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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
9:婚約者の憂鬱
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17

◇◇◇◇


 その後、購入したドレスも届きカールラ様のお友達の来られる日がやってきた。

 以前の裁判と同様に、ジャーヴィン家にケダモノたちが集まる危険な日。



「やっぱり来たわね!

 って、うちの愚兄連れて何してんのよ!」


「決まってるじゃない!

 婚約できたことを見せるために連れて来たのよ!!

 ついでに今回どれだけニフェール君がレベルアップしたのか見に来たわ!!!」


「何のレベルアップよ!」


「女装に決まってるじゃない!!」



 ティアーニ、あんた自分の教え子をネタにしないでよ!

 ベル兄さん、婚約者の行動少しは止めなさいよ!



「ニフェール君、ラーミルさん、無駄よ。

 ティアーニはもう私の手には負えないわ」


「ちょ、オーミュ先生、諦めては駄目です!

 あなたが諦めたら誰がこの暴走教師を止めるの?!」


「もう駄目なのよ……。

 カールラやロッティ並に壊れ始めてきちゃったの。

 私では抑えきれないのよ!」



 そこ、言ってることかなりヒドイけど、他の面々に聞かれてるわよ?

 カールラ様が結構頬がヒクついているけど?

 まぁ、愚痴られるのは私じゃないけど。


 というか、ニフェールさん?

 ノリがいいのか本気で言ってるのか判断付かないんですけど?

 そこまでティアーニって普段からヤバい行動取ってるの?



 というか、たまにチラチラと危険人物が見えるんですけど?

 何故いるのです、パァン女史?



「あら、ラーミルさん。

 こちらに居られたのですね」


「ええ、パァン女史。

 どうされたんです、ここは魑魅魍魎の蠢く場所。

 危険人物の集う場所ですけど?」



 なに引き攣った表情してるんですか?

 ここにいるメンバー見て違うと言う人見てみたいくらいですが?



「え、えぇ、侯爵夫人方からお誘い頂きまして。

 長年の懸念をクリアできそうと言われてやってきましたわ」


「懸念?」


「まぁ、そこは私の都合ですので、お気になさらず。

 もしかすると懸念解消にご協力頂くかもしれませんけどね」



 懸念ですか……。

 良い方なら技術的な件、淑女科秘伝の歩法の様な感じ。

 悪い方なら性癖的な件、ロッティが暴走しそうな方向でしょうね。

 最悪として悪戯やらかす?


 流石にそれは無いか。

 親世代、特にお義母様(【岩砕】)に喧嘩売るとは思えませんし。


 何となく悪い方の気配が濃厚ですが……。

 たまにまともなことするから読めないんですよねぇ。


 第一、前者なら確実にニフェールさんの力が必要でしょうし。


 あぁ、また面倒なことになるのですね……。



 そんなことを考えていると、ジャーヴィン家の皆さんが……って、あれ?

 女性陣は分かるのですけど、どうして侯爵様が?

 ……チアゼム家も連れてきてますね。

 ジーピン家も?


 あぁ、いや、アゼル様やマーニ様はまだ分かるのです。

 妻、もしくは婚約者に連れられてきたと想像つきますし。

 そして、アムル君も、フィブリラ嬢と会いたいから来たというのも。


 ですが、アダラーお義父様は?

 こう言うの嫌がりそうな気がするのですが?

 それに両侯爵。

 今回そこまで注視する話じゃないですよね?

 何となく、無理やり連れてこられた?


 あ、アニス様がチアゼム侯爵の頬を抓ってますね。

 もしかして、そこまでするほど侯爵方やらかしてます?


 何かやらかして罰として連れてこられた?

 ご愁傷さまです……。




「さて、招待した方全員揃ったようですので、始めましょうか。

 本日は以前女装したニフェールちゃんが都合により再度女装します!

 また、前回のドレスが夏用だったので、今回冬用を用意しました!

 なお、装飾品は無しですが化粧までは施します……ニフェールちゃんが。

 最後に、婚約者であるラーミルが男装してこのペアでダンスしてもらいます。

 以上、疑問あるかしら?」


「はいっ!

 着替えシーンは見れるのでしょうか?!」



 ティアーニ……アンタ一応教師でしょ?

 早速反応してるんじゃないわよ!!



「ラーミルは別室で着換えてもらいます。

 ですがニフェールちゃんは……こ・こ・で・着替えま~っす!!」




 う お お ぉ ぉ ぉ ! !




 いや、あんたらなによその雄叫びは!

 カル、カリム、ティッキィ、オドオドしない!


 この面々はこれが普通だから慣れなさい。



「他に質問ない?

 なら、まずラーミル。

 男装してきてもらえるかしら?

 場所は私が案内するけど、ルーシーとナットは一緒に来て頂戴。

 それと、ニフェールちゃん?

 待ち時間を皆からの質疑応答時間にしたいのだけど、構わないかしら?」


「言える範囲であれば答えるのは構わないけど?

 回答拒否は許される?」


「まぁ、無茶な質問なら拒否ってかまわないわよ?

 少し情報をあげれば大喜びするから。

 まぁ、私もだけど」


「自覚あるんだ……」



 そう言い残して私は別室に連れて行かれました。

 扉が閉まる直前に「ラーミルとシたの?」という質問が飛んでいたんですけど?



「カールラ様、既に質問側が暴走してますが?」


「全く……無茶な質問はしないように手紙にも書いといたんだけどねぇ。

 まぁ、あまりにもろくでもない質問したら親世代が注意するでしょ?」



 まぁ【岩砕】の怒りを喰らいたくは無いでしょうしねぇ。

 加えて侯爵夫人たちに敵対されるのは勘弁してほしいでしょうし。


 そんな話をしながら別室に入ります。

 既に衣装の準備は万全ですね。



「では、さっさと着換えましょうか。

 ルーシー、ナット、手伝いお願いね?」


「かしこまりました。

 ナット、やるわよ」


「は~い」



 気の抜けた声ではあったけど、手伝いとしてはちゃんとできていたわ。

 侍女としての訓練ちゃんとやってるもんね。



「うん、こんなところね。

 で、ラーミル。

 今更なのだけど、ちょっと事前に伝えておくわ」


「……なんでしょう?」


「親世代の面々、女性陣側が何か狙っているようなのよ。

 何かは分からないんだけどね」



 やっぱり……。



「侯爵方やパァン女史を参加させたのもその件?」


「多分ね。

 とはいえ、理由は全く想像つかないのよ。

 ジルちゃんにも相談したのだけど、全く分からないみたいで……」



 現役学園生でも分かりませんか……。

 となると、お手上げですね。



「気には止めておきますが、現状どうしようもなしですからねぇ。

 まぁ、どんな無茶ぶりでも対応できるように覚悟だけはしておきます」


「ええ、それでいいわ。

 というか、それ以上は何もできないしね」



 話を終え先ほどの部屋に戻ると、項垂れたニフェールさんが。

 ちょ、何言われました?



「あぁ、ラーミルさんお帰りなさい。

 その衣装、似合ってますよ」


「ありがとうございます♡。

 で、いない間暴走されませんでしたか?」


「想定範囲内の暴走は多々……。

 流石にロッティ姉様レベルの暴走は一人だけですね」


「……ティアーニ?」


「ええ、ベル兄様に協力頂いて動かないようにしてますけど」



 あの子を見ると、ベル兄さんに抱きしめられてご満悦のようだ。

 抱きしめると言うか、身体を使って捕獲?



「あんな感じに取り押さえないと止められなくって……」


「……ご苦労様でした」


「それと、ポモナさんって覚えてます?

 王宮でセリナ様の侍女してた方。

 あちらにおられましたよ」



 え゛?

 まさか王妃絡み?



「一応王妃様から指示受けて来たわけじゃないことは確認済みです。

 元々前回の裁判用女装お披露目の時には仕事で来れなかったそうです。

 でも、性癖的には姉様たち寄りみたいですよ?

 もっと言うと、学園生の頃は女性の方が好みだったようです。

 最近は男性にも手を伸ばし始めたようですけどね」


「……まさかニフェールさんを?」


「むしろ以前マーニ兄を狙い始めたところで止めました。

 なお【死神】だと思わなかったようで驚いてましたよ。

 男性に関心持たなかったから学園生時代の有名人の顔も覚えてなかったようで」



 あぁ、そういう……。

 確かにあの頃は騎士科がきっかけで男性不振になった人もいますし。

 まぁ、元からの趣味かも知れませんけど。



「それと、ちょっと思いついたので、ご協力いただきたいんですけど?」


「何狙ってます?」


「ここまでネタになってあげたんだからちょっと小遣い稼ぎを……」



 そう言って、内容を教えてもらうが、これお義母様に叱られませんか?



「元々、女装するの見せてる時点でどうしようもないような気が……」


「あぁ、確かに」


「という訳で、カル達に伝えてください。

 うまく行けば山分けということで」


「かしこまりました♪」



 すぐカル達を呼んで説明すると、呆れ二名に山分けに反応三名。

 カルとティッキィは呆れというより、これで金稼ぐの無理だろって思ってそう。

 甘いわね、あの子達ならどれだけ出すか分からないわよ?

 とはいえ一応付き合ってくれるそうで、準備に動き始めました。



「はいはい、お話終わりでいいかしら?

 ラーミルのお披露目終わったから次はニフェールちゃんの生着換えなのだけど?

 それとも化粧先にやる?」


「生着換えって……。

 脱いで、化粧して、着る流れかな」


「脱いでって下着になるってこと?

 ……理性で押さえられるかしら?」


「その程度で消える理性しか持ちあわせて無いの?

 もう少し頑張ってよ!」


「これでも我慢強くなったんだけどねぇ……」



 元の精神力が無さすぎなのでは?

 というか、私もウホッてしまうことがあったので文句言いずらいですけどね。



 そんな話をしていると、カル達も戻ってきました。

 袋が六人分。

 私も一緒になって稼ぎましょうか。



「まぁ、私の理性に期待するのは諦めてもらって……。

 何するか知らないけど、そちらの準備も終わったのよね?

 じゃあニフェールちゃん、始めて頂戴」



 その宣言とともにボタンを外し少しずつ脱いでいくニフェールさん。

 上着をゆっくりと脱ぎ、合間合間に周囲に艶めかしい視線を送る。

 前回と違ってゆっくりと脱いでいく様は――



 ピィーピィー!

 ひゅーひゅー!

 いいわ~! もっと脱いで~!!



 ――観客が歓び……って、あんたら一応淑女でしょ!

 正直信用できないけどギリギリ範疇なはずでしょ?!


 そこ、ニフェールさんに手を出さないの!

 というか、カールラ様、ロッティ、ティアーニ!

 あんたらが率先して手を出しちゃダメでしょ!!



 完全にニフェールさんの想定通りですねぇ。


 さて、カル達と四方に散って声掛けしますか。



「え~、投げ銭したい方はこちらの袋にお入れください。

 なお、ニフェールさんに触れるのは禁止。

 金貨以上を一度にいれた方にはできる範囲で希望に沿って動くそうです。

 希望する方は袋持つ人たちに名前を申告してくださいね」



 この言葉と同時に一斉に女性陣が財布を調べ始めた。

 ……あれ? フェーリオ様、あなた何散財しようとしているの!

 ジル様も侯爵たちも止めなさいよ!!


 アニス様、クロッキーしない!!


 サプル様、シチュエーションをメモしない!

 次の「砕拳女子」のネタにしないでくださいね?!


 パァン女史、大笑いしないの!!



 カールラ様、「上半身裸でお姉様呼びされたい!」?

 脱いでることに意味があるのです?


 ロッティ、「親指加えて上目遣いで見て欲しい!」?

 マーニさんにやってもらったら如何?


 ティアーニ、「パン一でモスト・マスキュラ―ポーズを!」?

 これはベル兄さんでは貧相すぎて無理ですね。

 つまり、兄さんの代理要員?

 貸しませんからね?



 って、あなたたち、どこまで暴走するのよ!

 いや、それを金にしている私たちも大概だけど!!



 ちなみに、ジーピン家を見てみると二人の兄は愕然としている。

 流石にこれは想像を超越してしまったのでしょう。


 ご両親は……呆れ二割笑い八割って感じですね。

 特にお怒りでは無い様で安心しました。


 アムルさんとフィブリラ嬢は……あ、周囲気にせずイチャついてますね。

 ある意味一番正しい行動な気がします。



 脱衣が終わり、合図が来ましたので次のアナウンスを始めます。



「これから化粧を始めますので、投げ銭一時停止します。

 終わり次第女装化の間にまた再開しますので、しばしお待ちを」



 すぐに鏡を用意し、化粧を始めるニフェールさん。

 前回の女装を見た者たちからは驚きの声が聞こえてきます。


 まぁ、前回は私たちが傷消したり化粧したりしましたからねぇ。

 当人がやるのはこのメンバーだとスホルム案件時に見た人位?

 あ、学園での訓練時に見てらっしゃいましたね。


 お義母様から「あたしより化粧上手くなっちまって……」という声が。

 褒めてるのか嘆いているのか判断し辛いですね。



 化粧も終わり、合図が来ましたので、最後のアナウンスを行います。



「化粧も終わりましたので、女装開始します。

 同時に投げ銭も再開しますので、振るってご参加下さい」



 また、一斉に貨幣が舞う事態に。

 ナット、凄い喜んでいるけど、一応仕事だからね?

 ルーシー、目が$になってるわよ?


 とはいえ、オーダーはというと現時点ではウィンクや投げキッス程度ですね。

 多分、完成したところで一気に来るのかしら?



 一通り着換え終わり、ウィッグを付け、女装化完了。



「女装完了しましたので、投げ銭停止してください。

 もしかすると、次の機会があるかもしれません。

 その時は改めてご連絡します」


「女装完了したところで金貨の投げ銭したかったのだけど?」


「本来の目的が終わったらその機会を作るのはアリかと。

 ただ、今は予定消化を優先させていただきます」



 というか、今まで大人しかったオーミュさんがそんなこと言い出すとは……。

 女性陣皆さん頷きまくっているけど、本気?



「パァン先生、一応確認願います」


「文句つけようが無いですね。

 本当に、ここまでやり切っちゃうんですからこちらも驚きですよ」


「でも、この位しないとこの後の厄介事クリアできないんじゃないんです?」


「……そうですね、ジルさんの件はそれだけ大変ですからね」


「おや、ということは今日の企みには影響なしでした?」




 ギ ク ッ




 パァン女史の珍しい反応を見て驚く皆さん。

 親世代は女性陣が苦笑、男性陣が驚いてますね。



「ニ、ニフェール。

 何か面倒事があるのか?

 今日儂らが呼ばれたのもそのせいか?」


「ジャーヴィン侯爵、僕も知りませんよ?

 なんか動いているという情報は入りましたけど。

 とはいえ、奥方に聞いたらいかがです?」


「それで答えてくれるはずがないだろ?

 楽しみを邪魔するなとばかりに追い払われているというのに」



 あぁ、力関係が分かってしまいますわね。


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