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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
8:後片付け
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 その後チアゼム侯爵家に戻り皆と話す。



「デートは大丈夫そうとはいえ、ビスティーはやって行けるのかね?」

「屋台の方で儲けは出せているようだけど、店の方は難しいだろうね。

 なんせ客が死に絶えたんだから」



 むしろこれで自信もってやっていけるなんて言い出したら怖いよ。



「きゃっ、こわ~い♪」

「ナット、何寝ぼけたこと言ってるんだ?

 お前だって暴動の時強盗ギルドの面々殺しまくっただろうに」



 あの日は皆それなりに殺してるだろ?

 ルーシーは外すけど。



「え、強盗ギルド本部の話でしょ?

 だったら一人も殺して無いよ?」

「は?

 うっそだろ?」

「だって、マーニ様が殺しまくったから何もできなかったもの。

 あそこでは死体運びしかしてないよ?」



 確かに、ナットは死体片付けしていた記憶しかないな。



「う~、ツッコミ不発だったか……」

「あれ、もしかして初めてニフェール様に勝った?」


「あぁ、負けた負けた!」

「ヒャッホ~イ♪」



 なんか大喜びしてるけど、そこまで喜ばれるもんかね?

 まぁ、邪魔するのもなんだし、ほっとくか。



「話を戻すが、明日は裁判前日。

 学園終わったら最終打ち合わせするから皆で王宮に行こう。

 ティッキィも参加な」


「そりゃ構わんが、見てるだけでいいんだな?」

「構わんよ、今回は下手に相手側に顔見せられないからなぁ」



 流石に「アンタらが命じた暗殺者を連れて来た」なんて言えないしな。



「それと、修道院の方で訳分からん状況になってきた。

 明日ラクナ殿にも報告するけど、ちょっと話を聞いて欲しい」



 そう言って、修道院でのやり取りを説明する。

 ……ねぇ、皆でそんな困惑顔しなくてもいいのよ?



「なんだそりゃって感じだな。

 というか、マーニ様と張り合うとかどんだけ命知らずなんだ?」



 カル、それを言っちゃあおしまいだよ。



「親子そろって目的と手段を取り違えているのもありますね。

 副隊長にならないと婚約させないって、スピル殿はそこまで強いんですか?」



 カリムの疑問は分かる。

 だが……。



「いや、それは無い。

 第八並とは言わないけど、スホルムに行った第二の面々よりも弱そうだった。

 現時点で副隊長は実力的に無理だ」



 騎士の立場を維持することはできるが、副隊長なんて無理だな。

 アパームのあんちゃんどころかメリッス殿にも及ばない。



「ならどうするつもり?

 そのスピルって奴が張り合う以外にも変な行動取っているのは分かるのだけど」



 ルーシーの問いに悩みつつも答える。



「とりあえず情報が足りなすぎるから、何かするつもりはまだ無いかな。

 まずは、相手がマーニ兄との実力差を軽視し過ぎているからそこ説明するつもり。

 明後日、ヴィーナ様を連れて行くときにだね。

 それでどこまで理解されるかなんだけど……」


「無理じゃない?

 余程理解しやすいように説明しないといけないわよ?

 多分、第八の奴らに説明するレベルの苦労が必要だと思うわ」



 ……やっぱりそう思う?

 僕も同意見なんだよなぁ。



「それと、スピル殿の策とやらは探らないといけませんわね」


「ええ、ですがいきなり探れるとも思えません。

 なので、まずはラクナ殿に明日報告します。

 最緊急というわけでは無いので、少しづつ王宮側で調べてもらおうかと。

 少しは手伝うかもしれませんけどね」


「ですわね。

 それとご実家の話が本当なのかも確認した方がよいかと」


「ええ、なので、明日学園で妹のセレブラ嬢に聞いてみようかと。

 それで事態が解決するとは思えませんけどね。

 とはいえ、情報無さすぎなので……」



 ラーミルさんの指摘のチェックは必要なんだけど……。

 面倒な話になるんだろうなぁ。



「まぁ、打てる手を打てる限り打ってみますよ。

 時間も無いし、それくらいしかできませんですけどね」



 そこで寮に戻ろうとすると、王宮から帰ってきていた侯爵から提案があった。



「また、お泊り?」

「そうだ、少し話を聞いていたが、裁判もあるし処刑終わるまで泊ればいい」


「……そんなに仕事増えそう?」

「実は今日、アラーニと話してな。

 ラクナの件もあるが裁判の件もある。

 ならじっくり対処検討した方がいいのではないかと思ったんだが、どうだ?」



 ふむ、別にお泊りはダメとは言わんけど……。



「明日の打ち合わせはかなり時間かかるってことですね……」

「諦めろ、既に儂らは諦めてるぞ」



 いや、諦めるの早いって!


 とはいえ、こちらもどうにかできるとも思えないので、受け入れることとする。



 ちょっとラーミルさんが喜んでいたのはナイショにしておいてあげよう!

 部下たちの生暖かい視線も僕は気づかなかったことにする!




 その後寮に戻り、次の日。



 急ぎ庶務課に行き、今日からの外泊書類と明日明後日の休暇書類を出す。



「……また?」

「というか、遠征の件の最終章となりますね。

 これが終われば普通の学園生生活に……」


「戻れるの?」

「戻りたいけど無理じゃないかな?

 でも一瞬くらいは戻れるかも?」



 呆れる庶務のお姉様。

 だって、また呼び出される可能性が高いんだもの……。



「まぁ、無事に帰って来なさい。

 全く、あなたぐらいですよ?

 自分の意志とは無関係に外泊書類出すのなんて。

 それも過去の生徒で最多じゃないかしら?」


「そこらは侯爵方の尻でも叩いてあげてくださいな。

 僕に言われても困ります」


「……あなたが叩いてあげたら?」

「……新しい性癖を僕が作り出したなんて知られたら命が無さそう」



 小粋なトークを終えて次は職員室に。

 もう出勤して……いたぁ。



「先生方、すいません、今よろしいですか?」

「おや、ニフェール君、どうしたんだい?」



 スティーヴン先生、ちょっと色々ありまして……。



「まず、明日と明後日学園休みます。

 先ほど庶務課に提出しましたが、一応ご報告まで」



 あら、カパル先生不愉快そうですね。



「……何でだ?」

「暴動前に王宮側からの依頼で遠征したの覚えてます?」

「あぁ、あれか。

 まだ終わってなかったのか?」



 いや、色々ありましたからねぇ。



「暴動のケリを付けるのを優先したようで、後回しになってました。

 明日裁判で明後日処刑を行うためにお休みします」


「……お前が裁判に関わるのか?

 それに処刑にも?」


「ええ、裁判では遠征のきっかけとなった件から全てぶちまけてくる予定です。

 それと処刑も全部では無いですけど僕が担当しますんで」



 唖然とするカパル先生。

 そこまで驚かなくてもいいと思うんだけどなぁ。



「いやいや、普通驚くだろ?」

「既に暴動の件でプロブを処刑しているんですから、今更かと」

「え、お前あいつを処刑したの?!」



 え、何で知らないの?



「知らなかったんですか?

 ええ、僕が処刑しましたよ。

 学園生も一部見物に来てましたけど聞いてないです?」


「知らなかった……」



 情報収集苦手なの?

 別に隠してないんだけどなぁ。

 うちのクラスの奴から聞かなかったのかな?



「まぁ、そんなわけでお休みの報告が一点。

 それと、ティアーニ先生。

 二日間お休みの件、調整済んでます?」


「ええ、大丈夫よ。

 いつでもいけるわ(ジュルリ)」



 落ち着いて、今日じゃないんだから。



「とある人物に馬車用意してもらうようにお願いしときます。

 なので、普段学園に行く頃の時間には準備終えてくださいね」



 ……

 …………

 ………………



「ねぇ、それってとても嬉しい内容と思っていい?」



 あ、分かった?

 分かっちゃった?



「今日の放課後にお願いしてきますんで。

 それと、その馬車には合計三名乗りますので、ヨダレ垂らさないでね?」

「……誰?」


「一人はベル兄様。

 もう一人は兄様の侍女長。

 未来を考えたら仲良くすべき相手だと思うけど?」



 ティアーニ先生が嫁ぐ家の侍女長だもの、味方にしたほうがいいよね?



「成程……」

「ベル兄様のご両親は既に亡くなってるし、ラーミルさんはほぼ家にいない。

 となると、一番大事なのは?」


「執事と侍女長ね」


「そう、でも執事は今一時的に借りてる人なんだ。

 一年で返す予定だから、未来を考えると侍女長が一番味方にすべき人物。

 うまくやってね?」

「ええ、情報ありがと」



 ……まだ理性を保ってるな。

 今後も保って欲しいんだけど……無理か?



「パァン先生、遠征前にお教えいただいた授業ですが、明々後日の対応が終わったら再開可能です」

「明々後日?

 明後日では無くて?」


「明後日は処刑日。

 明々後日は裁判で貴族からの追放が決まる方の対応があります。

 ただ、これは放課後に対応するので、どうしてもそれ以降の再開になります」



 セリナ様の対応は僕、ラーミルさん、ホルターが最低限必須だからなぁ。



「……分かりました。

 ちなみに、ノヴェール子爵令嬢は同じ条件で時間取れるかしら?」

「……確証はありません。

 今の厄介事が終わった後、お兄さんの婚約対応があるんです。

 どこかの休日に集まるのでしょうけど、スケジュールはまだお聞きしてません」



 やっぱり何か考えてるな?

 でも、何したいのか読めないんだよなぁ。

 これもとりあえず保留かな?



「最後、オーミュ先生。

 めんどくさい仕事をお願いしたく」

「嫌!」




 即答かい!




「お願いしますよ、オーミュ先生位しか頼れる人思いつかなくって」

「……何よ、その仕事って」




「ティアーニ先生が学園で暴走するのを止めてください」

「無理!」




 こっちも即答かい!




「お願いしますよ、僕だけじゃ正直無理!

 というか、この後ある両家の婚約とか考えると、また暴走するでしょ?

 生徒側はフェーリオとジル嬢と僕がどうにか動くよ?

 けど、教師側で止めれそうなのオーミュ先生位しか思いつかなくって」


「この子は止まらないわよ?

 つい最近も浮かれてるの見つけて叱責したけどすぐ戻っちゃうもの」



 ジロッとティアーニ先生を睨みつけると、唇を尖らせて拗ねだす。

 いや、あなたの事なんですからね?



「無駄かもしれないけど、可能な限り動いていただけませんか?

 正直生徒側だけではキツクって……」


「ったく、仕方ないわねぇ。

 分かったわ、確実に止めるのは無理だけど協力はするわ」


「すいません、お願いします」



 なぜでしょう?

 ヒーコラヒーコラ頭下げている生徒の前で拗ねてる諸悪の根源。

 納得いかねぇ!




 職員室でのお願いも終わりクラスに入る……前に隣のクラスに突撃。

 って、いたいた。



「スロム、ちょっといいか?」

「ん……どうしたニフェール?」



 そんな不信感MAXな反応されてもなぁ。



「すまないんだが、今日の昼飯お前らと食うこと可能か?

 というか、スロムを含めた三人組でという意味でだが?」


「アテロ様とセレブラ様?

 ダメとは言わんだろうが、どうしてだ?」


「メインはセレブラ嬢だが、お前らにも聞きたいことがある。

 正直、面倒事だけど確認が必要なんだ」



 なぁ、なぜそこでファイティングポーズを取る?

 別にここで殴り合いしたい訳じゃないぞ?



「お前にそんなこと言われて危険と判断しない方がおかしいだろ!」


「そこまで言う?」

「自覚無しかよ……。

 とりあえず分かった。

 そっちの二人も連れて来るのか?」



 フェーリオとジル嬢?

 どうしようっかな。



「正直どちらでもいいんだけど、一応参加させとくか。

 そっち側で追加で参加必要な人いる?」


「ん~、内容が分からないからなぁ。

 一応プレクス様入れておくか。

 となると計七人か」



 結構大人数だな。

 まぁ、メインのセレブラ嬢以外は普通に飯食ってもらえばいいだけか。



「あぁ、こっちは構わん。

 んじゃ、昼飯時にまた会おう」



 そのままクラスに戻ると、何故か浮かれた奴らが湧いて出た。



「ニフェール、スロムとやり合うのか?」

「はぁ?

 何でだよ?」

「え、宣戦布告しに行ったんじゃねえの?」



 お前ら、人を何だと思ってやがる!



「そんなことしねえよ!

 こんな優しい人間が暴力振るうわけないだろ!!」



 ……おい、お前らなぜ鎮まる?



「ニフェール、お前疲れてるんだな?

 今日は寮に戻って休んだ方がいい。

 先生には言っておいてやるからな」


「何訳の分からん優しさを発揮してんだよ!」

「お前が優しいなんてありえないだろうが!!」



 こいつら、本気でぶっ潰してやりてぇ!



「暴動鎮圧は僕の優しさなんだがなぁ。

 それとも学園に侵入することを望んでいたのか?」

「……悪かった。

 さっきのは聞かなかったことにしてくれ」



 全く、冗談にしてもひどいぞ。



「今度の実技授業で少し力入れて攻撃しようかな……」

「今まで通りの優しさでお願いします!!」



 ホント調子いいよな、お前ら。



 そんなくだらないやり取りをしているとホルターが登校してきた。



「おう、何してんだ?」

「ちょっとスロムと話をしたら誤解した奴らがいてな。

 説得したらわかってくれたよ」


「本気で殴っていいかとか言ったのか?」

「失礼な、暴動鎮圧しなくてよかったか聞いただけだよ」



 ……なぜ呆れる?



「むしろそれを手札として使う方が怖えよ!」

「この位で怖がるとは覚悟が足らないなぁ」

「そんな覚悟要らねぇ!!」



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