16
王都に到着し、我が屋敷で関係者を呼ぶ。
あぁ、ついでに王都の詐欺師ギルド関係者も呼ぼうか。
侍従に指示を出すとそう待たずに皆集まった。
「全員集まったな……うん?
王都の詐欺師ギルド関係者はどうした?」
こちらに引き入れた騎士団第七部隊の……メラムだったか?
そいつに問うと、顔を真っ青にして答えた。
「その……もう詐欺師ギルドは存在しません……」
「はぁ?
何を惚けたことを抜かしておる?!
メラムよ、お主が説得したのではなかったか?」
「はい……ですが、その……。
ギルドの者が集まっていた所は解体現場のようになっておりました!」
はぁ?
解体現場……それ肉のだよな?
ってことは詐欺師ギルドの面々は皆殺し?
「一応お主は騎士団なのじゃろう?
ならその権限を使って何が起こったのか調べればよかろう?」
「ええ、知った当初はその予定でした!
ですが、既に第二部隊の者たちが動いておりまして……。
騎士団長からもこの件についてはあちらの部隊に任せろと言われてました」
……騎士団長は多分王家側なんだろう。
とは言え、ここまで第二部隊に任せっぱなし?
何かありそうだな……。
「……今の第二部隊の隊長は?」
「マーニ・ジドロ男爵ですね。
秋位に入団してきて、いきなり隊長になった人物です」
いきなり?
余程……いや、まさか?!
「答えよ。
まさか、この人物はジーピン家の関係者ではないのか?」
「はい、ジーピン家次男ですね。
情報では違法薬物製造拠点の壊滅に手柄があって騎士となったと聞いてます」
大当たりか……。
となると、第二部隊はニフェールの味方だな。
そう考えると……王都の詐欺師ギルドはジーピン家に壊滅させられたな。
むしろ、ニフェールが壊滅させたかもしれん。
「多分、もう誰も生きて得ないだろう。
王都詐欺師ギルドはいないものとして考えよう。
そう言えば、王都強盗ギルドに声をかけたのではなかったか?」
「あちらも詐欺師と同様に……なお、こちらはもっとひどくて……。
何の情報も得られておりません。
一応団長にも話しましたが、こちらも別部隊に任せろと……」
「なら、皆殺しにあったのだろう。
こちらも存在しないと考えろ。
一応確認だが、騎士はこちらに参加できるんだな?」
流石に騎士誰もいませんとかは言わないだろうが……。
「……侯爵、どこまでご存じです?
第八部隊が解散したことはご存じで?」
「あぁ、そこは情報は得ている。
そして、ラング伯が亡くなったことも聞いている。
……まさか、それ以上の話が出ているのか?!」
もうそんな面倒事は無いよな? な?!
「部隊数は、第八が消えたところからは変わっておりません。
ですが、隊長から連絡あったのですが……。
侯爵がニフェール・ジーピンを暗殺しようとしているの流れてます。
そして、騎士団としてもそれが事実として動いております」
「まぁ、そこらは情報が流れるのは想定していた」
「加えて騎士たちに勝手に休暇を与えた者がいると言われております。
……確実に侯爵は疑われております」
まぁ、その辺はな。
というか、この程度気づかないとそちらの方が不安だがな。
「加えて、ニフェールを狙うのは囮であり本当の狙いは陛下だと」
「ほぅ、誰がそれに気づいた?」
「ニフェール当人です」
……えっ?
「ちょ、ちょっと待て!
本当にニフェールが気づいたのか?
まさか……あいつが暗殺者に狙われているのを報告したのはどいつだ?!」
「……当人です。
そして、陛下が狙われていると報告したのもニフェールです!」
……うっそだろ?
どんな情報収集能力しとるんだよ!
大半の大人より上か?
呆れていると、他の騎士が挙手してきた。
確かこいつ、最近隊長になったんじゃなかったか?
「自分は第四部隊の隊長としてその打ち合わせに参加しております。
メラムの言っていることは全て正しいです。
自分もアイツの発言を聞いて驚きました。
ですが、団長以下かなりの面々が信じておりました。
それと、どうもアイツの情報は副団長と同じ情報源のようです。
今回は暗殺対象当人なので最速で教えてもらったとか……」
マジか……。
その発言が真実ならば、騎士団の情報源と同等の伝手がある。
加えて、今までの噂の半分でも真実ならば……ワンマンアーミー?
待て!
まさか、ここまで情報収集できるのなら、東部を使ったことも把握している?
「東部暗殺者ギルドの者よ、確認したい。
東部でこの話を聞いてから今までを説明せよ!」
まさか、王都の犯罪者ギルドとニフェールが手を組んでいたら……。
こいつらを使えば使うほど情報が洩れる?
それどころか、騎士団の情報源も犯罪者共から聞いているとしたら?
王都の重要な情報はニフェールに届いている可能性があるな。
今日わしが到着したことも知ってるかもしれんな。
東部暗殺者ギルドの長、オピエというらしいが一通り説明させた。
正直説明下手で理解がし辛いが……。
東部で依頼を受けた後、事前に王都に向かわせた部下から参加を止められた?
王都に来てこちらの者と話して許可を得られなかった?
ニフェールと王都のギルドとの間で不戦協定を結んでいる?
予想より悪いじゃねえか!
つまり、こいつら既に監視されてるな?
多分王都の犯罪者共と話した時に張り付けたんだろう。
泳がせておいて情報集めてるか……既に裏切ってるか?
いや、この長自身はそこまで頭は回ってないようだ。
となると東部が皆愚かなのか、もしくは……部下が裏切っているか。
下手に指摘すると即刻ヘソ曲げそうだな。
当人が勘づくように……無理そうだな。
なら、報酬で釣るか。
愚かなら確実に味方になるし、裏切り予定なら金で転ぶ奴もいるだろう。
「ふむ、大体理解した。
王都側は一切こちらと手を組む気はないということだな。
となると、お前たちには頑張ってもらわねばならんな」
「ええ、ですがそろそろ狙う相手をお教えいただけませんかねぇ?
本当にそのガキなんですかい?
それとも当人は囮で本当は陛下ですかい?」
「……ニフェールは囮で本当の狙いは王家の血を引く者だ。
対象は国王、王妃、王太子、王太子妃、第二王子。
加えて、大公家・公爵家。
それと侯爵家が複数だな。
それぞれの血を引く者を可能な限り殺したい」
「ひぃ、ふぅ……人数的に無理ですね。
狙う人数が東部を出る前に分かっていても、人数が足らねぇ。
第一、相手が馬鹿じゃない限り数名殺したら逃げないと、こちらが捕まりやす。
優先順位は?」
「陛下、王妃、王太子、王太子妃、第二王子。
ここまでは必須だ。
その後は大公家の人物、最低でも大公当人だな。
それ以外は余裕があれば狙え」
王家の血が濃い者を優先して消せばよかろう。
「あぁ、それと同時にニフェールも狙っておけ。
ニフェールと陛下が最優先だ。
囮とは言え殺して構わん」
「……まぁ、人数的には可能ですな。
後はどれを狙えばいいのか指図できる人物を用意してくだせぇ。
こちらじゃ大公やニフェールの顔なんて知らねぇんで」
「それは一人お前らにつけよう。
そいつは顔を見定めることしかできんから、暗殺の手伝いは期待するなよ?
加えて北部詐欺師ギルドよ。
そなたらも王都で混乱を起こしてもらおう。
適当な所に火を付けて、火事だと騒げばいい。
可能な限り色々な所で実行しろ。
双方、報酬だが……」
大体通常の三倍ほどの報酬を提示した。
これで退くとは思えんし、仮に裏切り者がいても戻ってくるか分裂するか。
後者なら……消させるか。
まぁ、この場に参加している者たちは確実に仕事するだろう。
目の色が変わっているしな。
後は騎士共か……。
そう言えば、第一部隊の方で対応している修道院で何かあったかな?
「騎士たちよ、修道院の方で何か話はあったか?」
「……ラング伯が亡くなられた辺りに暗殺者共が制圧されてますね。
牢に入った時点ですぐに毒を飲んだようで何の情報も得られてないはずです。
ですが、その時に対応していたのが第二部隊とニフェールでした」
またかよ!
いや、確か依頼してきたトリアルク家。
あそこの娘がニフェールに助けてもらったんだったな。
なら関わっても仕方ないのかもしれん。
「そこで何もバレてないんだな?」
「最低限、あの場で何かバレたかのような反応はありませんでした。
余程うまく隠したのかは判断付きませんが」
「確か、暗殺者と強盗で見どころのある奴らに入れ墨を入れてなかったか?」
「それもバレてないと思います。
こちらで調べた後にニフェールの部下が見てましたが、見つけられなかったと」
なら大丈夫か。
現時点で騎士はまだ安心してみてられそうだ。
となると厄介なのは借りた人員か。
北部詐欺師共は特に問題ないだろう。
やはり東部暗殺者か。
「実行日は建国祭でのパーティの日。
各自実行に必要な物があればそこの侍従に申し出ろ。
特殊な物はすぐには確保できんからそのつもりでいるがいい。
準備ができたならば自由にしてくれていい。
この屋敷から外に出ることは許さんがな」
「何故だ!、いや、何故です?!」
……こいつ、本当に大丈夫か?
東部の奴らって皆こんな奴しかいないのか?
確かにディーマス家も愚か者の集まりの様な一族だったが……。
領地の民にまで伝染してないか?
「貴様らは王都の犯罪者ギルドどもから狙われているのではないか?
下手に歩き回ったら、この地の暗殺者に狙われると思うがね。
王都の者たちから言われなかったか?
この街で仕事するのを禁ずるとか?」
「あ……」
やっぱりこいつ信用できないな。
「一応言っておくが、そちらの部下たちにもちゃんと指示しておけよ?
勝手に動き回った挙句、屋敷内に死体が量産されるなんて望んで無いからな?」
「あぁ、気を付けやす。
ちなみに、毒を確保することはできやすか?」
毒? まぁ、そりゃこちらで製造しているからあることはあるが?
「触れたら即死とかいうタイプは無いぞ?
とは言え、体内に入ったら心が壊れ、数日中に死亡するのはあるが?」
「それ、液体? 粉末? それとも他の形ですかい?」
「粘りのある液体……ゼリー状といえば通じるか?
武器に塗ってもよし、飲み込ませても良し。
お湯に溶かせばわずかに臭うが今まで気づかれたことは無いな。
紅茶とかならバレないはずだ」
「あぁ、それをくだせぇ。
投げナイフや吹き矢に塗りやすから」
「分かった、前日でいいな?」
「ええ」
ふむ、こいつらは食事や飲み物への仕込みはしないようだな。
となると……。
「騎士たち、配置は決まっているのか?」
「どこに配置されるかはまだ決まってません。
とは言え、ある程度は推測できます。
最低限調理場、食事を運ぶルート、パーティ会場とそこに至るルート。
そして王城の門でしょうか。
そこらを抑えれば暗殺は無理でしょうし」
まぁ、そんなところだろうな。
「あちら側も暗殺者が来ることを想定するでしょう。
ですが、騎士が少ないことは把握しているはず。
なら可能な限りパーティ会場を固く守り、他は諦めるかと。
王都の方は衛兵たちがいるので放置を選ぶでしょうな。
それ故、推測ですが王城の門までは侵入することは可能でしょう」
「そこからは難しいと?」
「北部騎士の多い部隊が門から会場へのルートを確保できれば、後は実力次第。
そのルートを確保できなければ侵入はかなり難しいと思われます」
ふむ、確かにな。
なら……。
「確か第一と第七について隊長格は陛下に忠誠を誓っているな?」
「ええ、とはいえ第一は触れない方が良いかと。
最近どうも隊長のラクナが部下に不信感を感じているような感じがします。
もしかすると勘づき始めてるやもしれません。
また第七がかなり脳筋タイプなので、こちらの方が騙しやすいと思います」
「なら、第七が会場へのルートを確保できるように働きかけよ。
そして調理場は陛下側の部隊に割り振ればいい。
どうせ食事に毒を盛る気はない。
なら、そちらに割り振っておけば他が手薄になる」
これで、門と会場に入るルートは確保できる。
後は暗殺者共の実力なんだが……これ自体は確認しようが無いな。
……バックアップの名目で騎士を暗殺者に紛れて配置してみるか?
もしくは騎士共に暗殺者のふりをして参加させるか?
「暗殺者よ。
提案だが騎士たちがパーティ内で混乱を起こさせたら狙い易くなるか?」
「混乱の内容によりやすが……逃走したくなるような事態は勘弁してくだせぇ。
それされると標的の動きが読めなくなりやすんで」
「なら、王都の火事の情報が入ったとかだとどうだ?」
「王宮が火事ならともかく、王都での火事では混乱は起きないでしょうね。
自分たちに直接の被害はありませんし。
……とはいえ、火事の報告を陛下にするのはお願いしたいですな。
その時は皆報告する者に視線が集中しやすから狙い放題なんで」
「……分かった、ならばこちらで陛下に伝令を送る。
そのタイミングで襲撃せよ」
これで一通り準備完了か?
後は当日を待つだけだな。




