表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
10:東奔西走
391/415

70

 その次の週末も同様にルキミア家で調査。

 同じ建築家が対応したのか、隠し扉や隠し部屋の配置がかなり似通ってた。


 ストマでさえも「ほぼ同じじゃねえか!」と騒ぐ始末。

 それを僕たちに言わないでよ、こっちがデザインしたわけじゃないんだから。



 ジャーヴィン侯爵たちに情報提供したら王宮側はホックホクだった。

 言い訳のしようもない位に色々あったからなぁ。

 ちなみにこっちでは詐欺系の証拠がかなり多かった。

 ディーマス家が力を使った犯罪メインでルキミア家が頭を使った犯罪メイン?



 取り合えずディーマス家関連は建国祭までやることは終わり。

 冬季試験も近づきつつある頃。




「ニフェール、アレの進捗って説明できるか?」




 午前中の授業の合間の休み時間、スロムからこっそり相談を受けた。

 ん~、概要レベルでしかないんだよねぇ。



「ざっくりになっちゃうよ?

 それでもよければ……」


「あぁ、構わない。

 というか、アテロ様やセレブラ嬢とも話し合ったんだが……。

 何か手伝えないかと考えてな」


「邪魔しなきゃ一番いいんだけど?

 というか、この手の面倒事が複数動いているから下手に無茶できないし」


「……お前、何時休んでんだよ?」


「お前が寝てる時間よりかは短いかな?」



 そこ、呆れない!



「ちなみに昼飯時にお互いのメンバーに連絡して放課後に話し合いだな。

 ちなみにこっちは前回の二人に追加で二人。

 文官科のツートップを呼ぶ予定。

 もしかするとその二人の婚約者も連れてくるかもしれんがね。

 それと打ち合わせ場所はそっちで確保しておいてくれ」


「分かった、こっちは前回と同様四名だ。

 というかその追加二名に婚約者たち?

 この話知っているのか?」


「少しはな。

 人手足りない所に使う予定。

 婚約者の方は実際の行動には参加はさせないけど、一応情報は教えてる」



 先日少し訓練させたしね。



「……俺も」


「不要。

 というか、お前等は別の所で使う予定だから。

 無駄に手を出そうとするな。

 必要な時に必要な所に居ないと予定が破綻する」


「……分かった。

 とりあえずはこっちも動いておく」



 そこまで……待たせてたのかなぁ。

 まぁ、何もせずにどこまで進んでいるのか不安視するのは分からんでもないか。


 そんなこんなで昼休み。



「構いませんわよ? 放課後ですわね」


「ええ、それとレルカとクレイも参加で。

 ラシー嬢とニミー嬢も聞くだけなら構わないよ。

 どうせこの前のディーマス家の件知ってるんだし、今更かな。

 でも、発言は控えてね」


「いえ、私たちは遠慮しておきますわ」


「ラーミルさんいないから?」


「当然じゃないですか。

 王宮でのディーマス家の話だってこちらからしたら何の意味もありませんもの。

 ラーミル様にお会いしたいがために参加したのですから」



 ラシー嬢が熱弁を振るいニミー嬢がコクコクと頷く。

 まぁ、想像はしていたけどね。



「なら二人は不参加で。

 で、一応大雑把な方針は伝えておくくらいかな。

 学園休みの間の指示はざっくりとしか考えてなかったからなぁ。

 それは後日かな」


「そこらは冬季試験後にした方がいい気もするな。

 お前も勉強する時間欲しいだろ」



 フェーリオが指摘するが、確かに時間欲しいんだよなぁ。

 まぁ、先日の件(ディーマス家調査)が終わったから時間ができたけどね。



「まぁねぇ。

 あ、試験といえばどうなった?

 ちゃんと三科試験受けられるのか?」


「あぁ、二人とも今回から参加だ。

 ちなみに先達として後輩に何か情報教えてくれないか?」


「そうだなぁ――」



 そう言って三科試験のコツを皆で少し教えてあげた。

 と言っても午前と午後の時間配分に気を付けること位か?

 後は、学科の違いを受け入れろってとこかな。



「なんだ、その学科の違いって?」


「お前等なら算術とかはあっさりクリアできると思う。

 でも、お前等が習ったことのない部分とかはどうやってもお手上げのはずだ。

 例えば、騎士科だと薬草学とか?

 文官科で学ぶとは思えないんだけど?」


「全くやったことねえよ!

 そんなのあるのか?!」


「あるんだよ。

 他にも戦術史とか?

 戦いに関わる知識についてはお前等全く情報無いだろ?

 それに領主・淑女の礼儀作法なんてお手上げだと思うがな。

 領主側はともかく淑女側はどうしようもないだろ?

 お前等がカーテシーとかするとは思えんし」



 あれ?

 何でそんなに顔色悪いの?

 この辺りの覚悟決めて三科受けるつもりになったんじゃないの?



「いや、そのつもりだったんだけど……そっか、ここまで違うんだ……」


「ちょっと想定外だった……」



 まぁ、今更遅い。

 諦めて頭抱えてくれ。



「まぁ、今回は記念受験的な感じでいいんじゃない?

 僕も最初に受けた夏季試験はとてつもなく打ちのめされたし。

 フェーリオ達も最初の春季試験はズタボロだったらしいよ?」


「ああ、あれはキツかったからなぁ。

 それも、後で騎士科追加してまた打ちのめされるし」


「甘く見過ぎてましたものねぇ……」



 経験者の三名がゲンナリするのを見て本気でヤバいと考え始めた様だ。

 まぁ、今僕たちが困っているのと逆のパターンで苦労するんだろう。



「皆、すまんが少し協力を求めたいんだが……」


「ごめん、急な依頼で申し訳ないんですけど……」



 やっぱりそう言う選択になるよな。

 フェーリオ達とアイコンタクトして――



「まぁ、いいぞ。

 とは言え、平日は図書室か誰かの家だな。

 ニフェール、寮の門限までは付き合えるな?」


「割り込みが無ければね。

 基本僕は週末の方がいいかも。

 第一、今日の話し合いによっては急いで王宮行かないといけないし」


「あ……そうだな。

 ニフェールは参加可能なら頼む。

 二人とも、可能な限り平日に領主科と淑女科の科目とか教える。

 週末にニフェールに騎士科の科目とか教われ。

 というか、俺たちもニフェールに教わりたいくらいだ」


「まだ戦闘に関わる知識は足りてませんからねぇ」



 フェーリオ、ジル嬢。

 二人して泣き入れてくんなよ。



「あ~、分かったよ、ざっくりになるが教えるよ。

 次の週末で頼む。

 王宮行かないで済みそうならすぐにでも教えてやるんだが……」


「そこはニフェールでも分からんだろ。

 その方向で構わない。

 むしろ助かる」


「気にするな。

 こちらも文官科の勉強する際にお前等の情報に世話になったからな」



 お互いに勉強する予定を確認し、放課後再度集合することとなった。

 そして放課後。

 スロムがはよ教えろとばかりにプレッシャーを掛けて来る。



「で、ニフェール。

 現状を教えてくれないか?」


「あぁ、まずは――」



 そう言って、現時点まで調査した概要とこの後の予定を説明した。

 なぜか三名……いやプレクス殿を含めて四名が目をギョロつかせて驚いている。



「ニ、ニフェール?

 なんだその商業ギルドと調整しているって?」


「まぁ、そう言う手口を考えて相談しているんだよ。

 まだ王宮側との調整までは進んで無いけどね」



 スロムの質問にサクッと答えるが……なんでそこまで怯える?



「……正直お前が怖くなってきたよ」


「は?

 学園で騎士科のクラス一つにする提案したり?

 お前等に訓練の仕方教えたり勉強方法教えたり?

 それどころか王都での暴動鎮圧や元クラスメートの処刑までしているのに?

 この時点で気にもしなかった癖に今更ビビられてもなぁ」


「……確かに今更だが、商業ギルドと縁があるなんて知らなかったぞ?」


「そりゃほぼ誰にも教えてないしな。

 知ってるのは両侯爵位かな?

 まぁ、そこはこちらで色々やってるからあまりツッコむな。

 下手に情報展開して相手にこちらのやろうとすることがバレても困る」


「俺たちがバラすと思ってんのか?」



 何キレてんだよ?



「どういう流れで誰が聞いて僕の策に感づくか分からないんだぞ?

 可能な限り情報を隠すのは当然だろ?

 お前らは関係者だからここまでは教えた。

 けど、商業ギルドの誰に何を依頼するかは説明しないぞ?

 知られなければ商人は被害に遭わなくて済むし」


「……まぁ、情報封鎖は分かるんだがそこまでやる必要あるか?」


「むしろ、侯爵と喧嘩するのに何でそんな余裕なんだ?

 相手に反撃を許すことなく叩き潰さないとダメだろ?」



 ……あれ?

 なんで驚いているんだ?



「待て、何だよ侯爵って?

 相手ってうちの親だろ?」


「お前等の親は只の下っ端。

 実際裏にいるのはテュモラー侯爵だろ?

 そっち経由で情報流されたらたまったもんじゃないんだよ」



 ん~、何でそんなに驚くんだ?

 理由が想像つかないんだが。



「なぁ、なぜそんなに驚くんだ?

 お前等の親が北部と繋がりあるって知らないのか?

 親か祖父母に北部出身者はいないか?」


「……母が北部出身だ」


「うちは父方の祖母が……」


「私の家も同じだ……」



 何顔青ざめてんの?



「その伝手で北部のテュモラー家とは仲がいいんだよ。

 中立派の中でも北部寄りなのがお前らの家だ。

 そして、そっちの動きを潰すことで北部側の行動を制限できる。

 違法薬物の蔓延を止められるんだ」


「そこまで大事になってるのか……」



 そうなんだよねぇ、というか今年の二年の生徒の親はろくでもねえの多いな?

 ディーマス家にルキミア家、こいつらの三家。

 他にも数家やらかしてるし。

 面倒臭いことだよ、ホントに。



「んで、状況としてはここまで。

 対処策はまだナイショ。

 というか、人的配置を検討中なんだけど、いい配置が思いつかなくって……。

 ちなみにお前ら三名は別の仕事があるから配置には含めません。

 スロム、変なとこで拗ねるなよ?」


「……分かった、我慢する」


「我慢というか……。

 お前等の家の話なのにお前らが率先して勝手に動いてどうすんだ?

 情報提供して『家と自分らは違う!』と見せるのが最優先だろ?

 そこ手を抜いたら一緒になって処罰されることになるんだぞ?

 やるべきこと間違えるなよ?」



 アテロ殿はまだしもセレブラ嬢とスロムが少し不安だな。

 どうにか落ち着いてもらいたいんだけどな。



「後は建国祭の頃に家族と会うんだろ?

 その時は何も知らないフリを続けて欲しい。

 下手に情報聞き出そうとして相手が勘づいたらマズい」


「マズいって?

 叱られるとかじゃないわよね?」


「病死じゃない?

 もしくは適当に罪でっち上げられて処刑とか?」


「なっ?!」



 セレブラ嬢、なぜ驚くの?



「あれ、確か以前当主になれなかった奴は死んだとか言ってなかった?

 当主を殺そうとして処罰されたって。

 それと同じことがお前らに降りかかるんじゃないの?」


「ちょっと待ってよ!

 あんなのでも一応親よ?

 親が子を殺しに来るってこと?!」


「当然でしょ?

 犯罪見つかったら家ごと消える。

 バレる前に消す、これは基本でしょ?」


「そんな恐ろしい基本知らないわよ!!」


「でもあなた方の親、そして先祖はそれを繰り返してきたんでしょ?

 何を今さら。

 だからこそ下手な発言は禁止、何も知らないフリを確実に実施してほしい」



 こちらはアンタらが死なないように提案してるんだから。



「それと、アテロ殿は僕との接点がほぼ無いから多分一番安全だろう。

 スロムは……学園の成績の事で僕と少し接触がある位か?」


「おいおい、クラス同じになったろ?

 忘れたのか?」


「そう言うのを親に教えるなと言ってるんだが?

 昨年の今ごろと大して変わらない。

 成績も次席を維持している。

 その情報程度にしておけ」



 なんか文句言いたそうだな?

 本気で理解してないのか?

 それともまだ親を切り捨てるのに覚悟ができてないのか?

 少しキツイこと言わないとダメか?



「わざわざ学園生から剣術を学んでいるとか?

 クラス統一とか?

 そんな情報与えて相手が想像するきっかけを与える必要は無いだろ。

 今の立場を考えろよ? お前の親は敵だぞ?」


「……親には情報与えるな、下手に教えたら自分らが死ぬことになる。

 この考えで合ってるか?」


「その通り、その覚悟を貫け。

 出来るだけ手を貸すけどお前の命を守るのは僕じゃない。

 自分自身で敵に情報を渡さないこと。

 相手側に敵とみられないようにすること。

 これが出来るかどうかで生き死にが決まる」



 僕の発言に無言で頷くスロム。

 表情が少々強張っているが、それでもちゃんと答えてくれた。




「さて、セレブラ嬢。

 あなたが一番面倒臭い状況にある。

 理由は分かりますか?」


「……うちの愚兄ですね」



 愚……まぁ、否定はしないけど。



「ええ、スピル殿が僕と接点を持っている以上、質問されるんじゃないかと。

 そこで、学園入ってから今まで何か聞かれたりしたことあります?」


「いえ、全く。

 何か接触してくるかとも思ったけど、一切連絡は無かったわ。

 ちなみに、実家では学園の話はほとんどないわよ?

 最低限成績を報告しておしまい」



 ほぅ、つまり親からは何も気にされてなさそうだな。

 となると、やはり一番危険なのはスピル殿の発言か。



「セレブラ嬢、僕の話題が出たら知らぬ存ぜぬでお願い。

 淑女科の者が騎士科に顔見せに行くなんてありえないとか言えばいいと思う」


「まぁ、婚約者がいない限り他科との接点は昼食か放課後だけだしねぇ。

 積極的に男漁りに行くなんて思われても困るし。

 それは分かったわ」


「で、セレブラ嬢から情報を得られなかった場合。

 その時はスロムに泣きつくかもしれない」



 スロムを見ると「まぁそうだろうなぁ……」という反応を見せる。



「その時も情報はあまり渡さないで。

 筆記も実技も首席とかは言ってもいい。

 でも、それ以上の情報は知らぬ存ぜぬで済ませて。

 クラス纏めたとか教師ボコったとか言っちゃダメ。

 暴動対応は学園前の奴らを斃した以上の事は言わない」


「基本はうちの親と同じ対応だな。

 分かった、黙っとく」



 これでどうにか誤魔化しきれるかな?



「最後に、一月中旬位には作戦の説明と共有をしたいと思っている。

 当然三人が関わる部分だけね」


「戦闘とかは無いんだな?」



 スロム、何つまらなそうな表情するんだよ。



「なんだ?

 セレブラ嬢が暴れるのを期待しているのか?」


「んな訳ねえだろうがよ!」


「ならそんなこと言うなよ。

 そっちに頼むのは数日学園休むのと善人的(●●●)な演技だけだし」


善人的(●●●)な演技?」


「例えば……『あぁ父上、なぜこんなことをされたのですか!』みたいな?

 自分たちは何も知らなかった。

 犯罪犯したのは他の親族のみ。

 そんな風に感じさせる演技をすること」



 ……なんだよ、その冷たい視線は?

 何くだらないこと言ってんだって感じだな?



「一応言っておくぞ?

 お前等だけは正しいことをしていたと理解させることが必要だ。

 全てが終わった後にそれぞれの領地に住むのかは知らない。

 でも、誤解受けたままその土地治めたいか?

 国に従う奴と国に背く奴。

 国がまともな状態の場合、民はどちらを選ぶ?」


「……前者だな。

 つまり自分たちに被害が来ないように。

 こちらが正義の味方であるように。

 うまいこと振舞えってことだな?

 そして民を味方につけられるようにしとけと」



 スロム、理解が早いな。

 ……まさか僕の影響?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やっと二フェールの言葉を素直に聞く生徒が現れたかぁ。これで二フェールの心労も幾分か減りますねぇ。下手を打ちそうで怖いですが(^_^;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ