表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
7:義兄救援
191/361

89

本日二話目です。

次話は明日16時台投稿です

◇◇◇◇


 さて次の日。

 いつも通り昼飯を用意。

 王都直前の村を通り抜け村と王都の中間地点で野営をする。


 事前に周知しておいたので騒ぎは無かった。

 だが、やはり初めての面々はビクついたり騒いだりしているようだ。


 具体的に言うと、ビクつくのがセリナ様。

 騒ぐのが犯罪者一同。



 マーニ兄が面倒そうに犯罪者一同の方に近づいて説得 (?) を始める。



「ったく、騒いでも何も変わらんぞ?

 それどころか狼とか呼び寄せることになるからな?

 わざわざ騒ぐなよ」


「お、狼ですって?

 ならなぜ先ほどの村に泊まらなかったのよ!」


「こちらにも都合がある。

 貴様らは大人しくしてろ。

 それ以上のことは求めんから」



 マーニ兄、説得って、もっとこう……いや、もういいや、面倒だ。

 まだグダグダ騒いでいるけど放置して竈の準備と食事の準備。

 他の面々も使ってさっさと作り配膳する。



 笑顔になってくれるのはいいんだけど、がっつくな!

 それと作る量には限界があるんだからイナゴみたいに喰い尽くそうとするな!!

 最後にラーミルさんにナンパするんじゃねぇ、殺すぞ!!!



 一通り仕事を終わらせ全体打ち合わせ。

 と言っても今更グダグダ言っても仕方ない。

 王都できな臭い話が聞こえてきている。

 だから覚悟決めておけくらいしか言いようがない。


 トップ会談兼ジーピン家会談も対して言うことが無い。

 最悪の場合僕とマーニ兄で先陣切る。

 だから御者メンバーは全力でついてきてという位。


 そこで一つナットに提案をする。



「え、アタシも御者?」


「最悪の場合ね?

 パっと見てみたけど文官さんたちの御者としての実力は正直低い。

 下手とは言わないし、暴動起きてなければお任せして問題ないと思っている。

 だけど、戦場に等しい状態で馬を御せるかというと……」


「確かに、そこまでの実力は無いですね……」



 サバラ殿もそこは納得してくれる。



「んで、最悪御者しつつ投げナイフで撃退とかの必要がありそう。

 なので、必要に応じて御者変更としたい。

 まぁ、暴動起きてなければ意味のない話だけどね」


「そういうこと言うと、起こるんじゃないの?」



 別にフラグ建築士じゃないんだから。



「それ言っちゃったらおしまいだよ。

 何が起きても大丈夫なように考えるってだけだよ」


「まぁ、いいよ。

 その位なら何とでもなるし」


「すまんがよろしく頼む」



 一通り話を終えて、各自解散。

 朝食を作る都合上、前回と同じく見張りは三番手にしてもらった。




 カルに起こされ見張り中。

 インスとよく一緒にいる第八部隊の騎士が声掛けに来た。



「突然すみません。

 今よろしいですか?」


「朝食と昼食の準備があるから、食材切りながらでもよければいいですよ?

 あ、それとすまないけど名前教えていただけますか?

 インスと一緒にいる人だというのは覚えているんだけど……」


「あ、ランゲルと言います。

 それと、お聞きしたいのは……裁判の日の事です」



 ん?

 何かあったっけ?



「正確に言うと裁判の日の朝の事です。

 マーニ殿が『百人以上殺したことは?』とインスに問いかけたのがありまして」



 あ、泣いた日の事ですね。

 直接聞いてはいないけど、騎士たちがわざわざ声マネしてまで教えてくれたね。

 その後マーニ兄がキレたけど。



「そこで確認なのですが、先ほどの発言の事態はいつ行われましたか?」



 ……へんなこと聞く奴だな。

 とはいえ、別に詳細を説明するわけじゃないから日付だけ教える。

 アゼル兄の結婚式の日付を。



「……」



 お~い、固まるなよ。

 お前が聞いてきたんだろうが!



「あ、ああ、済みません。

 予想以上に自分の勘が当たっていて驚いてました」


「勘?」



 なんだそりゃ?



「お教えいただいた日、私はとある方から集合かけられました。

 仕事内容までは説明されませんでしたが、戦闘準備してこいと」



 ……ということは、こいつ貴族派貴族か。

 そして、呼んだのはディーマス家の奴かそれに類する立場の奴。



「その時、とてつも無く嫌な予感がして腹痛を理由にしてお断りしました。

 まぁ、剣持てる状況じゃないと事前に説明してました。

 なので、戦力にならないのなら不要と判断したのでしょう」



 まぁ、殺戮するのに役立たず連れて行っても邪魔だろうしね。



「で、その後仕事を受けた者たちは戻ってきてません。

 これは、あなたがたが殺したのですか?」


「さぁ?」


「え?」



 なぜ驚くの?



「まず、そちらが何処に行ったのか知らないんですけど?

 それなのに、なぜ僕が知っていると思ったのでしょう?

 それに、殺すときにわざわざ相手に名前なんて聞きませんし。

 日付同じと言うだけでしょ?」


「え、あ、いや、そう言われると……」



 情報足りてないよね?

 まぁ、確実に結婚式で暴れようとした奴らの事だと思うけど?



「同じようなことが複数個所で発生するとは思えません。

 なので、可能性は高いと思いますよ?

 ただ、なぜあなたは僕が同僚の事を知っていると?

 今回の件で無理矢理割り込んできて初めて顔合わせただけでしょ?

 答えようがないんですが?」



 第一顔も名前も知らないし。

 まぁ、騎士っぽい格好してたけど、そこまで教える義理は無いしね。



「いえ、戻ってこないのが逃走か死かを確認したかっただけです」


「僕やマーニ兄と対峙した奴らならほぼ全滅のはず。

 当然逃走した奴もいるだろうけど、それを調べる術も無いですよ?

 なんせ、敵対していた相手がやって来たとかじゃないんで」




「え?」




「勝手にやってきて、長兄の結婚式のタイミングで殺しに来た。

 どこの誰かも分からない。

 とりあえず捕らえるなんてつもりも無いし、皆殺しにした。

 それだけですよ?」



 なんか唖然としているけど、どういう想像してたんだ?



「ねぇ、そちらがどういう想像をしているのか教えてもらえませんか?

 正直僕も困惑しているんです。

 何を知りたいのか一切伝わってこないし」


「……うちの家は貴族派でして。

 あの時連れて行かれたのも貴族派の騎士たちです。

 ジーピン家の方々が我々を敵視しているのは知ってます」


「はぁ?

 貴族派を敵視なんてしてませんけど?」



 関心ないしねぇ。



「はぁ?

 ならなぜ殺したのです?」



 ……訳分かんねぇ。

 何言ってんだこいつ?



「先ほどから言ってますけど?

 こちらの視点ではいきなり喧嘩売ってきたから殺しただけですよ?

 相手知りませんし、知り合いいませんし、そんな判断どうやって付けれるの?

 それとも、あなたたちは『貴族派:XX』なんて名札でも付けてるのです?

 それなら、付けてるやつはいなかったと言えますけど?」


「いや、流石にそんな恥ずかしいことはしてませんが……。

 でも、マーニ殿だって参列したでしょ?

 ならご存じでは?」




 へ?




「結婚式の時点でマーニ兄は騎士じゃないですよ?

 あの時はジーピン領の武官の取りまとめ役」


「へっ?」


「結婚式の後、別件で陛下に呼ばれて男爵位貰って、結果騎士になったってだけ」



 なんか、とてつもない勘違いしてないか?



「ねぇ、あなたはジーピン家が貴族派と喧嘩していた。

 マーニ兄が騎士団から情報を得て対策を検討、返り討ちにしたと言いたい?」


「そ、その通りです!」


「大間違いですよ?」



 そのポカンと間抜け面するの止めな?


 

「まず、ジーピン家は領地持ちです。

 結婚式直前まで、学園に所属する僕以外は領地におりました。

 長兄の相手が王都に住んでるから、王都で結婚式をすることになりました。

 結婚式に参列したらなぜか襲いかかる者がいたので、皆で殺し尽くした。

 それだけですよ?」


「え、じゃあなんで……」


「あなたの説明が正しいと仮定してですが……。

 貴族派が殺しに来たのかはこっちじゃわからない。

 あなたのご家族辺りに聞いてみたらいかが?

 うちに聞かれても答えようがありませんよ。

 むしろ、こっちが聞きたいくらいですし」



 いや、裏事情とか知ってるけどね。

 表向きにはこう回答せざるを得ないんだよ。



 それと、ランゲルは情報足らないまま突き進むタイプ?

 起こったことに対しての想像は色々したみたいだね。


 でも、ジーピン家側の情報が皆無なんでしょ?

 それなのに勝手に想像が事実であるかのように判断するのは減点だな。



「ちなみに、誰がさっきの推測を言いふらしてるので?

 流石に許される範囲を超えてるんだけど?」


「い、いえ、言いふらすとかでは無く私の推測交じりの質問でした、申し訳ない」



 もう少し推測と事実を見極めようね?



「大体知りたいことは聞けましたか?」

「そうですね。

 ただ、見送った面々=襲撃の面々なら騎士団の弱体化を懸念してしまいますね」



 ……はぁ?



「えっと、その時連れて行かれた面々はそんなに強かったんで?

 それとも、第八部隊レベル?」


「……大半は第八部隊レベルです。

 一部の面々も他部隊の末端から中堅レベルかと」


「なら、派閥的にはともかく、騎士団の大きな弱体化は無いんじゃない?」


「なぜ?」


「人手不足は事実だし確かに問題です。

 だけど、それは時間……今年度以降の入団者で補充できますね」


「まぁ……そうですね」


「それと、第八部隊レベルって学園生下位程度なんですよね。

 そんな人達を雇い続けても弱体化とか考える価値無くないです?

 それより、無駄金使わなくて済む。

 騎士団としては予算に余裕ができるんじゃないかな?

 なら、半年程度の人数減を乗り越えればむしろ強靭化されるんじゃない?」



 まともに仕事しないんだから、金食い虫なんだよね。

 下手に重要なところで裏切り始めるくらいならいない方がマシだし。


 なんか悔しそうにしているけど、第八部隊の評価なんてそんなもんだよ?



「こちらからも聞いていいです?」


「あ、はい、何なりと」


「先ほど勘で死ぬのを回避できたかのように言ってらっしゃったよね?

 それはその一度だけしか経験してない?」


「いえ、何回か勘に従って生き延びてます。

 全て、従わなかった場合は死んでいたでしょう」




 ふむ……。




「それはどのタイミングで発動するんです?

 一日前とかでも分かるんですか?」


「実績としては一・二時間以内ですかねぇ……。

 ちなみに、距離とかは分かりません。

 王都内程度なら確実ですが、現時点で明日の王都の安全なんて分かりません」



 ほぅ、言いたいことは想像ついたんだ。



「なら、マーニ兄とかの強者が護衛に付いた状態で襲われる場合、発動する?」


「……分かりませんね。

 というか、強い人の傍にいることがなかったんで……」


「となると、判断が難しいなぁ。

 今回、発動してもこちらに従えとか言っても逃げ出しそうだしなぁ……」


「いや、そこまでは――」


「――するでしょ?

 既に八人あっさり見捨てているんだし」


「……」



 自覚してんじゃねぇか!



「まぁ、愚かな判断しないことを祈りますよ」

「……してしまった場合は?」


「長兄の結婚式と同じで殺すのみ。

 まぁ、最低でも敵前逃亡と判断されるだろうし、国から消されるんじゃない?」

「……善処します」



 第八部隊の中で一番頭回りそうだし、愚かな判断はしないで欲しいなぁ。



「最後に、今回、王宮に到着するまで勘が発動したら誰かに報告してください。

 最低でも事前に暴動が分かるし、全員の命を救うことになるかもしれないから」


「かしこまりました」




 その後、朝まで野菜たちを全力で切り刻み、炒め、食材準備に勤しむ。


 匂いに釣られた欠食児童共が起き始めた時点でこき使って昼食の作成完了。

 皆の動きは訓練されたもののように滑らかに……ってダメじゃん!


 そういうのは戦いや護衛でやってよ!

 あんたら騎士で飯炊きじゃないんだからさぁ!!




 昼の準備も終わり、朝飯も軽く作り終え、全員の腹を満たす。

 一通り出発準備を進め、王都に向かう最後の全体打ち合わせ。



「……こんなところだな。

 他に周知事項はあるか?」


「マーニ兄、ちょっとだけ、ぶっ飛んだ話がある」

「……話してみろ」



 先ほどランゲルから聞いた情報を僕なりに説明してみる。



「どこがちょっとなんだよ!

 滅茶苦茶ぶっ飛んでんじゃねぇか!!

 そんなことあり得るのか?!」


「知らないよ。 

 でも、あの結婚式で死ぬのを回避した、その一点は信じてよさそうだよ?

 それに、第八部隊の暴走に付き合わずに済んだ理由。

 これって、勘なんじゃないかと思っている」



 悩むマーニ兄。

 だよね、僕も悩むもん。



「はっきり言って、信じるかどうかは関係ない。

 ランゲルの勘が有効かどうかも分からない。

 例えば僕やマーニ兄がいても危険を感じるか等、調査が必要な部分も多々ある。

 それでも、少しでも事前に情報を把握できるのなら、勘でもなんでも使いたい。

 事前に分かるだけでも心構えが変わるからね?」


「……心構えだけで状況は変わらないけどな」


「ん?

 勘違いしてる?

 この心構えは僕やマーニ兄に対しての話じゃないよ?」


「へ?」



 ん~、マーニ兄も僕と同じように思っちゃうよね。



「僕やマーニ兄なら王都が戦場になっても軽く乗り切れるでしょ?

 でも他の面々はそんなはずないんだよ。

 少しでも事前に情報を得て、対処策を考え、安全性を少しでも上げる。

 それで混乱したり、指示に従わないとか起こさずに動けるんじゃないかな?」


「……メインはノヴェール家の方々やセリナ様や文官の面々?」


「騎士でも不安は感じるだろうしね。

 少しでも危険を遠ざけられるなら努力するんじゃない?」



 ジーピン家の戦闘能力は他の方たちからしてみれば異常みたいだしね。



「……わかった。

 ランゲル、お前の勘が発動したら、何を置いても俺かニフェールに伝えろ。

 それが今日のお前の最重要の仕事だ」


「かしこまりました」


「インス、ランゲルのフォローしてあげて。

 勘が発動した時にランゲルがどこまで動けるかとか全く分からない。

 必要とあれば代理で動いて」


「……あぁ、わかった」



 ……ランゲルは今までで一番やる気ある反応に感じるな。

 これ、もしかしてかなりの拾いもんじゃね?

 以前の戦闘見ている限り、体力つけなきゃダメそうだけど。


【騎士】

 ・ランゲル:騎士 (貴族派)

   → ランゲルハンス島 (膵臓の細胞群)から。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
投稿感謝です^^ ランゲルが警報装置じゃなくてカナリアに見えるのは何故だろう? もしこの一件を生き延びたら、今後危なそうな任務には必ずドナドナされていくんだろうなぁ(-_-;) >最後にラーミルさ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ