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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
10:東奔西走
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61

「とりあえず皆お疲れ様。

 この後、マーニ兄に連絡して終了なんだけど……。

 寒いから少しここで温まっていこうか」


「賛成、オッサンの身体にはこの寒さはキツクてなぁ」



 カル、へたれたことを言ってるんじゃない!




「なんだ、ルーシーに温めてもらえばいいのに」


「だから何でそっちのネタに繋げんだよ!

 襲撃前にも似たようなこと言ってたじゃねえか!」


「さっきも言ったけど、繋ぎやす過ぎて他のネタが思いつかないんだよ!」




 ナットはキャーキャー言ってるし、カリムは顔真っ赤。

 ティッキィは「だからサッサと……」と小姑モード中。

 パン爺さんは……ニヤニヤ笑いが止まらない。



「まぁ、そこらは後でたっぷり楽しんでもらうとして、軽く温まった後の話だ。

 カルとナットはチアゼム家に戻ってラーミルさんたちに襲撃終了報告を。

 マーニ兄を案内したら他も戻ると伝えて」


「おぅ」「は~い」


「ティッキィとカリムは周囲のチェックをお願い。

 具体的にはマーニ兄がここに来るまでに監視が追加されないか確認。

 パン爺さんはこのままそっちのギルドから情報得られる?

 王宮からここまで監視の目は無い?」


「監視は無いのぅ。

 この辺りは当然として王城前もいなかったぞ」


「事前に調べてくれてたんだね。流石!」



 あ、なんかふんぞり返ってるし。

 まぁ、当人が嬉しそうだしいいか。



「なら、パン爺さんはマーニ兄が来たら婆さんの所に報告入れてほしい。

 あ、新しい強盗の長になる奴にもね」


「分かった、で、(ぼん)は呼びに行くのか?」


「うん、一番手っ取り早くてかつ王宮に入るのに邪魔が入らないからね。

 他の面々だと下らない横槍が入るかもしれないから」



「あぁ……」と呆れつつ納得してくれるパン爺さん。

 邪魔者っていくらでもいるからねぇ。



「んじゃ、皆そろそろ動けるかな?

 明日も書類仕事が待ってるし、さっさと終わらせて休もう。

 では作業開始!」



 各自動き出し、ギルドには生きている者はいなくなる。

 僕は大急ぎで王宮に向かい、マーニ兄と合流する。


 なお、門番はやっぱりインスだった。

 いや、今回はビビらせてないよ?

 勝手にビビってたけど僕は何もしてない。

 信じて!



「や~っぱりお前がきたか」


「もぅ、マーニ兄ったら分かってる癖にぃ♪」



 というかバレバレなんでしょ?

 悪戯好きなマーニ兄がこの程度のこと気づかないはずないもんね。



「まぁ、分かりやすかったな。

 お前らしいと言うべきか。

 で、もう死体と書類運びはやっていいんだな?」


「遠慮なく。

 こっちはマーニ兄が運び始めたらチアゼム家経由で寮に帰るよ。

 明日は朝食食べたらラーミルさんたちと合流して王宮に行くから」


「分かった、こっちも予定通りに運んだら監視を置いて終わりだよ。

 あ、ちなみに担当の一人はメリッスだ」



 ほぅ?

 とは言え、わざわざメリッス殿を付ける?

 一応現在の第二部隊で四番手って感じでしょ?

 もっと立場的に下の人にやらすとか……まさか?



「……ビーティ殿に書類整理押し付けられるのなら徹夜監視も耐えられる?

 だから積極的に立候補でもした?」


「やっぱりわかったか。大体合ってるぞ。

 それにビーティが気づいたのは決まった後。

 当人滅茶苦茶悔しがっていたよ」



 クックッと笑うマーニ兄。

 部下が苦しむのを見て喜ぶとかどこの家の子だろう?

 あ、うちの次兄か。



 ん~、ビーティ殿がどこまで付いてこられるかだよなぁ。

 まぁ、そこは明日考えるか。



「んじゃマーニ兄、サッサと行こうか」


「だな、あまりのんびりしても風邪ひいちまう」



 夜間待機されていた第二部隊の方々に軽く挨拶して現場に案内する。

 ちなみにビーティ殿は半分抜け殻の様になっていた。

 よっぽど書類が嫌いなんだな……。



 到着すると、カリムとティッキィが待っていた。



「何もいなかった?」


「静かなもんだ。

 こんな楽な襲撃は長い人生の中でも記憶にないぞ?」


「そう?

 結構こんなもんだよ?」


「そんなぶっ飛んだ反応するのはジーピン家くらいだろうよ」



 酷いっ……って、ペスメー殿とビーティ殿?

 何納得してんの?


 マーニ兄、あなたの実家でしょ?

「確かにな……」とか言わないの!



「色々言いたいことはあるけど、マーニ兄。

 後は任せるね。

 明日、マーニ兄も来るんでしょ?」


「大して手伝えるとは思えんがね。

 流石に一応この部隊のトップだからいないわけにはいかんだろ」


「わかった、んじゃ執務室に集合でいいかな?」


「あぁ、それでいい。

 ちゃんと暖かくして寝ておけよ」


「暖かくなりたいけど、禁止されてるからねぇ」


「そっちじゃねえよ!!」



 あれ、マーニ兄?

 こういう軽口好きでしょ?

 何で恥ずかしがってるの?

 部下の方々笑ってるけど。



「何で俺の部下がいる前で言うかな……」


「さっきカルをこのネタで揶揄ったからだねぇ。

 ノータイムで思いついちゃったし」


「あぁ、そう言えば一番揶揄いやすい奴がいるもんなぁ」



 多分あいつを超えるネタ要員はそうそう出てこないよ。



「まぁ、僕らはこれで失礼するね。

 そっちもサッサと仕事終わらせてゆっくり休んで」


「あぁ、じゃあまた明日」



 マーニ兄は死体が待っている家に入っていく。

 僕たちはチアゼム家に戻る。

 あ、パン爺さんはお喋りしている間に娼館街に移動していた。

 下らないおしゃべりに付き合わせるつもりもないから放置してたけど。



「おかえりなさい、ニフェールさん♪」


「ただいま、ラーミルさん♪」



 軽く抱きしめキスをする。

 ルーシーも流石にこれを邪魔することはしないようだ。



「一通りやるべきこと終わりましたので、明日王宮で書類調査を行います。

 ……まぁ、マーニ兄の部隊が脳筋系の部下が多いためですが」


「騎士全体がそれじゃないの?」



 おっ、ナット結構きつい言葉だね。



「まぁ、それは否定しない。

 というか、書類仕事系の知識を教える授業ってあまりないからなぁ。

 皆苦手意識が強いんだ」


「教えればいいのに……」


「騎士イコール戦闘という考え方に凝り固まっているからねぇ。

 スホルムで領主代理やったペスメー殿。

 あの人はかなりできると思うけど、それ以外はねぇ……」



 どうあがいても無理でしょ。

 あ、マーニ兄ならペスメー殿と同じくらいは出来そうだけどね。



「なので、マーニ兄とペスメー殿が涙する場面を見ないためにも少し手伝います。

 とは言え、スホルム対応よりは確実に楽なので、午前中で終わるんじゃない?

 そしたら午後はデートしてもいいよ?」



 こう言うとナットは大喜び。

 カリム、顔赤くするのは分かるが受け入れてやれ。

 ルーシー、カルの首に縄付けてでも連れてけよ?



「キンスンを処分するのは明後日以降だね。

 カル、明日の夜に婆さん所行ってそこら辺調整しておいて。

 昼間帯はルーシーとデートに当てていいから」


「だからデートは気にすんな!

 こっちはこっちで――」


「――どうにかしてくれるんだな?

 ルーシー、明日の午後はカルが堕としに来る様だ。

 キッチリ受け入れてやってくれ」


「かっしこまりましたぁ!!」



 表情が固まるカル。

 大歓びのルーシー。

「我が策成れり!」と笑顔の僕。


 ラーミルさんはとびきりの笑顔でルーシーを見てる。

 ナットも大喜び。

 カリムは……あぁ、ようこそ墓場へって感じか?


 ティッキィは……少し涙ぐんでるな。

 今まで何度言っても動かなかったからなぁ。

 苦労を思い出したのだろう。



 さて、カルよ。

 ここまでお膳立てしてやったんだ。

 少しも動かなかったら……ルーシーが暴走するぞ?


 覚悟決めておけよ?




 解散し、僕は寮に戻る。

 サッサと眠り次の日。


 予定通りチアゼム家経由で王宮へ。

 執務室に向かうとちょうど徹夜明けのメリッス殿がやってきた。



「おや、ニフェール殿。

 書類整理っすね、お疲れ様っす」


「メリッス殿も徹夜での監視お疲れ様です。

 それが書類整理やりたくないからであっても」



 ギ ク ッ !



 そんぐらい勘づくの想像できない?



「はははっ、何の――」


「――マーニ兄がメリッス殿が徹夜監視だと教えてくれたからねえ。

 その位の姑息なことしそうだと思っただけだよ。

 ちなみにマーニ兄も当然勘づいてるよ?」


「……え?」



 呆然としているメリッス殿を置いてマーニ兄の執務室に到着。

 ちなみに騎士側はマーニ兄、ペスメー殿、ビーティ殿。


 チラッと書類量を見てみると……。

 ふむ、以前スホルムのおバカな商人の調査した時と同じくらいか?

 まぁ、強盗ギルドが再始動してそんな経ってないからなぁ。



「おっ、来たなニフェール!

 お前に逢いたいと書類が願っているぞ!!」


「何、僕に浮気を勧めるの?

 母上に報告しないと……」


「悪かった、絶対に言わないでくれ!!!」



 全く……。



「わざわざ助けに来た人物を不愉快にさせてどうするの。

 というか、ラーミルさんもいるのに……」


「……すまん。ちょっとはしゃぎ過ぎた」



 ラーミルさんが怒ったらロッティ姉様にも情報届くからね?

 後でたっぷり絞られなさい……ベッドで。



「んで、ここにあるので終わりなの?

 それとももっとある?」


「いや、これだけだ。

 正直、スホルムの商会を思い出すな」



 あぁ、同じこと思ってたか。



「そうだね、なので多分午前中で終わるんじゃないかな。

 さっさと終わらせよう。

 ということで――」



 メンバーに仕事を割り振り作業開始。

 僕は一番仕事苦手そうなビーティ殿のフォローを並行して行う。

 ……マーニ兄、無言で礼をするくらいならそっちで教えてあげてもいいのよ?



 そうして三時間ほど書類とにらめっこ。

 予想通りではあるけど、あっさり終わった。

 大したことは書かれておらず、裏情報も見つからず。

 メラムとのやり取りも証拠は残さず。

 ……まさか文字見るの苦痛だったとかじゃないよな?



「予想以上に何も無かったな」


「うん、何となくだけど、北部からしたら末端だったのかな?

 キンスンを潰すときにあちらも調査しないとマズいね。

 ここで情報の一端が見つかればそのまま第七の北部関係者を潰せたのに」


「まぁ、無いものを強請っても仕方ない。

 これで今日はおしまいだな。

 礼と言ってはなんだが昼飯を奢るぞ?」


「お、それはありがたい。

 カル達どうする?

 昼食べてからデートに行くか昼食もデートで行きたいか?」


「ごちになりま~す!」



 早速ナットが堕ちたか。

 ティッキィも食べるそうだ。

 カル達は?



「ゴチソウニナリマス……」



 あれ? 何その反応?

 もしかして「胃袋を捧げよ!」のポーズ取りそうなの?

 ルーシーの期待に応えるのがプレッシャー?


 チラッとマーニ兄がこちらを見るが、ルーシーをチラッと見ると納得した。

 なんと言うか「あぁ、いつもの事か」って雰囲気だった。




 その後皆で昼食を食べ、そのまま解散。

 なお、食べたのは焼肉でした。

 マーニ兄達はそのまま王宮に戻り、僕たちはそれぞれ動き出す。

 僕は当然ラーミルさんと♡



「カルはちゃんと対応できるでしょうか……」


「無理でしょうねぇ。

 でもほんの少しでも進展見せないと……」


「ルーシーがオーガになりますねぇ」


「あれ止められる自信、僕にもないんですけど……」



 止められないと言うか、止めたくないと言うか。

 正直、カルがグダって無ければ苦労はしないんですけどねぇ。



「そこは祈るしかありません。

 それに、僕も堕としにいきたい人もいますし♡」


「まぁ♡」



 そう言って二人デートを楽しんだ。

 まぁ、連れ込み宿は流石にやめたけどね。

 僕が我慢できないし。



 そうして、チアゼム家に戻ると……悩まし気なルーシーがいた。



「えっと、どう判断すればいい?」


「……進展の有無ということであれば逃げずにキスしてきたわ。

 でも、正直後一声を期待していたのよねぇ……」



 あ~……。



 キスだけじゃなく、もう少しこう、なんかあって欲しかったか。

 と言ってもなぁ、横で「そこだ、いけ!」なんて言う訳にもいかないし。


 建国祭の頃にプレゼントでもやるか?

 気絶させたカルを裸にしてリボン……ならぬ縄で縛ってやるとか?


 喜ぶかもしれんし「そこまではちょっと……」とか言い出すかもしれないな。

 まぁ、提案するのは止めておくか。

 縛らないと萌えなくなっても困るしな。



「……ねぇ、ニフェール様?

 正直に言って?

 何考えてる?」


「ルーシーの新たな性癖が現出するのを防ぐことにした」


「どんな策考えたのよ!!」


「カルを縛ってルーシーにプレゼント」


「是非頂戴!」



 あぁ……新たな性癖じゃなかった。

 既出の性癖だったか……。


 そんなことを考えているとラーミルさんがルーシーを説得し始めた。



「ルーシー、これからも一緒にいる時間は長いのよ?

 初手からそういうことしちゃうとその後どうするの?

 あまりにも激しい事すると後々困らないかしら?」



 ラーミルさん……それ説得じゃない。

 明るい家族計画にしか聞こえない……。



「……確かに後を考えると縛りはまだ早いですわね。

 仕方ありません。

 以前よりかは頑張ってキスしてきたのでそこで手を打ちますか」



 良かった……のかねぇ、カル?

 ルーシーは確実に今回よりも激しいのを望んでくるぞ?


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