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一通り話し合いも終えそうなところで、ペスメー殿が何かを思いついたようだ。
……何、その表情?
悪戯とかじゃないよね?
「ニフェール殿。
提案なのだが、当日ラーミル嬢を連れてくることはできるか?」
そ、そう来たかぁ……。
セリナ様の側に立って説明できる人物としてラーミルさんはベストな選択だ。
女性視点での説得ができるからホルターの母親側への対抗策になる。
僕は父親側の説得にかかればいいしね。
でも何となく「ついでにデートしたら?」なんて雰囲気が感じられるけど。
ま、気づかなかったことにしときましょうか。
「この場で確証は取れませんけど、確認してみますよ。
確かにあの時の面々で女性視点で語れるのラーミルさんだけですしね」
いや、ルーシーやナットでも語れるけど、貴族の立場としては無理だし。
「あぁ、それで思いついたのはラーミル嬢なんだ。
男性視点でだけ語ってもうちの母が納得するかと言われるとなぁ。
ならスホルムに帯同してるし、ホルターとのデートも見ているんだろ?
もしかするとニフェール殿以上に母への説得力が強そうな気がしてな」
あぁ、もしかしてペスメー殿がルミー様を紹介した時の一番の壁だった?
「確かにおっしゃる通りですね。
いくらお二人がフォローして頂いてもセリナ様への接点は短すぎる。
加えて女性視点でとなると、選択肢は限られますね」
「あぁ、流石にルーシー嬢やナット嬢に説明させるというのは無理だろ。
いや、何となく説得できそうな気もするんだかな、特にルーシー嬢」
まぁ、元貴族だしねぇ。
酸いも甘いも嚙み分けられる人物ですから。
「でも、立場的に受け入れられるか怪しい。
ならやはりラーミル嬢だろ」
「でしょうねぇ。
とりあえず確認してその結果を王宮で報告しますよ。
数日お待ちください。
あと、ホルターにも学園で伝えるから」
これでだいたいやること決まったかな?
「では、ご両親が王都に到着した時にスケジュール決めましょうか。
こちらも色々あるので調整したいですし」
「あぁ、アゼル殿とマーニ隊長の爵位の件か。
全体周知用にやるんだろ?」
えぇ、それもだしディーマス家や禿の処分の打ち合わせも待ってます。
色々あるんですよね。
「それ以外にもペスメー殿の副隊長就任も同じじゃないの?」
「あ……そういうこと?」
え、ちょ、忘れてたの?
「今回は隊長三名、副隊長五名、部隊一つが消えてますからねぇ。
騎士団としての周知は結構手間かけそうですよ?
貴族側も不安でしょうし」
「あ~、そうだよなぁ。すっかり忘れてたわ。
俺たちは今の環境に慣れ親しんじゃったから今更だけどな」
気持ちはわかります。
でも全体周知と言われると確かに必要ですからねぇ。
面倒だけど我慢するしかないですね。
「まぁ、少し普段よりおしゃれして行く方がいいんじゃない?」
「だなぁ、普段の格好ではマズいんだろうなぁ……あぁ、面倒臭ぇ」
まぁ、そのあたりはマーニ兄も同じこと言ってるんだろうなぁ。
一通り話を終え、昼食をご馳走になる。
いや、かなりありがたかった。
塩パスタ生活な僕からすればありがたすぎて……。
昼食後、バルサイン家を辞しホルターとも別れ、少し王都を散歩する。
プラっと歩いてみると、ビスティーが芋の細切りを売っていた。
結構売れ筋の商品になったようで、ホクホクの……あれ?
あそこにいるのはベル兄様とティアーニ先生?
あら、細切り購入して……やっぱりやっちゃいますよね。
えぇえぇ、遠慮なくブチュッとやっちゃってくださいな。
邪魔はしませんから。
一応実行結果までは確認したのでそのままフェードアウト。
……今日チアゼム家に行ったときにラーミルさんに報告かな。
その後もブラブラしていると少し懐かしい通りに入る。
今使っている双剣を作ってもらった鍛冶屋。
あれは学園に入る直前、珍しく父上が奮発してくれた。
だが、どこでこの鍛冶屋の情報を得たのやら。
もしかして、双剣持っていくべきと思ったのは虫のしらせ?
「失礼……あ、先客いるのか。
忙しいならまた後日来ますが?」
なんか客がいるようだな、混んでいるようならまた今度にするか?
というか、客がなぜかビクッと反応してるな?
なんでだ?
鍛冶屋……結構な爺さんだがパン爺さんよりは若そうだな。
「あぁ、大丈夫ですよ。
ちょっと昔の友と話していた所でして。
で、どうなさいました?」
「以前、こちらで購入させて頂いたこの双剣。
少し見て頂くことできませんか?
一応自分なりに研いだりしたのですが、最近店で確認してもらわなかったんで。
丁度この辺り通ったんで、久しぶりに見てもらった方がいいかなって」
「どれどれ……ちゃんと使っているようだな。
研ぎ方も素人にしては素晴らしい。
これ、何時頃購入されました?」
「学園に入る直前でしたから……二年経ってない位ですね」
まじまじと見る鍛冶屋。
え、そこまで見るほど何かあった?
「あ、いや、悪い意味じゃないんです。
結構武器として使っている割には歪みとかも無い。
製作者冥利に尽きるってもんですよ」
おぉ、プロから太鼓判押されてしまった。
「このまま使ってくれて大丈夫ですよ。
もし何かあったらうちにお越しください。
修繕などもやっておりますので」
「ありがたいです。
最初の一年は大して使う機会が無かったんですけど……。
数ヶ月フル稼働でしたので。
僕じゃ判断付かないダメージが無いか確認をお願いしたかったんです。
安心しました」
「どんな使い方してるんですか……。
いや、教えないで結構です。
なんというか……危険な感じが」
いや、そこまでビビらんでも……。
なんかご友人の肩が震えまくっている……ん……だ……あれ?
「……ティッキィ?」
「……バレたか」
そう言ってこちらを向くティッキィ。
いや、あれだけ肩振るわせてたらおかしいと思うだろ?
「なんだ、浮気中か?
ヴィーナに報告しちゃうぞ?」
「違えよ!
ここの鍛冶屋は以前から世話になってたんだよ!」
世話?
もしかして被害者の会の方?
「その……もしかして、もしかしちゃう?
ティッキィと同じ被害者の会の方?」
「その言い回しもどうかと思うが、その認識で合っている。
カル達も世話になっているんじゃないか?」
「ちょ、ちょっと待て!
ティッキィ、こちらのお客さんをご存じなのか?
貴族っぽいんだが?!」
あぁ、丁寧な言葉かなぐり捨てちゃった。
お互いにアイコンタクトした結果、ティッキィが説明することになった。
「先ほど軽く話したろ?
カル達が壊滅したこと、俺が東部で仕事してたこと。
そして、最近カル達と合流したこと。
その顛末に関わる方で、今の俺の上司だよ」
「改めて初めまして。
ニフェール・ジーピンと申します。
今騎士科二年、マギーのおっちゃんの頃に暗殺者ギルド潰した二人の子供です」
……顔色が赤→白→青と変わっていく。
これ、頭に血が回らなくなって倒れるとか無いよな?
「あ~、ビート落ち着け。
別にニフェール様はお前を殺しに来たわけじゃねえよ。
第一さっきも話したと思うが、ビスティーのことも知ってる。
そしてあいつは殺されてない」
「……殺し損ねた奴を狙いに来たとか無いんだな?」
「なんでそこまで怯えているのか知らんが、そんなことは無いぞ。
第一、その場合は俺がここに来ること無く死んでいる」
何と言うか、あんたら会話内容酷くない?
「えっと……念の為確認なんですけど、うちの両親の大暴れでトラウマ?」
「あったり前だろ!!」
うっはぁ、本気でキレてる!
「いきなりドカン!
暴れてクラッシュ!!
意識戻ったら皆倒れてる!!!
一部は縄で縛られてモゴモゴ言ってる!!!!」
あ~、想像通りというか……。
「これでどうしてトラウマにならないと思った!
今でも寝ている間に音がしたら怯えてるんだよ!!」
半泣きでそこまで言われるとなぁ……。
本当にうちの親はやらかしてんなぁ。
「えっと、まずはうちの両親が酒の勢いで大暴れしてスイマセン」
「……酒の勢い?」
「一応そう伝え聞いておりますけど……」
「暗殺者ギルド壊滅させる意図は無し?」
「多分……そうじゃないとマギーのおっちゃん受け入れないと思う」
……あれ、何で泣いてるの?
慌ててティッキィを見たけど、あっちも慌てていた。
「マギーさんの居場所が分かったのか……」
「え、あれ、もしかしてマギーのおっちゃんって行先言わずに消えたの?」
「あぁ、俺たちも連れて行ってくださいと言ったら断られてな。
どこに行くのかと思っていたんだが……」
まぁ、壊滅させた夫婦(当時はカップル)の所に向かったとはねぇ。
流石に想像つかないよなぁ。
「えっと、まずマギーのおっちゃんはうちの実家の御者やってます。
つい最近も王都に来てますね。
その時にティッキィとも逢ってます。
普通に元気ですので安心してください」
「……あぁ、ティッキィも頷いているし、嘘じゃないんだろう。
よかった……」
涙ぐむビートさん。
とてもうれしそうで……あれ?
確か、僕が学園入学する際にもおっちゃん御者やってくれたよね?
んで、この双剣を購入する際も。
……もしかして、おっちゃん王都の部下たちのこと頭に無い?
もう勝手に生きてるだろうとかそんな感じ?
もしくは奥さんとイチャついてて忘れちゃった?
……言えない、これは言ってはいけない!
……後で、王都時代におっちゃんに奥さんいたのかティッキィに聞いてみるか。
「どうした、ニフェール様?
なんかあったか?」
ティッキィ、変なところで勘が冴えてるな。
あったよ、この場では言えないけどあったよ!
「ん~、どうせチアゼム家に行くし夜にでも説明するよ。
んで、ビートさん。
うちの親のやらかしからこの店に移ってきたの?」
「直接ここに移ったわけじゃねえが大体合ってる。
ギルドが壊滅したんで別の鍛冶屋に移ってな。
そこで働いて、この店を確保して独り立ちして今に至ってる」
ほぅ、順調に仕事してんだねぇ。
「あれ?
でも、うちの父親と会ってなかった?
具体的に言うと、この双剣作ったとき。
もしくはうちの兄の大剣とか大鎌とかも」
どんどん顔色が悪くなるビーツさん。
もしかしてお互い顔分かってなかった?
「え、あれ買いに来たのって……」
「うちの父親が付き添いで長男と次男がそれぞれ買いに来たんじゃないかな。
……アレとは商売の上でいつ頃から関係している?」
「俺が独り立ちして数年経ってからだな。
偶然短剣を買いに来た客だった。
えらく出来を気に入られてそれからの付き合いだな。
とはいえ、王都に住んでいるわけじゃなさそうだから年一回会うかどうか。
今年はまだ会っていないが、来るとしたら建国祭の辺りだな」
多分鍛冶師としての実力だけしか見てないね。
結果、互いが気づくことなく接点が出来上がっちゃったんだ。
フォローし辛いなぁ……。
「ちなみに、母に殴られた? 父に縛られた?」
「……縛られた」
「あぁ、ティッキィと同じか」
なんかティッキィが「それ言うんじゃねえよ!」と騒いでいるがまあいいか。
そんな感じでオッサン共+学園生が騒いでいると、どこかから声が聞こえる。
僕よりも若い男性の声か?
「……あ、親方。
やっと見つけた……裏口から商人さんが来られてますよ?」
「え……あっ!
すまん、ちょっと相手してくる。
ポル、すまんがこちらにお茶を出してくれ!」
そう言って大急ぎで裏口に向かうビート。
呆れた感じで溜息を吐いてポルとやらは僕たちに頭を下げて来る。
「すいません、親方が予定を忘れていたみたいで。
只今、お茶を用意しますので」
「あぁ、申し訳ない」
二人ともいなくなったところでティッキィと少し話す。
「ここで会うとは思ってなかったよ、まぁそっちもだろうけど」
「そりゃあこんなの想定してたらむしろ驚きだが?
とはいえ、ジーピン家でもここ使っていたのか……」
「僕の双剣やマーニ兄の大鎌を作れるほどの技量だからねぇ。
そりゃあ独り立ちも出来るだろうよ。
あ、ちょっと確認。
マギーのおっちゃんって王都にいる頃に奥さんや彼女っていた?」
「……聞いたこと無いな。
まぁ、今はいるのかもしれないが、当時はそう言う話は無かった」
あぁ、予想が当たっちゃいそう。
「マギーのおっちゃん、王都の事すっかり忘れてるとか?
いくら偶然が重なってもねぇ、過去数度ニアミスしてるのに……」
「……ニフェール様、この件はここで止めとけ。
どうせ今日来るんだろ?
その時話そう」
ティッキィも想像ついちゃったっぽいね。
「分かった。
ちなみに、ここに来たのって以前お願いした件だったんでしょ?
どんな感じ?」
「今王都にいる面々は皆普通の生活ができている。
無理に助けることは無い。
むしろ、一番危ういのは……ビスティーかもしれん」
あぁ、店維持できないからねぇ。
どう考えても屋台一本になりそうだし、あれもウケなくなったら終わり。
確かに一番危ういかも。
「ちなみに他の人たちってどんなことしてるの?」
「色々だな。
飲食店の店員が数名、商人の部下として働いてるのが数名。
大工や細工師、薬師になったのが数名。
一部はパン爺さんの所に移った奴もいたな」
ほ~、色々……って、薬師?
「確認なんだけど、薬師って……まさか関わらないよね?」
「ん?……あ、そう言うことか?
すまんが現時点では分からん。
後で爺さんに聞いてみるか?」
「お願い。完全に関わっているのなら潰すしかない。
でも、もし生贄要員とされているのなら助けた方がいい」
「生贄……なるほどそう言う可能性か。
分かった、俺もあいつを見捨てたくないし頼んでおこう。
他に思いつくのはあるか?」
思いつくのって言われてもなぁ……。
「商人の部下って言ってたけど、その商人は何してる人?
修道院関連に関わるのなら同じように調査。
他は……現時点では保留かな」
「分かった、こちらで個人的に相談しておく。
金は……今までの支払い分に合わせられるか聞いてみようか」
「まぁ、あちらが損しないようにお願いね?
というか、変なところで関係ができてるなぁ。
暗殺だから薬師は……え、もしかして毒使い?」
「そんなところだ。
とはいえ、知識はあるが常識もある奴でな。
ダッシュのような馬鹿なことしないから重宝してたな」
……それ、比較対象がダメすぎじゃね?
まぁ、信用できそうな人物なことだけは分かった。
【元暗殺者】
ビート:元暗殺者ギルド所属。現鍛冶屋。
ギルドの裏方で皆の武器を作っていた。
→ カブの近縁種(ビーツの名で販売されてる)から。
ビスティーの元 (ハイビスカスティー)と同様に血圧下げる可能性あり。
ポル:ビートの弟子。
※ 暗殺者では無いが、ビートの繋がりでこちらに入れた。
→ ポリフェノールから。
こちらも高血圧対策に期待される栄養素




