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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
8:後片付け
242/360

33

◇◇◇◇


 学園を出てそのまま王宮に到着。

 ジャーヴィン侯爵の執務室に向かうと、関係者が()揃っていた。



 ……()



 アゼル兄たちは大公家のはずだし、ラーミルさんたちはチアゼム侯爵のところで仕事のはず。

 それに陛下たちに大公様たちまで?



「ニフェール、遅かったな?」

「学園で先生方にプロブが退学になったときのやり取り聞いていたんです。

 まぁ、ある程度は予想通りでしたけど。

 で、これは?」


「明日の裁判の最終確認だ。

 多分、ほぼ関わる者たちは集合しているはずだが?」



 ん~、王都にいるジーピン家+婚約者たち+部下四名。

 陛下&王妃様&大公様&両侯爵。

 騎士として団長殿とラクナ殿。

 まぁ、大体いるかな?



「そうですね。

 で、最終確認と言ってもほぼやること決まっていますよね?

 犯罪者四名を集めて陛下が罪を伝え処刑する。

 順序はジャン元先生、ウィリアム元先生、プロブ、ザイディの順。

 前の三人はアゼル兄、マーニ兄、僕の順で対応。

 プロブの家族は僕VSプロブの直前に処分内容を伝える。

 ザイディは火炙りの準備をして火をつける役はカルとルーシー」



 そこまで言って一つ思いだす。



「プロブの処刑後の話になるんですが、プロブの実家の者たちについて、追放の順序を提案したい」

「順序?」


「うん、兄の方はまだまともというか、ある意味家族の中で一番の被害者。

 なら、先に追放して親と関わらない人生歩んでもらった方がよくない?」

「あ~、そして次の日に両親を追放するって訳か」

「それと、もう一つ気にしていて……」



 なぜでしょう?

 王妃様がうずうずされておられます。

 女装はしませんよ?



「もしかして暴動の被害者が恨みを晴らすために暗殺を計画するかもしれません。

 まぁ、その手のプロを雇うことはできないでしょうけどね」



 カル達、気持ちは分かるが頷くな。



「ですが、自分の手で殺すことを考えるかもしれません。

 なので、裁判で両親の方にはプロブに常識をちゃんと指導しなかったことを叱責。

 兄には家としての罰であり、兄自身は一切罪はないことを伝える。

 陛下から罪無しと言われる兄を狙う馬鹿はほぼいなくなると思います。

 狙うなら両親に意識が向いてくれるかなと……」


「兄の方には王都では働けないが、国内の他の土地なら働ける程度の罪。

 両親の方には陛下に衆人環視の中で叱責される程度の罪。

 一緒にいさせると兄の未来、最悪命まで潰されるということか」


「えぇ、なので王都追放は少しだけ日をずらすことを提案したいです。

 特に兄を先に追い出して両親がその次の日というのがいいかなと」



 陛下以下、王宮の面々も納得したのか、あっさり受け入れられた。



「ふむ、これで一通り明日の予定は決まったな。

 ジーピン家の三名は準備は出来ているな?」

「準備は終わらせてあります」



 アゼル兄が代表して答える。

 まぁ準備と言っても武器の手入れ位しかないしね。

 特に兄さんたちは喋るの姉様たちにお任せだろうし。


 あぁ、姉様たち苦笑しないの。

 どうせ周りも何となく気付いているんだから。


 なお、場所設営とかは騎士団総出で、王都民への周知は文官総出で動くようだ。



「では、明日昼より裁判を始める。

 各自奮励せよ!」

「ハッ!」



 陛下が(珍しく)いい感じで締めて下さり、そのまま解散となった。



「チアゼム侯爵、すいません、少し相談が……」

「(ビクッ)」



 いや、そこまでビビらんでも。



「ちょっと調べたいことがあって、ディーマス家の現時点で国で把握している家系図みたいなのってあります?

 あったら後日見せて頂きたいんですけど」

「……まぁ、図ではないが整理はされている。

 何したいんだ?」



 周囲をチラッと見て誰もこちらを気にしていないのを確認したうえで小声で白状する。



「ちょっとディーマス家でどこまで認識しているのかが知りたいです。

 関係者を一人見つけまして、当人はあの家と縁が切れていることを望んでます(小声)」

「……ルーシーか?」



 ビクッ!


 おいおい、一発で当てちゃったよこの人!



「その反応からして当たりか。

 分かった、最初の裁判の後にでも機会を用意するから調べて見なさい」


「ありがとうございます。

 なお、この話は他言無用でお願いします。

 カルにも伝えてない内容なので」

「分かった」



 珍しく僕が驚かされた後、それぞれ帰る途中でアゼル兄が明日の事を聞いてきた。



「ニフェール、お前明日朝から王宮に向かうのか?」

「学園に明日休みの連絡入れてから向かう予定」

「あぁそうか、学園生だもんな」


「学園長は公務だから来なくても無断欠席にしないと言ってたけど、文句言う奴はどこにでもいるから、一応報告だけ伝えに行く」

「……どこでも面倒だな」

「……まぁね」



 学生か教師かは分からないけど、どちらであっても厄介事は避けたいからね。



「ではこちらはジャーヴィン侯爵家から直接王宮に向かう。

 皆が集まるための部屋は用意してもらえるだろ」


「そうだね、僕は学園からチアゼム侯爵家に戻って、皆で一緒に行こうかな」


「その方がいいだろう。

 バラバラで動くよりかは安全だ」



 まぁ、王宮は今少々危いからねぇ。

 ちゃんと掃除してないからだろうけど。



 さて、チアゼム侯爵家に戻り休む……訳にはいかない。

 四人組の最後、クロニク様の所に侵入。

 こちらもセレラル様の屋敷と同様に門番がちゃんと仕事をしていた。


 部屋のベランダに到着し、一人以外気配もないのでノックするとあっさりカーテンを開けて来る。


 確か、顔だけ出せって言わなかったっけ?

 胸出せじゃないぞ?


 いや、ちゃんとネグリジェ着てるけどさ?

 並乳っぽいけど、結構胸元見えるんですが!



「お待たせしました」

「いえ、時間通りですよ」


「裁判の関係でちょっと遅れたかなと思いまして」

「……明日に決定ですか?」

「ええ、昼から始まります」



 なぜか考え出すクロニク様。

 何考えてる?



「見に行っても大丈夫ですか?」


「王都の民が皆集まる所に行って大丈夫なんです?

 特に裁判と言いつつ公開処刑ですから、危険じゃないかな?」


「確かに……裁判場所そばの二階とか貸し切りにでもしない限り危険ですね」



 貸し切る気なんかい!

 というか「自分は大丈夫」とか思ってないか?

 楽観的な考えは死に繋がるぞ?



「なので、見に行くとかは止めてくださいね?

 死にに行くようなものですから」

「はい……」



 それなりに身を守れる彼氏と一緒なら止めやしないけど、女性のみは危険だってこと理解してほしいな。



 一通り潜入確認も終わったことで安心してチアゼム侯爵家に戻るとラーミルさんが待っていてくれた。



「お疲れ様です、ニフェールさん♡」



 どうやってか分からないが、屋敷のドアを開けた時にいたところから一瞬で入ってきた僕に抱きつくラーミルさん♡。

 いや、嬉しいんですけどね。



 キスしつつクロニク様の事を伝える。

 服装は嫉妬されそうなので言わないが、見物に行こうと考えていたことをざっと伝えると、呆れつつも納得していた。



「確かに危険なので、貴族の女性だけで見学なんていけませんわね。

 でも、学園生の頃のあの子達は面白そうなことによく首を突っ込んでいましたわ。

 今も変わりませんのね」



 あぁ、そういうタイプの方々ですか。

 そりゃ見に行きたくもなりますよね。


 あ、ちょうどいいから聞いてみるか。



「ちなみに、ラーミルさん、少し質問なのですが。

 先ほどの移動ってどうやって動かれたのですか?

 過去色々な人が使っているのを何度か見ているのですが、動きのコツが全くイメージできなくて」



 キョトンとするラーミルさん。



「えっと……パァン先生から教わってませんですか?

 女装の訓練で教えを受けていると思ったのですが?」

「いえ、まだそこまで説明されてないのかもしれませんが……」


「今まで指導された内容で淑女の歩き方とダンス、そして礼儀作法は?」

「歩き方……あぁ、辞書頭の上に乗せて歩く奴ですね。

 それとダンスはフェーリオ相手にやってますよ?

 礼儀作法も一通りやっていると思います」



 なぜか「辞書?」と疑問を浮かべているが、もしかして皆さん本も乗せてない?



「な、なんか想定以上の訓練をされているようですが、そこまでやっているのならヒントを一つ。

 今言った三種を組み合わせてみてください。

 うまく組み合わせるとあの動きが出来るようになります」



 え?

 組み合わせ?


 歩き方とダンスと礼儀作法?


 歩き方とダンスはまだ分かるけど、礼儀作法との繋がりが分からない……。



「本来はパァン先生から習うべきところなのでしょうが、この位のヒントなら許していただけるでしょう」



 笑顔で返されるとこれ以上は問いずらいなぁ。

 仕方ない、これで考えてみるか。



「すいません、言いづらい内容を聞いてしまったようで」

「いえ、この位なら教えても問題ないはずですから。

 それに、ニフェールさんも基本は既に教えてもらってるはずですし」



 本当?

 正直何か抜けている気がするんだけどなぁ。



「それと、私を含めた淑女科の者たちは逃げるとか近づくとかにしか使えません。

 なのでこの動きを戦闘に昇華させた方はいません……表向きは。

 個人的にはお義母様がこっそり個人で成し遂げていると想像してますが」



 あぁ、母上ならやるでしょうね。

 というか、既にやってるでしょうね。


 侯爵夫人方辺りから情報を仕入れたか、身体能力は誰にも負けないから教えを受けたか。

 どちらであっても体術に組み込んでいるんだろうなぁ。


 それに、あの動きは訓練してない女性が成し遂げている。

 素早いのでは無く、素早く見せかけているとしたら?


 無駄な動きを極限まで減らし、気づかれるような情報――音とか気配とか――を極限まで隠す。


 気づいたときには相手は自分の目の前、もしくは自分からとても離れている。

 そんなところか?



「あの、御力になれましたか?」



 そんな、上目遣いされると――



「はい、かなり♡」



 ――僕が堕ちちゃうじゃないですか♡



 その後、軽くキスして互いに部屋に戻る。

 明日の策、と言ってもプロブにぶちまけるだけだし特にやることもない。


 なら、先ほどのあの動きを試してみようか。


 多分だけど……。


 歩き方は身体の揺れや捻りなどを極力排して周囲から動きを悟られないように。

 ダンスは回転の動きを使って背後、もしくは側面への移動。

 体幹がブレないようにというのもあるかな?


 ただ、礼儀作法、こいつが分からない。

 何となく歩き方と同じ、体幹の維持がメインな気はするのだが。


 この場合先ほどの推測のうち、動きの簡素化まではできる。

 だが気配を隠すことは歩き方とダンスには関わらないしなぁ。


 気配……気配……。

 普通、貴族女性で気配消す理由って無いよなぁ。


 むしろ一般的には目立つ方がお好きだろうし。

 兄たちの爵位の話の時には結構派手な方もおられたし、ピンとこないなぁ。

 ん~、なんだろう、この奥歯に何か挟まったような不快感は?



 ……


 …………


 ………………Zzz




 ……ハッ!


 いかん、そのまま寝こけてしまった!

 もう朝か、悩むのは後にして朝食取って急ぎ学園に向かうか。



「おはようございます」

「あぁ、おはよう。

 今日は一旦学園行ってから王宮だな?」



 既にチアゼム侯爵が食堂に居られた。

 文官側はそこまで忙しく無いけど、二つ目の裁判の関係かな?



「ええ、連絡だけしてすぐにこちらに戻り、その後は皆で王宮に向かいます」

「分かった、ちなみに今日の裁判が終わったらすぐにでも二つ目の裁判の話がしたい。

 時間取れるか?」


「一つ目の裁判の終了時刻によりますね。

 まぁ、大丈夫だとは思いますけど」

「分かった」



 そんな会話をしていると、ラーミルさんが気配を感じさせずに朝食を持ってきてくれた♡

 なぜ気づいたかって?

 ……愛だよ、愛♡



「おはようございます、ニフェールさん。

 はい、朝食ですよ♡」

「ありがとうございます、ラーミルさ……あれ?」

「どうかなさいました?」



 あれ、今、気配感じさせずに僕に近づけたよね?

 歩法?

 ダンス?

 どちらも関係なさそうだよね?


 もしかして……これが礼儀作法?

 貴族淑女の礼儀作法では無く、侍女としての礼儀?

 それなら気配隠せるよね?



「ラーミルさん、もしかして昨夜教えて頂いた礼儀作法って侍女用の礼儀?」

「……お気づきになられましたか♡」



 羽扇持ちそうな人が言うべき言葉な気がしますが、それは置いておいて。



「……まだ習ってない気がします」

「えっ、そうなんです?」



 なんとなくだけど、今まで習ったのは貴族淑女レベルの内容な気がします。

 ガチで侍女やるのなら少々足りなかったのかもしれませんね。


 今思いついた内容を説明すると、ラーミルさんも納得したようだ。



「確かに、特定の仕事――今回で言えば侍女ですね――にこだわらずに女装を教えて頂いているという認識です。

 なら、後回しになっているのもやむ無しかと。

 スホルム対応とか、ドタバタあったので止まっているだけかもしれませんが」

「あ~……」



 あぁ、スホルム案件はラーミルさんが悪いわけじゃないからそんな顔しないで!



「それに、僕自身もあの歩法を教えて欲しいとは伝えてないので、やるなら一通り終えた後におまけで教えてくださるかどうか……」

「……ニフェールさんなら確実に戦闘能力向上に役立ててしまうでしょうね」



 既に、考えている身としては否定できませんな。



「……もしかして昨夜話をしてから検討してました?」

「……結構本格的に」

「成程、だから礼儀作法が噛み合わないことで悩まれたのですね」



 バレバレですか。



「そこは皆同じように悩むのですよ。

 でも、できるようになると皆『確かに!』と納得しますわ」

「ふむ……ちょっと空き時間に検討してみますか」



 午前中は空き時間みたいなものだし、検討に時間を費やそうかな。




 急ぎ朝食を取りそのまま学園へ。

 庶務課に休みの報告を行うと、お姉さんに呆れられてしまった。



「いや、こういうのって当日自分で提出する者じゃないですよ?

 事前に休みが確定している場合に使うんです!

 使い方が根本的に違います!」



 はい、もう、おっしゃる通りです!



「言いたいことは分かります。

 ですがスケジュールが確定したのが昨日の夜なので、最速で今になっちゃったんです。

 それと、理由が公的なものとはいえ、いきなり休むと迷惑かけそうで」

「いえ、私たちにはかかりませんよ?」



 そりゃアンタらにはね?



「教師側には?

 勝手に休んでいいと勘違いする学園生って出てきませんか?」

「あ……」



 迷惑かかるでしょ?



「そんなわけで、一番それっぽいのがコレだったんですが……。

 もっと希望に沿った書類ってありました?」

「……無いですね。

 確かに一番近いです。

 とはいえ、同じような状態になったら無断欠席選ぶ輩がほとんどでしょうね」



 デスヨネ~。



 とりあえずこちらの意図をご理解いただいたようで、各教師に連絡はしていただけるようだ。


 

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