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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
8:後片付け
211/359

2

 ジャーヴィン侯爵に小会議室へ案内されて行くと、この国でとてもエライ三名が鎮座していた。


 

 すなわち、悟った表情を見せる陛下。


 大好きな料理を目の前にしたかのような肉食獣の表情を見せる王妃様。


 事態に追いついておらず、ある意味巻き込まれただけの大公様。



 もしかして、『胃薬友の会』新人もう一人いた?



 そんなことを考えていると大公様が情けない声で質問してきた。



「な、なぁ、ニフェール。

 この話は一体何なんだ?

 チアゼムの説明だとお前が要のようだが、いまいち理解が及ばなくてな」



 チアゼム侯爵、大公様にちゃんと説明してくださいよ!

 その笑顔、「みんなで渡れば怖くない」とか思ってるだろ?



「簡単に言うと、遠征&暴動の説明完全版をここで行います。

 明日改めて報告するつもりですが、そちらでは簡略版で済ませます」



 困惑の表情を見せてくる大公様。

 でも、仕方ないんです。



「あまりにも内容がぶっ飛び過ぎてるのと、僕が持つ裏事情があまりにも大きすぎるんです。

 このまま発表しても今まで僕と接点なかった方々では全く理解が追い付かないのは想像つくので……」



 あぁ、なんというか既について行けてないのが二人。


 大公様と騎士団長。


 でも、大公様って、暗殺者ギルドの件ってご存じじゃなかったでしたっけ?



「なので、僕を少しでも知る方々に真実を伝え、加えて簡略版で抜かしてはいけない部分を一緒に検討いただければと」


「……ニフェール、それはお前の部下たちの事も関わるか?」


「部下たち、僕の両親、そして無関係な厄介事。

 色々ありますよ?」


「そんな面倒事要らない……」



 大公様、諦めて。

 一応王族に連なるんでしょ?


 国の大事にもなりかねないんだから、ちゃんと聞いてね?



「ふむ、大体見た限り一番きついのは騎士団長か。

 とりあえず頭空っぽにして受け入れておけ。

 その方がダメージは少ないぞ」


「王妃様、その発言不安しかないのですが……」


「安心しろ、多分大なり小なり皆頭を抱えるのは確定だ」



 王妃様、フォローって言葉ご存じです?



「え~、皆様覚悟ができていないかもしれませんが、説明に入ります。

 一通り説明終わったら質疑応答のタイミングを用意しますので、まずは一通りお聞きください。

 では……」



 そこから僕のオンステージ。

 一通り現場であったこと、僕の事情等一通り話した。


 スホルムでサバラ殿が成し遂げた農家の賠償説明より長い時間をかけて一通り説明していく。




 その結果……。




「……」(魂が抜けた人)


「……」(頭が処理しきれない人)


「(ハアハア)」(やっぱり欲しい……という表情の王妃様)




 という死屍累々? な事態となってしまった。

 いや、想定通りではあるんだけどね。



「なぁ、ニフェール。

 これ、どうするつもりだ?」



 どうしようもないんじゃない?



「マーニ兄、勘違いしているようだね。

 今回集まってもらったのは、このメンバーに事実を理解してもらうこと。


 そして、明日の報告で触れて欲しくない部分を理解してもらったうえで報告案を練ること。

 一度は一通り聞いてもらわないと話が始まらないんだ」



「そりゃ分かるんだがなぁ。

 とはいえ、この調子だと戻って来れなそうな面々が多そうだが?」


「最悪、陛下・王妃様・両侯爵から認められれば僕としては構わないよ?

 他の方は口を噤んでくだされば、バレなくて済むし」



 個人的には明日の上位者会議を乗り切るのが最優先だしね。



「……ニフェール殿、色々無茶苦茶な情報でしたが、これそのまま報告はしたくないのですよね?」


「ええサバラ殿。

 下手に全て言うと、犯罪者とつるんで何やるんだなんて言われてしまいます。

 ただでさえ、元学園生が元学園教師を経由して暴動のきっかけとなったなんて現実もあるので……」



 プロブ達の状況があまりにもまず過ぎて、下手に裏家業とつながってると知られたら僕だけじゃなくて両侯爵まで終わってしまう。



「なら、ティッキィ殿の事は、繋がりは伏せて一人は射殺、一人は捕えてアンドリエ家の悪事を白状してくれたので解放したでいいのでは?」


「そうですね、ティッキィはそれで済ませられるかな。

 後は、ギルドの場所とランゲルか……」



 頭抱えていると、ラクナ殿が提案してきた。



「勘の件はインスとランゲルに黙っておいてもらうとかはどうだ?」



 あぁ、僕もちょっと考えたんだよなぁ、それ。



「確かにそれが一番楽なんですけど、その場合第八部隊に巻き込まれてアイツらクビになるんですよね?

 インスは……まぁ構わないのですが、ランゲルの勘は研究して頂いて、その結果次第では王家の方を守れるのではないかと思うのですが?」



 あの勘は使い方が分かればかなり有効なんだよね。



「確かに……」



 単純に見捨てられない程度には有益なので、下手に切れないんですよ。



 悩んでいると、カルまで発言してきた。


 大丈夫か?

 王妃様までいるのに?



「ギルドについてだが、血の臭いがしたからじゃダメか?」



 ……ありか?


 まぁ、あの辺りの血の臭いが中央通りからか詐欺師ギルドからか分かる奴はいないだろうから、大丈夫かな?



「……詐欺師ギルドだけならそれでいいかも。

 強盗ギルドは血の臭いでは分からない。

 なんせ、攻撃する側だから……暴動後、なぜか人の出入りが多かったとかにするか?」


「あぁ、ギルドから指示しているだろうし、偵察の面々が行き来するだろうな。

 それなら何とか誤魔化せるかもしれねぇ」



 とりあえず後はランゲルの勘か。


 そう考えていると、マーニ兄が提案してくる。



「ニフェール。

 なんとなくだが、ランゲルが結婚式の話を出さなければ済みそうな気がするんだが?」


「……そうだね、ただアイツらを沈黙させられる?」


「……難しいな」


「条件付けたら黙ってくれるかな?」


「条件?」




 あれ、マーニ兄、思いつかない?




「あの二人を騎士として残すのを条件としてランゲルの勘について黙ることを求めるとか?」


「……不可能ではないけど、アイツらが黙っているかな?」


「そこが不安なんだよね……。

 それとも結婚式の件、ばらしていいですか、陛下?」



 陛下に問うと、苦悩の表情を見せて来る。

 やっぱり言い出すのはもう少し後かなぁ……。



「ふむ、ガルブ。

 今回参加する騎士側の面々で貴族派はいるか?」


「いいえ、おりません」


「チアゼムよ、文官側は?」


「おりませんな」




「であればニフェールよ、あの結婚式の件、会話に入れて構わん。

 説明後、他言無用であること説明しておく」




 であれば、勘については特に何とでもなるな。

 それ以前にそっちの方で大騒ぎになりそうだけど。



「……陛下、確認なのですが、あの結婚式の件はどこまで知られておりますか?」


「騎士団側は団長・副団長・第一・第二の隊長だな。

 あと、実務的な意味で第一の騎士は皆知っている。

 文官はほぼ知らぬのではないか?

 チアゼムまでで止めているはずだな?」


「御意、広めるべきではないと判断いたしましたので。

 ですが、今回をきっかけに伝える範囲を広げるのもアリかと」




 ふむ……。




「それが可能であれば、僕が勘について理解した理由にも繋がりますし、問題無いかと」



 後はその場の話術でどうにかするしかないか。


 いくら海千山千の人物でも常識外れな事態にはまともな意見なんて出せないだろうしな。


 いい例がガルブ殿。



「ちなみに明日の会議では会議開始時点での各方面の情報も話題に上がるのですよね?

 それと、犯罪者の処分の方針とかも?」




 ねぇ、なぜそこで皆黙るの?




 ジャーヴィン侯爵が答えてくれるけど、そんな怯えないで欲しいな。



「各方面の情報とは、王都の住民への影響とかか?

 であればその認識で合っている。

 それと処分の方針とやらは裁判で決まるからここでは……」

 

「今のうちに幾つか提案をしておこうかと思いまして」


「……加減した発言なら聞く気はあるぞ?」


「……いつも加減してるんですが?」




 なに、その「嘘つけっ!」って表情は!




「まぁ、話聞いた上で判断願います。

 まず……」




 暴動、遠征両方について一通り思いついた手口を伝えると……なぜ唖然とするの?




「……よくこんなこと思いつくな、お前は」


「そこまでひどい提案じゃないでしょ?」


「いや、結構ろくでもない気がするが?」




 ジャーヴィン侯爵、気にし過ぎじゃない?


 王妃様なんて危険な笑顔見せながら喜んでるけど?

 その笑顔のまま質問してくる。




「ふむ、ニフェールよ。

 その案は咎人への影響は大きいのかのぅ?」


「暴動の件の方なら確実に。

 特に長以外の三人には最悪の提案かと愚行致します」


「マーニよ、そなたはどう思う?」


「絶望を味合わせるのには十分な提案かと」




 DEATHヨネ~(誤字に非ず)。




「遠征の方は?」


「少し咎人達への準備は必要ですし、裁判時に少し情報を与えてやらなければなりませんが、少しは面白くできるかと」


「ふむ……楽しみにしておこう。

 処分の方針は裁判後になるが、吾の方でその提案に沿うように動いておこう」


「ありがたき幸せ」




 これで事前の仕込みは終わりかな?


 ……あっ!




「すいません、一つ確認。

 第四・五・六・八の隊長と第三から第八の副隊長格と無理に第八のクズ共送ってきた奴らの裁判とかってどうなるの?

 遠征の罪人が第八のろくでなしどもから強姦されかけているから、その責を確実にやっておかないと、裁判の時にくだらない言い訳されそうで……」




 アイツら潰さんとこちらの不利な点をいちいち突いてきそう。




「言いたいことは分かる。

 ただ……第八の隊長は条件に含めないで欲しい」

「はぁ?」



 ジャーヴィン侯爵の発言に僕は呆れた声を上げる。

 それは無いでしょ?



「一応理由だが、第八部隊隊長は誰もやりたがらない。

 これは想像つくな?」

 

「まぁそうでしょうねぇ。

 僕も内情知ってたら絶対に関わらないと思います」

 

 

 もしくはサッサと消すか?

 

 

「そして、誰もやりたがらないのに、なぜ第八部隊に隊長がいると思う?

 それも、他の隊長と互する(・・・)権限を持っているんだぞ?」

 

 

 ん?

 あれ?


 もしかして、第八の隊長って第八部隊生え抜きとかじゃない?

 本来別部隊の人を拝み倒して連れて来た?

 

 

 僕の表情の変化で理解したと判断したようだ。



「気づいたようだな。

 第八部隊は正直潰したいが、一部の貴族共が反発する。

 それ故に残さざるを得なかった。

 だが、面倒を見ないわけにはいかないので、一人の人物を隊長に選んだ」

 

 

 え、それって生贄ってこと?

 僕の表情の変化を読み取ったのか、ジャーヴィン侯爵が溜息吐きながら説明を続ける。

 

 

「感づいているようだが、あの(・・)部隊を面倒みてもらう(・・・・・)為に、団長はじめとして上位者全員で頭下げている。

 そこまでやって、何とか対応してもらうことを受け入れてもらった」

 

 

 おいおい……。

 まぁ、誰もやりたくなかったんだろうなぁ。

 

 

「ちなみに、受け入れてからちゃんと面倒見ているぞ?

 だが、それでも限界があってな」

 

「限界?

 指示しても半分くらいしかやらせられないとか?」

 

「イメージは近い。

 簡単な仕事ならイヤイヤながらもやるが、それでも手を抜きすぎるので穴が多い。

 面倒な仕事だと、大半やらず、少しは手を動かすが、大半が間違っている。

 なお、これでもマシになった方だ。

 今の隊長になる前は集まることすら難しかったからな」

 

 

 ……はぁ?

 よくそれで学園卒業できたな?

 あれ、ってことは暴動の時の対応って?



「ねぇ、まさか第八部隊を火事現場に回したのって、他だと敵に回りそうとか?

 それと、火事現場なら第七に任せて居場所さえ特定できればいいや的な?」



「……ニフェール、第八部隊面倒見る気は無いかね?」


「僕ができることは皆殺しだけだよ?」


「デスヨネ~」



 諦めて、遠征についてきた第八部隊隊員だって自分の手で消したかったのに。

 

 

 

「ちなみに、第八の隊長がそれだけろくでもない立場であると理解しているのは誰?」


「隊長までは理解している」


「副隊長共は?

 それと文官側は?」


「(フルフル)……部隊によると思う。

 ただ、明言してないだけで気づくとは思うんだが……」



 え、知らないの?

 

 

「ということは、本来第八部隊は存在すべきでない部隊で今の隊長は無理矢理暴走させないように押さえてくれている。

 それを知らずに副隊長共は第八の隊員を王都という檻の外に出してしまった。

 その結果が強姦未遂?」



「多分それが真相だろうな」



 ……勘弁してよ……。

 




「ま、第八の隊長処遇はともかくとして、そちらは、遠征より先に処分しよう。

 流れとしては暴動の処分。

 こちらは最優先だな。

 王都の民の前で大々的にやってやろう」



 まぁ、被害に遭った王都民の憂さ晴らしになるでしょうね。



「その次は遠征の邪魔した者、暴動時に仕事しなかった者の処分。

 こちらは王宮内部で進める。

 そして最後に遠征分。

 こちらも王宮内部で済ませるので、罪人共が騒いでも影響は極小化できるだろう」



 その流れなら問題ないかな。


 あ、でも、複数同時に処理しようとすると厄介事に発展しそう……。



「ん~、なら明日は報告までにして、こちらの言い分は後での方がいい?

 まず暴動起こした奴らの処分を優先するのなら、一時的に見逃してやって、処分終わったら次にそいつらに罪を突きつけ消せばいいと思う。

 下手に同時に処理すると、手が回んなくなりそう」



 こちらの言いたいことが分かってくれたのか、チアゼム侯爵が提案する。


「あぁ、確かに何も知らない奴らがあちらの味方になって騎士団崩壊なんてなったら目も当てられないな。

 なら明日は説明に終始してくれ。

 で、こちらで暴動時の対応についてと遠征時の問題については暴動関係者の処分後にすると言っておこう」


「助かります。

 もう、やること多すぎてアップアップなので、これに加えて騎士団の崩壊を防げなんて言われたら僕倒れますよ……」



 チアゼム侯爵、哀れまないで……。

 というか、哀れむより休みちょうだい!



 僕とチアゼム侯爵のやり取りに呆れつつも王妃様から関係者の召喚許可を頂く。



「話を戻すが、マーニとニフェール。

 必要な者を王都に呼び出せ。

 何なら全員でもいいぞ?」


「流石に全員は無いと思うので、一部だけですね。

 マーニ兄、僕が出しとく?」


「あぁ、お前に任せるよ。

 何となく三名くらいになりそうだが……」


「あぁ、一名駄々こねそうだね。

 そこは向こうで判断してもらおう」




 まぁ、連れて来た方がとある人物が喜ぶけど。




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― 新着の感想 ―
投稿感謝です^^ よくよく考えてみると、ラーミルさんの同期の文官科卒業生って割とハイレベルだったのかも? ラーミルさんより上が4名もいるって結構すごい気がしてきました。 王妃様以外の貴顕の方々の頭…
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