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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
4:学園風景
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4

◇◇◇◇


 本日の授業が終わったところで法律のティアーニ先生から呼び出しを受ける。

 提出物は一通り出したはずなんだが、忘れ物でもあったか?



「ああ、法律の話じゃなくて、今日の剣術授業の件で聞き取りなの。

 別に叱責とかじゃないはずだから軽い気持ちで教えてくれると嬉しいな♪」

「はぁ……」


 

 ちょっとノリが合わなそうな雰囲気を感じたが、一通り説明を始めた。


 プロブ、ウィリアム先生との話を説明したところでティアーニ先生の眉間にしわが寄る。


 

「それでウィリアム先生は授業途中放棄していなくなったと」

「ええ、僕とプロブの試合が最後だったようなので皆で後片付けして解散しましたが、不味かったですか?」

「いやいや、むしろ後片付けまでちゃんとやってくれて助かるわ」



 そう言うとティアーニ先生は思考の海に潜りこんでしまった。


 ……こちらの想像以上にヤバいことになってる?

 本来教師としての職務放棄だしなぁ。

 プロブの方も非常識な賭けをしようとしただから何か言われるかもしれない。


 覇気ぶつけたのは……どうなんだろう?

 試合で覇気使用不可とか言われた記憶ないし、その後の脅しもプロブが事前に性犯罪まがいの事していたという前提があるからなぁ。

 

 そんなことを考えていると、ティアーニ先生が現実に戻ってきたようだった。


 

「正直予想より面倒だけど、とりあえずは分かったわ。

 ニフェール君には不利益はほぼ無いから安心して♪」

 

 

 ……ほぼ?

 

 

「もしかして『全く問題なし』と言わなかったの気にしてる?」

「えぇ、まぁ……」



 そりゃそうでしょ?

 法律担当のティアーニ先生がわざわざ「ほぼ」なんてつける位だもの。

 こちらにそれなりに問題ありと判断された?

 


「ニフェール君は問題ないわ。

 問題あるのは教師側なのよ。

 それもウィリアム先生が職員室に逃げ帰った後に起こった出来事」


「……もしかして、兄たちが関係します?」

「……分かっちゃうよね、やっぱり」

「……ええ、まあ」



 二人で一緒に溜息を付く。

 


「詳細は省くけど、教師――特に戦闘実技系教師の中にあなたのお兄さんたちが学園生だったころに同学年だった人たちがいるの。

 ウィリアム先生もあなたの次兄……マーニさんと同学年だったのよ」



 はぁ、だから怯えてたと?


 

「で、何故か同学年だった者たちはお兄さんたちを目の敵にするの」

「勝ち目も無いのに?」

「えぇ、どう見ても嫌がらせの範疇から出ていないわね」



 二人で一緒に溜息を付く(二度目)。


 

「で、ニフェール君があの二人の弟と知って厳戒態勢を取ろうとしたの。

『要監視対象――ブラックリストみたいなものね――に入れてしまえ!』って大騒ぎしていたわ。

 ちなみに、私たち――実技以外の教師――の方で止めました」


 

 ありがたいです。

 ほんと~にありがたいです!


 

「で、教師側の詳細はこれ以上説明できないけど、ニフェール君に影響するようなことにはならないように先生方も動いているから。

 まぁ逆に一部の先生方が邪魔しているから『教師を信じてね』なんて口が裂けても言えないけど」


「理解できます。

 とりあえず気にせず普段通り生活しますよ」

「そうね、試験変更しているんだから面倒事を背負う時間なんてないはずだしね」



 そうなんですよねぇ。

 そっちも大忙しなのに……。


 

「おっしゃる通りですね。

 そっちに注力しますよ」


 

 コンコン


 

「ん?

 はい?」

「失礼、こちらにティアーニ先生はおられますでしょうか?」


 

 僕が扉を開けるとオーミュ先生がそこにいた。


 

「あら、ニフェール君」

「ティアーニ先生ならこちらにおられますよ」


「あ~オーミュ先生。

 どうしたんですか?

 ニフェール君への説明ならつい先程終わりましたよ?」

「なら職員室に集合よ。

 上の方から指示があったわ」


 

 上?

 学園長かな?

 まさかもっと上……っていと高きお方?


 

「了解で~す。

 んじゃ、ニフェール君とのお話はこれにて終了よ」

「はい、では失礼します」



 教室を出て先生たちと別れるとそのまま図書室に向かい勉強を始める。

 夏季試験で少しでも点を取れるように。

 

 

◇◇◇◇


「さてオーミュ先生、報告をお願いします」


「はい、ウィリアム先生たちについては教師としては懲戒の対象となりました。

 ただし教師ではなく校務員としてであれば継続して雇うということでした」



 校務員となると学内の清掃、備品管理などの裏方仕事が主な仕事となる。


 それも今いる学園生からは憐れみの表情を向けられて仕事を続けられるとは正直思えない。

 むしろさっさと逃げ出すんじゃないかな?


 私――ティアーニ・二ータは陛下の裁定を聞いてそんなことを考えていた。

 

 というか、今回のやつらがどうなろうと正直どうでもいいけど、あんまり迷惑かけないで欲しいのよねぇ。


 ニフェール君って【女帝】のお気に入りでしょ?

 それに加え【女教皇】のお気に入りでしょ?


 悪い子のはずないじゃん。


 そんな子だったら二人ともお気に入りにしないよ?

 あの二人、ろくでもない男どもを躱すことにかけては神ってるからねぇ。

 

 それに加えて、最近入った情報だと【才媛】の彼氏だっていうじゃん?

 あれ、婚約者だっけ?


 まぁどっちでもいいや。

 

 あの【才媛】が。


 頭もガードも固すぎて男性とイチャつくなんて誰も想像できなかったあの【才媛】が。


 どこかの後妻に収まったら処女膜が鉄板にランクアップしたあの【才媛】が。


 ガチで堕ちたっていうじゃない?


 

 そりゃ見たくもなりますよねぇ(笑)。

 

 で、どんな子かと思ったら騎士科で一番成績の良い子だった。

 いや、あの子=ニフェール君というのはちょっと想像つかなかったなぁ。


 だって【女帝】から聞く限り【魔王】は成績悪くはないけど中の上くらい?

 ついでに【死神】は中の中くらい?


 その弟だから成績には期待していなかったんだけどねぇ。

 オーミュ先生と一緒になって、驚いたのを思い出すわぁ。


 ちなみにオーミュ先生はというと「顔の怖さをとても減らした【魔王】」とか抜かしてましたね。

 確かに【死神】を見たことある者としても同意見ではありますけど。

 

 

「……という訳で、スティーヴン先生の方で当人たちに宣告お願いします。

 後今回馘首となる者以外の実技指導担当の先生方、急ぎ担当と時間割の調整をお願いします」


 

 おっと、そろそろ終わりのようですね。

 なら夏季試験の準備を進めておきますか。

 

◇◇◇◇


 さて、ティアーニ先生からの呼び出しから数日後、夏季試験が始まった。

 

 クラスごとに呻き声や泣き声が聞こえる教室からさっさとおさらばし、楽しい楽しいお昼時。


 フェーリオたちと合流していつも通りの昼食。

 おのずと夏季試験の手ごたえの話題が中心となる。


 

「フェーリオはどうだった?」


「領主科の方はいつも通りだな。

 文官科の方はやはり算術が厄介すぎる。

 いや、春季試験で叩きのめされた経験から甘く見ていたつもりは無いんだが、それでもまだまだ勉強が足りないようだ」


「法律は?」

「そちらはまだ何とかなった。

 とはいえ、文官としては今のところ中位が限界のようだ。

 お前はどうなんだ、ニフェール?」


 

 なんか、期待してない?

 具体的に言うと半泣きになってフェーリオに泣きつくとか?


 

「領主&淑女科の試験は予想よりは点数取れたんじゃないかな。

 国語や歴史なんて違いはほぼ無いし、地理や地学、植物学は騎士科の方が覚える量が多かったし」

「え、そうなの?」


 

 フェーリオだけでなくジル嬢たちまで含めて皆驚いている。


 とはいえ、騎士科の者が試験変更することは稀らしいから情報が無いんだろうなぁ。

 軍務として詳細な情報が必要な科目は僕の得意分野だしね。


 

「とはいえ、算術と法律、それと礼儀作法や政治経済は正直きつかった。

 それと外国語もだな。

 多分この辺りは四割いかないかも」


「そうか……文官科の方は?」

「あっちも状況は変わらないな。

 先程説明した通りで、多分算術はほぼ零点だろうな。

 それと、驚いたのが文官では『管理業務』って科目があるんだね」


 

 フェーリオは「あぁ」と呟いた後、ブツブツ言い出した。


 

「あの科目は領主科ではうっすらやっただけだったからなぁ。

 あそこまで細かくやるとは想定していなかった」


「え?

 あれ、騎士科で『兵站初級』って科目で習ったよ?

 在庫管理するのに同じような手口を使っているし、現場と後方との情報のやり取りの管理とか似てるんだよね」


 

 フェーリオ、そしてジル嬢は目を丸くしてこちらを見る。


 

「マジかよ」


「マジマジ。

 なんで、管理業務だけは多分高得点取れそうだった。

 ただ、あれって”初級”とかつくタイプの科目かなと思ったんだけど。

 違う?」


 

 フェーリオの側近である文官科の人に聞くと、驚かれつつも答えてくれる。



「あ、ああ、その通りだ。

 春季、夏季で”初級”を学び、秋季、冬季で”中級”を学ぶ予定だ」


「あら、完全に『兵站』と同じだね。

 こっちも同じパターンで学ぶ予定だよ」


 

 ジル嬢がなんか黙っているなと思ったら、突拍子もない提案をしてきた。


 

「フェーリオ様、ニフェール様、それ以外にも試験変更されている方おられましたら、次回から一緒に勉強しませんか?

 それとフェーリオ様、次回から追加で試験変更しませんか?」


「……俺たちの騎士科に対する認識を改めた方がいいということかな?」



 ジル嬢は頷き話を続ける。


 

「ええ、今まで私は騎士科で学ぶのは淑女科以下の内容だと思っていました。

 ですが、今の『管理業務』と『兵站』。

 この類似性は無視するには大きすぎますわ。

 先ほどまで騎士<領主&淑女<文官の順で知識量が増えると思っておりました。

 でも今の話を聞く限りでは三科で内容が絡み合うような気が致します」


「だろうね、そうじゃないとニフェールがいきなり『管理業務』を高得点取れるなんて言い出さない。

 だって算術では予想通り苦労しているんだから。

 となると、文官科と騎士科で高い類似性を持つ教科がある。

 それどころか、領主&淑女科だけその教科に触れていない可能性がある」


 

 全員が沈思黙考し始めた。

 

 

「これ、試験変更できる実力があるのなら三科すべて取った方が得ってことでファイナルアンサー?」



 フェーリオ、なんだよその「ファイナルアンサー」って?

 領主科のネタか?


 

「多分合っていると思いますわよ。

 ただ、確実に苦労するでしょうから覚悟は必要でしょうけど」



 ジル嬢、分かっちゃうの?

 淑女科でも通じるネタなの?


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― 新着の感想 ―
[良い点] 想像以上の二つ名が出てきました♪ 【女帝】既出…わかる^^; 【女教皇】new…きっと腐教しちゃったんだな。広く深く、そして遥かな高みにまで(~_~;) 【才媛】new…処女膜が鉄板………
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