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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
10:東奔西走
390/414

69

 その後当主の執務室に移動。

 マーニ兄に部下の騎士たちを呼んでもらい、書類運び要員として動いてもらう。


 その前に認識合わせしないといけないな。

 紙を二枚ほど貰い、事前に隠し部屋の本棚の情報を整理する。


 これで、本棚番号と段数が分かるから移しても後で並びを戻すのは可能だな。

 あ、紙にメモして渡せばいいか。



「え~、これから隠し部屋にたっぷりある書類を運んでいただきます。

 運び出した書類はここで大きく仕分けして書類を見れる人たちで確認します。

 皆さんには隠し部屋にある書類をこちらのカルの指示に従って配置願います」



 流石にここで分からないとかいう人はいないな。



「後、一部の人には書類と一緒にメモをお渡しします。

 それはカルへ渡してください」


「失礼、そのメモはなんです?」



 騎士だけど顔見たこと無い人だな。

 スホルム対応してない人か。



「隠し部屋の本棚、それの配置場所を示したメモです。

 それぞれの書類をどれだけ整理して置いてたのかは分かりません。

 ですが、ここの当主がある程度纏めていたならば配置の情報は後々役立ちます」


「それは後日調べ直す際に有効ってことです?」


「まぁ、そんな感じですね。

 元々僕らはここの当主を処刑できるだけの情報を集めるのが仕事。

 ある一定量以上の犯罪を犯してれば、それ以上は処刑内容が変わりませんよね?

 十回犯罪犯そうと百回であろうと、十回の時点で極刑ならば後は同じですし」



 ねぇ、何でそこで怯えるの?

 ちらほら「やっぱ隊長の弟じゃねえか!」って聞こえるんだけど?

 マーニ兄をチラッと見ると、何故か視線を逸らす。



「マーニ兄、何か想像以上に怯えられてるんですけど、何言った?」


「何も言ってないぞ、なぁ?」



 その声と同時に部下の皆さんが一斉に視線を逸らす。

 ……ねぇ、冷汗かいているマーニ兄?

 あんた何言った?



「ねぇ、部下の人に何言ったの?」




「『葡萄狩り』……」




 ビ ク ッ !




「アレざっくり説明した。

 まぁ諦めろ、アレやった時点でお前の評価は決まったようなものだ」


「まぁ、あれはねぇ。

 でも、まさかとは思うけどアレやった理由を説明してないとか無いよね?

 それ聞いてそれでも怯えるのならどうしようもないけどさ?」



 ……おい? なんだ冷汗が滝のようになってるのは?



「……母上の裁定を待ちなさい」


「待て、話せばわかる! わかるはずだ!!」


「え~、皆様、脱線して申し訳ない。

 話を戻しますと、既にここの当主は処刑が決まっております。

 今回やっているのは、それ以外にもやらかして無いかのチェック。

 ですが、先ほどチラッと見ただけで極刑確定の情報がチラホラと……。

 そんな訳で、僕たちで全部見る必要が正直無いのです」


「待てニフェール! 話を聞け!!」



 知るか!

 必要な情報与えず誤認させたままってひどすぎんだろ!

 カルたち笑ってんじゃない!



「マーニ兄、やかましいから黙って! 仕事の邪魔!

 ……続けますと、僕たちのやることは資料を集め、概要を整理して提出。

 そこは両侯爵も理解してます。

 ついでに王宮で実力それなりにある文官に調べさせる話が出てますね。

 経験を積ませるに丁度良さげだとか」



 なんか別方向に唖然となってません?



「そんな話になってるのか……」


「ええ、なので、書類の順序性とかある程度保って渡したいなと。

 他に質問ありますか?」



 特になさそうなのでメンバー割り当てて作業開始。


 マーニ兄? 泣きついてきたけど放置した。

 今はプライベートより仕事の方が優先だからね。



 一時間以上かかったが一通り書類を運び終え執務室に戻ると他の皆も来ていた。

 担当分は終わったようだね。


 フェーリオが代表して状況を聞いてきたので一通り説明する。

 まぁ、いつも通り呆れていたけど。



「ニフェール、後はここで終わりだが、これが隠し通路の奥にあった分か?」


「うん、でも全部詳細に調べる気は無いよ?

 概要整理して報告すればいい。

 ちらっと見ても暗殺者ギルドへの依頼書とか強盗ギルドへの依頼とか……。

 それが何十枚もある。

 極刑間違いなしの情報だらけだから」


「ふむ、ならさっさと終わらせるか」



 そうして学園生&文官組で一斉に書類整理。

 そこかしこから「マジッ?」「嘘でしょ?」みたいな声が聞こえる。

 もしかすると、この結果名誉挽回される人とか出てくるのかな?

 家ごと潰されたけど実は何も悪いことしてなかったとか?

 それなら王宮側で対応しておいて欲しいな。


 昼を過ぎて夕方になるちょっと前。

 概要整理が終わり、学園生組はヘトヘトになって座り込む。



「騎士の方々、一通りこちらでやれることは終わりました。

 なので、この資料を王宮の方に運ぶのをお願いします。

 サバラ殿、どの辺りに運んでもらえばいい?」


「あぁ、では輸送の代表の方は?」


「あ、はい、俺っす」


「ではこちらで説明を――」



 メリッス殿だったか。

 先日の書類仕事バックれたから押し付けられたかな?


 ならあっちはお任せして、学園生たちと話すか。



「で、初めての調査はどうだった?」


「やってやれないことは無いけど、かなりキツイな」


「そりゃそうだろ。

 僕が出来る位なんだから、お前等も出来るのは想定内だ。

 後は体力と集中力が何処まで持つか。

 そこは経験かなと思ったんだけど?

 でも、フェーリオとジル嬢はそこまで辛くないんじゃない?

 むしろレルカとクレイの方がきついんじゃないのかな?」



 あれ? 皆困惑してる?



「ニフェール、お前の言う通りに俺たちの方が余裕があった。

 レルカたちはヘトヘトだったのも事実だ。

 で、なんでそう思った?」


「三科試験の経験者か否か。

 あれ、二日で残りの三科を纏めて受けるんだぞ?

 学園生活であれ以上の集中力を使うのは思いつかないんだけど?

 あ、当然筆記についてっていう条件は付くけどね」


「あ~、確かにアレの経験は確かに影響してるかも……」


「あの無茶苦茶な試験に比べれば、確かに余裕はありますわねぇ」



 二人は納得してくれたようだ。

 と同時にレルカたちが騒ぎ出す。



「ちょッと待て!

 ……もしかして三科受けたらその集中力が養える?」


「養えると言うより、その位できないと三科やるのキツいと思う。

 だって、一つの科の試験を一日で終わらせるんだぞ?

 一科あたり十数科目か?

 当然一科目一時間なんてかけてられない。

 そんなことしてたら夜中までかかっちゃう。

 ならどうするか?

 簡単な科目は十分、ニ十分で終わらせるんだよ」


「……七割程度をニ十分で終わらせれば夕方までに終わる?」


「大体そんな感じだね」



 そう言うと、レルカたちは何か二人で相談し始めた。

 ……これって、もしかしてもしかすると?



「俺たちも三科試験にエントリーする!」


「元々自己満足と思ってたからやらなかったんだけどさ。

 今日の仕事を余裕があるとか言い出せるのなら受ける価値はあるよね」



 やっぱり……。



「フェーリオ、ジル嬢。

 間に合うかな?」


「多分ですけれど、明日依頼しに行けばギリギリでしょうか?」



 指折り試験までの日数を数えると……。

 僕が夏季試験の時に受け付けてもらった位の時期だな。

 ならギリ間に合うかも。



「なら、明日急いで庶務課に相談してきな。

 ちなみに、ここでやったことが試験受けるきっかけになったことは言うなよ?

 この件学園に伝えてないんだからな?」


「分かった、そこは『より上を目指す為』とか言っとく。

 教師たちもそんな言葉言われて拒否しないだろ」


「まぁ、成績優秀者が三科受けるのを拒否するとは思えないしねぇ。

 いいんじゃない?」



 明日学園教師たちは喜ぶのかな? 怯えるのかな?

 多分何十年レベルで起こらなかった事態じゃね?

 全科から三科試験を受ける人物が出るなんて。



「まぁ、それは明日。

 で、この調子で来週末ルキミア家で同じようなことをします。

 次回は今回程じゃないはずだから、少しは楽なんじゃないかな?

 これで経験積んで本番頑張って欲しいな」


「そっちはどうにかするさ。

 学園生の身分でここまで経験できるなんてそうそうないだろうしな」



 まぁ……ね。

 ただ、経験積むということは……大人共から使われる可能性があるんだよ?

 具体的に言うと両侯爵。


 まだ気づいてないのか、僕が人身御供になってるから大丈夫と思ってるのか。

 試験に重ならなければこき使われるかもね。



「さて、今日はこれにて終りょ――」


「なんだ貴様ら!

 ディーマス家で何をしておる!!」


「――う?

 ストマ、何これ?」


「ちょっと見て来る。

 多分叔父だ……」



 そう言い残して去るストマ。

 役立たずって噂のアレ?



「これ、ストマの説明理解してなかった?」


「その可能性が高いな。

 アイツも可哀想に……ろくでもない親戚って害悪でしか無いな」



 なぜかこの言葉の後にビクッと反応するマーニ兄。

 大丈夫だよ? 害悪とか言わないからさ。



「さて、僕らもあちらに行きますか。

 ストマも苦労してるだろうし」



 皆で騒いでいる所に向かうと肥えたオッサンがブヒブヒ騒いでいた。

 これが叔父か。



「――だから事前に伝えたでしょう!

 その仕事が終わって今から帰られると言うのに何騒ぐ要素があるんですか!!」


「そこの書類を何処から見つけたのだ!

 勝手に持って行っていいと何故思う!

 そして、お前はなぜ止めない!!」


「止めないで当たり前でしょう!

 王宮側からこの家の調査をしに来られたのですよ。

 そして、その結果見つけた書類を証拠品として持っていく。

 どこにおかしいことがありますか!」


国如き(●●●)が我が家の書類を勝手に持って行っていいと何故思う?!

 むしろ返却させ謝罪をさせるのがお前のやることだろうが!!」



 ……いつまでディーマス家が権力持っていると思ってるんだろうねぇ。

 もう崖っぷちだってのに。



「マーニ兄、『葡萄狩り』の説明放棄の件って許して欲しい?

 母上に報告止めてあげてもいいよ?」


「あれ消せばいいのか?」


「いやいや、公務執行妨害で連れて行ったら?

 僕らは国からの依頼で動いているからねぇ。

 それ邪魔するのなら該当するんじゃないの?」


「……確かにいけそうだな」


「ほら、僕たち優しいから兄弟仲良くご飯でも食べてもらったら?」



 一般的に言う所の臭い飯?



「それに国如き(●●●)とか言っちゃってるからねぇ。

 そんなこと言うのなら平民にして他国に捨てたら?

 自分が言ったことがどういう意味を持つか理解させたらいいんだよ」



 国があるから貴族として生きていられるのに「如き」とか言ったらねぇ。

 この国と関わらない所で生きてもらったらいい。

 その程度の覚悟を持って言ったんだろうからさ。



「それと、その後でいいから部下の方々に誤解ちゃんと解いておいてね?

 今後第二部隊に何かお願いする際に毎回怯えられると面倒なんだ」


「……分かった、後者も含めてやっておく」



 そう言ってストマたちの方に向かい、あっさり捕えて連れて行く。

 まだ元気に騒いでいるがサッサと持ち上げてお持ち帰り。



「……変なとこ見せたな」


「気にしなくていい、お話にならないタイプの人物なのは想像できてたしね。

 多分あのまま王宮で捕えることになるかな?

 アイツいなきゃマズいとかある?」


「いや、全くない。

 むしろありがたい位だ」



 凄いね、そこまで言われるんだ。



「んじゃ、今日はこの辺で。

 来週同じようにルキミア家で対応するけど……ストマは来る?」


「一応見させてもらうつもりだ。

 ルドルフが俺と同様に下らん鎖から解放されるのを見ておきたい」


「分かった、んじゃまた」



 そのまま学園生組は解散。

 一応僕たちは王宮に行ってジャーヴィン侯爵たちとお話。



「ディーマス侯爵の弟か……愚か者なのは知っていたがなぁ。

 ここまでとは想定してなかったよ」


「むしろ想定できたらそっちの方が怖いですけどね。

 ともかく暗殺者と強盗への依頼書の量を考えると、この時点で兄は処刑確定。

 後は建国祭の期間に終わらせればいい。

 弟は……平民にして放置とか?」



 そう話すと、なぜかウンウン唸りだす。

 何かマズいとこあったかな?



「いや、方針はそれで行きたいが弟はちょっとなぁ……。

 単純に言うと、アイツは王宮で仕事しているわけでは無い。

 また、国としてはディーマス家内部の話に口出すわけにはいかん」


「……当主である兄をどうにかするのは可能。

 弟は公務執行妨害は適用できても他に何もしてないから平民にするのも無理?」


「そんな感じだ。

 個人的には弟を貴族として扱いたくはないんだがなぁ……」



 でしょうねぇ。

 ん~……。



「確認なんですけど、ストマは今回の件で男爵辺りで残すで合ってます?」


「ああ、そこは確実に。

 流石に子爵は無理だがな。

 お前がやったことをアイツがやれば子爵位でもよかったんだろうが。

 そこまで求めるのは少々過酷ってもんだ」


「その流れってどんな感じですかね?

 侯爵から直接男爵?

 それとも侯爵から一度家を潰し平民にして、その後ストマのみ男爵?」


「はぁ?!

 ……ん? あぁそう言うことか。

 一旦全員を平民にすることで弟に爵位の恩恵をやらないことにすると?

 ストマのみ貴族で残りのディーマス家の人間は平民であることを印象付ける?」


「出来るならですけどね」



 ただ、それやるとストマの立場が最悪になるかもしれないんだよなぁ。

 叔父と姉を捨てた男として白い目で見られる可能性もある。

 個人的にどうすべきか判断し辛いんだよなぁ。



「……やめておいた方がいいな。

 ただでさえ侯爵から堕ちて、かつ実の親を潰す動きをした人物。

 罪を見つけ報告したという点では評価されてもな。

 それに加えて叔父と姉を捨てるとなったらアイツの未来は茨の道になる。

 流石にそれは勧められん」


「叔父だけなら問題無し?」


「まぁ、あれを貴族の端くれとして生かしておくのはダメすぎるだろ。

 というか、現状でも貴族家の末端にいるだけなんだしなぁ。

 侯爵から直接男爵になったとしてもあいつの立場は冷や飯食い以外無い。

 ストマが何処までアイツを切り捨てるかは知らんがね」



 となると、アイツがやり直すために一番邪魔なのは……姉?



「姉、どうするんでしょうね?」


「正直、儂にも思いつかん。

 ラーミルやジルの様に実力ある訳でも無い。

 カールラやロッティの様に皆を纏められる程のカリスマがある訳でも無し。

 貴族派貴族筆頭の家に生まれ付いただけ。

 ついでに前の婚約者は処刑され、実家が男爵に堕ちる。

 金と地位だけに釣られるような奴らは逃げるだろうな」



 やっぱそうだよなぁ。

 まぁ、僕はそこまで手を貸す気は無いけど。


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