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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
8:後片付け
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 会話も終わり、解散して各自の校舎に向かうのだが……。



「おい、フェーリオ」

「なんだ、ニフェール。

 またさっきみたいに熱い視線を――」




 ガ シ ッ !




「――って痛い痛い痛い!!」

「お前はなんであの場面で頬を染めるんだよ!

 そういう意味で視線送ったんじゃねえよ!!」



 顔を握り潰さない程度にアイアンクローを喰らわす。

 ったく、こいつは!



「えっ、違ったんですの?」

「アンタもか!!

 何でフェーリオに秋波送らなきゃならんのだ!!」



 ジル嬢まで何抜かすんだよ!



「あの……あれはどんな意味があったんですの?」

「『取り合えずこの場で言えない』という意図で視線送ったんですが……」


「ちょっと想像つかなかったですわねぇ」

「視線の意味をそこまで読み違えますか……」



 陛下程とは言わないけど、もう少し推測付けてよ……。

 あの場面の会話で恋愛要素もエロ要素も無かったはずなのに、なんで?



 少々疲れつつも午後の授業を受け、放課後。


 大急ぎでチアゼム侯爵家に向かい、ラーミルさん達と合流後王宮へ。

 案内されたところは遠征から戻ってきたときに使った小会議室。


 集まったのは文官側はチアゼム侯爵、宰相にサバラ殿、クーロ殿、ベル兄様。

 騎士側はジャーヴィン侯爵に団長・副団長、ラクナ殿にマーニ兄。

 ビーティ殿とメリッス殿も来ていた。

 王家から陛下・王妃様・大公様、加えて王太子殿下……って、殿下?



「あれ、王太子殿下も参加なんです?」

「あぁ、こいつもそろそろこういう場面を経験させておこうと思ってな。

 特にニフェールの行動に慣らしとかんと、後々困るだろうからな」



 陛下、判断は間違ってないと思いますが、それ明言しちゃいます?

 というか、両侯爵とマーニ兄、笑ってんじゃねえよ!!



「話すのは初めてだな。

 王太子のジュニズム・フォン・サイナスだ。

 父から学園生ながら見どころのある人物と聞いている。

 よろしく頼むぞ」



 見どころというか、危険人物と言われてないか?

 微妙に顔が青いけど?



「学園騎士科二年のニフェール・ジーピンと申します。

 未熟者ではございますが、ご期待に応えられるよう誠心誠意努めてさせていただきます。

 よろしくお願いいたします」



 マーニ兄、何驚いてんの!

 この程度の礼儀は僕だってできるんだよ?

 騎士科首席舐めんな!


 カル、ボソッと「ニフェール様が壊れた……」とか言うなや!

 ただの礼儀作法なんだから驚かないの!

 一応これでも貴族子弟なんだからその位できるからね?!


 ったく、失礼な人たちだよ本当に。



 司会役の宰相が会議開催を宣言し、チアゼム侯爵が一通り説明し始める。



「さて、明日の裁判についてだ。

 基本的な方針はほぼ決まっておる。

 文官共、アンドリエ家、ダイナ家、それとノヴェール家に潜入していた者。

 こいつらは死刑だ。

 スホルムの民とアンドリエ家の部下たちは鉱山奴隷十年」



 まぁ、そんなところでしょうね。

 オルスと荷運びで来た奴を同等の罪には出来ないだろうし。



「だが、ここぞとばかりに国やノヴェール家への侮辱をしないとも限らない。

 そして、暗殺を依頼する可能性もある。

 実際王都とスホルム双方で計画を立てていたことは分かっている」



 確かにありましたねぇ。

 あれは予想が当たったことに驚きましたけど。



「これらは下手すれば王宮に侵入し暴れ出す懸念がある。

 故に、裁判中は水も漏らさぬよう騎士の配置をお願いしたい」



 あぁ、暗殺依頼が来たからそこは対応しないとまずいのか。

 とはいえ、王都で暗殺できる現役の人物は僕の部下しかいない。


 アンドリエもダイナも新しく雇える人物はいない。

 なら安全だと考えられるが、国としては対応してるように見せなければならない。


 色々考える必要があるんだねぇ。

 僕みたいに面倒だから潰すとかじゃダメなんだろうなぁ。



「さて、明日の裁判についてどんな感じで進めるのか。

 ニフェール、お前の考えた策を報告せよ。

 出来るなら皆の胃に優しい説明にしてくれると助かる」



 何笑いながら言ってんの!

 ラクナ殿、何拝んでんの!

 拝んでも何も出てこないよ?



「無理ですね。

 先に胃薬飲んでおいた方がよろしいかと」



 ジャーヴィン侯爵とラクナ殿、絶望に満ちた表情は何?!

 今さらでしょ?

 諦めなさい!!



 胃薬友の会を叱責してから裁判での策を開陳する。

 と言っても大した策じゃないから失笑が漏れるのは覚悟の上だ。



 説明を終えると、何故か皆黙っている。

 あれ?



 ちょっと確認しようか。

 驚いて黙った人は誰かな~?


 宰相殿、団長殿、副団長殿、ビーティ殿、メリッス殿、そして殿下。


 まぁ殿下は分かる。

 今回初参加だからね。


 でも他の面々!

 最低でも暴動鎮圧後と『葡萄踏み』の時に僕の説明経験してるでしょ?

 な・ん・で、唖然としているの!



「いや、ニフェール殿、これ慣れろと言われて慣れられるものじゃないっすよ!」



 メリッス殿、そんなこと言われてもこちらも困りますが?



「第一、このオルスが苦手っていう情報どこから引っ張ってきたんすか?!」

「ノヴェール家での調査で分かりました。

 ちょうど当人の日記を見つけまして、そこから色々話してみました。

 僕もこの情報が入ったときかなり困惑しましたから気持ちは分かります」



 あれは自分でもよく知りえたと思うもの。



「えっと、ニフェールよ。

 質問構わぬかな?」

「ええ、どうぞ遠慮なく、殿下」



 お?

 陛下(パパ)の前でちゃんと考えてますよアピールかな?



「裁判でノヴェール家当主の想い人を召喚すると説明してたな?

 そこの必要性が分からぬ」



 あぁ、元が分からないと確かに。



「そこはノヴェール家とアンドリエ家の関係が関わります。

 ……えっと、ベル兄様、全部僕の口から説明しちゃっていい?」


「……恥ずかしいけど、任せるよ。

 出来ればこの後生暖かい視線が来ないことを祈るけどね」


「無理だと思いますよ?

 まぁ、説明は担当します。

 では、簡単に……」



 そうして簡単にといいつつ結構細かく説明してしまった。

 なお、殿下もこの手の話が好きらしく、結構喰らいついてきた。

 アンタも好きねぇ。


 一通り説明を終えると、説明の礼を述べてくる。

 その表情は姉様方が僕の女装を見た後のように福々としていた。



「いや、中々事情が複雑なのだな。

 とはいえ、確かに放置すればノヴェール子爵への誤解を広めてしまう訳だな」


「御意。

 犯罪者のくだらない戯言を真実と受け取らせないために協力いただきます。

 あぁ、想い人側もかなりヤル気のようで正直制御できるか分かりませんが」



 殿下に説明している所でベル兄様が割り込んできた。



「ちょ、ちょっと待って!

 え、制御できないって?!」



 ベル兄様、殿下の御前だよ、落ち着いて!

 それと、ティアーニ先生を甘く見過ぎです。



「いつもの事じゃないですか?

 複数人デートの時のことを思い出したら答えが出ると思いますけど?

 最後に問答無用でキスされてたじゃない?」



 顔真っ赤にして恥じらうベル兄様。

 生暖かい視線を送る他の面々……って、おや?


 なに、ビーティ殿とメリッス殿、血の涙を流さんばかりの表情は?



「彼女欲しい……」

「俺にも紹介してほしいっす……」



 そんな呪いの言葉のように言わんでも。

 と言われてもなぁ。



「残りの直接の知り合いは全員婚約者いるからなぁ」



 ……ロッティ姉様の僕たちは数に入れる訳にはいかないし。



「一番手っ取り早い伝手は……カールラ姉様の伝手くらいかなぁ?

 となると、今言われても無理だとしか言いようが無いけど」

「ちょっと待て、カールラの伝手ってなんだ?」



 あら、ジャーヴィン侯爵。

 そんな焦ってどうされました?



「お友達を紹介してもらうとかそんな感じじゃないですかね?

 ただ、婚約者いないお友達ってどれくらいいるのか分かりません。

 それに今度会うときは年末でしょうから、今騒がれても困ります」


「あぁ、確かになぁ。

 ……全く伝手ないのか?」



 何でそこまで侯爵が興味持つの?



「すぐどうにかなる伝手は既に売り切れですし」


「あぁ、セリナ嬢か?」

「そうそう。

 他にも、この件とは別に接点持った方がおります。

 けど、うちの部下が即刻お持ち帰りしてるので」



 ヴィーナ様ですね。



「後残りは……男性でもいい?」


「ふざけんなっすよ!!

 というか、何で男性を紹介しようとか考えるっすか!!」


「いや、学園で熱い視線を送ってくるクラスメートがいるんです。

 サッサと僕から別の人に視線を向けて欲しいので、欲しいなら紹介しようかと」

「まだそういう奴いるんだ……」



 ええ、困ったことに複数。

 ビーティ殿、何時の時代でもいたんじゃないっすかね?



「まぁ、現時点で僕経由での伝手はありません。

 最速で年末、義姉の伝手くらいしか思いつきませんね。

 その時はマーニ兄、協力してもらえると助かる」


「まぁ、部下の為か……。

 というか、ロッティの伝手は?」


「一年後でしょ?

 待てるのならともかく、この二人待てないんじゃないの?」



 チラッと視線を送ると、メリッス殿が目を血走らせている。

 これは、絶対待てないだろうな。


 ビーティ殿はまだ余裕がありそうだ。

 こちらはまだ待てるかも?



「……確かに、最低でもメリッスは無理そうだな。

 ニフェール、そんなに義姉さんの伝手って多いのか?」


「確か、未婚で婚約者の家に問題があった人が二人いたはず。

 多分さっさと婚約破棄なり解消なりするだろうから……。

 年末の集まりの頃にはフリーかな?

 もしかすると既に次の人見つけてるかもしれないけどね」


「まぁ、そこで文句は言わんだろ。

 というか、ニフェールにまで泣きつくとは……」



 おやおや、婚約者いる方は余裕ですねぇ。

 僕もラーミルさんと出会わなければ、こんな感じだったんだろうなぁ。



「まぁ女性に飢えた狼たちは置いておいて。

 他質問あります?」



 くるっと見回すが、特になさそうだね。



「あ、ベル兄様。

 明日と明後日についてだけど、サンドラさんとティアーニ先生連れてきて。

 先生には伝えてあるから」


「ティアーニさんは理解できるが、サンドラも……ってオルス対策か?」



 そうそう、アイツが訳の分からないこと言い出したら叩きのめさないとね。



「ええ、下手な言い訳して来たらたっぷりぶちまけてもらいましょ。

 まぁ、出番ないかもしれませんが、その時はその時ということで」


「流石に文句は言わんだろ。

 あれだけうちの問題を解決したニフェールに頼まれたんだ。

 むしろ裁判でオルスにぶちまけられるだけでも侍女たちの中で鼻高々だろ?」



 そうならいいんですけどね。



「それと、サバラ殿。

 以前説明した香水ネタ。

 今日の夜に差し入れてあげてください」


「お任せください。

 というか、渡すときに参加されます?」



 うっ……ちょっと面白そうだけど、修道院の方の対応もあるしなぁ。



「とても興味はありますが、止めときます。

 この話し合い終わったら別件の話をしますが、そっちも厄介な状況なんで」

「……もしかして修道院です?」



( コ ク ッ )



「あ~、ならこちらでやっときます。

 クーロ、俺はこっち対応するから修道院の方担当してくれ」

「分かった、というかまた面倒事か?」


「外れて欲しいんですけどねぇ……何となく気を付けないとまずそうです」



 騎士と文官が手を組んで当たらないとまずい気がする。




 大体話を終えたところで、陛下が会議を終わらせる。

 会議後残ったのは両侯爵、クーロ殿、ラクナ殿とマーニ兄にうちの面々。

 そして僕の希望で宰相殿。



「ふむ、このメンバーで呼ばれたとなると、中立派としてかな?」

「ええ、少々厄介なことになりまして、そちらの派閥の情報をご提供頂きたい。

 さて、簡単に現状を説明します」



 そう言って、スピル殿の対応と今日三人組+プレクス殿から聞いた情報。

 これらを報告する。



「これらの情報から、まず現在修道院対応している面々の一部に不安がある。

 そして仕事っぷりをラクナ殿に情報を報告してない可能性が高い。

 それとスピル殿が副隊長にならなくてはいけない理由がある。

 多分実家の関係。

 ただし、その実力は全くない。

 ついでに何か実家と縁切ることも考えて策を練っているとか言っていた」



 正直怪しいところだらけで、フォローのしようもないんだけどさ。



「ニフェール、これどうしろと?」



 いや、ジャーヴィン侯爵が呆れた声出すのも分かるんです。



「まず、明日五人目の人物を修道院に送りつけます。

 そこで、スピル殿が実力で副隊長になるのは無理と説明します。

 まぁ【死神】の事と暴動の時の中央通りの対応を教えれば少しは分かるかと」

「そうだな、それで分からないのならその時点で話にならんがな」



 ですよねぇ。

 文句あるなら同じくらいぶっ飛んだ実力見せてくれとしか言いようがない。



「で、今のままだと次男であるスピル殿が婚約者を得る条件が難しい。

 副隊長になるか、貴族辞めるか、個人で爵位を賜るか。

 まず個人で爵位を賜るには実力が足り無さそうに感じます。

 となると辞めるしかなくなるけど……それで生きていけるかと言われるとねぇ」


「無理だろ?

 騎士として弱いのなら平民になってもあまり雇う人はいないだろ。

 まぁ、平民でいい子見つけたとかならまだしもな」



 クーロ殿の発言が全てですね。

 となると、いくら無茶でも副隊長を狙うしかなくなる。

 だが、実力が足りない。



「となると、どう考えても対処案が無いはず。

 だが、そこで策とやらが関わってきます。

 それと、あの修道院に貴族としてボシース家が関わりますよね?

 で、ボシース家とインファ家とクレオシス家って仲良いんじゃない?」



 クレオシス家=アテロ殿のとこね。



「そりゃ家に関する考え方が似ているから仲良いのは事実だな。

 もしかすると幼少の頃にそれなりに交流があるかもしれん」


「ですよねぇ。

 となると、スピル殿とボシース家の長男に接点があるんじゃないかと。

 そして、策がろくでもない内容であった場合……。

 ボシース家長男を取り込むのはありそうな気がします」



 クーロ殿、宰相殿。

 顔引きつってますよ?



「確証はないんだよな?」

「ええ、今の所推測を重ねただけです。

 ですが、当たった場合ろくでもないことになりそうなので報告を先行しました」


 あぁ、ラクナ殿、そんな落ち込まないで!




【王家】

 ジュニズム・フォン・サイナス:王太子。

 → 接合部性調律(Junctional rhythm)を一部利用。


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