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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
10:東奔西走
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「なっ!」


「待て、ニフィとやら!

 どういうことだ!!」



 アルツにレビー、何をそんなに驚いてらっしゃるんです?



「お二方、落ち着いてください。

 普通に考えて騎士と犯罪者が簡単に接点を持てますか?」


「……いや、こちらが接触しない限りそうそう会えることは無いだろう。

 互いに住む場所が違い過ぎる」



 アルツ、その通り。



「ではどうしてキンスン様は騎士と接点を持てたのでしょう?

 ダメンシャ様がお亡くなりになってそこまで時間は経っておりません。

 それなのにどうやって騎士と?

 まず自分を信じさせるのにも結構時間がかかると思うのですが?」


「……時間が短すぎるということか」


「その通りでございます。

 それにパン様の方で調べて頂きましたが騎士との連絡に数名人を使ってました。

 どう考えても詐欺担当の何割かは裏切っているものと推測されます。

 最悪、全員かもしれません」



 詐欺師の二人は頭を抱える。

 仲間と思っていたのが裏切り者だったなんて聞きたくも無かったろう。



「それ故、僕はキンスン様がかなり昔から騎士と繋がりがあったと判断しました。

 さて、先ほどから痛みに耐えているようですね。

 そろそろ答えを頂けませんかな?」



 歯を食いしばり痛みを我慢しているようだけどねぇ。

 そんな程度でどうにかなると思うなよ?

 砕ける場所はまだいくらでもあるんだからな?



「……話したら命を助けてくれるのか?」


「命の保証は出来ないかな。

 とは言え、とりあえず身体を砕くのは少し待ってあげるよ?」



 何ヒいてんの?

 どうして許されると思ったのか分からないんだけど?



「ちなみに、ここにいる皆が集まった日。

 その時に別の話を一部の方々でしております。

 元強盗ギルドと元詐欺師ギルドは長が亡くなったので不参加。

 他四ギルドの長で話し合いされております。

 議題は……北部テュモラー家の領地から強盗・暗殺者が王都で暴れたこと」




 ザ ワ ッ !




 強盗と詐欺師の皆さん驚いてますね。

 キンスン、お前は別理由で驚いてるだろ?



「その件自体はピロヘース様を中心として北部側に通告しております。

 また、王都に連れてこられた者たちは規則を知らない者だったようで。

 なので、叱って追い返したってとこですね」


「北部と王都で争いになるのか?」



 ストリート管理担当のポストスが怯えている。

 お前、争いになっても大して関わらんだろ?



「取り合えず今回の件では向こうへの通告・叱責のみですね。

 あちらの商業・生産・詐欺師・娼館は争う気はなさそうです。

 強盗・暗殺者が勝手に動いたと聞いております」



 ホッとするポストス。

 でもまだ早いんじゃないのかな?



「ですが、こう言う動きをする理由。

 そこが分からなかったのですが、懸念されることが一つ。

 パン様が相手の騎士の名や立場を調べておられます。

 騎士団第七部隊メラム・マリガント。

 北部地域の出身なのですが……繋がりません?」


「北部? おい、まさか?!」



 スリ担当のアゴラが慌てだす。

 まぁ、本当にそうかは知らないよ?



「北部と伝手を持ち、騎士と繋がった。

 騎士と伝手を持ち、北部と繋がった。

 どちらが先かは分かりませんが、キンスン様が関わってるのではないか?

 そう考えたのですが……キンスン様、お答えいただけます?」



 笑顔で、でも視線は殺意たっぷりで見つめてあげると大人しくしゃべり始めた。

 個人的には学園生如きに睨まれた程度で喋るなんて根性無しとも思うが。


 ……なんだよカル、その冷ややかな目は!

 いいじゃん、僕がどう思っても!



「お、俺は部下に国内色々な所で詐欺をさせた。

 当然北部でもだ。

 そこで、テュモラー家と繋がりを持って王都で北部の指示に従っていた。

 まぁ、金になったからな」


「騎士との繋がりは?」


「あの騎士はテュモラー家の寄り子だ。

 だからこそ王都で騎士となっても北部に情報を流している。

 まぁ、アイツだけじゃないがな。

 北部出身騎士の大半は同じことしてるだろうよ」



 だろうね、そこは何となく気付いてた。



「つまり、テュモラー家から騎士に連絡が入り、キンスン様に指示を出す?」


「その通りだ」


「では、今受けている指示は?」


「特に無い。

 あぁ、強盗ギルドが壊滅するという話の裏取りとかは頼まれたな。

 それ以上は現時点では無い。

 まぁ、建国祭に何か指示が来るとは思っているがな」



 ほぅ、何もない?

 まぁ、詐欺師の面々が力仕事をするはずがないしなぁ。



「一応確認ですが、北部から人が派遣されるとかはありますか?

 具体的に言えば強盗・暗殺者の辺り」



 ザ ワ ッ !



「聞いて無いな。

 とは言え、これから来る可能性は否定できないがね。

 まだ建国祭まで時間はある。

 一週間前位に連絡来て大急ぎで宿を用意するとかは十分ありえそうだが?」


「あ~、それはありそう……」



 情報を王都側に渡さないって感じだね。

 何となく北部は王都を草刈り場とでも思ってるんだろうなぁ。



「とりあえず北部が王都を虚仮にし続けているのは分かりました。

 次、詐欺担当は皆キンスン様に従ってるの?」


「当然だな。

 一人でも裏切り者が出たらバレてしまうから統制はきっちりやってるぞ。

 お前等と違ってな」



 こちらを嘲笑うキンスン。

 何でそんなに強気なんだろう?



「まぁ、確かに王都側は統制しきれてなかったのは事実ですね。

 先代の強盗の長とオブスの暴走、暗殺者も一部の愚か者が暴走してますし。

 まぁ、僕が把握している限りどれも貴族派貴族が関わっているんですけどね」


「……お前、何者だ?」



 何者って言われてもなぁ。

 本当のこと言う訳にもいかないし。



「前回の集まりの際に自己紹介しているはずですけどねぇ。

 他に何を期待されてます?」


「今までの……禿と呼ばれていた奴とかはそこまで関心を持っていなかった。

 殺せれば文句無かったはず。

 それが最近は情報を重視し、楽しみでの殺しが無くなった。

 おかしいと思うのが普通だと思うが?」


「禿が捕まったおかげですよ。

 その結果、僕たちがアレの趣味に付き合う必要が無くなっただけです。

 僕たち全員が禿と同じ性癖を持つなどと言うのはおやめください。

 侮辱にしか聞こえません」



 カル達が皆一斉に首を縦に振る。

 だよねぇ、アレと一緒にすんなっての。



「それにしては情報の精査等段違いすぎるが?」


「ルーシー様がおりますからねぇ。

 いくら禿がやらかしていたとはいえ、ルーシー様の実力を甘く見てませんか?」


「……確かに、ルーシーがいたな。

 金勘定は凄まじかったが他にも手を出せるとは……」



 ルーシー、すまんが使わせてもら……あれ?

 めっちゃ胸張ってますね?


 確か後方彼氏面とかいう単語があった気がするけど、それっぽい?

「ニフィはあたしが育てた!」とか言わないでね?



「さて、後話しておくことあります?」


「後は何も知らんからなぁ、こちらも何も言えんよ」


「そうですか、では――」



 バ キ ィ ン !



「ガハッ!」



 背骨の一部、胸椎の上の方をいくつか纏めて握りつぶす。

 そこより下の部分へ脳からの指示が届かなくなる。

 すなわち麻痺、不随。


 母上が猪を狩ったときに教わったなぁ。

 背骨壊せば動けなくなるから後はやりたい放題だって。

 まぁ殴って狩るのは母上位だろうけど。



「皆様、キンスン様が白状した通り、詐欺担当は北部に寝返った模様。

 ですが犯罪者ギルドとして文句言うことは難しい。

 なんせ犯罪者ギルドと無関係に貴族の後ろ盾を得ましたからね。

 とはいえこのままにしては王都は国中のギルドの笑いもの。

 さて、どうすべきでしょうか」



 一応皆に考える時間を与えると、カルがあっさり一言。



「詐欺担当を殺すんじゃ駄目なのか?」


「僕たちとしてはその方が楽なのですが、詐欺師側でどうするつもりなのか。

 そして犯罪者ギルド全体としてどうするか。

 ここは意思統一は必須かと」



 婆さんとパン爺さんは納得している。

 カルは元々話してある。

 残り商業と生産は……あ、こっそり頷いてきた。

 後は強盗の残りと詐欺師。

 さて、どうする?



「うちとしては消したい」

「うちもだ。

 下手に甘い行動を取って外から侮蔑の目で見られるのは我慢できん!」



 強盗のうち、スリとストリートが賛成した。

 というか、お前等言うほど外からの視線ってあったの?

 むしろそっちの方が驚きなんだけど。


 スケッツオは……こちらも賛成のようだな。

 というか、初めての参加でこんな賛否を求められるとは思って無かったろうよ。



 で、詐欺師は?



「……殺害に賛成したいとは思います。

 ですが、そんな簡単に行くのでしょうか?

 我らはカジノなり貸金なりで生計を立てていた者。

 殺しとなるとイメージが湧かず……」


「こちらも同じですな。

 考えてはみたがどうすればいいのか……」



 カルをチラッと見ると頷き、説明を引き取ってくれた。



「消すのはウチがやる。

 というか、キンスンの裏切りが発覚した時点で対応するつもりはあった。

 ただ、全員の認識が合わないと、後で『なんで殺した!』とか言われても困る」



 皆、納得してくれたようだ。

 まぁ、婆さんやパン爺さんは笑いをこらえているようだが。



「ならいつ消すのだ?」


「今夜にでも。

 一応ジジイに詐欺担当の居場所確認を頼んでいる」


「あいつ等の集まる家に全員揃っているそうじゃよ。

 ありがたいのぅ。

 探し集める手間が省ける」



 周囲はパン爺さんに恐れを抱いているようだ。

 当人は言葉通り「面倒事減ったぜラッキー♪」程度なのだろうがな。



「ならこれから消してくる。

 この会議は終わりでいいか?」


「じゃのぅ……いや、待て。

 アルツ、レビー。

 そなたらに確認じゃ。

 今後王都で詐欺担当として誰が対応する?

 二人で決めよ」



 婆さんが詐欺師の二人に命ずる。

 確かにそうだな、今後空席になる詐欺担当の面倒をどっちが見るか。

 何か二人で火花散らしてるけど、どっちも嫌がってるだろ?



「ババア、すまんがそれはそっちでやって結果を後日教えてくれ。

 うちらと……ジジイは消す方を終わらせてしまいたい。

 ルーシーが睡眠不足だと怒るんでな」



 あ……僕知~らない。

 婆さんとパン爺さんも同じこと思ったみたい。


 ルーシーは……オーガ―率五十パーセントってとこかな?

 カル、食われちまえ。

 どっちの意味かは言わんがな。



「……そうだね、今日の会議は終わりとするかい。

 あ、ニフィ。

 そこのキンスンはこっちで消しとけばいいかい?」


「お願いします。

 なお、まだ死んでませんのでとどめを汚れてもいい場所でお願いします」


「……死んで無いのかい?」


「放置しておけば死ぬでしょうけどね。

 現時点ではへし折った背骨から下が動かない位かと。

 未来は無いけどギリギリ生きていると言ったところでしょうか。

 消すことこそ優しさでしょうねぇ」


「……うちの黒服に都合のいい場所に案内させる。

 そこで消しておやり。

 その後残りを処分しに行っておくれ」


「かしこまりました」



 婆さんも呆れてしまったようだが、個人的には想定通りなんだがなぁ。

 そのまま会議は解散。

 僕は黒服に連れられて遺体置き場に連れて行かれた。

 娼館で病に倒れた者をここに置いていくのだそうだ。



「そちらに穴が掘ってあります。

 捨てておいていただければ後日土を被せておきます」


「分かりました、少し離れていただけますか?

 血が飛ぶかもしれませんので」



 こちらの言葉を善意と受け取ったのかそれなりに離れていく。

 まぁ、血塗れになりたくはないわな。



「さて、キンスン。

 ここで殺してやろう。

 とは言え、最期に一つ教えてやろう」


「……何をだ?」



 おぅ、声を出せるんだ。

 ちょっと驚きだ。




「僕の名を。

 サイナス国王家派武官貴族ジーピン家三男、ニフェール・ジーピン。

 お前等の様な面倒事ばら撒くような輩が嫌いな学園生だよ」


「なっ」


「ついでに、プロスって奴とアッペ・シーカムとか言う奴知ってるか?

 最低でもシーカムの方は知ってると思うんだが」


「……どちらも知っている。

 うちの者だった」


「あいつらを叩きのめしたのがうちの実家だ。

 いやぁ、今度の建国祭で両親にいい報告ができそうだ。

 なんせ、実家でバカやった奴らを潰すんだからな」



 個人的にはご褒美欲しい位なんだけど?

 まぁ、「よくやった」の言葉だけだろうけどね。



「さて、言うべきことも終えたし、死になさい」



 ゴ キ ッ !



 首を折り、キンスンの身体から力が抜ける。

 一応念の為心臓に一突きして遺体を捨てる。


 哀れだねぇ、裏切り者の末路ってのは。



 その後黒服に礼を言ってカル達と合流。

 案内に従って詐欺担当のアジトに向かう。


 とは言ってもやることなんて大したことは無い。

 あっさり襲撃、血の臭いを嗅ぎつつ書類を漁る。


 血塗れでやることじゃねえなとはカルの弁。

 本当にそうだよな。


 書類からは期待以上の情報が混ざっていた。

 北部テュモラー家の当主オステオからの手紙だった。


 これについては一旦婆さんたちに見せてから侯爵たちに渡すか。



 娼館ギルドに戻ると解散していて残っているのは婆さんだけだった。



「……本当にアイツは裏切ってたのかい。

 ダメンシャも向こうで泣いてそうだねぇ」



 しんみりとする婆さん。

 カルやパン爺さんも同じような反応だ。


 そりゃそうだよなぁ。

 話を聞く限り、ダメンシャがまともだからこそキンスンのクズっぷりが目立つ。



「とりあえずこの資料は侯爵方に渡すね。

 とは言え『こんなの知らない』って言われれば終わりだからなぁ」


「あぁ、確実に否定されるだろうねぇ」


「なんで、一応提出するけどオマケとして使う位かな。

 まぁ、僕が思いつかない策があるかもしれないけどね。

 そこはお二方に任せるつもり」


「……そうだね、ニフェールが全て背負う必要は無いからねぇ。

 あんたもたまには他の人に仕事を押し付けな」



 婆さん、そんな優しくされると堕ちちゃうじゃない……。

 とはいえ、実際頑張り過ぎと言われると何も言えない。



「まぁ、そのあたりは明日にでもお二方と話してみるよ。

 んじゃ、今日はこれまでと言うことで」


「あぁ、他の者たちには妾から壊滅完了と伝えておくよ」

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