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一通り準備を終わらせ、本拠地のあるスホルムへ移動開始。
移動中、ラーミルさんに一つお願いしておこう。
「ラーミルさん、すいませんが一つお願いが……」
「はい、何でしょう?♡」
……なぜ、そこでエロい顔して聞くんだ?
そういう依頼じゃないよ?
ベル兄様、
こっそり笑わないで!
「いや、僕の昼飯預かっておいていただけませんかね?
中でどれだけ血塗れになるか分からないので。
血塗れの総菜パンなんて嫌でしょ?」
「あぁ、そっちですか。
かしこまりました」
ねぇ、ラーミルさん、そっちってどっち?
想定された方向は何があったの?
僕分かんな~い (分かり過ぎてる)♪
カル達も血のニオイの染みたパンは嫌だと判断したのか、ルーシーに頼んでいく。
そうしてスホルムに到着。
時間からすると、街から出ていく馬車は一通り出て行った後のようだ。
先頭のマーニ兄が門番に説明している。
「王家からの依頼」で押し通すつもりかな?
ついでに街の中が無茶苦茶になるのを説明……はしないか、面倒だし。
押し問答の末、先頭の馬車が入っていったようだ。
多分、門番が領主に報告に行ってるんだろうなぁ。
まぁ、マーニ兄ならそっちは問答無用でプチっと潰してくれるだろ。
おっと、僕たちも街には入れた様だし、指示だけしておくか。
「カル、この馬車を店の前に止めるようにしてくれ」
「あぁ、他の馬車は取り囲む感じでいいか?」
「それでいい」
後はマーニ兄側の騎士と調整するだろ。
「ベル兄様、ラーミルさん。
気に食わない相手かと思いますが、可能な限りアンドリエの兄妹は捕まえる予定です。
できる限り現時点では会わせないようにしますが、もしかすると罵ってくるかもしれません。
そこは適当に受け流してあげてください」
「分かった、適当にいなしておくよ」
「罪を全てぶちまけるのはこの街での簡易裁判時にやればいい事です。
どこまでこちらが知っているのかわざわざ教える必要はありません。
あちらは貴族の頃に犯罪を犯した平民で、かつ犯罪から離れられない問題児。
こちらは継続して王都で貴族でいられる常識人。
一緒の物差しで測ること自体チャンチャラ可笑しいので」
こういうとベル兄様はイイ笑顔で頷いてくれた。
ラーミルさんは……なぜ眼がハートマーク?
いや、ここはベル兄様のフォローメインでお願いしますよ?
おっと、到着したか?
「さて、ラーミルさん」
「はい♡」
「必ず帰ってきますんで、ここで待っててください。
それと、片付けが済んだ後に【才媛】の実力をたっぷり発揮させてほしい」
あぁ……ラーミルさん、ベル兄様ととても似ているイイ笑顔ですよ?
色々と嫌な想いもあったでしょうけど、ここで爆発させてくださいね?
あ、それと最後に。
チ ュ ッ !
ルーシー、なぜヨダレ垂らしてみてるんだ?
ナット、お前もだぞ?
「ラーミルさん、お片付け終わったら今くらいのご褒美欲しいです♡」
「……ちょっと検討しときます♡」
交渉成立!
いやぁ、楽しみだ!
「いいなぁ……」
「ホント……」
なぜかルーシーとナットが拗ねている。
カリム、立場無さそうにモジモジするんじゃない!
「同じことやりゃいいのに。
まぁ、事前交渉なしで仕事終わったらご褒美上げたら?」
「!」
「!!」
「(照)」
なんだよ、気づいてなかったのか?
それと、カリム照れるのは分かるが落ち着け。
「中のお掃除終了後、昼飯時にご褒美上げればいい。
あ、ベル兄様に見られて問題ある行為はやめとけよ?」
「あ……はい、そこは気を付けます」
ルーシー、ナットが暴走しそうなら止めてくれよ?
「んじゃ、ルーシーは中で待ってて。
カリム、ナット、行くぞ」
三人で馬車の外に出るとカルや騎士たちも配置を急いでいる。
カリムを呼び、隣の店の屋根に僕を踏み台にして登ってもらう。
「窓から逃げようとしたら殺していい。
出ようとしないなら、無理に殺さなくていい。
戦闘の合図は僕が殺気放つから。
分かった?」
「了解です」
同じことをカルとナットに指示して配置についてもらう。
騎士たちはやっと隊列を整えた様だ。
とりあえず、軽く一言言っておくか。
「皆さん、準備はできましたか?」
「こんなくだらない仕事でそんな硬くなるなよ (笑)。
初めてか?」
「人殺すのならあなたの何十倍も殺してますよ?
あなたはここ数ヶ月で何人殺してます?
僕は百人以上殺してますけど?」
ザ ワ ッ !
アゼル兄の結婚式の時の話したら、なんか黙っちゃった。
「これからここで行われるのは僕による虐殺です。
犯罪者を許す気は無いので、大人しく従わない場合、問答無用で殺します。
この商会の大きさなら三十人以上殺す可能性があります」
一斉に顔色を青くさせ、動きが硬くなる。
ダメダメなのは分かってたけど、ここまでなのか……。
「あなた方は犯罪者を絶対外に出さないこと。
下手に逃すと面倒なことになります。
最悪、こちらを殺しに来るかもしれません。
あなた方は殺されたいですか?」
全員、一斉に首を横に振る。
「死にたくないのなら、ここから僕以外の人を勝手に出さないように。
許可が下りるまで殺してでも外に出さない。
分かりましたか?」
「はいっ!!」
返事だけはいいんですね。
「さて……」
第八部隊の前に立ち、店の扉を開け、大音量で叫ぶ!
「騎士団の者だ!!
アンドリエ商会の犯罪が見つかり、王都より捕縛に来た!!
大人しくするのなら殺しはしない!!
ただし、逆らうのなら容赦はせん!!
犯罪者として捕まるか、皆殺しになるか好きな方を選べ!!!」
言い切った後、扉を閉め逃げられないようにする。
って、あれ?
大きな声すぎたのか、妙に耳を抑えている者が多い。
ゴメンね、ちょっと騒ぎ過ぎたみたい。
「いきなり声でけえよ!」
「すまん、一応宣言は必要なんだが、声が大きすぎたようだ。
で、真面目な話、確認なんだが先ほど言った内容は聞こえて理解できたか?」
流石にある程度は聞こえていると思いたいんだが?
「聞こえたが、お前ごときが騎士団?
あり得ねぇだろ!
ガキにしか見えねぇし!」
その場にいた男女問わず、皆で嗤い出す。
まぁ、実際は学園生なので、ガキ扱いも仕方ないんだけどね。
「そうだそうだ!」
「殺せるもんなら殺してみやがれ!!」
あら、早くも相手側から許可出ちゃいました。
「ほぅ、逆らい、かつ皆殺しを選ぶということだな?
一応確認なのだが、イマエル・アンドリエとカロリナ・アンドリエという輩はこの場にいるか?
この商会のトップにいる兄妹と聞いているが?」
「はっ!
お二人は商会長室にいらっしゃる。
お前ごときが会える分けねぇだろが!」
……いや、簡単に教え過ぎじゃね?
確認の手間が省けてありがたいけどさ?
「いや、そこまで場所教えてもらえて、なんか申し訳ないな……。
礼といってはなんだが――」
ブ ワ ワ ッ ! !
「ひぃ!」
「な、何だよこれ!!」
「――あまり辛く無いように殺してあげるね♪」
まず、わざわざ商会のトップ2の居場所を教えてくれた奴の首を落とす。
次に声デカすぎと指摘してくれた奴を唐竹割り。
そして、その周辺で僕を嗤っていた輩数人を纏めて胴を切る。
僕の周囲に仲間たちの死骸がばら撒かれてやっと慌てだす奴が出て来た。
むしろ、まだ呆けている奴もいるが、大丈夫か?
すぐにお前も死ぬんだぞ?
「な、何しやがるんだお前は!
人殺し!」
「は?
何言ってんの、最初に言ったろ?
大人しくするなら殺しはしないが逆らうのなら容赦しないって。
そして、お前らの側から『殺せるものなら殺してみやがれ』と宣言した。
後は命の奪い合いだろ?」
「イ、イカれてるぜ!!」
「そんなこと言われてもなぁ。
陛下や王妃様からお前らを皆殺しにしてもいいって許可頂いているからな?
犯罪組織としか言いようがない商会なんだからその位の覚悟はあるんだろ?
そんな訳で、お前らの言い分なんかどうでもいいんだ」
……あれ?
何で黙るの?
「陛下?
王妃様?
許可貰ってる?」
「あ、うん。
この商会、貴族相手にふざけたことやったんで陛下たち怒っちゃってる。
なんで、商会関係者も含めてまとめて殺してイイって許可くれた。
一応、トップの兄妹は王都に連れてこれそうなら……とは言われてる。
連れて行ったら挽肉かもしれないけど、まあいいよね?」
「よかねぇよ!
この街経済的に守ってきた方々をなんで!」
は ぁ ?
「こいつら、貴族の頃に犯罪犯して平民になった癖に経済的に守る?
詐欺まがいの事をやった結果平民になったんでしょ?
その後もやらかしたから殺処分ってだけじゃん」
ざわつく商会員。
なに、知らなかったの?
まぁ、知らなくても殺すけど。
「まぁ、そんなわけで……死んで?」
笑顔で声かけるとなぜか皆さん騒いで逃げようとするんですよね。
どこがいけなかったんでしょうか?
ラーミルさんは僕の笑顔で目がハートマークになってくれるというのに。
まぁ、気にせずに目についた奴から切って捨てていく。
そうすると、窓口担当なのか女性がガクガク震えつつもなんか言い出す。
歯がガチガチふるえているのに頑張るねぇ。
「な、何でアタシたちまで!」
「え?
商会の人間だから」
「商会自体が犯罪犯してもその罪は会長たちでしょ!
ただの窓口嬢まで罪に問えるわけないじゃない!」
う~ん、まだ分かっていないんだなぁ。
「その勘違いを訂正するね?
商会という形を取っているけど、ここってただの犯罪組織でしかないんだよ?」
「へ?」
なぜ驚くんだい?
「なんで、商会の窓口嬢ってことは犯罪組織の窓口嬢ってことになる。
なら、罪に問えちゃうんだな。
だって、末端とはいえ犯罪組織に所属する輩でしょ?」
「違うわよ!
ただの商会だって!」
「皆、そういうんですよね、自分たちはまっとうな商会だって」
口だけなのはバレてますよ?
「でもねぇ、王都で調べた時点で、かなりろくでもないんですよね?
この商会から派遣された輩が貴族を騙し、国を騙してますから。
それに暗殺者を雇う位ですから、どう考えても危険な組織としか思えません。
あ、ちなみに王都側では既にその認識ですよ?
だから皆殺し許可が下りてるんですし」
わっかるかなぁ?
この商会に所属していた人物は全て犯罪者とみなされているんだよ?
「なので、君らは犯罪者として捕らえられます」
「なら、アタシも捕らえなさいよ!
殺すこと無いじゃない!」
「あ、それは単純な理由なんです」
「何よ!!」
少し冷たい声で宣言する。
「お前らを生かしておく理由が無いから。
お前ら如きを王都まで運ぶ価値が無いから。
ならさっさと殺した方が国としても飯食わさなくていいだけ安上がりだから」
「ヒュッ……ヒェ……ヒャァァ……」
物以下という立場を教えると呼吸するのも難しくなったのか変な声を出し始める。
ティアーニ先生みたいに過呼吸気味かな?
まぁ、構わんだろ。
シュパッ!
ゴトン!
首落とせば呼吸は不要だし。
ざっと一階の気配を探るが特に生きている人物の気配は見当たらない。
二階はまだまだいるようだ。
と言っても十名くらいか?
ちょっと外の奴らに声かけてくるか。
扉を開けると――
ブ ォ ン !
――いきなり剣を振るってきた。
一歩下がって避けると第八部隊の一人が青い顔をしてこちらに剣を向ける。
これはどう考えるべきだろう?
やっちまった?
殺れなかった?
「おい、相手を間違えないでよ!」
「あ、ああ……」
そのまま膝が崩れ落ち、ガクガク震えだす。
本気で大丈夫か、こいつ。
直接その現場を見ているわけでなし、商会の外にいたから殺気も軽減されたと思うんだがなぁ。
「とりあえず一階は殺したからこの後二階に向います。
継続して取り囲んでおいてくださいね」
歯の根が嚙み合わないのか、ガチガチ音を立てているが、僕が言ったこと聞こえたのかな?
他の奴らを見てみるが、似たような感じだった。
数少ないまともな者たちはマーニ兄から借りた二人。
まともに頷いたのはこの二人だけだった。
濃い血のニオイは嫌そうだったけど、それだけみたいだし。
僕も好きじゃないんだよねぇ。
そんなのよりラーミルさんのニオイを嗅いでいたい……。




