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「ホルター。
もし、先ほどの条件を満たす女性がいたら、顔合わせ位してみるか?」
少し悩み、諾を返すホルター。
「好みかどうかもあるから、顔合わせ以上の期待はするなよ?」
んん?
なんか勘違いしてねぇか?
「それは相手側も同じだと思うんだが、なぜお前の意志だけが通ると思った?
互いが付き合いたいと思って初めて成立するんだから。
お前が振られる可能性だって考慮しとけよ」
「あ……(恥)」
全く、自分がモテているとでも勘違いしてるのか?
ペスメー殿から不安視されるくらいに彼女いないんだろ?
「まず、こちらで今日の放課後にでも相手に相談してみる。
少しでも関心持ってもらえたら会う機会を作ってみるから、明日か明後日の放課後時間欲しいが大丈夫か?」
「あぁ、放課後なら大丈夫だ」
なぁ、ホルター。
鼻の下延びてるぞ?
「一応言っておくが、頭の中をクリアにして聖者になれ。
そうじゃないと顔合わせさせられない。
今のままだと、一目会うだけで逃げられるぞ?
欲望駄々洩れだし」
「わ、分かった。
その点は気を付ける」
本気で気を付けろよ?
「なぁニフェール、ホルターに顔合わせさせる女性ってどういう切欠で知ったんだ?」
どうしたフェーリオ?
あまり興味津々な反応は止めた方がいいぞ?
ジル嬢が暴れても押さえないからな?
「遠征で知り合った人物で、必要があって王都に連れてきた。
現時点で人妻で後妻で貴族だけど、すぐにでも離婚予定。
平民になることを考えている。
でも、僕の見た限りやってけるように見えなかった。
ホルターの婚約者探しの話をしていて、ふと思いついたので提案した」
「……勢いで提案したようにしか聞こえなかったが?」
「実際その通りなんだよなぁ。
ペスメー殿に相談された件とこの女性の件。
『まとめて解決できるんじゃね?』と思ったし」
「本当に勢いだけじゃねえか!」
あんまり呆れないでくれ。
僕もそう思ってるし。
「ただでさえ色々問題ごとがあるんだよ。
これで二件の面倒事が消えるなら、この勢いに乗ってサッサと済ませたいんだ」
暴動の件の処分とか、遠征邪魔した奴らの処分とか、アンドリエ家たちの処分とか、それ以外にもやること大量にあるんだよなぁ。
そう考えると、一つでも面倒事は終わらせておきたいんだ。
「また、色々と背負っちゃってるのか……」
「まぁ、一つはやらなきゃいけないんだけどね」
ラーミルさんの実家の件だし。
「他は巻き込まれただけだけど、関わった以上放置しとくのは気にくわない。
なんで、終わらせられるものは早く完結させる。
そのうちの一点がホルターの婚約者探し。
もう一点がとある女性の今後について」
フェーリオ、ジル嬢。
そんな憐れまないで。
「ニフェール、俺じゃあまり役に立たないかもしれんが、うちらの親こき使っていいからさっさと終わらせとけ。
お前も学生なんだから、あまり無茶するな」
「問題点なら大体両侯爵にはぶちまけてるよ?
二人とも頭抱えてるけど。
それと、騎士団長にも少し言ったら固まっちゃった……」
「はぁ?」
あれ?
フェーリオ、もしかしてお前も知らないのか?
「僕も知らなかったんだけど、今の騎士団長って剣の腕でのし上がっていたらしいんだ。
そして僕がもたらした情報聞いたら考えるのを止めちゃったみたい」
「お前……追い詰めたのか?」
いや、そんなことしないよ、まだ。
「両侯爵と話し合うときのように色々話したら、ブツブツ独り言言い始めてた」
「それ、心壊したとか言わないか?」
「両侯爵たちはダメージ受けてないから、頭の防御力が薄いんじゃね?」
イヤ、団長の名誉のために言うけど、髪が薄いとかじゃないよ?
フサフサだよ?
記憶力や思考力の方面が弱いってだけだからね?
その後ホルターは教室に戻り三人での会話を始める。
「なぁ、ホルターってそこまでモテないのか?」
「侯爵家という後ろ盾があると言いたい放題だな、フェーリオ」
ジト目で見てやると慌てて否定する。
だが、大半の生徒に同じこと言ったら同じように恨まれるぞ?
「ペスメー殿は男爵家の次男三男が簡単に婚約者なんてできないと言ってたよ。
僕もそれには賛成」
ラーミルさんと出会わなければ未だに僕に婚約者はいなかっただろうし。
「まずモテるかどうかとなると、爵位でかなり決まっちゃうからねぇ。
それを越える位の美形だったらまた違うんだろうけど。
一般的な顔ならそう簡単に婚約者は得られないってことでしょ?
平民でも儲けている商人の方が得な場合も多々あるだろうし」
男爵なんて余程でないと平民と大差ないしね。
それに、実力だけでは簡単に婚約者は見つからないよ?
ソースは僕。
騎士科首席とってもお相手見つからなかったしね。
なんとなくだけど、一つ下の爵位の相手を探すというのも手なんだと思う。
でも、男爵の下って無いしね。
「そんなもんか……」
「そんなもんだよ。
女性側だって無駄に苦労するよりも安定をもたらせそうな男を選ぶだろうし。
最近僕に女性が群がりかけたでしょ?
それだって『成果を出した』=『今後が期待できる』ってだけだし。
今まで歯牙にもかけてない面々が突然近寄ってくるならそういうことでしょ?」
フェーリオ、なんでそんなに落ち込むんだ?
「いや、予想以上に苦労しているんだなと思ってな」
「実は家の都合で婚約って変なの選ばなければかなりマシなんだよ?
まぁ、親の目が節穴だと地獄だけど」
アムルという例があるからね。
「今回はどちらもあまり無茶な条件を付けないだろうし、少しデートして十分噛み合うようならそのまま行けちゃうんじゃないかな?」
「なんか、お前世話人みたいだな。
確かティアーニ先生のこともそんな感じで対応してなかったっけ?」
(思考中)……してるな。
でも、ティアーニ先生の場合はベル兄様が相手だったから対応しているだけだし。
「してたけど、積極的にやりたいとは思わないよ。
面倒だもの。
それより追加で話があるんだが、暴動の裁判の次の週の日曜に複数人デートどうだろう?
一応何人かにはOK貰ってるんだけど」
「あぁ、そっちはOKだ。
……うまくいきそうなのか?」
お、心配してくれるのか?
「そのための監視役としてラーミルさんと参加するんだが?
まぁ、うちのカルよりちゃんとしてるから大丈夫だと思うよ」
カルのヘタレっぷりを見たらベル兄様は十分積極的だよ。
そんな会話を終わらせ、午後の授業を済ませて放課後。
大急ぎで王宮に突っ走る。
サクッとジャーヴィン侯爵の執務室に向かうと侯爵だけでなく騎士団長とマーニ兄がいた。
え、何、物凄い面倒そうなんだけど?
「おぉ、学園は終わったか」
何、侯爵?
滅茶苦茶嫌な笑顔なんだけど?
「すこ~し、情報交換があるのじゃがなぁ?」
「帰っていい?」
「ダメじゃ♡」
オッサンのハートマーク付き発言は婦女子からヒかれますよ?
「何があったの?」
「ギルドの長――ザイディだったな――は、一通り暴動について白状したよ。
理由もお前の想像通り、金稼ぎの為だったそうだ」
まぁ、そうだろうねぇ。
「ディーマス家から金を得ることができずギルドの維持ができなくなった。
そこで他三人からの情報で王都に危険人物――お前のことだぞ?――がいなくなったので暴動を決意したそうだよ」
そこ、危険人物=僕にしないでよ。
こんなかわいいワンコにそんな極悪非道な単語付けないで欲しいな。
「で、厄介事なんだが、他二名が口裏合わせたかのように何も知らないとほざき出すんだ」
「脅すなり拷問なりしてみたら?」
「既にやったが、言うのは同じ事ばかり。
自分らは何故捕まったのか分からない。
ただの一般人だとよ」
「元学園教師であることは?」
「認めている。
その上で関与していないと言っているんだ」
はぁ?
「ザイディは三人ともギルドに属していると認めているんですね?」
「あぁ、そしてお前の同期――プロブだったな?――も認めている。
だが、ザイディ達が嘘をついていると言いだしているんだ」
「嘘だと言い張る理由は?
それとあの場所にいた理由は?」
「自分らは護衛を仕事にしてると、あの時はザイディに護衛の依頼を受けただけだと言っている。
なお、契約期間や契約金について書類が何処にあるか聞いているが、ザイディが持っているはずの一点張り」
へ?
契約なんだから、双方が持って無いとダメなんじゃないの?
「……ニフェールも気づくと思うが、契約上双方が同一の書類を持っているはず。
それが無い時点で嘘だと分かる。
それに加え、ザイディ側もそんなの作ったこと無いと言っている。
なので、契約書の無いまま契約していたことになる」
はぁ……何と言うか浅知恵って奴?
「その部分を指摘したらその後は黙りっぱなし。
なぁ、ニフェール。
騎士科ってこんな程度の知識しかないのか?」
いや、なぜそれを僕に聞くの?
「まず、学園騎士科で学ぶ範囲の知識で契約書の件は分かるはずですよ?
騎士になれずに護衛で食っていく人もいますし。
なので契約については授業で説明されてます。
確か、一年後期だったはず。」
「だよなぁ……」
知ってんなら聞かないでよ。
「もしかして、余程成績悪いのか?」
「それは学園に聞いてみてください。
なお、プロブは確実に理解してないでしょうね」
学年最下位の実力を甘く見ないで頂きたいですね。
「分かった、すぐにジャンとウィリアムの過去の成績を調べさせる」
「それと、数点調べて頂きたいです。
二人がどうやって教師に潜り込めたのか。
二人の実家はどの派閥か。
学園でなぜ弾くことができなかったのか」
元々この人たち学園にも入れないはずなのになぜか教師やってるんだよね?
夏の時は別に調べる気も起きなかったけど、二人がこれだけ犯罪に関わってくるのなら調べた方がよさそうだ。
「ふむ、元々アゼルやマーニに喧嘩売って自滅した奴らとしか思ってなかったが、念の為調べた方がよさそうだな。
分かった、こちらで調べておこう。
それと、プロブの方だが……」
えぇ、まだあるの?
「やったことは認めているが、なぜ犯罪者扱いされるのか分かってないようだ。
説明しているが『貴族なのになんでダメなんだ?』の一点張り。
それと、アイツだけまだ貴族のままらしい」
「へっ?」
え、冗談でしょ?
元先生コンビは夏の件で貴族から外れたんだろう。
でもプロブはそのままだったから実家が滅びる?
「それって、親御さんたちに賠償求める?」
「むしろ求めないと『王家は何考えているんだ!』と言われかねない。
冗談抜きでアイツの実家、カーディオ家は潰れるな」
だよねぇ、これ、どう考えても見逃すとか無理だし。
「どう考えても支払いきれないし、売爵して平民になるくらいしか手がないだろう。
むしろ国外追放も考えられる」
うっわぁ、親御さん涙目だろこれ。
「あれ、プロブの実家って派閥とか分かります?」
「国王派文官貴族だな。
父親と兄は文官をしている。
母親はディーマス家の親戚、現当主コロクタの従妹らしい」
ん?
貴族派と国王派で婚姻って珍しいな?
まぁ、男爵レベルだから気にもされなかったのかな?
「もしかして、アイツはその伝手でディーマス家長女と婚約したのかな?」
というか、それくらいしかアイツが侯爵家長女と婚約する理由が見当たらないし。
「多分そうだろうな。
まぁ、ディーマス家も即刻婚約解消するだろう。
もしかすると破棄かもしれんがな。
とはいえ、カーディオ家が賠償金を払えるはずがないがね」
でしょうね、どう考えても滅ぶしかない家だし。
「父親や兄は文官としてマトモ?」
「特にそこまで気にする存在では無いな。
仕事が全くできないわけでは無いのだが……。
父親・兄共々末端の立場で、かつ下手に表に出すには性格に問題あってな」
あぁ、対王都民の仕事させたらまずい性格の人ですか。
確かにそれは下手に表に出したらマズいなぁ。
「そんなわけで、平民落ちや国外追放となっても影響は無い。
なので、あちらの家族は気にしなくていい」
まぁ、色々と面倒事が出るもんだ。
あぁ、こちらの話も降らなきゃなぁ。
「そちらの情報についてはおしまい?
なら、こちらも情報交換と相談があるんだけど、皆でチアゼム侯爵の執務室に行かない?」
ビクッ!!
いや、そこまで怯える話じゃないんだけどなぁ。
「まぁ、あいつを巻き込んだ方がいいのは確かにありそうだ」
「面倒事でしょうから、全員周知は早い方がいいかと」
「……すまん、ニフェール。
否定の言葉が出てこない」
マーニ兄!
その言葉が一番辛いんだけど?!




