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昨日メンテだったんですね。
本話登録しようとしたら入れず投稿諦めちゃいました。
X(旧twitter)見ればすぐ気づいたんでしょうけど、SNS使わないので思いつかなかった……。
ということで、3/14投稿予定だった6話を投稿します。
なお、本日投稿予定だった7話はいつも通り16時台に投稿しますので、そちらもお楽しみいただければ幸いです。
「アンジーナ子爵。
同性強姦の定義について確認させてください」
「定義だと?」
アンジーナ子爵が突っかかってくる。
が、ちゃんと答えろよ?
あんたの回答次第で性犯罪者の烙印が押されるんだからな?
「同性の定義は今更不要でしょうから、強姦について。
相手の意志に反し暴力や脅迫、相手側の心神喪失などに乗じて性行為を強要。
僕の認識としてはこう考えてますが、子爵としては?」
「定義であればその通りだな」
ほう、定義ぐらいは知ってたか。
「で、今回の場合、相手の意志に反し暴力や脅迫は行われていますよね?
具体的に言うと、僕の頬を叩いたり殴ったりしましたよね?
これは暴力でしょ?」
「い、いや、あれは」
暴力でしょ?
というか、暴力以外の何物でもないですよ?
「そしてナイフを僕の頬に触れさせ脅してますね?
その結果がこの傷ですが?
これも暴力と脅迫ですね。」
「それは、お前が……」
「え?
僕がわざと自分で頬をナイフで貫通させるような人物だと?」
「うっ……」
「流石に言い訳にしても、もう少し考えて発言して欲しいのですが?
失礼ですよ?」
「……」
同性強姦と言われるのが侮辱なんですよね?
なら、僕の頬をナイフで突き刺すのも侮辱と受け取りますが?
「まぁあなたが頬を刺そうとした時。
歯や舌まで影響が出ないようにナイフが刺さるようにしました。
加えて、口の中が血だらけにならないよう努力しましたが?
それと、暴力の前にあなたは僕の服を力ずくで裂きましたね?
それが性行為を強要したと受け取りました」
「それは違う!
性行為の強要ではない!」
「ではなんで引き裂いたのですか?
どういう理由で暴行・脅迫を行ったか理解できません!
ですが、それ以上に服を引き裂くのはもっと理解できません!!
衛兵の仕事として人様の服を引き裂くという仕事があったのでしょうか?」
「それは……」
衛兵にそんな仕事はねぇんだよ!
「これだけの条件が揃っていたから同性強姦未遂と認識されているのですよ?
それとも否定できる何かがあるのですか?
ジャーヴィン侯爵様が助けてくださったときの僕の姿、服の状況。
これを超えるほどの否定要素があるのならお教えください!」
これで、子爵は何も言えなくなる。
多分、自分でも否定する要素が見つからないんだろうしね。
「ちなみに、任意同行で暴力・脅迫する。
もしくは服を破り肌を見せるなんてのは許されておりませんよ?
まぁご存じかと思いますが?」
黙ってしまいましたね?
そこで黙ったら強姦確定になるんだけど?
「……確かに先ほど言われた行動はやった。
ただし、そこに性行為を想定した行動をしたつもりはない!」
「服を引き裂く。
身体を動かせなくなるくらいに飲食を禁止する。
暴力を振るう。
そこまでやったのに性行為を想定してないと?
では何のためにやったのですか?
それと、仮に性行為ではないとしても暴力、脅迫は認めると?」
「それは……」
また黙ってしまった。
言い訳をしたい、でも「侯爵にまで見られた」という証拠を越える物は無い。
でも言い訳しないと性犯罪者のレッテルを貼られる。
いや~、どうするつもりなんでしょうね♪
「どうにも答えられないようだな」
「い、いや、その……」
アンジーナ子爵がぐずっている所にアリテミア大公が挙手された。
「おや、アリテミア大公閣下、何か?」
「うむ……少し記憶をたどっていたのだがなぁ。
過去に似たような話があったのを思い出しての。
ちなみにその時は男性貴族が女性、それも力なき平民に対しての強姦じゃ。
今回と同様に胸元を引き裂き胸を露出させ、数回殴っておる。
判決は火炙りじゃったなぁ」
アンジーナ子爵、顔青くなってらっしゃいますよ?
「ふむ、当時の判決の情報ありがとうございます。
判断はノリズム陛下にお任せするとして、次の質問に進もうか。
貴様にニフェール君が犯罪を犯したと伝えたものは誰だ?
まさか、根拠もなく捕まえたなぞありえないだろう?」
この言葉に目をキョロキョロさせるアンジーナ子爵。
……なんか、目が怪しくなってきたぞ。
この目って僕に殴りかかって来た時の目だな。
ちょっと気を付けておくか。
「セ、セリン家、元セリン家の奥方だ!
売爵して平民になってしまった奥方が言っていた!
ニフェールが伯爵家を滅ぼしたとな」
あ゛?
なにふざけたこと抜かしとんだコイツは?
喉笛喰らいつくぞ?
「ふ、ふふ、あっはははは!!」
一触即発の場面でジャーヴィン侯爵が大笑いし始めた。
キョトンとするアンジーナ子爵。
まぁ、僕もキョトンとはしましたが、ここまで笑うということは……。
もしかして?
もしかしちゃう♡
「いや、こんなバカげた発言をされるとは思いもよらなかったよ。
何年ぶりだろうな、こんなバカな話を聞かされ笑ってしまうとは!
貴様がどれだけ適当に仕事をしたか、ここまで的確に報告してくれるとはな!」
「なっ!
何処が適当ですか!
まさか侯爵ともあろう御方が平民になった者の申し立てを聞かぬのか?!」
でっち上げで犯罪者を自作したお前が言うなよ。
「ふむ、では我が発言が正しいという証拠を見せよう。
チアゼム侯爵殿、よろしいですかな?」
「ええ、このような喜劇をお見せいただいた御礼をしなければ。
さて、入ってきなさい」
あ、やっぱりそういうことですね♪
チアゼム侯爵からの呼びつけで入って来たのはラーミルさんでした♡。
って、ちょっと装飾品やケープとかつけてるけど告白した時のドレス?
うっわあ、別の意味でドキドキしてきた♡。
ただ、何か激怒と言っていいくらい怒ってません?
不味くない?
これ、近づいたら飛び火する?
「さて、アンジーナ子爵。
この方をご存じかな?」
「は?
知るわけないじゃないですか!
誰ですか、その女は?」
あ~あ、言っちゃったねぇ、自滅のキーワード。
「彼女は元セリン伯夫人。
当時の呼びかたで言うとラーミル・セリン元伯爵夫人だ」
法廷に静寂が落ちる。
アンジーナ子爵は声も出せない。
目が飛び出すくらいにひん剥き、口をポカンと開けている。
どう考えても思考が追い付いていないようにしか見えない。
チアゼム侯爵はラーミルさんをエスコートし、僕のそばに連れてきた。
「陛下の御前にて失礼いたします。
元セリン伯の妻でございましたラーミルと申します」
礼儀に乗っ取った挨拶をすると、ノリズム陛下からお言葉を賜った。
「ラーミルとやら。
アンジーナ子爵の話ではそなたが隣のニフェールを訴えたと言っている。
真か?」
「いえ、アンジーナ子爵にお会いしたこともございません。
また、ニフェール様を訴えるなんてありえません。
義娘のグリースがジーピン家との婚約破棄などと言い出した際。
色々と騒ぎを鎮静化させるためにお助けいただいております」
ここまで言った後、アンジーナ子爵の方を向き――
「当時の夫であるニーロ共々ニフェール様には尽きせぬ恩がございます。
ニーロ率いる元セリン家は『善人の家』と呼ばれるくらい人格者でありました。
それなのに大恩あるニフェール様を訴える?
ありえませんわ!」
ぶ ふ ぉ っ !
いや「善人の家」ネタを良き方に使うとは流石に想像しなかった。
他の貴族たちも笑いかけているが、ある意味真実味が増したように感じる。
「それと、私は平民ではございませんわよ?
元夫ニーロが売爵した時点で離婚しております。
なので今は実家であるノヴェールの姓を名乗っております」
アンジーナ子爵が唖然とする。
いや、この位調べろよ。
「ご存じないかもしれませんが……。
子爵位を賜っておりますので貴族令嬢になりますわね」
ラーミルさんの発言を引継ぎ、ジャーヴィン侯爵がアンジーナ子爵に近づき――
「アンジーナ子爵よ、貴様は衛兵管理の仕事を全くできていないようだな。
誤認逮捕どころか犯罪のでっち上げなぞありえんよ」
――衛兵業務の仕事がまともにできぬと呆れ――
「陛下の御前で虚偽の報告をするとは……。
貴族としても恥を晒していること理解しているか?
貴様の行動はいちいち貴族の名を穢しておるのだぞ」
――貴族としての振る舞いもできぬと叱り――
「で、改めて聞こう。
無実な者を犯罪者扱い。
申し立てを偽造。
任意同行なのに飲食禁止して閉じ込める。
強姦まがいの行動を取る。
陛下の御前で虚偽の報告をする」
――今回の騒ぎをまとめて説明し――
「この一連の問題、誰の仕業だ?
答えよ!!」
――逃れる要素を一通り潰した上で追いつめる!
めっちゃ楽しそうなんだよなぁ。
最近アゼル兄とカールラ姉様の件でストレスたまってただろうしねぇ。
ちょうどよかったのかもしれない。
ジャーヴィン侯爵の問いにアンジーナ子爵はブツブツ何か言ってる?
(ちょっとヤバいか?)
すぐに飛び出せるような体勢に移す。
間髪入れずアンジーナ子爵はジャーヴィン侯爵に襲い掛かった。
ジャーヴィン侯爵に触れる前に僕は低い体勢で割り込む。
アンジーナ子爵の右手を左手で掴み、僕の右腕は子爵の股間に入れる。
そのまま回転して投げる!
ド シ ン !
元々侯爵に掴みかかろうとしていた勢いそのままに投げた。
そのため、かなり勢いよく床にぶつかった様だ。
アンジーナ子爵の反応が無い。
気絶は……していないようだ。
もしかして驚いているのか?
このくらいたやすいだろうに。
訓練していたなら、だけどな。
「侯爵様、大丈夫ですか?」
「ああ、大事無い。
良く気づいたな」
「侯爵様の問いにブツブツ言っていたので……。
また狂人化したかと思いまして割り込めるようにしておりました」
「うむ、良い判断だ。
兵よ、そいつを捕らえ暴れられないようにせよ!」
アンジーナ子爵の行動に反応できなかった兵士たちがおっとり刀で拘束する。
子爵を引き渡すが……あんたら、仕事位ちゃんとしろよ。
学園生より反応遅れて恥ずかしくないのか?
子爵の暴走によるドタバタはあったがそれも落ち着きを取り戻す。
ジャーヴィン侯爵は改めて問いかけを行う。
なお、子爵は腕を極められ動けない状態となっている。
まぁ、また侯爵に襲い掛かられても困るしね。
「アンジーナ子爵、貴様はなぜこのような罪を犯した?
そして誰にこのようなことをせよと求められた?」
「誰にも求められてはおらん!
また罪を犯したとも思っておらん!」
は?
本気?
陛下も他参加者も呆れておられる。
というか、呆れていない者は法廷にいなかった。
「なら、貴様はそこで大人しくしておれ。
陛下、本件について他の者も呼んでおります。
入室させてもよろしいでしょうか?」
「許す、入れるがよい」
え?
誰を呼んだんですか?
ウチの家族は時間的に無理だし、元セリン家の人たちも同様。
ホント誰だろう?
困惑していると大声で喚き散らす男女の声が聞こえてきた。
女性は知らないが男性ってこれ、まさかレスト?
そんなことを思っていると予想した通りレストが連れられてきた。
一緒の女性は結構年齢高そう。
もしかして、アンジーナ子爵夫人?
ジャーヴィン侯爵を助けたときの投げ技
→ イメージとしては以下の通り。
・柔道の飛行機投げの変形
・プロレスのパワースラムを掴みから投げまで最速で行った
柔道、プロレスともあまり知識がない人物のイメージです。
なので細部は追及しないで頂けるとありがたいです。