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「全員、動――」




 ド カ ッ !

 バ キ ッ !




「――くな?」



 そこに残るは元気よく突撃し、全員打ち倒して大喜びのアムル。

 声かけ終わる前に戦いが終わり、困惑しているアゼル兄。

 鎌で暴れる予定が出番無く、戦うチャンスも消えてガックリ来ているマーニ兄。

 アムルを見逃したと思ったら、突撃してて頭抱える僕。


 兄弟だからって意思疎通完璧なんてありえないと実感した日だった。



 とりあえず衛兵たちを呼び、アルクたちを縛り上げてもらう。


 その間小屋の外で話し合い、ボディランゲージが伝わってなかったことが判明。

 各自猛省していると、衛兵から確保完了したと報告を受けた。



 小屋に入ると縄で縛られ口をふさがれたアルクたちがモガモガ言っている。

 アゼル兄が彼らに近づき、宣言する。



「アルクとその一味。

 街中での迷惑行為、無銭飲食や盗み、破壊行為、他にも様々な犯罪を犯した」



 溜息を付きアゼル兄は続ける。



「父はお前らが未成年だからと言って見逃していた。

 だが今の貴様らはもう成年だ。

 それ故、サイナス王国の法に基づき貴様らを処分する」



 アゼル兄の宣言直後、アルクたちは一斉に騒ぎ出す。

 でもモガモガ言うばかりで何も伝わってこないけどね。


 ある程度騒ぎ終わったところで、アゼル兄は小屋にあった鍬を持って近づく。



「アルク、今から貴様の猿轡を外す。

 ただし、騒ぐな。

 騒いだら貴様の首はこうなる」




 ベ キ ッ !

 ガ ラ ン !




「……」



 鍬の柄の部分を右手で持ち、右手親指に力をかけてへし折る!

 その結果、折れた鍬の柄が床に落ちる。


 アルクたちは目に見える位に冷汗をかいている。

 まぁ、気持ちは分かる。



「こうなりたくなければ騒ぐな、そして正直に答えろ」



 一味は一斉に首肯し、アゼル兄はアルクの猿轡を外して問いかける。



「お前らは誰を誘拐しようとした?

 あぁ、喋っていたのを聞いたので誤魔化しても無駄だ」

「ざ、雑貨屋の娘だ」



「他には?」

「いねぇよ、雑貨屋の娘だけだ!」

「喧しい、騒ぐな」



 アゼル兄がちょっと首を掴むと「ヒッ!」という声と共に黙る。

 おとなしく言うことを聞いておけばいいのに。



「マーニ、すまんが……」

「了解、任せて。

 さ~て、ど・の・子・に・し・よ・う・か・な・?」



 マーニ兄は適当に一味のうち一人を選ぶ。

 選ばれた奴は何をされるのか分からずビクついている。



「後ろ手になっているから……ニフェール、アムル、ちょっと動かすの手伝って」

「うぃ」「はーい」



 マーニ兄の指示に従ってうつ伏せにして寝かせる。

 僕は足に、アムルは頭に乗っかって押さえつける。

 マーニ兄は()()()()()()()()()を力づくで開かせる。


 選ばれた奴は暴れようとするが全く動けない。

 ナイフを手の小指と薬指の間に滑りこませて一気に根元まで切り裂く!




「~~~~~!!」




 叫びたくても猿轡のおかげでくぐもった声でしか叫べない。

 暴れようとしても押さえつけられているため動けない。


 このシーンを見せられた一味は恐怖から黙ってしまった。


 奴らが理解できるようアゼル兄がゆっくりと説明する。



「アルク、貴様が嘘を付いたりこちらの言うことを聞かなかった場合。

 他の者の指が()()()()

 今回は理解してもらうために一本分だけだが、この後はどんどん増えてくぞ。

 理解できたならばさっさと正直に答えろ」


「そうそう。

 サッサと言わないとこの子の()()の指全てが長くなっちゃうよ?」



 ん? あれ?




「あ、マーニ兄。

 長くしたのは()()だよ?

 交差しているから手首より先は右側ではあるけど」

「……え?」




 自分で切った手と腕の位置をまじまじと見るマーニ兄。

 僕の説明が理解できたようで、こちらを見て一言。 




「てへっ♡」




 いくら可愛く言ってもねぇ……。

 いや、顔赤くして恥じらうのは分かるけどさ!


 アゼル兄、額を押さえない!

 アムル、呆れない!



 兄弟の仲では微妙な雰囲気になった。

 だがアルクたちは手を切り裂いて笑顔(?)で話すことに恐怖を感じたようだ。


 その後は先程の誘拐予定の娘も正直に答えていった。

 そして、予想通り誘拐した娘を売りさばこうとしたこと。

 そのまま逃げだすつもりだったことも吐いた。



「お前らが売りさばくことなんてできんだろう?

 どいつに売りさばくつもりだった?」

「街の近くにいる商人だ。

 今日夜中に誘拐して待ち合わせ場所に連れて行く。

 そして、金と引き換える予定だった」



「どこで引き渡す?」

「街から少し王都側にある原っぱだよ。

 そこに商隊として集まっている」



 あ~、あそこか。

 子供のころ遊んだ場所だ。



「ふむ、ではそいつらを処分しに行こうか」

「アゼル兄、ちょっと待って。

 アルク、その商人はこちらが誘拐する人数と体つきとかって知っているのか?

 それと、護衛とかも含めて何人くらいいるんだ?」



「誘拐人数は知っている。

 体つきとかは教えてない……と言うかそこまで聞かれなかった。

 あっちの人数は十五人程度だな。

 後、荷馬車が五台ほどだった」



 あぁ、やっぱりそれなりにいるんだ。



「お前ら女性を除いて何人で商隊に近寄る予定だった?」

「ん? 特に決めてないが?」



「んじゃ、商隊に知られているのは何人だ?」

「俺ともう一人位か?

 基本は俺が話し合ったから」



「商隊は他に女性を連れていたか?」

「いや、無いと思う。

 と言うか荷馬車の中はほぼ空だったはずだな」



 ほぼ空?

 誘拐失敗続きか既に売った後?



「多分、俺たちが連れてきた奴を乗せるためだけに馬車連れて来たんじゃねえ?」

「最後、商人たちは街の中にはいないんだな?」

「今日これから逃げるから流石にいないはずだ」



 大体聞きたいことを聞いたが、どうしよう……。

 十五人をまとめて捕らえるのは難しい。


 相手が一時的にでも動きが止まらないとなぁ。

 一斉に、かつバラバラに逃げられたら後で街を襲ってくるかもしれない。

 直接戦闘なら何とでもなるけど、搦め手使われると僕も含めて皆弱いからなぁ。



「アゼル兄、このまま突撃したら数名取り逃がすと思うよ」

「ああ、そして逃した後うちの街に何するかわからん。

 今回で全員捕えたい」

「となると、足止めさせる手口か……」



 皆でウンウン悩むがそんな都合の良い作戦なんぞ出てこない。



 諦めたのか飽きたのかマーニ兄から帰宅提案が出てきた。



「移動しながら考えねぇか?

 どっちにしても、こいつらは捉えないといけないからな」


「確かにそうだな。

 ニフェール、まずはこいつらを連れていく。

 戻ってからまた考えよう」

「あぁ、うん」



 こういう時に頭の回転が速い奴ならパパっと新しい策を思いつくんだろうな。

 でも、うちらでは正直どうすればいいのか全く思いつかない。


 騎士科の授業でもこんな面倒な事態は想定していないからなぁ。

 突撃一辺倒や一対一の戦い方がメインだし……。

 軍略を学ぶような授業はあるけどあっさりとしかやってないしなぁ。


 てくてく街へ戻る間考えてみる。

 どう考えても相手の耳目を集め、かつ相手が一点に集まるような策。

 できるなら馬を使って逃げられないようにしないと。


 馬を先に殺す?

 確かにそれがベストだが、こちらの期待通りに馬を一か所に集めてくれるか?


 馬車で逃げ出すんだから、既に繋いであるだろうなぁ。

 それに野営してるんだよな?

 となると獣が入ってこないように馬車を輪のように並べて守るだろうし。


 あ、でも人は輪の中にしかいない?

 監視役が起きている位で仮眠取っている感じかな。

 女性確保したらさっさと逃げるのだろうから、それまでは寝てるよね。


 やっぱり誘拐した女性がいないと耳目を集められないなぁ。

 そこまでいけば、事前にマーニ兄辺りが指揮して周囲を取り囲んでおける。

 そして合図とともに殲滅もできるんだけどなぁ。

 流石に雑貨屋のおっちゃんに娘貸せとは言いたくないし。


 仮にうちの女性陣に手伝わせる?

 絶対嫌だ!




 ……手伝わせる?




 誰か代理では?

 誘拐されたというのなら気絶してるか寝ているか。


 声は気にしない。

 女性であれば、いや、女性っぽかったらありか?



 自分の考えが積み上がり、形作っていく。


「こんな考え捨てたい!」と思った。

 だが、今思いつく限りで一番マシな作戦になっていく。

 それどころか、僕自身が作戦の根幹を担うものになる、なってしまう。


 街の衛兵詰め所に到着したところで、ほぼ作戦は出来上がった。

 後は……いくつか覚悟をしなくてはならない。



「アゼル兄……思い浮かんだ」

「本当か……って、ニフェール、表情が硬くなっているぞ。

 何を思いついた?」



「言うけど、その前に衛兵たちに指示を出していい?

 それと、詳細はいったん家に帰ってから」

「ん? まぁ、それは構わんが」



 衛兵の中でも上位の人たちを集めてもらいいくつか指示を出す。



「まず一つ目、今回捕まえた者達を牢屋へ。

 そして牢屋監視の人員以外はこの後の作戦に参加してほしい。

 誘拐を指示していた商人を処分する」



 僕が「捕まえる」ではなく「処分する」と言ったことで一気に緊張が高まる。

 衛兵の一人が発言の許可を求めてくる。



「捕まえる必要は無いということでよろしいですか?」


「相手の実力が分からないので、捕まえる余裕があるか正直分からない。

 難しそうなら殺して構わない。

 可能そうなら捕まえてみてくれ。

 ちなみに、両手両足を落としても構わない」



 ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる位静まり返っていた。



「二つ目、僕たちはいったん家に戻って次の作戦の準備をしてくる。

 戻ってきたらすぐに出発できるように準備しておいてくれ。

 そう時間はかからない」



 皆首肯してくれる。

 ジーピン家への信用が消えていたらこんな手は使えなかっただろう。

 ギリギリではあったけどアゼル兄に感謝だな。



「三つ目、僕らが戻ってきたら捕まえたものがいるね?

 そのうち、アルクともう一人、商人とやり取りしたものがいる。

 そいつらを牢屋から出して商隊まで連れて行く」



 ざわつく衛兵たち。

 まぁ、犯罪者を外に出すなんて言えばそりゃそんな反応もするよねぇ。



「作戦に必要なので嫌かもしれないけど協力してほしい。

 そして最後、誰か二名、防具を脱いで普通の街の人のような恰好をしてほしい。

 作戦に必要なんだ。

 人員は任せるが人一人ずつ運べる程度には力が必要。

 作戦詳細は家から戻ってきたら皆の前で説明する」


「かしこまりました!」



 たかが成人なり立てのガキがとか言われると思った。

 だが、予想以上に受け入れてくれてホッとする。

 後は、急ぎ家に戻り、最大の難関をクリアしないと。



「んじゃ、家にいったん戻るのか?」



 マーニ兄がつまんなそうに声を掛けてくる。



「うん、でもマーニ兄は次の作戦で活躍してもらいたいから気を抜かないでね?」

「え? 役割あるの?」


「あるけど、のんびりしてさっきみたいにアムルに出番取られても知らないよ?

 それと鎌使っていいよ」

「うっし!

 殺る気出て来たぁ!」



 やる気でしょ?

 殺る気は違うでしょ?



「ニフェール」

「なに、アゼル兄」



「……無茶するなよ?」

「大丈夫、でも……」



「なんだ」

「むしろこの後、家での準備の方が……」



「……なんか、お前の作戦を聞きたくなくなってきたんだが」

「僕もやりたくなかったけど、どう考えても一番うまくいきそうなんだよ」




 アゼル兄と一緒に溜息をつく。

 内容は分かっていなくても嫌な予感が消えないのだろう。

 まぁ、内容分かっている僕もだけれど。



 そんなことを話していると家に到着。

 入ると、居残りだった皆が安心してくれた。



「皆、まだ仕事が終わっていないんだ。

 少し話を聞いてほしい」



 そして、先ほどの捕り物を説明した。



「ふん、となるとその商人たちを捕まえる必要がある。

 で、その作戦は?」



 母上の質問に順を追って説明する。



「簡単に言うと、相手の周囲に衛兵を配置。

 視線が集中する状況を作って、内と外から一気に攻める。

 外はマーニ兄が担当。

 内で戦いが始まったと気づいたら衛兵と一緒に突撃」


「うっし、任せろ!」


「内は父上、アゼル兄、アムル、僕、手伝いの衛兵二名とアルク他一名

 父上とアゼル兄は顔を隠すような服装をしてほしい。

 内が戦闘開始した時点でアゼル兄は戦闘へ。

 父上はアルク、他一名がもし逃げる様なら捕縛」


「そんなのでいいのか?」



「アルクたちを逃さないためにも捕縛術が得意な父上は必須なんです。

 僕もアムルもそっちに手が回らないので」

「ふむ、まぁ分かった」



「そして、母上、カールラ姉様、ロッティ姉様、ラーミルさん」



「おや、こっちにも仕事があるのかい?」

「ええ、皆さんしかお願いできない仕事があります」




 ああ、神よ!




「僕とアムルの姿を……」




 もしこの世に本当におられるのなら、




「女の子っぽい姿になるよう化粧してください!」




 姉様たちを暴走させないで!

神   :「無理無理無理!」

作者  :「無理無理無理!」

【邪神】:「おや、できないのかい?」

作者  :「いや、あんたしかできんよ、うちらじゃ無理無理」

神   :「んだんだ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] アムルくん無双回(≧▽≦) 将来絶対にポジティブ系な二つ名を得そうな逸材ですね♪ [気になる点] ラーミルさんがカールラ姉様やロッティ姉様サイドに堕ちかねない? [一言] 更新感謝です^^…
[一言] オチは、だろうなと察せました。 しかし、ああ神よ、なぜ思いついてしまったのか、という雰囲気を感じて頬が揺れまくりでした。 更新ありがとうございます。
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