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「んじゃ、細かいスケジュールは後日。
まずはこの後報告してくるよ。
ストマとルドルフは内部作業止めさせて。
どうせまともな仕事できないんだし、邪魔される方が面倒だから」
「……分かった」
「こっちの面々は週末空けといて。
実施日は早ければ明日にでも周知するから」
「分かった、そっちも無茶すんなよ?」
そのまま解散、僕は王宮へ大急ぎで移動する。
当然相手は両侯爵。
キンスンの情報を提出し王宮側で今後どうするのか検討することになった。
その後にディーマス家調査の件を説明する。
「おぉ! 調査を認めさせたか!」
ジャーヴィン侯爵が大喜びしているが、そう簡単にはいかないと思うなぁ。
「とはいえ、どこまで情報を持っているかは不鮮明ですからねぇ。
これからですよ」
そう伝えるとチアゼム侯爵が少々懸念事項を呟く。
「だな、それとストマ自体はちゃんと提出しているつもりだったのか。
叔父とやらの調査能力無さそうだな……」
「叔父に任せっきりだったようですね。
その叔父がダメダメであることを気づかなかったというのも問題ですが」
まぁ、親族を信用できないとか言われるとねぇ。
信じられなきゃ味方いないから信じざるを得ないんだろうけど。
とは言え、あの叔父は信じるに足るとはとても思えないんだがなぁ。
まぁ、そこはストマが考えることか。
「で、僕たち学園生なので次の週末にディーマス家。
その次の週末にルキミア家を調べます。
調査要員としてラーミルさん、カル達、学園生四名。
大人側から文官数名、騎士数名を出してください」
「文官はサバラかベルハルト辺りでいいか?
それと騎士はマーニは確定だが……」
「文官はそれでも結構です。
個人的にはレルカとクレイに慣れて欲しいってのもありますけど。
基本あいつらを怪しい歓びに浸らせるための餌がメインですから」
あの二人の喜びようを考えるとご褒美用意しとかないとねぇ。
「……あいつらが怯えるようなことするなよ?」
「それはレルカたちに言って。
それと、騎士はマーニ兄メインでそれ以外は荷運び要員と考えてください。
それぞれの家で見つかった書類を王宮に持っていく。
加えて僕らが調べた情報と組み合わせて刑罰を判断する材料とすればいい」
「分かった、メンバーはそれで行く。
一度くらい集まるか?」
できればその方がいいんでしょうけどねぇ。
でも大変そうですよ?
「……やってもいいと思いますけど、レルカたち止められます?
侯爵方でもフェーリオでもいいんですけど。
それとストマ達も呼びます?」
「……レルカたちについては止めたくなってきたな。
だが、方向性の整理は必要だ。
明日までに全員周知して明後日にでも王宮に集まることとしよう」
「……追加で無関係のものを二人程連れてきてもよろしいでしょうか?
具体的に言うとレルカたちの婚約者たち。
あいつらが二週に渡ってデートできない理由を理解させた方がいいかなと」
「確か互いの妹が婚約者だったな。
なら下手に情報は広まらないだろうし、構わんぞ」
話を終え一旦寮に戻った上でチアゼム家へ。
「と言う訳で、僕たちはディーマス家とルキミア家の書類調査をします。
参加メンバーは修道院で対応するメンバーとした。
ぶっちゃけ、練習の場だな」
一通り説明すると、「あ~」と納得の声が聞こえる。
「で、一度明後日に王宮に放課後集まる。
僕は一度こちらに来てから皆と一緒に王宮に行く。
フェーリオ達はあちらで纏まって王宮に行ってもらうつもり。
なお、ディーマス家とルキミア家の次期当主も王宮で会うことになる。
まぁ、気にしないで話聞くだけでいいんじゃないかな?」
「嫡男共……というか貴族派は禿が率先して対応してたからなぁ。
俺たちの顔は知らないはずだ。
なんで、顔合わせても暗殺者共だとは言われないはず」
「ならかなり気楽だな。
僕の部下として紹介するけどそれ以上は教える気はないしね」
ルーシーの事がバレるのは面倒だからねぇ。
「そんなわけで明後日と週末、すまんが対応頼む」
「あぁ、任せておいてくれ。
それと、ババアから連絡が入った。
キンスン処刑と詐欺担当の壊滅の周知は終わったとよ。
そして今後詐欺担当としてやっていく奴がいた場合には二人で面倒見るそうだ」
それなら安全かな。
誰もいないと北部が浸食して来そうだしね。
そのまま寮に戻り次の日。
各自に情報展開、明日王宮で打ち合わせすると伝えた。
予想通りではあるが、レルカたち四名が狂喜乱舞。
クレイ、落ち着け!
目がイってるから!!
僕はラーミルさんたち連れて行くので、フェーリオに連れて行くよう指示。
ストマたちにも同様に言伝を頼む。
一通りやるべきことを終え……あっ!
二番手三人組にも現状説明しとかないと。
とは言え、冬季試験も近い。
今教えてプレッシャー掛けてもなぁ。
アイツらの成績落としたとか言われたらたまったもんじゃないし。
試験後かな。
後急ぎは……むしろ自分の冬季試験準備だな。
ある程度は形になっているから何とかなるとは思うけど。
今日は勉強に時間を費やすか。
◇◇◇◇
――北部テュモラー領。
まだ暗殺者も強盗も動けるようにはなっておらんか……。
王都の情報も以前と比べて精度が低い。
これでは時間の無駄にしかならんでは無いか!
わし、オステオ・テュモラーはイラついていた。
とは言え騒ぐわけにもいかず執務室の中で歩き回っている。
傍から見れば猿が餌を探しにウロチョロしているように見えるかもしれん。
まずは王都の情報の鮮度を上げなくてはならんな。
確か以前に孫、オヴェリアを住まわせてと言う話をメシロマが言ってたな。
あれを早められれば……。
建国祭の時に連れて行き、そのまま王都に住まわせる。
そうしてついて言った侍従共に情報収集に務めさせる。
これでラング家が消えた分の補填にはなるだろう。
とは言え、王宮側の情報は都合の良い人物が見つからん。
出来るならそちらも見つけたいものだが……。
騎士はいるが、文官としてはほとんどいない。
王都にはとてつもない者たちがいる様だ。
その者たちのお陰で北部のみならず他地域の者たちも手持無沙汰のようだ。
何でも幾つかの部署で対応していた仕事を一つの部署に纏めてしまったとか?
貴族の法律違反を騎士と共に解決させたとか?
そんな出来る奴がいるのならわしらの側に寝返らせたいがのぅ。
まずそう簡単には尻尾振ってすり寄っては来んだろうがな。
まぁ、確保は王都制圧したらでも構わんか。
後騎士側から王都の犯罪者ギルドから情報が入ったとか?
強盗ギルドがこちらに転びそうだとか。
うまくいくのなら既に靡いている詐欺師共と組ませて動かしても良かろう。
色々と考えているとノックの音が聞こえた。
「父上、メシロマです。
今よろしいでしょうか?」
「あぁ、構わん。入りなさい」
部屋に入ってくるが、あまりいい表情では無いな。
「お聞きになったかもしれませんが、犯罪者共は無理そうですね」
「あぁ、どうにかしたかったがうまくいかんもんだ。
ちなみにオヴェリアの件じゃが……。
先行して王都に住まわせるわけにはいかんか?」
「もしかして王都の情報を仕入れるために部下をつけますか?」
「流石に分かるか……その通りじゃ。
とは言え、勝手に大人数を派遣すると睨まれるしのぅ。
情報を漏らすわけにもいかん。
オヴェリアにつけるなら只の孫の侍従侍女ですと言えばいい話じゃ」
どうじゃ?
いけると思うんじゃが?
「オヴェリアについては当人と話したうえでとさせてください。
年明けを望んだり、ギリギリまでこちらに居たいと言うかもしれません。
あの子にはこちらの事情を説明する気は?」
「無いな。
あの子には自然体でいて欲しいと思っている。
そうでないとこちらの行動がバレてしまう」
「ですよね……ならばやはり提案以上の話にはなりえませんな。
もしあの子が行く気を起こしたら一家総出で王都に向かえばよろしい。
そしてその時連れていく侍従侍女たちの一部を王都に残せばよい話です」
ふむ……無理にあの子を残すよりその方がいいか。
「あ、それとまだ行かないと言った場合ですが。
今回は父上の方で王都に行っていただけますか?
確か前回の建国祭は私が行きましたので」
……よく覚えておるのぅ。
仕方ない、元々交互に行くことで整理付けてたしな。
「確かにな。それで行こう。
それと、王都へ攻勢を掛けようと思ったのじゃが……」
「確かあれからそろそろ一月、変化が無ければ連絡よこせとは伝えてあります。
多分このままなら許されることは無いでしょう。
ならば娼館街辺りに圧力をかけて無理にでも解放させるしかないのでは?」
我らによる強制か……やりたくないのじゃがのぅ。
最悪娼婦・男娼共が消える可能性があるし……。
全員王都に逃げ出したなどとなったら暴動でも起きかねん。
「ここの治安維持という点でそれはマズいのぅ。
……仮に解放されずとも王都襲撃させればよい話ではないか?」
「いや、それはダメでしょう、父上?
それをやったら他の犯罪者共が一斉に我らから離反するでしょうね。
となると王都に北部の情報が駄々洩れとなるのでは?」
「別に長が現場に行けとは言わんよ。
部下共が行けばいい話では無いか?」
「それで前回失敗しております。
そう考えると北部の者が行くにしても監視役程度で済ませるべきかと」
分からんな、メシロマはどういう手を想定したのだ?
「北部の者が動かせなければ他の土地のものを動かせばよいのです。
とは言え、王都は北部に不信感を持っているでしょう。
であれば、東部・西部・南部。
もしくは長たちの伝手で他の国の暗殺者に依頼とか?
北部は指示を出すだけ、他の地域が動くようにすればよいのです」
「ふむ……中々の案だ。
とは言え、王都と結びつきが強い所には依頼すべきでは無いな。
そこらは長共に強く言い聞かせねばならな」
「ですな。
とは言え、これなら北部が動くわけではございませんからなぁ。
対外的には文句言われる理由は無いかと」
これなら北部側の他の犯罪者共も文句は言えまい。
だが……どちらにしても王都のギルドに許可貰う必要があるんじゃないのか?
「なぁ、例えば東部に王都の襲撃依頼を出すとしよう。
その場合、東部から王都のギルドに許可を願う形になるのでは?
そこで王家襲撃なんて聞かされて王都は受け入れるか?
裏に北部がいることを感づかれそうな気がするが?」
「確かに……。
であれば、王都側に許可を貰う時には別の貴族を襲撃することにしましょう。
そうすれば文句もありますまい」
「そんな都合のいい……まさか?」
「ええ、以前消したい輩がいるとおっしゃってましたね?
ニフェール・ジーピン。
こいつを襲撃相手として許可を得て、実際は王家襲撃すればいいのでは?
例えば……ニフェールを主に襲撃、追加で数名とか言えばいい」
成程、それなら王都側も文句言わんだろう。
加えてこちらとしても邪魔な存在を消すことができる。
「確か……以前スホルムの街で暗殺者を撃退したとラングから連絡があったかと。
それが何処の暗殺者か分かりますか?」
「特に報告書には書かれてなかったな……もしかして東部なら?」
「まぁ敵討ちと言うような殊勝な考えを持つとは思えませんが……。
所属していなくても金貰って殺せばいいと判断するのでは?」
確かにな。
金さえもらえれば対象が誰だろうと関係ない。
暗殺者なんてものはそんなもんだ。
「ちなみに優先は王家ですよね?
ニフェールとやらを消した場合に追加報酬として支払えばよろしい。
金でどうにかなるのならそちらの方が楽でいい」
「ニフェールは面倒な存在だが優先度は低い。
別にアレを消さなくても王家を消せれば気にする必要が無くなる」
当然だな。
目的は王家を潰しテュモラー家がその座に就くのだから。
「とはいえ、今回王家を消せるとは限らない。
その場合、ニフェールを亡き者にできればこちらとしては楽だ。
次に狙う際にアイツがいないのなら邪魔されんだろう」
「ですな。
東部には重要人物と見せておいて実際は只の囮。
それで行きましょうか。
ではそろそろあの者たちから連絡来るでしょう。
そこで指示を出すということで」
頷き、その後も少し話してメシロマは執務室を出て行った。
これで何とかなるだろう。
流石に東を使うのは想定していなかった。
メシロマ、よくやった!
ちょうどディーマス家がやらかしていると聞いている。
多分建国祭であいつらは処刑されよう。
全ての責任をあいつらに被せることも出来そうだ。
死体に口無しともいうしな。
建国祭の後になるかもしれんが東部の奴らに声をかけてやるか。
ディーマス家が壊滅した後、後ろ盾になれるのはわしら位しかいない。
あ奴らが王家派や中立派に靡くとも思えんしな。




