14
チアゼム家に戻り皆に情報を展開する。
「はぁ……暗殺者ギルドってこんな奴しかいないのかしら?」
「ルーシー、カルを見てからもう一度言ってみ?」
「はぁ……暗殺者ギルドってこんな奴しかいないのかしら?」
ルーシーがチラッとカルを見て再度同じことを寸分違わず言い切った。
「ルーシー、それってどういう意味で?
暗殺者を纏める人物として?
それとも男女の関係のヘタレっぷりで?」
「決まってるじゃない、どっちもよ」
手加減無しの宣言に凹むカル。
いや、まぁ、ルーシーの気持ちも分かるけどさ。
「まぁ、そのあたりは二人きりの時に話して欲しいな。
んで、本日夜に僕とカルで長の集まりに参加してくるけど……ルーシーも来る?
多分受け入れてもらえると思うけど?」
「……ん~、一応行っとこうかしら?」
その割には微妙にウキウキ感が出てるけど?
ラーミルさんもナットも気づいているな……って、カリムとティッキィもか?
あれ、もしかしてカルだけ気づいてないの?
「カル、そういうとこだぞ?」
「どこだよ!」
「いや、これはニフェール様の発言が全てだ。
カル、そういうとこだぞ?」
「ティッキィさんまで!」
僕とティッキィの指摘も分かってないようだ。
「というか、未だに分かってないのもいつも通り……なんですよねぇ」
「あはは……」
カリムとナットがフォロー……になってねぇ!
ラーミルさんもどうしようか困っていらっしゃる。
「カル、このコメントの説明はしない。
ここは自分で気づかなければいけない類のものだ。
お前が気づくのを待とうと思う。
できれば早めに気付いてほしいがね」
「……そういう言い方するってことは、いつもの早くくっつけネタか?」
ネタって言うなよ、ルーシーから危険な雰囲気が漂ってくるんだが?
「これ以上は言わない。僕も命が惜しい。
それはともかく、この後ジャーヴィン家の方に行って情報共有してくる。
終わったらこっちに来るから」
「あ、あの、一緒に行ってもいいですか?」
デ ヘ ッ ♪
おっと、ラーミルさんからのお誘いで頬が緩みかけたな。
気を付けないと。
「構いませんよ。
カル、ルーシーに説教されとけ。
カリムとナット、二人は放っておいて普段の仕事を続けて。
ティッキィ、往復の御者頼んでいいか?」
「あぁ、構わんよ」
サッサとカル達二人を除いた面々は行動開始。
直後、弱い殺気が!……ってルーシーか。
まぁ、この位なら精神的なダメージだけだろ。
「いつまであんな感じなんだろうなぁ……」
「ティッキィ、以前も言ったろ?
急ぎたくてもカルの鈍感癖をどうにかしないと……」
「だけどなぁ……。
このままだと他三組が結婚してあいつらだけ残ってるなんてありそうだぞ?」
「やめてよ、一番可能性高そうな未来なんだから……」
僕の部下たちの不安を解決する策を三人で考えるけど思い浮かばず。
そのまま馬車に乗ってジャーヴィン家へ。
「……マジか」
アゼル兄に報告すると、呆れつつも話を聞いてくれた。
ちなみにマーニ兄とロッティ姉様以外の関係者全員がここにいる。
「ということは、今お前を狙う暗殺者部隊が既に王都にいると言うことだな」
「うん、でも側近に裏切りを提案しておいた。
基本的に今回の暗殺が危険で罠にしか見えないという人たちだった。
情報はちゃんと流してくれそうだったよ」
「再度裏切る可能性は?」
まぁ、あるだろうね。
そこはどうしようもない。
いくらでも金で転ぶ可能性はあるだろうし、こちらの危険性は知らないからね。
「無いとは言えないかな。
こちらを見捨てるとしたら……膨大な成功報酬位?
もしくはとてつもない権利が入ってくるとか?
王都の暗殺者ギルドを任せるとか?」
「まぁ、そのあたりか。
何人くらいいたんだ?」
「十人前後。
それと、もしかすると他にも怪しい奴らを呼んでるかも。
暗殺じゃなくて王都を混乱に陥れるための人員って感じかな」
そう言って、想定される王都の混乱を説明する。
「……面倒な。
騎士が全員味方なわけじゃないから確認を頼むわけにもいかない。
となると、王都周りの鎮圧は難しいか」
「うん、なんで今日の夜に長が集まって話し合いの予定。
ここで何とか協力してもらえればって」
「戦闘は無理じゃないか?」
「そっちだったら諦めるけど、例えば放火だったとかなら止めれるよね?」
「……なるほど、殺し合いじゃないなら協力可能かもってことか」
そうそう、そんな感じ。
「ついでに自分たちの街が危険に晒されるのを防ぐって、やる気出てこない?
『自分の家族を、財産を守ろう!』とか煽れば協力頼みやすそう。
まぁ、こういうノリが苦手な人もいるだろうけど、そこは正直運任せかな」
「ん~、その人次第だなぁ」
「まあね。
でも、商業や生産辺りは乗ってきそうな気がするんだよねぇ。
自分の店の価値を上げれそうだし」
……アゼル兄、分からない?
チラッと見ると、カールラ姉様とラーミルさんは感づいたみたい。
母上もか。
父上とアムルはダメっぽいな。
「例えば、放火に気づいて未然に防ぐ。
それを噂の形で喧伝する。
例えば、『本当にお宅の店で放火を止めたの?』って聞かれる。
そこで、『その通り、安心して買い物してもらうためにも放火は許さない!』。
そんな感じの事宣言したら、何もしなかった店と比べて信用って増さないかな?
何かあった時に助けてくれる店って認識は金じゃ買えないと思うんだよね」
あれ?
女性陣は納得してるけど、男性陣はなぜヒいてるの?
「……お前が文官になった後に王国がどうなるか恐ろしいんだが?」
「クズな貴族がこの世から消え去るように頑張って仕事するつもりだけど?
この程度のやり取りなら勘のイイ商人ならすぐ気づくよ?」
いや、だからそんな怯えんで欲しいんだけど?
「助けることで信を得て、未来の味方を増やすって考え習わなかった?
領主科や淑女科で学んでるはずだから父上とアゼル兄は分かるはずだよ?」
僕の発言に頷く淑女たち。
目を逸らす領主経験者たち。
目をきらめかせる学園生未経験者。
学園生の時に真面目に学んだかどうかが反応の分かれ目かな?
「母上、頷く方だとは思ってなかったよ。
勉強苦手かなと思ってたんだけど……」
「流石にお前やラーミル、カールラと比較されたら得意とは言えないねぇ。
とは言え、恥かかない程度には点数取ってたしね。
そうじゃなきゃ領地を富ませるために夫に力を貸すなんてできないじゃないか。
特にアダラーは勉強並程度だったからねぇ……」
「あ、やっぱり?
父上は勉強苦手なのは何となく想像つくんだけどさ。
具体的に言うと以前のアルクたちへの対応」
あれは勉強ちゃんとしてなかったのか、学園生の頃の勉強すっかり忘れたのか。
どちらにしてもダメダメだったんだろうなぁと思ったけど。
「あぁ、アダラーは卒業できればそれでいいという考え方だったからねぇ。
むしろ、アゼルがアダラーと同じ反応するのは驚きだったんだが……」
「あ、それは僕も思った」
母上と二人でジッと見つめると、なぜかモジモジし始めるアゼル兄。
何、言えないことなの?
そんなことを考えていると、カールラ姉様のフォローが。
「お義母様、ニフェールちゃん。
何となく言いたいことは分かるのだけどね。
単純に得意不得意の問題なのよ。
アゼルは法とかはそれなりに頑張ったのよ?
だから以前の対応でも刑法とかそれなりに理解できてたでしょ?」
「うん、だからこそ驚きだったんだけどさ」
「でも、政治とか経済とかの方はあまり得意じゃないの」
あ……もしかして罪の判断や裁判とかは問題無し。
戦闘能力も相まって領地の治安は文句なし。
でも、領内発展や他領とのやり取りとかは苦手。
どころか顔見て怯えられるから……。
「何となく分かった。
まぁ、今の領内で言えば特に問題も無いか。
姉様が差配するだろうし。
でも、今後はキツイかも……」
「あら、何で?」
「現在子爵でディーマス家のやらかしの対応で評価上がってんじゃないの?
来年の今頃には伯爵へ陞爵とか言われても驚かないけどなぁ。
だって、結婚式で陛下をお守りしたって結構凄い事だと思うよ?
そうなると、姉様に任せっぱなしは流石にまずくない?」
「「……」」
「そこ、夫婦そろって黙らない!」
唖然とした表情をした後、デレッデレの表情に変化するの早すぎ!
「第一、今のこの国で信を置ける貴族ってどれだけいるの?
そして、きちんと国を、陛下を守ろうとする人は?」
「いないとは言わないけど少ないわねぇ……」
「でしょ?
それにジーピン家って、領地持ちの中ではかなりの有望株だと思うけどなぁ。
なんせマーニ兄が第二部隊隊長だし?
僕がそこかしこで面倒事潰してるし?
ついでにアムルがこのままいけばフィブリラ嬢とくっつく。
つまり、王家との繋がりが強固になる。
僕が陛下なら両侯爵の次位の立ち位置に押し上げておくけどね」
アゼル兄が領地持ち貴族、マーニ兄が騎士団、僕が文官、アムルが王家と婚姻。
どう考えても各方面において、味方にしておきたい面々じゃない?
なら爵位ばら撒いて手放さないと思うなぁ。
「確かにそうですわね。
となると、今回のディーマス家の件で伯爵に届くのでは?」
「ええ、その可能性は高いかと。
ただ今回は子爵に陞爵しているので、早くて来年に伯爵かな?」
ラーミルさんと起こりうる未来を話していると、慌てるアゼル兄。
落ち着いてよ、ほぼ確定の未来なんだから今更騒いでも無駄だって。
「……面倒なの嫌いなのに」
「諦めて。
他貴族があまりにもダメダメだから相対的に僕たちの評価が爆上げしてるの。
まともな貴族が増えたら楽できるのかもしれないけどね」
「楽できるのは何時頃だ?」
「僕たち皆寿命を迎えたくらいかなぁ……」
「勘弁してくれ……のんびりした領主生活が崩れていく……」
「でも、動かないと国が滅びそうだしねぇ。
北部が喧嘩売ってるし」
「あぁ、そっちもあるんだよなぁ……」
アゼル兄の悲しそうな表情に僕はフォロー出来そうにない。
気持ちは分かるしねぇ……僕ものんびり暮らしたいよ。
というかカールラ姉様、何ヨダレ垂らしてんの?
珍しいシーンご馳走様です?
おかわりください?
あげませんよ?
話を終え、夕食を家族で食べる。
なお、ラーミルさんも家族の範疇。
異論は認めん!
そのままチアゼム家に戻り、今度はカルとルーシーと共に娼館へ。
なお、カルの左頬が少し赤い。
ルーシーに引っ叩かれたか?
追及はしないでおくけど、そろそろ鈍感癖直そうな?
娼館ギルドの会議室に向かい、少し待つと全員揃う。
婆さんから指名され最近の状況を一通り説明すると……皆呆れてた。
ちなみに、まだ王宮側の情報は流していない。
北部と東部の説明までだ。
「なぁ、北部って頭の中空っぽなのか?」
スリ担当のアゴラ殿の発言だが、皆同じ認識だと思う。
なお、空っぽか胡桃並みの大きさなのかは意見が分かれると思うけど。
「北部の暗殺者と強盗は完全に北部の貴族に取り込まれてるんだろうねぇ。
だからこそ各地域間の約定も簡単に破るのさ。
貴族が守ってくれると思っているんだろうね。
すぐに見捨てられるのに」
まぁ、正直テュモラー家が細かく面倒見るとは思えないしねぇ。
使える間だけ使うってだけでしょ?
「今の話から分かると思うけど、あちらは貴族の手下に成り下がっている。
そして、現時点で東部を経由して王都で暗殺を行おうとしている。
この依頼も約定違反なんだけどねぇ。
いくら言っても聞かないんだろうさ」
「一応確認だが、北部全部がその状態なのかな?」
カジノ担当のアルツ殿が質問してきた。
そんなこと無いはずだけど、どうしたんだろ?
気になる所でもあるのかな?
「何となくだけど、娼館・商業・生産は関わって無さそうだねぇ。
詐欺師は分からないけど、取り込まれてる可能性はあるねぇ」
「やっぱりそうか……最近向こうのカジノ担当から変な手紙が来てね。
王都でのカジノ経営について教えてくれって連絡が来た。
正直何を今さらと思ったが、一応ちゃんと返信したら次の手紙が……」
「よほどひどい話が来たのかい?」
「儲けを増やすためにカジノ部門で手を組まないかって言われたよ。
どんなイメージしてるのか分からなかったんで説明求めたんだが……。
訳の分からない返信が送られてきてね。
あまりにも遠回り過ぎて何を書いてるのか全く分からなかったよ」
遠回り過ぎて分からない?
なんだそれ?
「あの……理解不明でも結構ですから、書かれていたまま言うこと可能です?」
挙手して聞いてみると、困惑しつつも答えてくれた。
「ん? ああ、そりゃ一応言えるが……確かこんな感じだったな。
『一つの街なんて小さいとこで稼いでも限界がある。
もっとグローバルに。
そして独自性を高めてブルーオーシャンな仕事をしないか?』」
……なんだそりゃ?
ルーシーを見ても困惑の表情を崩せない。
まぁ、この単語だけで理解出来たら心を読めるかキチガイか?
「単語それぞれは何となくわかるんだ。
だがそれを一つの文章で纏められるとなぁ。
途端に訳分からなくなってしまったよ。
それどころか相手の想定しているイメージが全く分からん。
ニフィだったな?
お前、この内容の言ってること分かるか?」
無茶振りにもほどがあると言いたいが、とりあえず考えてみようかねぇ。
「最初の一行目はそのままでしょうから二行目以降からですね。
グローバルとかブルーオーシャンでしたっけ?
簡単にまとめるとこの国内、そして他国まで手を伸ばそう。
他で聞いたこと無いようなことやってみよう。
周りに邪魔者のいないうちらだけが儲けを独占できる仕事しよう。
こんな感じでしょうか。
でも、ほとんど意味無い単語ですけどね」
「本気で翻訳できるとは思ってなかったが、そういう意味だったのか……。
確かに意味無い単語だな」
「ええ、なんせ最初の国内のカジノ全部自分たちのものにする。
これ、各地に分かれているとはいえ全て詐欺師ギルドの管轄ですよね?
その土地で稼いだ金はその土地のギルドが確保すると言う形ではありますけど。
既にクリアしてません?」
「だなぁ。
他のも同じか?」
「うちらだけで儲けを独占。
これも詐欺師ギルド以外でカジノやってないですよね?
残るは独自性ですが、そんなの簡単に出来るわきゃ無い。
それにそのゲームを広め、客が不満を持たずにカジノ経営側に勝たせる。
そのシステムは色々考えた上で取捨選択した結果、今のカジノがあるのでは?
新しいもの好きなのかもしれませんが、考えなしって感じですね。
まぁ、乗っ取ってしまえば同じなんでしょうけど」
「やっぱりそうか。
となると詐欺師も取り込まれてるな。
まぁ、だからこそキンスンの馬鹿が尻尾振ったんだろうがな」
あぁ、あいつですね……って、まさかこの言葉に惹かれたの?
え、それって終わってない?




