がメインとなります。
まぁ、可憐とかも追加してもいいですけど」
僕の発言を理解してくれているのか皆首肯してくれる。
暴走収まったの?
「相手側はいやらしい笑みをしたり下卑た視線を送ったりしてくるでしょう。
ならば清楚・貞淑を表に出せばあちらの不快な行動をより目立たせるのではないかと思います。
あぁ、ちなみに、僕とアムルは姉妹の方向で進めようと思います。
で、まずは今の条件を元に衣装の選択を数点お願いできますか?
その中でピンときたもので裁判に赴きたいと思います」
女性陣が頷き、また活発な会話が始まる。
でも、先ほどのような欲望駄々洩れの会話ではなく、ちゃんとこちらから指示した方向性に向かって進んでいるようだ。
「ニフェール、良くやった」
母上がこっそり、小さな声で褒めてくれた。
「先ほどの暴走ではどうなるか不安だったが、うまくまとまりそうだ」
「僕も正直不安でした。
あのままだと最悪全裸にリボンつけて陛下の前に立つとか求められそうで……」
「確かにあの二人ならやりそうだ」
そんなこんなで女性陣が選んだ僕の衣装は二つ。
白基調のドレスと薄紫基調のドレス。
どちらも素晴らしい、だが……。
「薄紫の方にします」
女性陣の半分くらいから怨嗟の声が聞こえてきた。
男性陣がビビってるから落ち着きなさい。
「理由ですが、白基調にすると相手側が勘違いする可能性があります。
具体的に言うと『自分の為にウェディングドレスを着てきた』なんて思われたらショックで寝込みそうです。
そんな気持ちは一切ないという意味も込めて薄紫の方を選びました」
「質問ですが、相手側はそこまでおかしいのですか?」
「誘拐を生業にしている時点で既におかしいですが?
それに加えてこの国の三派閥全ての領地で罪を犯しているのを考えると、僕としては終わってると言わざるを得ません」
恨み節を呟いていた人たちも納得してくれたようだ。
まぁ、自分たちが選んだ衣装が相手を喜ばすものではないということを考えれば文句は言えないのだろう。
さて、次にアムル用の衣装だが、こちらも二つ。
白基調と薄桃基調の二種。
なぜ白基調がそんなに好きなのだろう?
まさか、本気でウェディングドレスを想定していた?
「こちらも薄桃の方にします。
理由は先の僕の衣装と同じです」
なんとなく分かっていたといった感じで今度は特に文句なく受け入れられた。
さて、これで終わりかな?
そんな考えが頭をよぎったところ、カーミラ姉様から無慈悲なお言葉が。
「着るものは決まったので、化粧・衣装を着た上で装飾品を選びます。
ニフェールちゃん、希望ある?」
そうか、まだあるのか。
まだ、あるのか(泣)。
まだ、終わらないのか(号泣)。
「希望と言えるのはないですが、先ほどの清楚・貞淑から外れないようにお願いします。
それとアムルはデビュタント前なので、そこを考慮願います」
「皆、分かったわね!
現時点で持ってきた装飾品からよさげなものを選んでおいて!
ロッティ、ラーミル、お義母様、化粧の手伝いお願いします」
各自動き出すが、僕とアムルはおとなしく座っているばかり。
まぁ僕らが動いたら化粧できないので仕方がないんだけど。
そんなこんなで化粧と着替えが終わったところ、何かフェーリオの反応がおかしい。
「おいおい、僕に惚れるなよ(笑)?」
「いやいや、これマジでヤバいから!
男が堕ちるから!」
「なにバカ言ってんだ?
男堕とすためにこんなことやってんのに」
「俺が堕ちちまうだろうが?!」
「ジル嬢のこと考えてろよ!」
「お前の姿がまぶたの裏に焼き付いて……」
「引っぺがせ!
そんなもの!!」
後日、フェーリオは裁判で起こる問題を(偶然ではあるが)端的に行動で示していた。
敵が堕ちる場合、味方も堕ちる可能性があることを。
具体的に言うと、宰相閣下。
とはいえ、この時点ではそんな未来が起こるなど誰も気づくことなく淡々とフェーリオの頭をはたき、正気に戻そうと画策する。
数発で正気に戻った頃、装飾品も決まり完全戦闘態勢を皆に見せる。
結果、滂沱の涙を流す者が四割。
涙+鼻血出す者三割。
涙+鼻血+笑顔で気絶するもの二割。
襲いかかってくるもの二名。
残りはジーピン家の家族とラーミルさん。
襲いかかって来た二名は……カールラ姉様とロッティ姉様。
二人は母上に叱られていた。
それと教師二名は涙だけで済んでいた。
いや、十分変だけど。
これでやるべきことは全て準備完了。
後は裁判で勝つのみ!
ある程度あだ名が決まったので現時点の一覧を出しておきます。
【緊縛】:アダラー・ジーピン
→ 現時点では王妃とキャルの個別会話時に言われたのみ。
知っている者は現時点で親世代のみ。
息子たちも知らない。
【岩砕】:キャル・ジーピン
※ 人により【邪神】(ニフェール)、【女神】(ラーミル)などあり。
→ 三章-18で王妃との会話からこのあだ名を持つことを気づかれた。
ただし(子供たちが危険回避をしたため)直接聞かれたことは無い。
【魔王】:アゼル・ジーピン
→ 同世代は大体恐怖と共に覚えている。
ただし顔や名前と一致するほど理解している人はあまりいない。
詳細は三章前半で。
【女帝】:カールラ・ジャーヴィン
→ 同世代は大体知っている。
また同様の性癖を持つものは(年代問わず)確実に知っている。
詳細は三章前半で。
【死神】:マーニ・ジーピン
→ 同世代は大体恐怖と共に覚えている。
ただし顔や名前と一致するほど理解している人はあまりいない。
【女教皇】:ロッティ・カルース
→ 同様の性癖を持つものは(年代問わず)確実に知っている。
ただしそれ以外にはあまり有名ではない。
【狂犬】:ニフェール・ジーピン
※ 一部からは【傾国】とも……。
→ 同世代にはそれなりに知られている。
ただし顔や名前と一致するほど理解している人はほとんどいない。
現時点では騎士科と教師、そして当人を直接知っている者位。
【才媛】:ラーミル・ノヴェール(初恋途中までセリン)
→ 同世代にはかなり知られている。
また、学園教師にはかなり知られている。
ただし顔や名前と一致するほど理解している人は当時の教師と淑女科以外いない。
他の科からは一度卒業式で学園長からべた褒めされたためちょっと知られている程度。
珍しく生徒より教師側が覚えているタイプのあだ名。




