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投稿再開します。
活動報告で記載している通り二日に一回のペースで投稿します。
◇◇◇◇
「お嬢様、領主様から至急お会いしたいとご連絡が参りました。
ご当主様と一緒にお越しいただきたいとの事です」
わたし、カロリナ・アンドリエは急な召喚に苛立ちつつも頷く。
「お兄様へ連絡は?」
「既に」
「なら、すぐに着替えましょうか」
外行きのドレスに着替えながら急な領主からの召喚について考える。
至急と言う位だからよほどの大事なのでしょうけど、そんな急ぐほどの話なんて想像つかないわ。
この街で無いのなら……まさか王都で何かあった?
着替え終え下に降りるとお兄様が待っていた。
「カロリナ、話は聞いたか?」
「至急の召喚と言うのは聞きましたが、それ以上は……」
「推測つくか?」
「この辺りで何か起きるとは思えないので、王都関連かなと思ったのですが」
「だよなぁ。
ただ、王都で何かあったら別ルートからも連絡が来ると思うのだが……」
「あぁ、オルスね。
確かに何も連絡無いわね」
正直ここで悩んでも仕方ない。
お兄様と領主館に向かうと、領主であり親戚でもあるグリス・ダイナが血相変えて突撃してきた。
いや、流石にここで騒がず応接室とかに移動しなさいよ!
「領主様、イマエル・アンドリエ、カロリナ・アンドリエ両名参りましてございます」
礼儀に乗っ取り対応すると、自分の立場を思い出したのか応接室に案内してくれる。
……大丈夫?
侍女たちに今の情けない姿見せるべきではないでしょ?
応接室で茶を出され、侍女たちを下げてわたしたちだけになった途端、手紙をよこしてきた。
「とりあえず読んでみてくれ。
うちのマイトが王都の情報をよこしてきた手紙だ」
読んでみると……オルスがノヴェール家で捕まった?!
罪は『王宮からの詰問の自作自演』? 『子爵子息への暴行』?
調査にマイトも関わる?
アイツ何やってんの!
……まさか子爵子息ってベルハルトの事じゃないわよね?
それやっちゃったら今までの事前準備が全て無駄になっちゃうじゃないのぉ!
ちょ、ちょっとナニコレ、何があったのよぉ!!
「……なぁ、カロリナ。
この手紙の状況説明できるか?」
「できるわけありませんわ!
何ですのこれ、何がどうやってこのような手紙が届いたのか全く分からないのですけれど?!
領主様の方では情報ありませんの?」
わたしは噛み付かんばかりに領主様を問い詰めた。
「うちの方でも全く情報がない。
前後の流れが分からないままこのような手紙を貰っても……」
少し、自分の感情を抑えるよう深呼吸をする。
お爺様の代から狙っていた遠い親戚筋のノヴェール家、その身代の乗っ取り。
事前にオルスをノヴェール家に執事として派遣し、わたしが嫁ぎ、ベルハルトを消すことで乗っ取りを成立させる。
三代かけての作戦は二代目――わたしたちの父――が国からの指示以上に民から搾取していたことがバレて、わたしたちは平民に落ちた。
でも偶然うちの親戚筋に当たるダイナ家がこの地を管理することになって、わたしたちはそのままこの地で商人として生きることにした。
乗っ取り策は継続したまま。
偶然ではあるが、双方両親が亡くなる。
こちらは乗っ取り策を認識している者がわたしたちに策を伝える。
向こうは乗っ取り策を警戒していた者は死に絶え、何も知らぬ者のみ。
こちらの都合の良い環境が出来上がりつつあった。
こちらの兄妹に関心を一切持たないという想定外の事態はあったけど……。
そんなにあたしは守備範囲外か!!
お兄様も向こうの妹に全く関心を持たれなかったようだ。
なんなのよ!
あたしたちも元貴族なんだから、選択肢としては十分アリなのに!
そんなことを言っている間に妹の方は結婚していった。
まぁ、こちらとしても兄さえいれば十分だった。
わたしが兄を堕としてから妹が消えてくれればベストだったんだけど、まぁ仕方ないか。
その後わたしとの婚約を進めるように指示した。
でも、オルスのささやき戦術で攻めたりしたけど、全く反応無いのよねっ!
……実は男性の方が好みとか言わないわよね?
一応オルスに調べさせて好みは女性だは聞いた。
けど、正直その情報が信じられなくなるくらい反応が無さすぎる。
……やっぱり勃たないとか無いわよね?
そんなこんなで今までこちらはあちらを堕とせず。
あちらは婚約者を得ることができずと互いに進捗一切なしの状態だった……はずだった。
それがいきなりオルスがやらかした?
それも王宮が動くレベルの犯罪?
あいつ何やらかしたのよ!
「領主様、今わたしたちがここで頭を抱えても進展しません。
足の速い馬と自分で判断できる兵を複数名用意いただけますか?
王都の情報を収集して頂きたいのです」
「派遣するだけなら可能だが、あちらで情報集めるには難しいかもしれん。
一応マイトと会えるように手紙を書くつもりだ。
だが、オルスもしくはノヴェール家の情報を掴むためにはもう一声手口が足らん。
具体的に言うと、王都での伝手だな。
アンドリエ家ではそんな存在は無いか?」
無理ね、唯一の伝手がオルスだったんだし。
首を横に振りそのような者はいないことを伝えると領主様は頭を抱える。
気持ちは分かるわ。
わたしも同じ気持ちだもの。
「一応、今ノヴェール家に荷を届けに行っている者がおりますが、情報収集はあまり期待できません。
ちなみに領主様の伝手で王宮側から情報は得られませんか?」
「マイトからの情報が全てだ。
他に伝手は無いし、正直手詰まりだった」
二人で頭を抱えているとお兄様から提案が。
「まずは王都に調査要員を走らせる必要がありますね。
それと、マイト様に調査と連絡を密にしてもらうしかないでしょうね」
そうね、今更かもしれないけど、緊急でできることなんてその位かしら?
「現時点での最大の障害が、ここと王都の距離による情報の誤差の発生。
これは毎日こちらへ手紙を出させることである程度防げます。
マイト様の手紙にもそちら必ず書いておいてください」
「……そうだな、我々にはわずかな情報しか持っておらん。
最優先は正しい情報の収集だ。
今後もこの情報はそちらと共有したい」
でしょうね。
この街の農作物を通常より高く買い、より高い値段でノヴェール家に卸す。
当然、商会として税を払い領主としても潤う。
農家、領主様、わたしたちアンドリエ商会。
この三ヶ所はノヴェール家から吸い上げた金を共有している運命共同体。
これが崩れればこの街はやっていけないでしょう。
元々金になるような産業も無い街ですし。
わたしたちの商会に歯向かう商会もあります。
ですが、支払われる額の違いから農家は当然こちらを選びます。
報酬の多寡は仕事のやる気に繋がるのですよ!
そして、農家の中でも有力な者たちは仲間に仕立て上げます。
それと、少し報酬を追加して周囲にわたしたちを選ぶよう噂を撒いてもらいます。
今ではほとんどの農家はうちの味方です。
ちなみにですが、麦や野菜等の販売価格はある程度決まっています。
それ故、本来一般販売額の五倍なんて額で売ることは犯罪です。
ですが、購入側のノヴェール家にオルスを執事として派遣しております。
オルスがノヴェール家には嘘の情報を出しているのでバレずに売買を成立させております。
当然ですが、これが国にバレたら処罰の対象です。
ただでさえ過去に貴族から平民に落とされた我が家。
今までやってきた期間を考えると、どう考えても商売停止だけでは済みません。
お兄様もわたしも良くて鉱山行き、最悪死を賜ることになるでしょう。
毒盃か斬首かまでは分かりませんが、わたしもまだ若い身空で死にたくはありません。
領主様も一蓮托生ですから全力で隠蔽に協力するでしょう。
後は、もう一つ何か手があれば……。
そうだわ!
「領主様、表に出せない方々で暗殺とか得意な方はおられますか?」
「……突然だね、どうしたんだい?」
「最悪ではありますが、オルスを……」
わたしの発言を聞き、お兄様は驚かれてます。
「カロリナ、そんなことをしたら……」
「元々、ノヴェール家にわたしが嫁ぐこと、そして乗っ取ることを想定してましたよね?
でも、今まで延々と金を奪い続けております。
あちらもそろそろバレるのではないかと思っております。
それに、金無くなった家に嫁いで何の価値が?」
「あ……」
そうなんですよね。
お爺様の代なら乗っ取る価値があったんでしょうけど、今はわたしたちの金蔓でしかありません。
それもかなりの期間、金を奪ってますのでそろそろあちらも限界に近いのでは?
そして……全くわたしを娶ろうとしないあの男にこれ以上関わるのは時間の無駄です。
というか、わたしは只今十八。
嫁に行き遅れてると言われるまで後二年なのですよ?
お爺様方はアンドリエ、ノヴェールと別れた家をアンドリエ家主導で一つの家に戻したがってた。
でも、正直わたしたちはノヴェール家にそこまで関心はありません。
貴族の地位は欲しいけど、それは別の貴族から奪ってもいいのですから。
「なので、領主様。
わたしが嫁げる貴族を急ぎ見繕ってください。
愚かしければなお良しですわ」
「……貴族派でも構わんか?」
「構いませんわ。
乗っ取った後こちらの派閥に入るなり、領主様が貴族派に移るなりすればよいのですから」
派閥なんて、わたしたちからすれば何の価値もありませんし。
「それと執事候補を送り込めるような家が無いか調べて頂きたいですわ。
ノヴェール家が役立たずになりそうなら、次の家を探さなければ」
「分かった、急ぎ探しておこう。
それとオルスの暗殺だが、こちらには王都の暗殺者ギルドに伝手は無い。
だが、そなたらのお父上が依頼したことがあると聞いている」
え?
何です、それ?
「聞いてはおらんか?
日記に書いたか執事あたりに口頭で伝えているかどちらかだろう。
急ぎ調べ依頼したらいい。
こちらはこちらで動くが、タイミングを合わせることはあるまい」
……変ですね、確かノヴェール家先代は勝手に死んだと聞いたのですが。
「確認ですが、父上が暗殺依頼して成功したなんて聞いたこと無いのですが?」
「あぁ、確かに成功したというのは聞いてないだろうな。
先代ノヴェール家当主を暗殺するよう依頼したのは事実だ。
ただ、事前準備中に事故で死んだと聞いている。
暗殺者側も困惑してたそうだよ。
流石に暗殺してないのに金貰うのは筋が通らないと言って、前金だけでいいとここまで連絡しに来たよ」
は?
あ、いや、前金だけというのはありがたい事なんでしょうけど……まぁ確かに困惑するでしょうねぇ。
とりあえず急ぎ店に戻り執事に聞くと、あっさり教えてくれた。
父上が日記を書くはずがないので、こうなるのは想定通り。
さて、その説明なのだが……何だこれとしか言いようがない。
ローズストリートの出口の向かいの建物に入っている酒場。
そこで注文する際に秘密の合言葉を言えば暗殺者ギルドに紹介してくれるそうだ。
で、困惑しているのが秘密の合言葉なんだが……。
『クミスを一杯。それと鮑のソテー。
デザートは桃を出してくれ』
だそうだけど、なにこれ?
何かの隠語?
執事とお兄様は何となく理解したようだけど、教えてくれないし……。
「レディが知るべき内容じゃないよ。
むしろ知らない方がレディっぽいから知っても知らない振りしときなさい」
そこまで?!
「……色々言いたいことはありますが、聞かないでおきます。
で、これを領主様に教えますの?」
「いや、うちの者で口が堅い者に馬で行かせるつもりだ」
「ちなみにオルスだけですの?」
「アッチの兄妹もまとめて殺れるなら殺っておきたいな。
まぁ、金額次第だが」
まぁ、そうですわね。
ん?
なら……。
「お兄様、暗殺と同時にノヴェール家の金や貴金属の盗み取ることってできますかしら?」
「……交渉次第だろうな」
「暗殺者たちに半分くれてやっても良いのでは?」
「ふむ、その分依頼料を安くできるのであれば、アリかもしれんな。
交渉条件に入れておこう」
とりあえずわたしたちへの追及はそれなりに止められるでしょう。
騒いでいる家が消えればわたしたちへの追及はできないでしょうし。
早いところ面倒事を落ち着かせなければなりませんわね。
【ダイナ家:王家派文官貴族:男爵家】
・グリス・ダイナ:ダイナ家当主
→ 名はグリセリンから。
【アンドリエ家】
・イマエル・アンドリエ:アンドリエ家当主
→ 名はアルフレッド・ノーベルの父親、イマヌエル・ノーベルから




