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連載版オリジナル、婚約の章となります。

取り合えず区切りの良いところまでは毎日連載します。

◇◇◇◇


 親愛なるアゼル兄へ


 ラーミルさんが婚約受け入れてくださいました!


 今度のお休みにノヴェール家に挨拶してきます。

 そこで相談なのですが、正式な婚約届を記載したいのです。

 アゼル兄が今度カールラ姉様に会いにくる予定を教えてください。


 どうせ結婚式の準備等でアゼル兄も強制的に関わるのだろうと思います。

 具体的に言うとウェディングドレスの選定あたりかな。

 その時にノヴェール・ジーピン両家で挨拶できればと考えてます。


 なお、キャル母上を連れて来る?

 それともカールラ姉様を次期男爵夫人として連れて来る?

 どちらでも問題ないでしょうけど、アゼル兄の判断でお願いします。


 あなたの弟、ニフェール


◇◇◇◇


 愛するニフェールへ


 ノヴェール家に挨拶に行くこと了解。

 婚約届の準備はニフェールとラーミル嬢の方で進めておいてくれ。

 月末にジャーヴィン家に一週間泊まらせてもらう予定。

 そこでカールラを連れて伺うとしよう。


 なお、準備についてはお前の想像よりひどい。

 キャル母上の乙女(?)心に火が付いた。


 マーニとアムルで努力しているが止まらない。

 親父はいつも通り役立たずだし。


 ……お前も気を付けろ。


 心の疲弊で痩せそうなアゼルより


◇◇◇◇


「ラーミルさん、今度のお休みの時にご家族の方にご挨拶したいのですが」

「え゛?」



 え?

 なんでそんな反応?



 僕、ニフェールはラーミルさんにご家族との顔合わせを提案した。

 なのだが……先日告白を受け入れてくれたのに反応があまりよろしくない。


 あえて言うのなら、隠しておいたイケない本が見つかったかような反応?



「え~っと、もしかしてご病気とかですか?

 ならあまり無理はさせられませんね」


「い、いや、そうではないのです。

 そうではないのですが……。

 兄は少々扱いづらい人物と周りから見られておりまして」



 扱いづらい人物?



「それって、うちの父親レベルでやらかす人ですか?

 それとも、グリース嬢レベル?」


「二人の違いが分からないのですが……。

 それよりかはマシですが、押しが強いというか……」



「弟のアムルを見たときのカールラ姉様やロッティ姉様レベル?」


「絶対それよりはマシです!

 あぁ、もう、ニフェールさんの周りには兄を超える人しかいません!」


「グリース嬢はそちらの義娘さんですけどね」


「本当に申し訳ございません!」



 一部おちゃらけも入りつつ、ご家族にご挨拶するため伺うこととなった。


 

「ちなみにおいくつで?」


「私の三つ上ですね」



 ラーミルさんの三つ上。

 となるとマーニ兄の四つ上?

 それって……アゼル兄と同世代?



「もしかするとお兄さん逃げ出すかも……」


「え?」


「あ、いや、気にしないでください」



 普通のお土産としての甘味とは別に、胃薬あたりを持っていきますか。


 アゼル兄とカールラ姉様の同期でしょ?

 なんとなく苦労してそう。





 さてさて、ラーミルさんの休暇に合わせて、ノヴェール子爵家に参りました!


 

「初めまして、ニフェール・ジーピンと申します。

 この度は――」

 

「――ああ、遠回しな言葉は不要だ。

 ベルハルト・ノヴェール、ベルとでも呼んでくれ。

 ラーミルを貰ってくれると聞いている。

 離婚歴のある妹だがよろしく頼む」


「ベル兄さん!!」



 ラーミルさん顔真っ赤にして怒ってますね。

 まあ僕としてはこのぐらい気楽なほうが緊張しなくてありがたいんですけどね。

 


「ラーミルさん、気にしてませんから落ち着いてください。

 え~っと、『ベル兄様』でよろしいですか?」


「呼びかたは任せる。

 まぁ、王宮内ではそれなりの立場に合わせてしてくれると助かるが」


「かしこまりました。

 まずは婚約の許可を頂きありがとございます。

 正式な婚約届はジーピン家から当主が今月末頃に王都に来ます。

 そこで両家の当主の間で作成してしようと考えてますが、如何でしょう」


「ああ、了解した。

 ラーミル、セリン伯より順調に婚約作業が進むのだが、これが普通なのか?」



 いや、そんなのラーミルさんでもわかんないでしょ?



「知らないわよ!

 確かに移動時間等無しでもここまで丸一日かかったのが数分なのは驚いたけど」


「大したこと話してないんですけどね……。

 爵位の都合上面倒なしきたりとかあったのでしょうか?」


「いや、事前準備もせずにいきなり婚約したいと言われたんだ。

 段取り確認して、やること整理して、と事前にやっときゃいいものを……。

 何も一切やらずに来てたからなぁ」



 もしかして、グリース嬢の暴走癖(?)ってセリン伯から受け継いでない?

 ラーミルさんも思い当たったのか、こちらを見てくる。



「もしかして、あの娘の……」


「セリン伯から受け継いだ可能性が……」



 よく分かってないベル兄様に婚約破棄から売爵までの流れを説明する。



「なんだ、その訳の分からない娘は?

 平民でもそんな行動取る奴なんで極僅かだぞ?」



 お気持ちはよく分かるのです。

 ですが、その極僅かな存在がラーミルさんの義娘だったのですよ。

 そして、そんな行動を取った結果が売爵に繋がったのですよ。



「何と言うか二人とも大変だったな……」


「ええ……」


「本当に……」



 なぜか三人とも妙に疲労していた。



「さて、門出を祝して昼食は如何かな?

 流石にその位の時間はあるだろう?」


「お言葉に甘えさせていただきます!」


「ハハッ、地方から来た学園生なら食事が足りなくて苦労しているだろう。

 たっぷりと食べてくれ!

 ラーミルも加減は不要だぞ?」


「加減とか言わないでよ!」



 あぁ、デートの時の健啖ぶりはいつもの事だったのですね。

 納得しました。



「……何かしら?」


「いえ、さあラーミルさん、食堂に向かいましょうか」



 勘良すぎやしませんかね?

 ベル兄様、笑いすぎ!




 ノヴェール家の料理人もラーミルさんの健啖っぷりを覚えていたようだ。

 とてもたっぷりとした量の食事をいただきました。


 いや、ノヴェール家の支出って食費の比率高そう。


 昼食終わり、皆で紅茶を飲んでいるとベル兄様から質問が。



「あぁ、そういえばジーピン家の当主殿はどのような方かな?」


「最近代替わりしまして、僕の長兄が当主となりました。

 多分、ベル兄様と同い年かと」


「ほう、俺と同い年か。

 学園でジーピンとい……え……」



 あ、思い出しちゃいました?



「結婚の日取りも決まったので今式の準備に大忙しなのです。

 ですが、その分王都にくるチャンスがありまして……。

 そのタイミングで正式な婚約届を作成しに来ると聞いてます。

 ちなみに、現婚約者も連れてくるようですよ」


「え、ちょっと待て、俺と同年でジーピン姓で婚約者がいて……」



 ラーミルさん、とてもイイ笑顔ですね。

 ベル兄様が顔色悪くなってるけど。



「なぁ、ニフェール君。

 まさか、君の兄、今の当主はアゼル・ジーピンとか言わないか?」


「ええ、その通りですよ」



 ベル兄様は持ち上げかけていたティーカップを置く。

 そして、一度深呼吸をしてから吼えた!




「 嘘 だ ろ う ! !

【 魔 王 】 と 親 族 に な る の か ? ! 」




 どうも、同年の方からしたらアゼル兄の名前は恐怖の代名詞のようですね。

 カールラ姉様との関係が駄々甘だったので、そんな感じはしなかったのですが。


 ラーミルさんもベル兄様がここまで騒ぐとは思わなかったみたいです。

 かなり驚いておられますね。


 先日会ったときには兄も姉様もそこまで目立ったことしてなかったですし。

 バカップル程度しか思わなかったのでしょう。



「ベル兄さん、いきなり騒がないで!

 どうしたのよ、突然!」


「ラーミルさん、どうも僕の兄のことを言ったら突然……」



「兄って、アゼルさんのこと?」


「ええ、カールラ姉様と今度結婚するアゼ――」




「 【 魔 王 】 が 【 女 帝 】 と 結 婚 ? !

  冗 談 だ ろ ? ! ! 」




「――ル兄のことです、って【女帝】って何ですか?」



 ベル兄様が聞きなれない単語を発して愕然としている。



(ナニイッチャッテンノこの人)



 ラーミルさんと困惑の感情を共有しつつもベル兄様に発言の意図を問う。

 ベル兄様は怯えつつも説明をしてくれた。



「……俺の代の学園生は有名な人物が二人いた。

 一人は【魔王】。

 一睨みすれば岩が砕け、声を発すれば体が震え、近づかれたら気絶する。

 そんな恐怖の代名詞」



 そこまで?

 視線で岩砕くなんて誰もできませんよ。


 キャル母さんが岩の一部を抉るように握って砂にするくらいだよね?

 アゼル兄は転がっている石を握って砕くまでしかできないはずだし。


 多分、恐ろしさを伝えるためのネタなんだろうけど。


 それと、顔が怖いのは元々だからあまりイジメないであげて!

 当人気にしてるんだから!



「一人は【女帝】。

 一睨みされたら家が滅び、声を発すれば心が壊れ、近づかれたら洗脳される。

 そんな恐怖の代名詞」



 家が滅んだのってその家がやらかしただけじゃない?

 元セリン家のような感じとか?


 心が壊れって、ショタ趣味全開(全壊?)で会話したら壊れる人もいるよね?


 洗脳はむしろショタの仲間となった人たちの話では?

 洗脳されたのでなく、自分の性癖に目覚めただけでしょ?

 分かりやすい例としてはロッティ姉様。



「その二人は学園生時代寄り親と寄り子の関係だったから近くにはいた。

 だが、一般的な彼氏彼女のような距離感ではなかった。

 護衛以上の接点を持たなかったともいえるがね」



 ん~、それって二人でのイチャついていたシーン見逃しただけじゃない?



「【魔王】は一人でいることが多かった。

【女帝】は側近たちを引き連れて動きまわり、また側近を増やす。

 正直、あの頃の学園生たちで二人が結婚なんて想像できた者はいないと思う」



 アゼル兄が一人でいたのは皆さんがビビってたからじゃないの?


 カールラ姉様が側近引き連れてって、単純にショタ仲間なだけじゃない?

 側近増えたのもショタ仲間が入っただけだと思うな。


 ラーミルさんをチラッと見ると、困惑していた。


 そりゃそうだよね。

 ショタ好きカールラ姉様と宥めるのを諦めたアゼル兄。


 あれ見てベル兄様の話を聞いても「誰それ?」としか言いようがないだろうし。



「ラーミル、お前は婚約するにあたって覚悟をしなければならない。

【魔王】と【女帝】に逆らうな!

 ニフェール君がいるから大丈夫だと思うが何が起こるか分からない。

 うまく立ち回るように!」


「ベル兄さん、気にし過ぎよ。

 というか、同期の方々はどれだけ怯えていたのよ、もう……」


「ラーミル、冗談ではないんだ!

 お前のために言ってるんだからな!」



「でも、既にアゼル様とカールラ様に会ってるし」





「なん……だと……?」

【ノヴェール家:国王派文官貴族:子爵家】

 ・ベルハルト・ノヴェール:子爵家当主、ラーミルの兄。

  → アルフレッド・ベルンハルド・ノーベルから。

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― 新着の感想 ―
[一言] 短編版の連載作業お疲れ様でした。 これからの連載版も実生活を大事にしてゆっくりとで良いので完結まで頑張ってください。応援させていただきます
[良い点] サクサク読んでいたらどんどん妙な方向に(◎_◎;) ジーピン男爵家を継承した長兄【魔王】アゼルとその婚約者【女帝】カールラと旧交を温めることとなったノヴェール子爵ベルハルトの今後が楽しみす…
[良い点] これから「魔王」の伝説が しかし、カルーラ姉様も伝説持ちだったのですね。 学生時代の伝説って本人、周りもずっと引きずりますからねぇ。 [気になる点] お兄さん二人の伝説が気になっています。…
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