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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
7:義兄救援
170/362

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「この震えている奴らに今の説明理解させてください。

 僕は二階で殺してきます」

「お任せください」



 まともな二人に任せてさっさと二階に行く。


 ……変だな?


 逃げるのならすぐにでも裏口回って逃げるだろ?

 反抗するのならすぐ一階に降りるだろ?


 ……罠でも仕掛けているのか、奇襲でもするつもりか?


 様子を見ながら二階に上がる階段に到着する

 そうすると、そこには投げナイフが頭や体に刺さったまま動かない死体が……。



 これ、ナットか?



 階段を(のぼ)っていくと――



 ヒ ュ ン !


 パ シ ッ !



 ――僕のこめかみに向かって投げナイフが飛んできた。

 当たる前に掴み取ったけど。



「あ……ニフェール様ごめん!」


「あぁ、気にしないでいい。

 ちゃんとこちらから逃げようとした奴らを処分しているようだし文句は無いよ」



 ナットはあっさり受け止められたのにショックを受けた様だが、僕だったのに気づいて謝罪してくる。

 この程度なら許容範囲内だから気にしなくていいのに。



「これから二階制圧に動くから、階段降りようとする奴がいたら遠慮なく狙え」

「は~い、次は間違えないようにするね」



 そんなことを言いつつ二階に到着。


 気配を探ると三部屋程に大半がいるが、一部小部屋に隠れている奴がいるな?

 この雰囲気からすると一人かな?


 小部屋の方をさっさと片付けるか。


 チョット奥まったところにある小部屋を空けようとすると、開かない。

 と言うか、全力で扉閉めようとしてるな?

 鍵が無いのか知らんが、頑張るねぇ。



 なら……力比べといこうか。



 バ キ ッ !



 ……え?

 いや、力比べをしようとしたらなぜそんな簡単にノブが壊れるの!

 あぁ、もう!



 扉をよく見てみると、あまり厚く無いようだ。

 なら……ノックしてみるか?


 右手のうち、中指以外の四本で固く握りしめ、中指の部分だけ少し出っ張らせる形に。

 この状態で相手に失礼の無いように (?)扉を思いっきりノックする。



 バ キ ッ !

 ズ ボ ッ !

 ゴ キ ャ ッ !



 ……んん?

 いや、拳が扉を突き抜けて穴空くのは想定範囲内なんだけど、なんか変な感触が……。

 もしかして扉の前で押さえていた奴殴り倒した?!



 ギ ィ ッ ……



 何かと見てみると、人の気配がした三つの部屋から覗き見する視線が……。

 笑顔で応じてあげるとなぜか一斉に扉を閉めた。


 あぁ、なるほど。

 僕が何処か一部屋攻撃中に他の二部屋は逃げるつもりなんだな?


 突き抜けた腕を使って部屋の中のノブを回し扉を開ける。

 どうも掃除用具入れだったようで、隠れていたのであろう人物が一人倒れていた。


 よく見てみると、倒れている人物の急所――人中 (鼻と口との間、くぼんだところ)――にクリーンヒットしたようで、悶絶しているようだ。



 運悪いなぁ、アンタ。



 他にはいないようだが、このまま生かしておくと面倒なので首をへし折る。

 次は人がそれなりにいるはずの三部屋。

 とはいえ、一部屋に入っている間に逃げられてもなぁ。



 ……

 …………

 あぁ、そうだ!



 掃除用具からモップを二本取り出し、一番奥の部屋とその前の部屋にツッカイ棒にしておこう。

 最後の一番手前の部屋はこれから入るし、他二つは逃げられない。



 これなら順番に処理できるな。



 ちょっとウキウキしながら細工をしていく。

 多分、それぞれの部屋の中はびくびくしながら自分の部屋が最初に狙われないことを祈っているのだろう。


 うちの【死神】なら平等に扱ってもらえるよ?

 行先も同じだし、怖がること無いよ?



 さて、一番手前の部屋に対してノックする。

 恐怖に怯えた叫び声が聞こえ、他の二部屋から安堵の雰囲気が感じられる。

 馬鹿だなぁ、ちゃんと他の咎人()たちも相手してあげるからね♡


 扉を開けると、引き攣った顔をして窓側に移動している。

 持っている剣の先は震えて武器として役に立たなそうだ。



「な、何でこの店で暴れるんだよ!」

「犯罪者にやさしくする理由なんて無いでしょ?

 一階にいた皆さんと同じようになったらいいんじゃない?

 皆、待ってるよ?」



 あの世でね?



 双剣を鞘から抜くと、我先に窓から逃げ出していった……。

 だが、皆カリムの投げナイフで絶命して窓から落ちていく。



「カリム、次隣の部屋行くから」

「はい、こちらはいつでも」



 僕とカリムの穏やかな会話とは別に――



「急げ!

 今なら逃げれるぞ!」

「な、何故扉が開かない?!」

「扉に身体ごとぶつかれ!

 ここで逃げれなければ殺されるぞ!」



 ――他二部屋に籠っている奴らは阿鼻叫喚の地獄絵図。



「ニフェール様、何したんです?」

「後で教えてあげるけど、今は期待に応えてあげないと♪」


「モテモテですね (笑)」

「婚約者にバレないようにしないと (笑)」



 二人で軽く笑って、次の部屋の攻略に進む。

 とはいえ、特に難しい事もなくサクサクと殺していく。



 そして最後の部屋。

 多分、ここの商会長兄妹がいるはずの部屋。



「兄さん、逃げられないの?」

「無理だ!

 先ほど見たが窓側も完全に封鎖されていた。

 出ようとしたらナイフの的だ!」



 お、ちゃんと理解しているようだね。



「じゃあどうすればいいのよ!」



 いや、どうしようもないよ?



「それを今考えているんだろ!

 というか、お前も考えろよ!」



 悩んでも無駄だけどね。

 というか、こういう想定外の事態には妹は無力なんだ……。

 ちょっと驚き。


 まぁ、あまり待たせても仕方ない。

 さっさと終わらせますか。



「失礼しま~す!」



 ノックして入ると、顔真っ青の妹と顔真っ赤の兄というコントラストを見てしまった。

 ……顔真っ赤って怒っているのかな?

 ……まさか照れてるとかじゃないよね?


 それと護衛なのか剣を構えるのが二人。

 そしてどう見ても戦いに向いて無さそうな、着ているのがなかなか高価そうな奴が三名。

 商会の上位者集団ってところかな?



「多分、下で宣言した内容聞こえていると思いますが、皆さんを捕らえに来ました。

 とはいえ、大人しくできないのなら殺すことにします。

 さて、どうします?」

「……」



 あら、皆さん黙っちゃうんですね?


 なら……ちょっと暴れましょうか。



 ヒ ュ ン !

 ヒ ュ ン !



 双剣を二度振った結果、剣を構えていた二人が斃れる。

 ……個人的には死ぬ時くらい声出せばいいのにとも思うんだけど。



「ひ、ひぃいいいいいぃ!」



 そこのお前、うっさい!



 ザ ク ッ !



「お、お助けぇ!!」



 グ シ ャ ッ !



 あ、唐竹割りは失敗だったか?

 この後ここで調べものするのに脳みそばら撒くのは不味ったなぁ……。

 まぁ後で片付けるか。



「で、まだ生き残っている御三方?

 大人しく捕まります?」

「ふ、ふざけるな!

 お前ごときに――」



 ガ シ ッ !



「あ゛あ゛あ゛あ゛っ!

 イダイいだいイダ――」



 グ シ ャ ッ !



 左手で頭を握りつぶしてみたけど……唐竹割りと同レベルに汚れるなぁ。

 ちょっとやり方考えないとダメか……。



「んで、どうします?

 アンドリエ家の生き残りなんでしょ?

 王都で処刑されるか、今ここで僕に処刑されるか選んでいいですよ?」


「ねぇ、ちょっと待って!

 王都で処刑されるの?!」



 え?

 何で処刑されないと思ったの?

 ……あぁ!



「こちらの説明が悪かったかもしれませんね。

 あなた方の処分は陛下が裁判で伝えるでしょう。

 なので、処刑になるか別の方針になるか僕には正確なところは知りません」



 ……なんでホッとするのかよく分からないんだけど?



「ただし、現時点で把握している罪を纏めると、どう考えても処刑なんですよね。

 オルスへの指示内容やノヴェール家への対応、そして王都で暗殺依頼を行ったことあたり?

 なので、処刑前提でお話しさせていただいてます」


 幾つか、こいつらがやったこと説明したらガックリと膝を付く。



「僕らは捕まることとする、あ……騎士殿?」

「あ、名前は聞こえなかったか……ニフェール・ジーピンと言います。

 一時的にではありますが、今回の件で騎士と文官の指揮を取ってます」


「では、ニフェール殿、僕ら二人を捕縛してほしい」

「かしこまりました。

 確かイマエル殿で合ってますか?」


「あぁ、そこまで調べてあるのか」

「そりゃここまで捕らえるのに準備して名前知らないなんてありえないでしょ?

 さぁ、イマエル殿から始めましょうか」



 準備してあった縄でさっさと縛る。

 父上直伝の縛り方。

 どうやっても抜け出せないけど頑張って足掻いてね?



「次はカロリナ嬢、縛りますよ?」

「……サッサとしなさい!」



 ……まぁ負け犬の遠吠えと考えておきましょうか。

 こちらもサクッと縛る。


 ……この縛り方、とある一部が目立つはずだったんだが……この人薄いのか。


 言葉には出さないでおいてやろう。

 追い打ちを掛けない程度には僕にも憐れみの心はある。


 二人を縛り終えると、僕の両肩に担ぎ下に降りようとすると、カロリナ嬢が騒ぎ出す。



「ちょ、ちょっと、何てことしてんのよ!」


「え、血塗れ増量死体マシマシ脳漿トッピングアリの所歩きたかったの?!」


「あ……」



 イマエル殿は呆れているようだ。

 多分、担いだ時点で感づいていたのだろう。



「んじゃ行きますね」



 死体だらけの階段を通り、人間解体ショーまがいの一階を通り過ぎ外に出る。

 第八部隊の面々も大人しくしているようで、いきなり襲い掛かることは無かった。


 前回はいきなり切られかけたからなぁ。

 まぁ、カル達が睨んでいたからかもしれないけど。



「ニフェール様、その二人が商会長兄妹?」

「そうだ、すまんが牢馬車に入れたい。

 出入り口を開けてくれ」

「は~い」



 ナットが案内してくれて牢馬車に放り込む。

 扉を閉めて各自に仕事を割り当てる。


 継続してラーミルさんたちの護衛。

 この二人を運びマーニ兄に引き渡す

 商会の死体を纏める等の大掃除。

 必要そうな書類の配置チェック――これは僕たちだな。



 作業開始と同時に聞こえるのは悲鳴と吐き出す音。

 本当に経験無いんだなこいつら。

 そんなにゲェゲェ吐き出すなよ……。



 片付けを任せている間、僕らは二階から順に書類の在処をチェック。

 商会長室っぽいとこが一番書類が多く、他はほぼ無かった。

 後は一階の窓口近辺。


 その二ヵ所を重点的に調べてみるか。

 あ、できれば汚れてない場所の確保が必要だな……。

 って、これ商会長室と受付の大掃除が必須ってこと?



 その後、カル達に頭を下げ片づけを手伝ってもらった。

 その時の三人のコメントは以下の通り。

 なお、上からカル、カリム、ナットの発言。



「殺すことは止めねぇが、もっときれいに殺せ!」

「飛び散った脳みその片づけは侍従の作業範囲外だと思いますが?」

「ねぇ、ラーミル様にもこれやらせるつもり?」



 一番ダメージ受けたのはナットの一言でした……反省。



 とりあえず(なだ)(すか)して一緒に死体運びに勤しむ。


 適当に別の部屋に死体 (欠片含む)を集め、他の部屋は窓を開け換気。

 血塗れのカーペット等、短時間で動かすのが無理な物ははどうしようもない。

 椅子や小型机は血のついていない奴を選び、仕事場所に配置。


 そんな運送業的な仕事に従事していたらお昼時になってしまった。

 ……殺戮より苦労している気がする。



 最低限の通り道となる所の処理は終えたので、ベル兄様たちを呼ぼうと馬車に向かう。



 途中でマーニ兄へ捕虜を送り届けた者たちが帰ってきていたので、領主館側の状況を確認。

 向こうも中々イイ感じで紅く染まっているようだ。


「そうだよねぇ、それが普通だよ」とコメントすると、なぜかドン引きされた。

 いや、大鎌で暴れて全く血を見ないなんてありえないでしょ?


 もしかしてマーニ兄も同じような反応されたのかな?

 後で慰めておこう。



 そのまま馬車に向かいラーミルさんたちを呼ぶ。

 ベル兄様は先程の殺気に落ち着かないようだが、そこまでひどい状況ではないようだ。

 ……第八部隊よりマシって判断が失礼にならなきゃいいけど。


 馬車にいた三人を中に入れようとすると、街の住民がぞろぞろとやってきた。

 ……襲撃直後は怖くて来れなかったけど、今は大丈夫と判断したのだろうか?

 危険物(【狂犬】)が傍にいるってのに。



「ラーミルさんたち、先に入っていてください。

 二階奥の部屋にうちの面々がいます。

 ここはこれから殺気まみれの場所になりますので、避難を」


「早く終わらせてくださいね?

 ご褒美待ってますよ♡」



 ……ヤル気充填されちゃったんですけど?


 そんなことを知らず、そこそこ若そうなあんちゃんが声を掛けて来る。

 アゼル兄とマーニ兄の間くらいの年齢かな?



「なぁ、アンタらを率いている人って誰なんだ?」

「僕ですが?」


「はぁ?

 えっ、嘘だろ?」



 あぁ、何かオチが見えた気がする。



「事実です。

 陛下より犯罪者を捕らえ、必要とあれば殺すことを命ぜられました。

 ニフェール・ジーピンと申します。

 で、何か御用でしょうか?」



 こちらが可能な限り礼儀正しくしていると、侮っているよう難癖付けに来た。



「お前じゃ意味がねぇ!

 代表を出せって言ってんだろうが!」



 ド ン !

 ズ ッ テ ン !



 軽く僕を押しのけようと挙句、自分で転んでしまう始末。

 一部の住民から笑われている。


 顔真っ赤にしているあんちゃんは、立ち上がって文句を言おうとしている。

 多分殴ろうとするのだろう、拳を握りしめている。


 殴られたくは無いので、軽く殺気をぶつける。

 大体マーニ兄配下の部下たちなら耐えられるレベル。



 ブ ワ ッ !



 あんちゃんは腰を抜かし、周囲の住人も一斉に腰を抜かしたり気絶したりしたようだが誰も騒げない。

 この場にいる中で僕が一番危険であることを理解したのだろう。


 頭でとは言わないが、生存本能で。


 あんちゃんの頭を右手で掴み、笑顔で問いただす。



「ねぇ、もしかしてアンドリエ商会の関係者?

 なら殺すけど?」


「ち、ちげぇよ!

 俺はかんけぇねぇ!!」


「じゃあ、なぜ騒ぎ、邪魔をするのかな?

 死にたい?」



 少し右手に力を加えると大声で「痛い!痛い!!」と叫び出す。

 ダメだよ?

 頭蓋骨壊すにはもう少し強くする必要があるからね?



「ねぇ、なぜ仕事の邪魔するの?

 やっぱりあの犯罪者の仲間でしょ?

 なら、一緒に殺してあげる♪」


「ちげぇ、ちげぇよぉ……」



 なんか、泣きながら違うと言い続けているが、なら何なんだよ?



「じゃあ、なんで邪魔したの?」

「なんで騒いでるのか知りたかったんだよ!!」


「犯罪者組織のメンバーを殺していたけど?」

「へっ?」



 右手を離してやると、逃げ出そうとするが腰が抜けてるから動けない。



「ここのアンドリエ商会はとある貴族へ詐欺を働き、暗殺者を依頼して殺そうとした。

 国としてそれを許すわけにはいかない。

 我々はこの商会を犯罪者組織の隠れ蓑、商会とは名ばかりの犯罪者集団と認識した」



 間抜けな顔してるけど、理解できてる?



「商会長兄妹以外、この場所にいたものを皆殺しにした。

 先ほど領主を捕らえるための部隊に引き渡した。

 で、貴様に問う。

 我らの仕事を邪魔するか?」


「しない、邪魔しないよぉ!!」

「なら消えろ、邪魔だ!」



 同時に殺気を周辺にばらまく。

 先ほどと同じくらいにしたら、今度は気絶したようだ。


 ……気絶どころか股間が濡れているが、そこは見なかったことにしてやろう。

 ……感じちゃった? (絶対違う)


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― 新着の感想 ―
投稿感謝です^^ >……感じちゃった? 新たな性癖(絶対ダメなヤツ)に目覚めた阿呆がいないことを切に祈ります(-人-) この世界の淑女は胸囲の太さ肝の太さが比例しているのでは? そんな阿呆なコトを…
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