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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
7:義兄救援
162/358

60

作者の想定を超え、本章は六十話まで到達してしまいました……。

それでもまだ商会とのバトルにたどり着きません。

予定では既に本章終わってるはずだったのに。

今年中に七章終わらせたいです(切実)。

◇◇◇◇


 あれから数日、何事もなく馬車で移動していき、ただいま四日目の街に到着。

 途中での料理の説明を一通り終え、皆一通り移動時にやることを覚えて行った。


 皆、明日以降僕が作らないのは分かっているので少々しょんぼりしている。

 だが、数日後からまた食べられることは説明しているので許容しているようだ。

 ……今日で終わりと言ったら暴動とか起こさないよね?



「ニフェール、お前明日以降のスケジュールってどうなってるんだ?」


「皆より早くにこの街を出て夜位に本拠地到着の予定。

 後は宿屋に泊まって、飯食って周辺調査。

 宿を抜け出て夜間のうちに調べられそうな情報収集。

 次の日、朝は調査。

 昼の時点で移動開始し少し周辺調査したうえで夕方すぎには六日目の街で合流予定」


「結構ハードスケジュールだな……」



 マーニ兄、しみじみ言われても……。



「少しでも奇襲成功させたいから頑張ってるんだからね?」

「いや、そりゃ分かるが、無茶するなよ?」



 まぁ僕も無茶したくないけどね。



「そこは気を付けるよ。

 まぁ、想定範囲内なら戦闘は無いし、移動の苦労だけだと思うよ」

「……そういう時に限って厄介なことが起こるんだよなぁ」



 本当に起こりそうだからしみじみ言うのやめて!



「あぁ、連れてっていい馬を先に教えておくか。

 俺たちが起きるより先に出ていく可能性もあるんだろ?」


「そうだね、それと途中の街で水と飼い葉を頼ろうかと思うんだ。

 だけど、騎士団として依頼する事って可能?」

「その街の領主に依頼することになるな。

 とはいえ、それやっちゃうと情報漏洩がなぁ」



 確かにちょっとそれでは隠密調査には合わないなぁ。



「なら仕方ない、宿屋辺りに頼んでみるか」

「それか馬商人がいれば、やってくれるとは思うけど」


「行ったこと無い街だからどこまで必要な店があるか分からないんだよなぁ……。

 まぁ、とりあえず何とかやってみるよ」



 自分たちの飯は途中の街の飯屋でどうにかして……うん、何とかなるな。



「んじゃ、後そっちは任せる。

 明後日の夜に六日目宿泊の宿で状況を報告してくれ」

「あいよっ!

 そちらもこっちのお子様たち(第八部隊)の面倒見といてよ?」



 めっちゃ凹んでるけど、移動中のアレの管理はマーニ兄の担当だからね?



「……見たくない」


「マーニ兄、拗ねないの!

 僕担当の皆さんは二日くらい僕いなくてもやって行けるように説明しといた。

 後はアイツらだけだよ?」


「いや、分かってはいるんだが……アイツら見てると切り刻みたくなっちまって」



 あぁ、それは分かる。



「とはいえ、ガチで切り刻むのが不味いのは理解している。

 その結果、ストレスだけが蓄積されてな……」


「……ストレス発散用の敵もどこかに用意しといたほうがよかった?」

「できるの?!」

「できないよ!」



 軽い冗談でしょうに……。

 本気で追いつめられてるなぁ。



「まぁ王都で暴れる機会が出てくるかもしれないし、その時一緒に暴れる?」

「一緒にって……」

「第八部隊押し付けて来たクズ共相手になら問題ないんじゃない?」



 マーニ兄なら参加しても問題ないでしょ?



「……マジで参加したい」


「りょうか~い、アゼル兄の結婚式以来の大暴れになりそうだね♪

 でも、その為にはちゃんと我慢するんだよ?」


「我慢って……なぁ、ニフェール」

「何?」


「一部分だけ聞こえたら兄弟近親相姦に聞こえ――」

「――ロッティ姉様が喜ぶからやめて!」



 それ不味すぎる!



 そして次の日。

 朝日が昇る前に移動準備をし、街の門が開くと同時に移動開始。



「ニフェール様、ラーミル様とちゃんとお別れしたのか?」



 カル、なにニヤニヤしてんだよ。



「昨日のうちにな。

 むしろカルがルーシーにお別れできているか心配なんだが?」

「なっ、俺を気にしても仕方ないだろっ!」



 ……こいつ、本気でヘタレてないか?



「一応言っておくが、ルーシーからボコられても知らんぞ?

 それと、あちらの我慢もそろそろ限界だぞ?

 いつまで待たせる気なのか知らんが、あまりにも待たせる様ならご主人様特権使うからな?」



 まぁ、僕とラーミルさんの子の乳母にルーシーを選ぶだけなんだが。



「ご主人様特権ってなんだよ!」

「詳細は言えないが、お前が逃げられないように策を練っているってとこかな?」

「怖ぇえよ!」



 そんな怯えなくてもいいだろうに。



「さて、これから出発だが、少し馬の走らせ方を教える。

 すぐに理解できると思うから、軽い気持ちで聞いて欲しい」

「あぁ」


「簡単に言うと、登り坂では無茶をせず基本トロット、辛そうならウォークで進める。

 平地か下り坂はキャンターで進むこと。

 ついでに、ギャロップは平地のみ」

「……何となくわかった気がする。

 人と同じだな」



 お、分かってんじゃん。



「もしかして知ってた?」


「いや、でも人が移動するときに登り坂で全速力で走るのは体力消費が激しい。

 下りは楽。

 でも下り坂で全速力にすると勢い付いて曲がり切れないとかありそう。

 だから全速力は平地のみなんだろ?」


「満点の答えだよ。

 んじゃ、行こうか。

 目標は夕方に目的地到着だよ」



 こうして二人で移動を開始する。

 カルも僕の真似をして馬に負担を掛けないように順調に走らせていた。


 もしかしてこういう技術をギルドで覚えたのか?

 予想以上にうまいんだが。


 そのまま、日が昇った直後に四日目宿泊の街を出て十時頃には五日目宿泊予定の街。

 十四時頃に六日目宿泊予定の街に到着。

 どちらでも馬に水と飼い葉を与える為に交渉し、自分たちも軽食を取って次の街へ。


 かなり順調に本拠地に到着したのは十六時。

 秋とはいえまだ日が沈む前の時間に到着した。


 あっさり街に入り、まずは商会の位置を確認なんだが、誰かに聞いてみるか。



「カル、そこらの屋台で商会の場所聞いてみるから、今までの立ち位置でついてきてくれ。

 カルが父親、僕が息子の担当で」


「……あれか?

 ちょっと役割変更を求めたいんだが……」

「年齢的に無理だな、ほれ、行くぞ!」



 カル、恥ずかしがるなよ。

 後で皆に言ったら笑ってもらえると思うぞ。


 適当な屋台を見つけた。

 話好きなおばちゃんっぽいな。


 視線でカルに覚悟を決めるよう指示をし、諦めの表情を確認したうえでオペレーション開始!



おねえさん(・・・・・)

 この肉の串一本くださいな!」



 おばちゃんの反応が優しくなった!



「あらぁ、かわいいぼっちゃんね♪

 銅貨一枚だけどお金は?」

「はい、これ!」


「ちょうどだね、じゃぁ串焼きだよ

「わぁ、ありがとう♪」



 ……一応言っておく。


 忙しすぎて壊れたわけじゃないからな?

 情報収集の為だからな?



「ねぇ、おねえさん(・・・・・)、お父さんがあん……?

 あんなんとか商会に行くんだけど、場所ってわかる?」


「あんなんとか?

 ……あぁ、アンドリエ商会のことかな?」

「あぁ、それそれ!」


「ならあそこの店だよ」



 指差して教えてくれた店は、予想よりこじんまりとした店だった。

 元貴族でこの街を仕切っていたんだからもっと巨大な店だと思っていたんだが。



「おや、驚いているようだねぇ。

 小さいと思ったかい?」


「う、うん、もっと大きなお店を想像してた」

「あそこの商会はね~、元々ここの領主サマだったんだよ」



 おいおい、その手の話まで言っちゃうんだ。



「へ~、そうだったんだ~」


「だけど、この街の発展のために領主辞めて親族にここの領主を任せてるのさ!

 そうしたおかげで街は発展していってねぇ。

 街の皆、農家から商人まで生活しやすくなったのさ!」



 その元手はノヴェール家から分捕った金だな?

 それと、罪を犯して貴族位剥奪されたことは一切知られていないのか?



「へぇ、すごい人たちなんだね~」

「そうさ!

 このスホルムの街の名士って奴さ!」



 もしかして、これ、かなり面倒じゃね?

 この街の皆がこの認識だととっ捕まえたら暴動起こしそう……。



「こらこらニフィ、こちらの方の仕事の邪魔だろ?」



 お、カル、ナイスタイミング!



「は~い。

 おねえさん(・・・・・)色々お話ししてくれてありがとう♪」


「いやいや、ぼっちゃんとのお話楽しかったよ!

 そちらの……お父さんかい?」

「はい、父上です!」



 カル、震えるな。

 笑顔を保て!



「父親の仕事相手の事をちゃ~んと聞いてたよ、勉強熱心じゃないかい。

 アンタも後で褒めてやりな!」

「ははっ……そうさせていただきますよ」



 カル、表情硬い。

 もっと笑顔を見せなさい!



「さ、いくぞ、ニフィ」



 あのおばちゃんに口じゃかなわなそうだから撤退ですね。



「はい!

 おねえさん(・・・・・)じゃあね!」



 大きく手を振ってその場を離れる。

 少し離れたところで軽く話し合うことにした。



「は?

 商会が貴族位剥奪された理由が隠されている?」

「あぁ、おばちゃんが言ってた。

 この街の名士なんだってさ」



 カル、表情戻せ?

 かなり変な顔になってるぞ?



「そんな状況起こり得るのか?」

「王都から新しい領主が来て、前の領主と交代。

 新領主が特に悪いことを言わず、前領主が適当なこと言って民の信を得るのなら十分あり得る。

 王都からの文官担当者が領主交代の話を民の前でしていればこんなバカなことが起こるはずがないんだがなぁ。

 多分、新領主が『こちらでやっておく』とか言って文官の遠征を止めたんじゃね?」



 溜息を付きながら説明すると、カルは青い顔をして僕の襟を掴む。



「どうするんだ、今のニフェール様の発言通りならこの街は……」

「”死地”ってやつかな。

 多分この下種なやり方は妹の方だろうな。

 事前に性格悪いと聞いていた通りだな。

 これ簡単にどうにかなる話じゃないよ」


「え゛?

 ってことはうちらの負けってことか?」

「初戦は……というか事前準備について、あちらの努力が実ったってやつかな」



 カルが頭をガシガシ掻いているが……ハゲるぞ?



「ちなみに、勝算は?」


「やることは変わらないよ?

 奇襲・壊滅・逮捕・護送。

 この四つを確実にすることだよ」


「……気にしなくていいのか?」



 民衆が踊らされていることだよね?



「というか、多分アイツらが確実に反撃する所って逮捕から護送の直前。

 この地で軽度な犯罪者は裁判を受けることになる。

 それに、領主一家や商会、ずっぷりかかわっている農家を王都に連れて行き裁判にかけることは伝える必要がある。

 その時に街の人間が反旗を翻す位かな」


「……どれだけを想定している?」

「ありそうなのが、先ほど言った反撃の際に街の奴らを煽って暴走させる。

 まぁ、その場合、この街滅ぼすつもりで切り刻むけど」

「冗談に聞こえねぇんだよ!」



 落ち着けよ、カル。



「冗談なんか一言も言ってないけど?

 知らない街の住民より知っている面々の命だよ。

 当然事実を伝え、王都の情報も説明するけど聞く気が無いのなら優しくする理由が無い。

 まぁ、反抗するなら死を覚悟してやってほしいね」



 何怯えてるんだ?

 お前を殺すつもりは無いぞ?

 むしろ守るつもりなんだがなぁ。



「まぁ、まずは宿に向かおう。

 馬を置いたら商会の周辺調査して襲撃時の配置を考えないと。

 ついでにアンドリエ商会と敵対している所が無いかも調べないとな」

「……結構色々やることあるな」


「当たり前だろう、別に暇つぶしに来たわけじゃないぞ?

 料理覚える必要なくて喜んでいたのかもしれないけど、その分の仕事はたっぷりやってもらうからね?

 まぁ、僕も一緒に動くから仕事の押し付けとかはしないつもりだよ」

「のんびりできると思ったんだがなぁ……」

「いや、そりゃ無理だって」



 そんなおしゃべりしながら金銭的な理由から素泊まり宿を見つけ、馬の面倒を見て、サッサと外に出る。

 アンドリエ商会に近寄ると、ちょうど細身の老けた男が外に出てきた。


 顔にうっすら傷があり、結構殺気を撒き散らかしている。

 いや「俺強いんだぜ!」って言いたいのかもしれないけどさぁ!


 一般人の前でそんな殺気ばらまくようなことすんなよ。

 結構目立ってるぞ?



 そんな風に考えていると、カルが僕の袖を掴み脇道に引っ張っていく。


 待て、僕にはラーミルさんと言う婚約者が……!

 お前にだってルーシーがいるだろ!



「いや、違うからな?

 商会の前にいた細身の男、見たことがある。

 マギーさんの頃のギルド員だ」


「……マジ?」

「大マジだ。

 確か当時結構な実力者だったはず」



 え?



「あんな無駄に殺気ばらまいている奴が実力者?

 冗談だろ?」

「いや、殺気を自発的かつすぐにオンオフできるのって結構難しいぞ?」


「普段から駄々洩れなのは結構情けないぞ?

 というか、暗殺者ならば気取られずに仕事できなくてどうすんだよ?

 まさか今暗殺してきたばかりとかじゃねぇよな?」



 僕が呆れて言うと、カルも困惑している。



「昔はそこまで殺気駄々洩れはしてなかったと思うんだがなぁ。

 よっぽど面倒な仕事を受けたとかじゃね?」

「つまり、僕たちと殺し合うんだね?]



 カル、そんなイヤそうな顔するなよ。



「間違ったこと言ってないと思うんだがなぁ」

「正しければなんでも言っていいと思うなよ?!」


「それはともかく、予想通り暗殺者雇って来たね。

 アイツの宿確認しておこう。

 必要とあれば殺しておけば安全だし」



 カル、なぜ呆れる?



「ニフェール様、本気で暗殺者みたいだぞ?」


「何言ってんの?

 ギルド一押しの大型新人ニフィだもん。

 当然暗殺者でしょうに」



 なぜかカルが無言となる中、先の殺気駄々洩れ暗殺者を後ろから追っていく。

 幾つか買い物して戻っていったのは……素泊まり宿。

 お前も金が無いのか?!



「どの部屋かは調べなくていいだろ?」

「そうだね、後で宿帳覗けばいい話だし慌てる必要は無いかな。

 さっさと商会の間取りの調査に行こうか」



 表から見てこじんまりとした入口のみ。

 横と後ろからも見たいが……。



「カル、確か、平屋の屋根までは一足飛び文句ないよな?」

「……できれば俺が下にいて周囲の視線を遮るからニフェール様が動いてくれねぇか?」



 もしかして以前の飛び降りがトラウマ?

 ……ちょっとやり過ぎたか。



「分かった、すまんがここで僕を隠していてくれ。

 すぐに周りをチェックしてくる」

「おぅ、気を付けてな」



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― 新着の感想 ―
投稿感謝です^^ 『そして、スホルムの街は地図から消えた……』 てな感じのナレーションが聞こえてきそうなmy脳内妄想な近未来予想絵図がコワイです(;^_^A さて、ニフェールはここからどう平和裏(…
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