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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
7:義兄救援
184/361

82

本日一回目の投稿です。

二回目は20時台を予定してます。

 そんな会話をしていると、商会に送り込んだカリムたちが戻ってきた。



「ニフェール様~、暗殺者持って来たよ!

 胸に矢が刺さって死んでた!」



 おぅ、ナットご苦労様。

 死体運び役のビーティ殿とメリッス殿もご苦労様です。



「暗殺者の荷物とか無かった?」

「無かったね、武器だけだった」



 ふむ、ティッキィを放置してちょっと暗殺者の死体を脱がしていく。



「ちょ、ちょっと待ってよ!

 ここに女性がいるんだから、そんなの見せないでよ!」


「ガン見しながら言う内容じゃ無いんじゃないかな、カロリナ嬢」



 バレてないと思ったのか?

 手で隠すふりして指の間から見てるの気づかないと思うなよ?


 軽く脱がしてみると……なんだ、この手紙?



「あ……そいつを見るな!」



 グリス・ダイナよ、まさかこれって……依頼書?

 開いて読んでみると……うっわぁ。



「領主グリス・ダイナよ。

 お前はここまで愚かだったのか……」


「ニフェール、説明しろ。

 何があった?」



 呆れている僕にマーニ兄が説明を促すけど……こんなの残してるのかよ。



「マーニ兄、領主が暗殺者に依頼を出した時の手紙だった」


「はぁ?!

 手紙?!

 そんなの情報残っちまうだろうに……」



 カル達を見ても絶句している。

 だよね、こんなの普通じゃないよね?



「気持ちは分かるんだけど、事実なんだ。

 この暗殺者に同じ条件――金貨五十枚――で依頼出してる。

 ほら……」



 手紙を渡すと、マーニ兄とサバラ殿で内容を精査し、二人して頭を抱える。



「なにこれ、俺たちの相手ってこんなバカだったの?」

「……でも、マイト・ダイナの事を考えるとこの位やらかすかしかねませんね」



 王都での話をサバラ殿が振ると、呆れの表情を浮かべるマーニ兄。



「あぁ、ルーシーに指摘されてブチ切れた挙句ニフェールに捕まった奴か」

「ええ、あのやらかしっぷりは我々から見ても……ちょっとアレでしたので」



 アレって、いや分かるけどさ。

 犯罪者側もアンドリエ兄妹が絶対零度の視線を領主に送っている。

 本当に味方にしちゃダメな奴なんじゃないのこいつ?



「ニフェール殿、暗殺者から調べるのはまだあるかな?」


「いえ、必要な点は調べられたかと思います。

 なので、行動理由とノヴェール家を選んだ点についての話に戻りましょうか」



 一応ティッキィに一言言っとくか。



「あ、生きている暗殺者。

 そのままそこで待ってて。

 後で君も牢屋に運ぶから、裁判終わるまで視姦されてて」


「視姦言うなや!」



 現実問題、見られるだけだからなぁ……新しい性癖でも覚えて帰ってくれ。


 投げ捨てたクロスボウとかを拾い元々いた位置に戻る。



「で、暗殺者の邪魔で話が途中になってしまったが、カロリナ嬢よ。

 そなたの祖父の代からノヴェール家への乗っ取りを企んでいた。

 そして平民になった後も同じ企みを続けていた、で合ってるか?」


「ええ、そうよ!

 さっさとわたしに堕ちればいいものを、全く無反応なんだもの」



 ……なんで、お前に堕ちると思ってるの?

 よく分からない。



「ふむ、ノヴェール子爵殿、何か発言はあるかな?」

「では少し発言させていただきましょうか」



 ベル兄様がにこやかに、でも危険な目をしてカロリナを見る。



「まず、そなたの祖父が我らノヴェール家から嫌悪されてたのはご存じかな?」

「はぁ?!」



 え、なぜ驚くの?

 ベル兄様やラーミルさんから聞いた話だけでも嫌われる要素しかないけど?



「そなたの祖父が我が家に来るときはいつも憂鬱だった。

 我らを怒鳴りつけ、騒ぎ、祖父母や両親を侮辱する。

 あれが帰った後は安堵と疲労で家族がボロボロだった」



 でしょうねぇ。

 聞いただけでも疲れそうだし。



「なお、そなたの両親もかなりろくでもなかったぞ?

 金の無心か訳の分からん自慢しかできない者たちだった。

 まぁ、そなたの祖父よりは静かだったのだけは評価しているよ。

 アレはやかましすぎたからなぁ……」


「あ、あれは父上がわたしたちの自慢をしたくて……」


「自慢と言うより、そなたらと無理矢理くっつけたかったとしか思えなかったがな。

 まぁ、そなたらとの婚約なぞ考えたくもなかったが」



 うっわぁ、ベル兄様言うねぇ。



「な、何故よ!」


「そなたの両親や祖父と同じ家族となりたいと思ったことは一切無い!

 その気持ちは我が両親も理解してくれていた。

 なので、そちらからの婚約の要望は全て断っていただろう?」


「えっ?」



 まぁ、当然だよねぇ。

 合わない人と夫婦になりたいとは思わないし。

 政略婚にするにしても益無き家とは婚約しないでしょ。



「当然、双方の両親が亡くなった後も関わりたいとは思わなかった。

 だから婚約の申し出はすべて断っていた。

 それに、根本的なことを理解できていないようなのでな。

 より関わりたくないと思ったものだよ」


「は?

 根本的?」



 ……うわ、気づいてねぇの、こいつ?



「そなたらは犯罪を犯して貴族から平民になった。

 そのような輩と婚約はあり得ない。

 国から共犯と疑われるのがオチだ。

 自分たちは無関係と言い張るためには、関りを最小限にまで減らす。

 こんなのは基本だろう?

 ご両親は教えてくれなかったのか?」



 これって、普通の考え方だよね?

 自分たちまで犯罪者と思われたくない。

 だから離れるってなんで思わなかったんだろう?



「そ、そんな……。

 でも、あなたたちは昔からうちから卸す食糧を購入してくれたじゃない!」


「それは、危険だからだ」

「は?」



 ん?

 ピンと来てないのか?



「簡単に言うと、そなたらが我々に色々ちょっかい出してくるのは迷惑だった。

 だが、縁の切り方を間違えると貴族社会的に面倒なことになる可能性があった。

 特に血の繋がりがあるからな。

 他家が我々を攻撃する情報としたくなかったのだ」



 王都で以前言ってましたね。



「その後、そなたの親は犯罪をやらかした。

 それに加え互いの両親が偶然とはいえ、ほぼ同時期に亡くなった。

 この時点で契約は切れて関係は終わったつもりだった」



 そこで終わってればこんなドタバタは無かったんだけどね。



「だが、そなたらが我が家に仕込んだオルスが勝手にやらかした。

 莫大な額で再契約という形で繋がりを残してしまった。

 貴様らは我らからせしめた金をもって大盤振る舞い。

 その結果、この街での名士としての立場を作った。

 それが犯罪であることを知った上でな。

 また、どうやってか次の領主となったダイナ家を使って国を欺く行動を取ったな。

 誤魔化すつもりなのだろうが、その結果ここまで大事になったんだからな?」



 ポカンと口を開けるアンドリエ兄妹。



「それとダイナ家の者よ。

 そなたたちにはアンドリエ家の者が罪を犯していることは聞いているはず。

 国から監視の指示も受けたのではないか?

 それなのになぜアンドリエ家に味方した?!

 その時点で国に対して犯罪を犯そうとしたとみなされて当然だろう!」



 ベル兄様から睨まれて視線を逸らす元領主グリス。

 ……あれ、領主夫人がブチ切れておられるけど?



「ちょっと、あんた、何よそれ!

 聞いてないわよそんなの!」


「国との話だ、お前が知る必要は無い!」



 え、何コイツ偉そうに。



「馬鹿言わないでよ!

 国からの監視指示があると無いとでは距離間が変わって当然じゃない!

 それに詐欺をやらかした?

 なんで、そんな大事な情報を隠すのよ!!」



 わかる!

 凄くよくわかる!


 うちの父親みたいなことされたらそりゃブチギレるわ。

 ……マーニ兄、ラーミルさん、その憐れみの視線止めて。



 サバラ殿も困惑の表情を浮かべ、ベル兄様と領主夫人に説明を求める。



「領主夫人、そなたは一切この件の説明を受けてないのか?」


「ええ、国とのやり取りについては一切口出しを許されておりません。

 ですが、必要なところは情報を共有することはありました。

 本来ならこの話は家族会議でも行って対応を協議するのが普通ですが……」



 まぁ、それが普通だよね。



「でも、一切この情報は入ってこなかったと?」


「ええ、それと詐欺を行ったという情報もございません。

 領主の仕事が回らなくなって貴族でいるのを諦めたと聞いていたのですが……」



 はぁ?

 あれ、街では名士扱いだったよね?



「ふむ、我々が調べた限りアンドリエ家はこの街で名士扱いされていると聞いた。

 貴族を止めた理由も詐欺を働いたことは一切出ていないと。

 どうもそなたの聞いている話を我々が調べた話で食い違いがあるようだが?

 アンドリエ兄妹、そして領主よ。

 何か言いたいことはあるか?」



 三人とも視線を逸らし黙ってしまった。

 まぁ、下手に発言したらより悪化するでしょうしね。



「ふむ、返答無しか。

 領主夫人、そなたの発言を証明するものはあるか?」


「……日記とかは?」



 おぉ、それは証拠となり得ますよ!



「証拠として使えそうだな。

 どこにあるか教えて欲しい。

 ニフェール殿、そちらの部下を借りたいのだが……」


「ええ、ルーシー、ナット。

 すまんがちょっと来てくれ」



 流石に男性に取りに行かせるわけには……ねぇ。


 すぐに二人とも集まってくれた。



「領主夫人、この二人に日記の場所を説明してほしい。

 鍵をかけているのなら鍵の場所もだ」


「かしこまりました。

 お嬢さん方、ちょっとこちらに」



 領主夫人とルーシーたちがコソコソ話しあう。



「分かりました。

 ちょっと行ってまいります」



 ルーシーたちが向かったので、時間が空いてしまった。



「サバラ殿。

 領主夫人の件は一旦置いて、王都に暗殺依頼を掛けた件の話をしては?」


「確かにそうですね。

 アンドリエ兄妹よ。

 そなたたちは王都の暗殺者ギルドにノヴェール家の暗殺を依頼した。

 既に依頼をしに行ったそなたたちの手下は捕縛されている。

 だが、なぜ暗殺を求めたか教えて欲しい。

 地位と金が欲しいからノヴェール家と婚姻したかったのではないのか?」



 カロリナは鼻で嗤って言いたい放題ぶちまけてきた。



「はっ!

 その指示をした頃には既にノヴェール家に頼る気は起こらなかったわ!

 オルスの失敗、マイトからの訳の分からない報告。

 どうやっても頼れそうにない状態なのは分かってしまったもの。

 なら、関係者を殺害し逃走することで一からやり直すことを検討していたわ。

 王都の動きはいつも通り遅ければ一月ほどは余裕があるはずだったのだけどね。

 予想以上にそちらの動きが早かったと言うだけよ」



 ほう、それは大急ぎで仕事した甲斐があるってもんだ。



「それよりも分からないのがあるわ。

 どうやって暗殺者ギルドとの繋がりを見つけたのよ?」


「そなたらが動く前に王都の暗殺者ギルドは壊滅している」

「はぁ?!!」



 ……まぁ、気持ちは分かるがね。



「ちなみに、それを成し遂げたのはこちらのマーニ殿やニフェール殿。

 そしてそのご家族だ。

 それ故、ギルドに依頼してくる者たちの窓口に偽の構成員を配置。

 その結果あっさりと捕まえられたという訳だ」


「そ、そんなことできるはずがないでしょ!!」



 騒ぎ出すカロリナにマーニ兄が軽く説明する。



「その位できるだろ?

 過去にはうちの両親で暗殺者ギルド一度壊滅させてるし」


「はぁ?!!!」



 マーニ兄、正しい説明ではあるけれど、相手の理解が追い付いて無さそうだよ?

 虚ろな目でブツブツ「嘘よ、そんなの嘘よ……」という言葉が聞こえてくる。

 全て現実だぞ?



「……すいません、お待たせしました。

 割り込んでも大丈夫でしょうか?」


「あぁルーシー、ありがとう、持ってきてくれたか」



 領主夫人の日記をサバラ殿に渡し確認してもらう。



「ふむ、確かに日記にも能力的な限界により貴族位を返したと聞いたと書いてある。

 こうなると、夫人に罪はほぼ無いと言えるな。

 ダイナ家の罪はほぼ全て領主たるグリス・ダイナが被ることとなろう」


「う、嘘だ!

 こいつも一緒に俺たちと共謀している!」


「どのようなことでだ?

 そして、その証拠は?」



 ……いや、そこで黙っちゃダメだろ?

 カロリナ達にも呆れられてるが、気づいてないのか?



「……どのようなことかも説明できず、それを示す証拠もない。

 それでどうやって我々が納得すると思った?」


「い、いえ、その……あの……」


「何も無いようだな。

 であれば口を閉じよ。

 さて夫人よ、あなたにも王都に赴いていただき陛下の御前に出てもらう。

 我々からこの裁判の状況は報告するので、そう悪い事にはならんだろう」



 安堵の溜息を吐く領主夫人。

 まぁ、そうだろうね、夫の死に付き合いたくはないだろう。



「ただし、この街に戻ることは出来ん。

 ダイナ家とは別の領主が任命されることになるだろうからな。

 それ故、今日中にそなたの荷物を纏めてご実家に送り返すよう調整してほしい。

 明日我々は王都に戻るが、その際に夫人も一緒に王都に連れて行く。

 現時点で咎は無いので客人という形でだがな」


「かしこまりました」



 まぁ、夫が確定で死刑だから実家に戻るしかないな。

 その後は修道院に入るか、再婚するかか……苦労するんだろうなぁ。

 まぁ、頑張って生きてくれとしか言えないが。



「さて、次は領主グリス・ダイナよ。

 そなたは国に商会から提出された書類を確認もせずに王都に提出したな?

 王都で内容を確認したが、どう見ても商会に利する行動を取っているな?」


「いえ、そんなことありません。

 我が領地の情報におかしなところはございませんが?」


「ほぅ、本気かね?」

「当然ですとも!」



 あ、言っちゃった。

 自分で自分を追い込むってどんな性癖してるんだよ、こいつ。



「商会側の資料では……。

 ノヴェール家が支払った額に合わせて五倍の量の作物をこの地で作ったと。

 そして、その量をここから王都に運び込んだということになっている。

 そして領地側書類にはノヴェール家に届いた実量分の報告しかなされていない。

 つまり、領地と商会ではこの土地の作物生産量が五倍も違うのだが?」



 顔真っ青になってますね。



「さて、どちらが正しいのだ?

 商会資料か領地資料か、答えよ!」



 サバラ殿の視線に耐えかねたのか、ボソボソと「領地資料です」と答えるグリス。



「なら、なぜ商会資料の異常を指摘・修正させず、国に提示した?

 自領の報告書類がここまであり得ない報告になっていても貴様は気しないのか?

 このふざけたじょうほうを陛下に見ろと言うのか?

 領主の仕事を放棄していることになるのだが?」



 あ~あ、蟻地獄にハマってるし。

 ちなみに商会資料が正しいと抜かしていたら……。

 書類不備と莫大な量の作物をどこで作ったのか説明を求められる予定だった。

 こっちはこっちで地獄だな。



たかが(・・・)一商会の報告ごときで大騒ぎしないで頂きたい!」

「そなたの言う『たかが(・・・)一商会』はこの街最大の商会では無いか?

 そんな商会をチェックしないとは、仕事を理解せずに領主になったのか?」


「い、いえ、そんなことは……」


「これだけふざけた行動を取っておいて軽微な犯罪と扱われると思うなよ?

 アンドリエ商会と同様の未来が待っていると心得よ!」



 言い回しはともかく死刑確定でしょうねぇ。

 宣言しないのは……ここで絶望させないためか?

 暴れ出さないように連れて行って、王都で死刑宣告後即実行って感じかな?



「さて、大体言い終えたな。

 この場では結論は出さぬ。

 この簡易裁判の情報と陛下のご判断の結果、そなたたちの罪が決まる。

 ただし、この者たちは二度とこの地を踏むことは無い」



 まぁ、ほぼ死刑確定ですしねぇ。



「なお、この街は一時的に領主代行を置く。

 この者たちの裁判を王都で行った後に改めて新しい領主がここに来ることになる。

 領主代行、皆に挨拶を」



 ……そういや誰か聞いてなかったな。

 誰だ……って、ええ?!



 サバラ殿の傍にやってきたのはペスメー殿だった。

 いやらしい笑いしやがって、僕が驚くの楽しみにしてたろ?



「領主代行としてこの地に赴任することとなったペスメー・バルサインという。

 正式な領主が来るまでの繋ぎではあるが、よろしく頼む」



 あっさり自己紹介を終わらせマーニ兄の隣に移動する。



「これにて裁判を終了とする。

 時間を取らせてすまなかったな、普段の生活に戻って欲しい」



 見物の住民たちはぞろぞろと家に戻り、罪ある者たちは牢屋に逆戻り。

 ベル兄様やラーミルさんをルーシーたちに任せる。

 僕自身はカルと一緒にティッキィを牢屋に連れて行く。


 昨日軽微な罪の農民たちが入っていた牢屋に連れて行き、縄を解きつつ軽く話す。



「ティッキィ殿、期待以上の対応だった。

 正直、あそこまでやってもらえるとは予想してませんでしたよ!」


「いやいや、ニフェール殿もあの場で金額交渉が入るとは……。

 正直赤字覚悟だったので、本当にありがたい!」



 互いに礼を言い合う僕ら二人。

 カル、なぜ呆れる?



「いや、あれって即興だよな?

 なんなんだ、あのノリの良さは?」


「いや、何となくとしか言いようがないんだが?」


「過去に読んだ書物で似たようなシチュエーションがあったかもしれんな。

 正直ここまで噛み合うとは思っていなかった」



 何と言うか、ノリがお互い合わせやすかったと言ったところじゃないかな?



「さて、今日はここで過ごしていただきます。

 けど、飯はマーニ兄経由でいいもの食わせて欲しいこと伝えておきます。

 それと、明日はここを出るときに再度縛ります。

 その状態で乗馬させて街の外に連れて行く。

 そこで縄を解き、金と武器を渡して仕事終わりになります。

 疑問はありますか?」


「特にはない。

 ……あ、そういや俺を捕まえたあの捕縛術って誰から教わったんだ?」



 気になります?



「僕の父ですね。

 ……まさか、ギルド襲撃されたときに縛られました?」

「(コクン)」



 マジですか……。

 いや、あの二人が襲撃したのだから十分あり得るとは思ってたけど……。



「……ちなみに、どんな名前で縛られました?」


「確か『松葉崩し』とか言ってた気がする。

 片足が上に上がるような縛り方だった」




 あああぁぁぁ!

 大当たりじゃねぇか!


 頭を抱える僕を見て、呆れるカル。



「念の為確認だが、ニフェール様、当たってるのか?」

「大当たりだよ!」


「なぁ、お父上は特殊な趣味とかお持ちなのか?

 それとも本当に捕縛術として体系化されているのか?」



 その疑問は分かるんだけど、僕も答えを知らないんだよ。

 まぁ、知るのも怖いんだけど。



「……一応教えてもらったときには体系化された技術でした。

 ただどう考えても……ベッドのテクニックにしか思えない縛り方もある。

 僕にも判断できません。

 あまり追及して危険な扉を開けたくないので」



 両親の夜の捕縛術なんて聞きたくないし。



「あぁ、それは知らない方がいい。

 一般的なご両親なら教えたくはなかろう」



 一般的なら……ですけどね。




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― 新着の感想 ―
投稿感謝です^^ 一応知恵者のカロリナだけど、遭遇した未知が想定外すぎて為す術なしなのが哀れ(-人-) 完全上位互換な【才媛】ラーミルさんすら義娘の暴走に対処できなかったことを思えばむしろ順当な結果…
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