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ザ ワ ッ ! !
え?
自殺って学園で?
初めて聞く話なんだけど?
「あなた方が獣のようにあの娘に襲い掛かったこと。
貞操は守られたけど学園内で噂になったこと。
ご両親はあの娘の言い分を信じなかったこと。
婚約者の実家にその話が伝わって売女扱いされ婚約破棄されたこと。
これらの結果、学園退学後、自宅で喉を刃物で刺して亡くなられましたわ」
「……」
「あの娘は何が起こったのか全て手紙に記して私どもに送ってくれました。
私が関わったのは学園内であなた方を追い払うところまでなので。
手紙のお陰でかなり全貌が見えてきました。
それを全て学園側とご両親、元婚約者とそのご両親に見せましたわ」
ロッティ姉様らしくない表情だ。
真面目過ぎて、背負い過ぎて……。
もっと笑顔の方がマーニ兄も喜ぶと思うよ。
まぁ、いつもの性犯罪者顔は自重してほしいけど。
「その結果、ご両親は絶望し、売爵して平民に。
元婚約者とそのご両親は王家から睨まれて同様に売爵後平民へ。
そしてあなたたちは停学と騎士になれなくなった。
ですが、私としては甘いと思うのですよ」
「……甘い?」
「あの時、手紙を見せたときに私たちの希望通りに法に基づき処刑していれば。
そうすれば今回の暴動は起こらなかったのではとね」
( ヒ ク ッ ! )
「最低でも陛下の御前での裁判をすべきだと進言したのですが、当時の学園長に邪魔されたのが悔しくてなりませんでしたわ。
まぁ、どなたかが王宮側に伝えたのか、学園長も左遷されたのでその後の学園はかなり落ち着いてましたが」
……何となく、パァン先生とスティーヴン先生の顔が浮かんできた。
年齢を考えると一番可能性が……あれ?
学園の先生方で確かにあの二人が一番老けてるよな。
でも、その次のグループって?
結構歳の差あった気がするんだけど?
それって……クズじみた奴らをクビにしていったら全体的に若くなっちゃった?
もしかしてあのお二人くらいしかまともな教師がいなかった?
まぁ、いたとしても結婚か出産による退職もあるだろうけど。
それと当時の学園長ってどんな奴なんだ?
よっぽどのクズなんだろうが。
「【女教皇】如きが囀りやがって……」
「あら、本気でこのあだ名の意味を理解してないのですね?」
「理解したくもないね!」
「そんなことおっしゃらずに。
あなた方の愚行が原因だと言うのに」
「はぁ?!」
……あ、まさか?
「あなた方の被害に遭った娘たちを助けたり、被害に遭わないように逃げるのを協力していたらあだ名がついたのですよ?」
「え゛?」
やっぱり……。
「そちらが女性を襲おうとすればするほど私のあだ名が際立つ。
それだけの話でしてよ?」
なるほど、当人たちの悪名が姉様の異名を後押しするのか。
わざわざ当人たちに教える奴はいないだろうから、今まで知らなかった?
つまり【女教皇】を悪し様にいう輩はウィリアム元先生と同類と見なされてた?
ある意味敵味方のチェックに使われてそうだな。
「まぁ、もう今更よね。
あなたはこれからマーニに殺されるんだから。
マーニ、後は任せるわ。
早く終わらせてニフェールちゃんの暴れっぷりを見たいの♡」
暴れっぷりって……。
「あまりあいつに無茶させないでくれるか?
まだ研究中だと言ってたろ?」
「あら、完成版までは期待して無いわよ?
でも、面白い事してくれそうじゃない?」
「それは、まぁ……否定しない」
二人とも、期待し過ぎはいけませんよ?
「んじゃ、さっさと終わらせますか。
ウィリアム、覚悟はいいか?」
「覚悟も何も気づかぬうちに殺してくれればいいのに……」
「いや、出来るだけインパクトのある殺し方じゃないと民が納得しないだろうと言われてな」
あ、それ言っちゃう?
「……国から?」
「いや、弟から」
「おいぃ!!」
仕方ないじゃん、あまりにも騒ぎが大きくなり過ぎてるんだから!
アンタらがしでかした件なんだぞ?
王都民を納得させるならその位しないと!
「諦めろ、それだけのことをお前はやらかしたんだ。
ただ、下手な奴に殺されるよりかは痛くないと思うぞ。
俺の実力は分かってるだろ?」
大鎌を構えつつ軽口をたたくマーニ兄。
「まぁ、プロブのような奴に殺されたくはないわな。
何度も切り付けられてそれでも死ねないとか勘弁してほしいし」
元先生も軽口を叩きつつ剣と盾を構える。
プロブはなぁ……本気で剣の振り方からやり直さないと無理だと思うよ?
「……学生時代のように本気でやってくれよ?」
「は、無理だろ?
学生時代に本気で戦ったことなんてないぞ?」
「はぁ?」
え、まさかまだ勘違いがあったの?
「学園の武器は粗悪だったから俺が本気で振ったら壊れるんだぞ?
お前らだって軽く当てただけで簡単に骨折ったりしてるじゃねえか!
こっちがどれだけ優しく戦ってやってたと思ってんだよ!
多分ニフェールもそこら辺苦労していたはずだぞ」
なんでそこまでショック受けるのやら?
というか、貴方が教師の頃も僕が手抜きまくって実技受けてたでしょ?
「本気に近かったのは今回の暴動で中央通りを制圧した時くらいだよ!!
あれだって、一応建物への被害を減らすとか死体を端に寄せるようにとか気を付けながら戦ったんだからな?!」
だよねぇ、騎士団に入ったからと言って本気で暴れるなんて無いだろうし。
多分一番本気なのは……母上と戦うとき?
「第一、今日だってお前如き殺すのに本気なんて出すわけねえだろ!
武器自体は壊れることはないけれど、大暴れしたらさっきの兄みたいにそこらじゅう破壊しちまうじゃねえか!
まぁ、兄の場合は浮かれて加減忘れた様だがね」
ガ ク ッ !
隣で膝をついているアゼル兄。
これ幸いと慰めるカールラ姉様。
ハイハイ、もう好きにして。
ここでサカらなきゃ止めないから。
「それと、この簡易法廷の設営は騎士団がやってるんだぞ?
うちの部下も額に汗してやってくれてたんだぞ?
それを隊長がストレス発散にぶち壊すなんてできるはずないだろうが!
その程度の気遣いできないで役職持ちになれねえんだよ!!」
うん、うん、その通りだ。
苦労している部下を思いやるのならともかく、苦労を踏みにじるのはやっちゃダメだよねぇ。
というか、こういうことをわざわざこの場で言うことでついでに部下の心をゲッチュするつもり?
まぁ、部下からの評価は上がると思うけど、それ以上にマーニ兄の場合は戦闘力で鷲掴みしてない?
既に天井レベルまで評価高いんじゃないの?
「まぁ、少しだけ本気出すのはやってやるよ。
盾ごと切り捨てれば納得するか?」
「できんのかよそんなこと?!」
まだマーニ兄の実力を低く見てるのか?
「できなきゃこんなこと言わんよ。
というか、そんな難しいことじゃないだろ」
そう言うと無造作に大鎌を振りかぶる。
ウィリアム元先生は急ぎ盾をかざして防ごうとするが――
ド ガ ン !
――盾と左腕、そして身体を纏めてぶった切る!
あの斬り方から察するに、胸・腹・右腰辺りまで一気に斬り捨てたな。
「お~い、これで満足できたか?」
いや、返答は無理じゃない?
一撃で死んでると思うよ?
「……返事なしか。
侯爵、後片付けして次に進んでいいのでは?」
「そうだな、騎士たちよ片づけを頼む。
マーニたちは待機場所に移動してくれ」
王都民の反応は……あぁ、滅茶苦茶ビビってる。
まぁ、一人目が柵までぶち壊し、二人目が盾を無視して斬り捨てる。
そりゃ慣れてないい人たちからすれば恐ろしいんだろうけどさ。
「おぅ、ニフェール、こんな感じでよかったか?」
「十分だよ。
後は僕の分だね」
二人よりも恐怖を植え付け……でも次の裁判に影響出すのは不味いな。
程々に……といってもどうせ殺すんだから意味無いか。
「さて、次にプロブを自由にしてやれ」
片手剣を渡され、殺る気マンマンな雰囲気でいる。
いや、ちょっと待てや。
まだやることあるんだからな?
「さて、戦闘の前に他の者を呼んでまいれ」
「はっ!」
何キョトンとしているの?
最初に言ってたでしょ?
そして呼ばれてきたのはプロブの両親と兄。
プロブ、そんな引き攣った顔するなよ。
「なぜここで家族を呼んだか分かっているか?」
「知らねえよ!」
「貴様が学園退学した後、お前の両親は家系からお前を外すことをしなかった。
その場合何が起こるか分かるか?」
「知らねえって言ってんじゃねえかよ!!」
いや、一応侯爵だからな?
そんな発言するんじゃない!
「家の者が王都で暴動に関わったということでカーディオ家は断絶となる。
今後平民として生きること、そして王都に入ることを禁ずる」
「は?」
何驚いてるんだ?
「普通は貴様が退学となった時点で家として縁を切るのだ。
だが、何故かそのまま貴族としていた。
この場合、学園卒業者じゃない以上貴族として認められない。
となるとカーディオ家に守られながら平民として生かすことを選んだとも受け取れる」
「はぁ……」
分かってるか?
お前はご両親の暴走――よく言えば優しさなのかもしれん――でまだ貴族でいられたんだぞ?
「だが、貴様が暴動に関わったことで事態が変わる。
国はカーディオ家が反乱を起こす意図ありと受け取った」
「なっ!
そんなはずねえだろ!!」
それがあるんだよなぁ。
お前が貴族じゃなければ、カーディオ家と無関係と言い張れれば親御さんはこの場にいる必要はなかったんだよ。
「本来プロブと一緒に処刑するのが基本だ。
だが調査した結果、完全に巻き込まれたようだ。
なので命を奪うことだけはやめておいた。
とはいえ、貴族として扱うことは出来ん。
それ故平民とするのと、王都に入ることを禁ずる」
「何故なのですか?!」
え、誰?
父親が騒いでるのか?
まさか何故なのか理解できてないのか?
「何故とは?」
「何故プロブがこの処刑場にいなければいけないのですか?!
この子がそんなことできるはずがありません!!」
いや、一応簡易法廷なんですが。
実際は処刑場ですけどね。
それと、プロブが殺せるはずないってどうしてそんなこと言えるんだ?
「暴動に関わり、人を殺したからだが?」
「そんな実力ありません!
殺せるほど剣の実力があるとはとても思えません!!」
確かに剣の実力は全くないけど、後ろから刺す程度なら簡単だろ?
「なら、そなたの息子が学園首席と言ってたのは何故だ?」
「っ……」
ですよねぇ、矛盾が生じてますね。
どんな言い訳するんでしょう?
「……学園生たちが息子より弱いかじゃないかしら?」
ゑ゛?
うっわ、この母親本気で言ってんの?
「「ふざけるな!!」」
……僕じゃないですよ?
侯爵、こっち見ないで!
騎士科の中で見物してた奴らが本気で怒っていた。
「プロブ如きが俺たちより弱い?
俺たちを侮辱するのもいい加減にしろ!!
実技で最下位争いしかできない奴に俺たちが負けるわけないだろうが!!!」
「学力でもそうだ!
まともに学ぶこともせず、勉強の邪魔しかしない奴がいい成績取れるはずないだろ?!」
「というか、プロブは退学しなければ留年して来年も二年だったはずだぞ!
それで恥ずかしくもなく首席なんて言えるな!!」
……僕が言おうとしたこと一通り言われちゃったよ。
ついでに三つ目はホルターが叫んでた。
大声出すと目立つからデートだったことバレるぞ?
女無し子どもに囲まれても知らんぞ?
男無し子かもしれんが、そっちはもっと知りたくない。
「学園生たちが本気で怒っているようだが、そなたはそれでも彼らがプロブより弱いと申すか?」
「っ、ええ、プロブはあの者たちより強いですわ!!」
あれ、母親の方が宣言しちゃったけど?
プロブ、大丈夫か?
顔色真っ青だけど?
「ふむ、ならこの後その発言が妄想であることを知るがいい。
では、咎人プロブと戦う者よ、こちらに来なさい!」
呼ばれて参上すると、クラスメート共から野太い声援が聞こえて来た。
「ニフェール、プロブを叩きのめせ!」
「実力の違いをはっきりと理解させろ!」
ん~、騒いでいる奴らもちゃんと理解しているのかねぇ。
まぁいい、とりあえずご家族の方に挨拶でもしておくか。
「えっと、初めまして。
これからプロブを殺しますニフェール・ジーピンと申します。
アイツが恥じらいを捨ててほざいていた騎士科二年の首席を務めております」
「は、首席ですって?」
ん?
言葉がうまく伝わらなかったかな?
「ええ、本来の首席でございます。
なお、一月ほど前でしょうか……。
王宮での私どもジーピン家の陞爵の際に偶然プロブの婚約者であるマリーナ・ディーマス様とお会いしております。
その時になぜか『騎士科二年首席のプロブの婚約者』と言われたものですから、誤解を訂正させていただきました」
「誤解?」
怪訝な表情を見せる母親。
父親の方は……顔が強張ってるな、何言ったか推測ついたのか?
「ええ。
首席はプロブでは無く僕であること。
プロブはどうあがいても来年も二年をやり直すこと。
一通り説明させていただきました」
「嘘よ!
何よ、それ!
何で二年をやり直すのよ!!」
「学園の規則ってご存じです?」
「はぁ?」
あ、覚えてないんですね。
父親の方も分かって無さそう。
兄は……天を仰いでいる。
分かっちゃったのかな?
「簡単に言うと、三年になるための条件は一年の必修科目の全単位取得です。
ですが、プロブは一年の春夏の試験で取れる単位を落としております。
そして、二年になっても取り直すことをしておりません。
結果、学園を退学していなかった場合、彼は留年確定となります」
唖然とするご両親。
「ちなみに、プロブが退学を選んだ後に学園長先生とお話されたと聞いてます。
そしてそれを聞いて『そんな成績悪いはずがない』とおっしゃったとか?」
「ええ!
ちゃんと調べればあの子の実力はすぐ分かるでしょうに!
なぜちゃんと調べないのか分かりませんわ!!」
はぁ?
ナニイッチャッテンノ?
「……念の為確認させていただきますが、ご両親は学園卒業されてますか?」
「当然だろう!
妻は淑女科、私は領主科を卒業しておる!」
本当か?
どれだけの成績だか知りたいが……。
「なら……プロブ!
殺す前に少し質問だ!」
「なんだよ、うっせえな!」
「簡単な計算問題だ!
3+6×5-3は幾つだ?!」
少し考えて、プロブは自信もって答える。
「42だろ!
こんなの答えて何させてえんだよ!」
「そうよね、よくできたわプロブさん!」
やっぱり間違えたか。
というか、母親もダメな人だったか。
ある意味予想通りだけど……ディーマス家本流系の人っぽいな。
ルーシーが頭抱えてそう。
周りの学生たちからクスクスと笑い声が聞こえる。
そうだよなぁ、「こんな簡単な問題間違って……ププッ」とか言ってんだろうなぁ。
というか、この程度も分からないから最下位なんだけどね。
父親は……プロブと自分の妻を見て唖然としている。
兄は……頭抱えている。
ボソッと「馬鹿すぎんだろ」と言っている所がまた哀れすぎるが。




