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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
8:後片付け
222/358

13

 そして次の日。

 

 普通に学園に行くと、目を血走らせたホルターが出迎えてきやがった。

 

 

「ニフェール、ど、どうだった!?」



 うっわぁ、滅茶苦茶必死な声かけて来るなよ……。



「落ち着けホルター、今日の放課後行くからついてこい」

「~~~~~っ」



 何と言うか、声にならない?

 まぁ、ラーミルさんと出会った時がそんな感情だったけどさ。



「とりあえず、放課後まで大人しく勉強してろ。

 それと、今のままじゃ周りがチャチャ入れて来るから落ち着け」

「……難しいぞ。

 まだ会ってないのに暴走しそうなんだが……」


 

 俺に(・・)暴走すんじゃねえぞ?



「そこは全力で耐えろ。

 ティアーニ先生のような性犯罪者一歩手前のような評価が欲しいのか?」


「そこまでなのか?」


「そこまでだよ。

 僕も人のこと言えないのは分かっちゃいるけど、こうなるんだなぁ……」

 


 客観的に見えてしまうと、当時の自分の暴走っぷりが恥ずかしくなってくる。



「さて、授業が始まる前に顔洗って現実に戻ってこい」

「あぁ、クールダウンしてくる」



 大丈夫かな、あいつ。

 セリナ様の顔見たら昇天とか無いよな?

 死ぬ方もダメだけど、イクのもまずい。


 変なところで頭痛くなってきた……。




 その後授業は何とか受けているようだが、まともに話を聞いていないようで周りから心配されていた。


 この後女性と会うとは気づかれなかったようだが。

 というか、女っ気無さすぎる普段の行動からすると想像もつかないか?



 そして昼休み。



 「あら、今日もホルター様もご一緒ですか?」


 ジル嬢、昨日教えたんだから、既に分かってるんだろ?

 ニヤニヤして、バレバレなんだけど?



「今日の放課後ですわね?」


「ええ、一応言っておきますが、盗み見とか尾行はダメですよ?」


「……まさか、そんなことするはずないじゃないですか」



 僕の初デートの時を思い出せ!

 わざわざデートスポット教えておいて、そこで待機してたじゃねえか!

 あの時の喫茶店有効利用させていただいております!



「一応言っておきますけど、本当にやめてくださいね?

 ホルターがショックで泣きだすのは知ったこっちゃないですが、お相手が不快な思いをするのは不味すぎます」


「ニフェール、発言もう少し手加減してくれ……」


「諦めろホルター、ちゃんと言っとかないと本気で尾行してくるぞ?」



 ジル嬢、何だよ「チッ!」って!

 一応淑女だろ?



「ちなみにデートコースは?」

「喫茶店でお茶して終わりですね。

 時間無いのであまり回れませんし」


 

 まぁ、今の王都は少々ピリピリしているでしょうからねぇ。



「まぁ、初回だし時間も無ければそんなものか」

「初回に何期待してやがる、フェーリオ」


「そりゃ、初々しいところを見たいという衝動が……」

「止めてやれ、マジで」



 ホルターがビビってるから。



 午後の授業を受けて放課後、ホルターが早速やってきた。



「ニフェール、行くぞ!

 すぐ行くぞ!!」

「落ち着け馬鹿者!

 ちょっと待て!」



 全く、繁殖期の獣じゃねえんだから落ち着け。

 鼻息荒くて僕が襲われそうで怖いよ。


 首輪とリードを付けてやりたいと思いつつもとりあえずは放し飼いの形でまずはチアゼム侯爵家に到着。



「呼んでくるからちょっと待っててくれ」

「……なぁ、本当にお前婚約者いるのか?

 白昼夢とかじゃないよな?」




 おいっ!!




 というか、門番の面々も笑い過ぎ!



「いや、だってよ、お前に女性と接点があるとは正直思えなくって……」

「……ったく、グダグダ言ってないで待ってろよ。

 すぐ連れて来るから」



 急ぎ侯爵家の屋敷に入ると、ラーミルさんが待っていてくれた♡。


 今日は街中を歩く用にあまり貴族っぽさを出さない服だった。

 これはこれで(ジュルリ)。



「お待たせしました。

 では、参りましょうか?」

「はい♡」



 二人で手をつなぎ合って門のところまで行くと、ホルターが間抜けな顔をしていた。



「お、おま、そ、それ!」


「言葉になってねぇよ!

 僕の婚約者のラーミル・ノヴェールさんだよ」


「初めまして、ホルター・バルサイン様ですね?

 ラーミルと申します」



 ……あれ?


 反応無いんだけど?



「おい、ホルター!」

「……はっ!」



 まさか、意識飛んでたのか?



「はははっ、ちょっと夢を見ていたようだ。

 ニフェールに婚約者がいるなnテテテテェ!!」



 軽く(・・)右手で頭を握りつぶそうとすると、やっと現実を見始めた様だ。



「ホルター、これは現実だ。

 くだらない発言してんなよ。

 というか、礼儀も忘れたのか?」


「……あぁ!

 すいません、初めましてラーミル様。

 ホルター・バルサインと申します」



 なんで挨拶だけでこんなかかるんだよ……。



「では、王宮に向かいましょうか。

 あちらも待っているでしょうし」



 てくてく王宮に向かっている間にホルターがラーミルさんに質問している。

 その内容が僕とラーミルさんとの馴れ初めなので、流石に恥ずかしいがまぁ、仕方ないか。



「え゛、つまりニフェールは人妻スキー?」


「結果的に惚れた相手が人妻だっただけでそこにこだわらなくていいぞ?

 ちなみに、初恋だったが相手が居るので諦めていたがな」



 ん?

 なんか混乱してる?



「どうしたホルター?」


「いや、出会うきっかけのグリース嬢の件だが、なんで逃走したんだ?」


「さぁ、推測ではあるがまともに話を聞いていなかっただけだと思うぞ?

 アムルとの婚約解消時も話を聞いてないというか、突っ走っていたからなぁ」



 おかげで僕とラーミルさんで婚約解消の整理をしていたんだし。

 親共も役立たずだったしな。



「あぁ、確かにあまり関わりたくないタイプの女性だったな。

 ジル嬢も少々困っていたようだし」



 確かになぁ。


 伯爵位の子女なのに行動が男爵子女よりひどいしな。


 ラーミルさんや先妻さんが礼儀を教えているのに関心なかったのだろう。

 全く、【才媛】の授業なんて金出してでも受けたいのに。


 そんな話をしていると王城に到着。

 門番に侯爵たちとお客様に会いに行く旨伝えてテクテクとジャーヴィン侯爵の所へ。



 ……ホルター、気持ちは分かるがおのぼりさんみたいだぞ?



「お前のお兄さんが働いているんだから、顔見せに行くとか無かったのか?」

 

「ねぇなぁ。

 正直、学園卒業してから行くところという認識だったからなぁ」

「あぁ、まぁ普通はそうか」



 騎士でもなく、当時騎士の伝手が無く王城に入るという時点で珍しいんだなぁ。

 うちの場合、裁判という条件があったけど、特殊過ぎたんだな。



 コンコン!



「ニフェールです、ジャーヴィン侯爵おられますか?」

「入れ」



 入るとチアゼム侯爵までいた。

 ……暇なの?



「いや、一応様子見に来ただけだ。

 ちなみに現時点で緊急性の高い情報は無い。

 それと、昨日うちで話していた情報はアニスから聞いている。

 アラーニにも伝えた」


「あぁ、それはありがたいです。

 僕も昨日の話位ですかね。

 あ、この後の王都の散歩が終わったらここ戻ってきますね」



 念の為ですけどね。



「分かった、ちなみにそちらがペスメーの弟か?」



 ……あれ、ホルター何してる?

 ジャーヴィン侯爵から問われてるぞ?


 まさか、もしかして固まってるの?

 目の前で手を振るけど反応無いし!



 仕方ない、気付けでもするか。



 ホルターの手を取り、中指を握りしめ、手の甲の方に向かって力ずくで曲げる!



「イテテテテッ!!

 イッテェよ!

 ニフェール、止めろ!!」


「やっと起きたか?」


「『起きたか?』じゃねえよ!

 何なんだよ!」



 へ?

 何なんだよも何もなぁ。

 


「お前が固まってジャーヴィン侯爵の質問に答えないからなぁ。

 ちょっと起こしてやったんだが?」


「ちょっとどころじゃねぇじゃねえか!

 ……って、質問?」

 

「お前がペスメー殿の弟かと聞かれているが?

 名前くらい名乗れるだろ?」



 この発言の直後顔真っ青にしたホルターが急に直立不動になり――



「申し訳ありません、ホルター・バルサインと申します!

 騎士団第二部隊所属、ペスメー・バルサインの弟です!」



 ――自己紹介……というか剣を使って最敬礼でもしかねないなこれ。


 というか、両侯爵。

 なに、その「こういうのでいいんだよ、こういうので」って反応は?!



「いや、だってなぁ?」

「だよなぁ?」



 回答になってねえだろうがよ!



「普通に学園生程度ならこの反応は普通だぞ?

 ニフェールの様に国の危機を見つけるとか暴動の端緒を見つけるとか普通出来ないからな?

 それに騎士でも上位の人物ボコるとかあり得ないからな?」


「マーニ兄とかアゼル兄ならあっさりと……」


「……ジーピン家があり得ないからな?」



 真実に一歩近づいたようだけど、僕へのダメージは変わらないからね?!



「ニフェール、お前王宮でも評価変わらないんだな?」


「お前まで何ぬかす、ホルター!」


「筆記の成績、実技の成績、他の科の試験まで参戦する。

 これで、自分らと同じ存在と見るのは流石に無理だ。

 同年だけど半分教師として見られているぞ?

 むしろ教師より教師っぽいとも……」




 グ フ ッ !




 ちょ、ちょっとキッツいなぁ、その発言。

 とはいえ、事実なんだろうけどさぁ。

 というか。両侯爵笑ってないで!!



 ……ラーミルさん、静かな怒りを蓄積するのはちょっと待って!



「あ~、とりあえずセリナ様をこれ以上待たせるのはまずいので、このあたりで」



 チラチラとラーミルさんを見つつ発言すると、「ヤベッ!」という反応を見せる両侯爵。


 やっと感づいたのか?

 ホルターは知らないから仕方ないとしても、【才媛】を知っている二人がそれはちょっとまずかろう?


 僕を揶揄うつもりだったのかもしれないけど、一緒にラーミルさんまで揶揄ってるんだよ?


 それとホルターの言った条件って、フェーリオとジル嬢も該当するんだけど忘れてない?



「あ、あぁ、そうだな、行ってこい」

「はい、では失礼します」



 怯えた雰囲気を出して退出の許可を出すジャーヴィン侯爵。

 まぁ、後で子供たちからの反撃を待つがいい。

 全部ばらしてやる!!



「ん~」

「どした、ホルター?」

「いや、何か突然侯爵様たちの反応が変わった気がしてな」



 まぁ、そうだろうよ。

 とはいえ、ホルターは事情知らないからなぁ。



「単純に言うと、お前がさっき言った僕の評価。

 あれって両侯爵の子息子女も同じ評価されているというのを忘れているんだよ」

「……フェーリオ様とジル様?」



 なんだ、分かってんじゃん。



「それに加えて、既に卒業している方でもう一人有名人がいるんだが、そのことも忘れていたようだよ」

「ん?

 誰だ?」


「ホルターは知らないかもしれないな。

【才媛】って呼ばれる人で、淑女科なのにほぼ全科首席になった方。

 あ、文官科は五位だったか?」



 あ、驚いてる。



「ちなみに、ジル嬢はその【才媛】を目指して学んでいるそうだよ」

「すっげえな、それ。

 でもそれがこの話になんで関わるんだ?」




「ここに【才媛】がいるから」

「はぁ?」




 ホルター、顎外れるぞ?



「ラーミルさんは学園生時代に【才媛】と呼ばれていたんだよ。

 とは言え、知ったのは僕も婚約者になった後、今年の夏辺りに偶然知ったんだ」



 ロッティ姉様がポロっと言っちゃったんだよな。

 


「ちなみに、ニフェールの学力は……あ、違うか。

 一年の首席は婚約者いない時だもんな」


「今も勉強自体は自力だよ?

 だから学園で勉強してるんだし」



 そこは自分の努力でいい成績取りたいしね。



「教えてもらうとか考えなかったのか?」

「特に考えなかったなぁ。

 それに……二人っきりになって別の勉強が捗っちゃいそうで」




 ボ フ ッ ! !




 ラーミルさん、顔真っ赤ですよ。

 まぁ、僕もですけど。


 ホルター、何呆れてやがる?!



「あ~、何か聞かなきゃよかった……」

「何抜かす、お前だってこうなりたいから提案に乗ったんだろ?」

「いや、そうだけどさ……」


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