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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
8:後片付け
221/362

12

「つまり、一年いれば平民と認められて前の家と縁を切れる。

 中ではシスターとしての仕事と平民として生活するための知識を受ける。

 一年後であれば、出ていくタイミングをずらすのはアリ。

 手紙なら連絡とることは可能。

 対面は当人が望めば女性のみ可。

 セリナ様が関わりそうなのはこのくらいですね」

 

「ちなみに、修道院に残りたい人はシスターとしての勉強をして別修道院に移るとかもあるようだ。

 なんで、親から許可得られなかったけど神に仕えたいという場合もこの修道院から始める場合もあるらしいぞ」



 なら、特に問題は無さそうかな?

 ホルターとくっつきそうなら少しフォローすることも検討しようか。

 

 例えば、セリナ様とラーミルさんの間で手紙のやり取りをして、その中にホルターの手紙を入れるとか?

 

 

「あ、リヴァ修道院って国が管理しているんです?」


「いや、国が後ろ盾になっているけど、実務は別だね。

 確か教会と商業ギルド、そして貴族側でボシース家が担当していますね」

 

 

 ……ボシース家?

 あれ、確か……。



「ボシース家って中立派の?」


「あれ、知っているんですか?

 その通りですよ。

 ただ、やっていることは王宮側窓口というだけなんですけどね。

 確か今は嫡男の方が対応しているはずですよ」



 ふ~ん、スロムの家ってそんなことしてんだ。

 でもアイツ騎士科だよな?

 次男だからかな?



 まぁそれは置いておいて、セリナ様とロッティ姉様やラーミルさんのお友達を避難させる為の知識はある程度集まったかな?

 ……一つ抜けてた。

 

 

「ちなみに、リヴァ修道院っていつでも入れるんですよね?

 真夜中に伺っても大丈夫ですよね?」


「まぁ、昼夜関係なく受け付けているけど、誰か入る予定なの?」


「ええ、セリナ様以外にも数人家から逃走予定の方がおられます。

 なのでこれらの情報は大事なんですよ」



 サバラ殿は納得してくださるが、クーロ殿が何か悩んでいる?

 いや、僕がやりそうなことを推測しているのか?



「ニフェール殿、まさか……」

「何でしょう(ニッコリ)?」



 笑顔で応じたつもりなのだが、なぜかクーロ殿は怯えている。

 可愛いワンコの笑顔だよ?



「対象の家に忍び込んで攫う予定か?」

「おぉ、クーロ殿素晴らしい!」



 褒めるとなぜか頭を抱えるクーロ殿。

 サバラ殿を見習って欲し……あれ?

 サバラ殿も頭抱えてる?



「ちょっと待て、攫っちゃダメだろ?!」


「事前に当人には確認取りますよ?

 で、意思確認取れた人だけ攫って行くだけです。

 つまり、わざわざ侵入に頭抱える必要無く、攫われる人物が協力してくれる予定」



 なぜでしょう、呻きとしか感じられない声が聞こえてくるのですが。

 それもデュエットで。


 サバラ殿にクーロ殿、ハモリ具合完璧ですよ!



「そんな褒め方要らねぇ!

 冗談だろ?

 冗談だよなぁ?」


「一応、方向性は言った通りですよ?

 受け入れるかは当人たち次第だから、ここで騒いでも仕方がないんですけど」



 クーロ殿がなぜか(いきどお)っているので、落ち着いてもらえるよう懇切丁寧に説明する。



「どうやって攫うんだよ?!」


「僕の身体能力甘く見てません?

 その位簡単ですよ。

 サバラ殿は分かるでしょ?

 毎日学園からバレずに脱出&侵入していたの知ってるんだし」



 僕の発言にサバラ殿が頷いてくれる。

 なぜか目が死んでいるけど、そこは気にしないであげた方がいいのかな?



「いや、そこは出来たとしても部屋への侵入は――」

「――それこそ、逃げたい方々が全力で協力してくださるでしょ?」


「リヴァ修道院への移動――」

「――背負って走っても良し、馬車を隠しておいても良し。

 手口は何とでもなりますよ」



 クーロ殿が頭を抱えるだけでなく三角座りまで併用してきた。

 もしかして立ち直れなくなりそう?



「ちなみに、両侯爵にはこの件既に教えてますよ?」

「やっぱり……クーロ諦めろ。

 既に俺たちじゃ止められない事態だ」



 サバラ殿、あっさり諦めましたね。

 判断としては正しいと思いますけど。



「いつ頃実行するんです?」


「予定は決まってません。

 ですが、逃走したい方々の一人の実家がちょっとまずいことになりそうです。

 具体的に言うと騎士団第三部隊副隊長」


「あれですか?!

 あれが関わっちゃうんですか?!」



 ええ、あれが関わっちゃうんです。



「なので今日この後チアゼム侯爵家に戻ったら、とある人物から逃走したい人物たちに声かけて対面での相談会を開くよう依頼する予定です」



 ロッティ姉様の事ですね。

 早めに動くこと考えた方が、そして覚悟決めるなり、平民になった後ロッティ姉様の方で面倒見ることを確約するとか考えてもらわないと。



「……もし、問題や疑問等発生したら連絡ください。

 可能な限り協力しますから」


「お、おい、サバラ!

 何追加で仕事背負おうとしてんだよ!」



 サバラ殿が協力すること明言し、クーロ殿が止めようとする。

 クーロ殿の気持ちは分かるんだけどねぇ。


 サバラ殿がただ単純に善意でこんな発言するとは思えないんだよなぁ。



「サバラ殿、もしかして僕の行動を踏まえてリヴァ修道院の状況を探ろうとしています?

 具体的に言うと予算執行状況とか、ボシース家がちゃんと仕事しているかとか、教会や商業ギルドの対応などかな?」


「……本当に、話が早くて助かりますよ。

 ええ、ニフェール殿の想像で大体合ってます。

 セリナ様、そして同様に逃走したい方々に内部状況をお教えいただきたいのです」



 やっぱりね、そうだと思った。



「今の所怪しい情報があるわけではありません。

 ですが、そうそう調べることができない場所ですので、このチャンスに調査してしまおうかと思ってます」


「念の為確認ですが、向こうからの手紙は検閲されますか?」


「されないはずです。

 ですが、念の為に助けて欲しい時には特定のキーワードを入れた手紙を送るようにしたいのです。

 そのために、一度関係メンバーが集まって意識合わせをさせていただきたい」



 ……言いたいことは分かるんだけど、正直難しいなぁ。

 関係メンバーの中には外に出れない人もいる。


 出れるであろうロッティ姉様の所の四名も王宮には行けないだろう。

 下手な行動を取ったら目立ってしまうだろうしね。



「まず、サバラ殿の希望は無理です。

 一人、屋敷から出られない人がおられます。

 その人と交渉するのはまず無理でしょう」



 クーロ殿、唖然としてますけどそんな事情の人もいるのですよ?



「また、現時点で動ける四名も王宮に集まるとかは止めるべきかと。

 親にバレてしまっては元も子もありません」


「あ……」



 サバラ殿、もしかして想定してなかった?



「なので、まず呼びようのない人物は除外。

 呼べるメンバーは王宮では無く別の所で集まることとしましょう。

 できれば、当人たちが逃げる覚悟をしてからの方がいい。

 こちらで一旦対象メンバーを招集して逃げる気持ちとその覚悟を確認してからにしたいです」


「……そうですね、その方針で進めましょうか。

 では、こちらはキーワードの検討等準備しておきます。

 ちなみにどこで会う予定でしょうか?」



 どこ……まぁ、頼むしかないか。


 

「一番可能性の高いのはチアゼム侯爵家でしょうね。

 次にジドロ男爵家。

 最初の集合は侯爵家でしょうけど、サバラ殿と会わせるのはどちらかは決まってません」



 ロッティ姉様の都合もあるからなぁ。



「まぁ、さっそく集合かけて説明会を開いてもらうようお願いしておきます。

 ある程度こちらに顔出しますので、進捗はその時に」


「ええ、お願いします。

 ついでにこちらで仕事してくださってもよろしいのですよ?」


「学園の勉強も大事なのでちょっとそれは無理ですね。

 三科試験ってかなり大変なので……」



 サバラ殿の表情からすると、忘れてたな?



「申し訳ない……」


「罰として、一緒に冬季試験受けてみます?

 地獄が見れますよ?」


「全力でお断りするよ。

 心も体も壊したくないからね」



 いや的確な判断ですけど、そこまで怯えなくても。




 話も終わり、王宮を出てチアゼム侯爵家に帰る。

 時間的にも遅くなったので夕食のタイミングで関係しそうなメンバーに協力を依頼する。


 アニス様、ロッティ姉様、ラーミルさん、ついでにジル嬢。

 それとうちの四名。


 侯爵はまだ帰ってきてないようなので、このメンバーで話を共有する。

 一通り話すと、(まぁ、いつも通りなのだが)呆れの声が。



「ニフェール様、あんたどれだけ厄介事持ってるんだ?」

「両手両足じゃ足りない位だよ、カル」



 いや、実際色々あるからねぇ。


 

「で、まずアニス様。

 ロッティ姉様主催のお茶会をここで開くことの許可をお願いします」

「その位ならいいわよ」



 ありがとうございます。



「次にロッティ姉様。

 以前話していた逃げたいと考えている四名にお茶会の提案を。

 スケジュールは明日じゃなければOK。

 放課後から僕も参加しますので、その方向で」


「そちらは大丈夫よ。

 一応暴動の裁判も避けるべきよね?」

「そうですね、ちなみに裁判ではロッティ姉様にも仕事割り振ろうかと考えてます」



 なんか不安そうな表情になっているなぁ。

 そんな難しい事じゃないよ?



「後で詳細は話しますので、ちょっと待ってて。

 次、ラーミルさん。

 明日放課後になったらセリナ様対応(デート)にご協力願います。

 一旦チアゼム侯爵家に戻りますので、そこで合流しましょう」

「えぇ、大丈夫ですわ♡」



 ちゃんと意図は伝わっているようですね♡。



「取り合えずすぐに動くのはこの辺りですね。

 で、暴動の裁判についてですが、カルとルーシー。

 一兵卒に化けてもらう。

 特にルーシーは男装できるように検討しておいてくれ」


「どんな感じにすればいいかしら?」



 兵士、それも出来れば目立たないようなのが望ましいんだけど。



「ヘルメット被ってもらう予定なので、髪の毛を服の中に入れて長さがバレないように。

 それと、胸を隠す必要があるので、布で巻いてある程度なだらかにできないか?」



 いや、そんな目で見ないでくれよ。

 ラーミルさんほどじゃ無いけどそれなりに大きいからそのまま兵士の恰好するとバレバレなんだ。



「ニフェール様……(ジトッ)」


「ナット、その視線で見るのは止めてくれ。

 ザイディの前に近づく際にバレたら意味無いんだよ。

 アイツにはカルとルーシーが殺しに来たことを直前までばらしたくないんだ」


「あ、あぁ、そういうことね、アハハ……」



 ナット、笑って誤魔化そうとするな、コンチクショウ!



「ルーシー、大体やりたいことのイメージは分かったか?」


「えぇ、ちなみに、男性に化けられればいいのよね?

 そこで別の対処案とかあればそっちでもいい?」



 え、どんな風にやるんだ?

 ちょっと想像つかないんだが?


「説明を頼む!」


「兵士の服で大きめのサイズを選んで、腹回り――特に身体の前の方――に詰め布をするの。

 そうすると太目の兵士に見られるからある程度誤魔化せるわよ?」



 あぁ、胸を隠すのではなく、腹を目立たせるのか。



「ちょっと検討要だな。

 まだマーニ兄と調整してないから明日位に調整してみるよ。

 それでうまくいきそうならそっちで構わない」


「分かったわ、こちらはどちらでも対応できるように準備しておく」



 後は……。



「ロッティ姉様、先ほど待ってもらった件。

 裁判の時にマーニ兄にも出番を用意します。

 その時に一緒に参加して言葉で追いつめて欲しい」


「言葉で?」



 思いつくままにぶちまけて欲しいと言う方が正しいかな?



「まず、ザイディを手伝った三名を処分するのに、ジーピン家から三名参加します。

 ジャン元先生をアゼル兄が。

 ウィリアム元先生をマーニ兄が。

 そしてプロブを僕が対応します」



 この時点でやること感づいた人は……いないか。



「この割り当ては単純に同学年を割り当てた感じですね。

 で、ジャン元先生はアゼル兄が【魔王】覚醒した時に喧嘩売った騎士科の一人。

 カールラ姉様に学園生時代に何をやらかしたのかぶちまけてもらう予定。

 そして、その発言が終わったらアゼル兄がたたっ切る」



 ロッティ姉様、次に自分が何やればいいのか分かってきましたね?

 イイ笑顔になってますよ?

 おや、アニス様やジル嬢まで。



「次にウィリアム元先生はマーニ兄が同じように喧嘩売られた一人。

 ロッティ姉様にここで相手が何したかぶちまけて欲しい」


「なるほど、文章はこちらで考えていいのね?」

「一応カールラ姉様が来たら同じように説明して調整はするけど、基本はお願い」



 被り過ぎは避けたいんだよねぇ。

 見物している王都の住人も聞いててつまんないだろうし。



「最後、僕がプロブを切り刻むんだけど、ここは特にフォロー無しで」


「えっ!」



 ラーミルさん、この場面であなたの出番はありませんよ。



「フォローを求めない理由は簡単。

 プロブとの接点無いでしょ?」


「あ……」



 ラーミルさんの顔知っている騎士科同期っていないし。

 まぁ、明日ホルターが初めて顔を知ることになるんだけど。



「そんなわけで、ラーミルさんが何かその場で言っても『あんた誰?』扱いされるのがオチなので」

「確かにそうですね……」



 ご理解いただけたようですね。



「なので僕の分は一人でぶちまけます。

 その後、主犯となるザイディは火炙りの刑となります。

 で、処刑人としてカルとルーシー。

 たいまつにつけた火を投げる前に二人とも一言言ってやれ」



 二人でキョトンとした後、イヤラシイ笑顔を返してきた。

 理解度が高くて助かるよ。



「ちなみにラーミルさんとナットはルーシーの男装に協力してあげて欲しいです。

 一人じゃ大変なところもあるでしょうし」

「かしこまりました」

「はーい、でもカリム暇になっちゃうね」



 あ、確かに暇だねぇ。



「なら女性陣の護衛、兼当日の外部窓口となってもらえるかな?

 ジャーヴィン侯爵には後日伝えておくし、騎士団側の窓口をカリムの事を知っている人物にして欲しいと言っておく」


「かしこまりました」



 これで当日までの仕事は大体割り振れたかな?



「ニフェール、あなたの分の仕事はこれで終わるの?」



 アニス様、そんなわけないじゃないですか。

 とはいえ、とりあえずニ・三日分の厄介事はある程度終わるのかな?



「多分……誰かがお代わり持ってくるとか無い限りは近々の厄介事はひとまず終わりかと」



 あまりお代わりもってこられると至っちゃうんですがね。


 ちなみに、持ってくる可能性が高いのは両侯爵なんですけど?

 何となくですけどね。



「まぁ、そこは誰も想像できないからどうしようもないわね。

 落ち着きそうならまぁいいわ」



 心配して頂きありがとうございます。

 まぁ、これ以上厄介事は来ないでしょ。(フラグ)



 

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― 新着の感想 ―
投稿感謝です^^ インポッシブルなミッションもジーピン家にとっては悠々余裕のポッシブル(;^_^A >(フラグ) 今でさえ特盛海鮮丼状態なのにデザートに巨大パフェも追加されそうな予感^^; (↑単…
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