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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
7:義兄救援
132/359

30

 先生たちが帰られてから調査要員たちの情報を確認する。


 一通り調査完了し、晴れ晴れとした表情でサバラ殿が報告してくれた。

 後ノヴェール家での対応はオルスの移送と荷物が届く日の待ち伏せくらいか。

 そんな話をしていると、マーニ兄が移送しにやってきた。



「お、ニフェール、試験は終わりか?」

「なんとか終わらせたよ。

 キツかった……」

「むしろ一日で科一つ分の試験をまとめてやるって言っている時点でキツいじゃすまんだろ?」



 それ言っちゃぁおしめぇよ。



「ちなみにこれからアッチもあるんだろ?

 準備は?」

「服を着替えるのと傷を消す位かな」



 今更それくらいしかやりようがないんだけどね。



「あまり無茶するなよ?」

「僕としては平和裏に終わらせたいんだけどね」



 元々王都で新しい暗殺者ギルドが暴走して危険地帯にならないようにしたいだけなんだけどなぁ。

 まぁ、そんな事いきなり言っても誰も信じてくれないだろうけど。



「まぁ、バレない程度にやれるだけやっておきな。

 個人的にはかなり賛成だがな」



 そう言ってもらえると、ちょっとホッとするよ。



「あ、そうだ。

 複数人デート、ベル兄様にOKもらったよ。

 実際実施するのはノヴェール家対応が一通り終わってからだろうけど」


「そりゃそうだろ。

 本拠地襲撃だって、ノヴェール家の二人も連れて行くだろうしな。

 当然デートなんてその後だよ」



 ま、そうだよね。



「それと、侯爵たちから何か手紙預かってこなかった?

 それとも当人たちがここに来るのかな?」


「ん?

 後で向かうとは言ってたが?」



 手紙は当人が届けに来るんだな?

 なら、先にギルドの方を終わらせるか。



「了解、ならちょっとアリバイ作りに戻るよ」

「あぁ、気を付けてな」




 急ぎノヴェール家と学園を往復しようとする。

 が、このタイミングで気づく。


 試験終了直後にドタバタするより、ここで着換えればよかったか!

 うっわぁ、大失敗!


 ……うん、ティアーニ先生には内緒にしておこう。

 正直に言ったらボコられそうだし。


 というか、僕も慌ててたのかなぁ。

 もしくは試験で頭回らなくなるまで疲れ果ててたか?


 ちょっと反省しつつさっさと着換えてノヴェール家に戻ると侯爵方が来てラーミルさんが応対していた。




「おぉ、ちょうどいいニフェール。

 まず、これを学園側に提出しておいてくれ。

 儂らの連名となっておる」


「ありがとうございます。

 ……ラーミルさん、すいませんが持っていてもらえます?」



 集まりの所で落としたら面倒なことになるしね。



「え?

 構いませんけど、なぜ?」

「犯罪者ギルドの集まりに持っていくものじゃないと思うんですけど?」



 言われるまで思いつかなかったのか、ラーミルさんも「あっ!」と顔真っ赤にして照れている。

 ……ちょっとカワイイ♡



「それと、昨日頼まれたマイトが情報流したかの確認だが……流しているようだ」




 えっ、ホント?




「流石に手紙の内容までは分からんが、受け取った時間からオルスの事を報告したのだろう。

 多分今日明日くらいにはあちらに到着するだろう」



 まぁ、これは仕方ない。

 うちらで止められるものじゃないしね。



「ちなみに、運がいいのか分からんが、辞職騒ぎ直後には手紙を受け取ってないようだ。

 確実とは言えないが、こちらは相手に届かない可能性は高いと思う」

「そうですね、そうであって欲しいです」



 あちらが何処まで対処してくるか検討しとかなきゃなぁ……。



「ちなみに、ギルド対応終わったら僕たちは一旦ノヴェール家に戻り、荷物持ってチアゼム侯爵家に移動する予定ですので、門番の方にはお伝えください」

「あぁ、そっちは任せろ。

 お前らこそ無茶をするなよ?」

「会議だけですからね。

 娼館の地域一体血の海にはしませんて」




 ねぇ、何、その信用ならねぇって表情?

 僕、大量殺人は教会でしかやってないよ?

 薬物関連では僕殺して無いし。

 どっちでも殺してる兄たちに比べて大人しいと思うんだけどな?




「さて、ラーミルさん。

 化粧品ちょっと使わせて頂けますか?」

「……傷消しですか?」



 頷く僕。

 ラーミルさんに連れられて化粧しに寝室へ……って寝室?

 ラーミルさんの?



「ちょ、ちょっと待って、それはまだ早い!」


「何を想像しているか分かりますが、私も義母上の怒りは避けたいですよ?

 化粧するためだけに別の部屋に色々移動させるのが手間なので……」


「ア、ハイ」



 考えすぎか……本当に?

 ラーミルさん、顔真っ赤だよ?

 まぁ、当人に言ったら叱られそうだから黙ってますけど。


 そのまま寝室に入りこむとラーミルさんにお願いをする。



「その……ラーミルさんにお願いすることは構いませんか?」

「え?

 それはまぁ、構いませんけど、なぜでしょう?」




「今回、今までのような殴れば解決はしない相手がほとんどです。

 それも僕よりもこういう場面に慣れている、海千山千の強者ばかり。

 なので……アミュレット(お守り)代わりに傷を消す化粧お願いできませんか?」




 ゴ ゥ ッ ! !




 うえっ?!

 なんでこんなところで覇気が出てくるんだよ!

 って、それもラーミルさんから?




「本当によろしいのですか?」




 なんで、そんな厳かに言い出すの?

 そんなヤバいこと頼んだ記憶は無いのだけど?



「はい、お願いします!」



 正直怖いので、可能な限り礼儀正しく頭を下げる。



「分かりました、こちらに」



 化粧台の前に座らされてあれやこれやと化粧される。

 とってもイイ笑顔でやってくださったから、頼んで正解だったんだろう。


 先日の女装の時は道具はともかく化粧は僕一人でやったからご不満だったのだろうか?

 今後もお願いしてみるかな……。



 一通り傷を消すのが終わると、ラーミルさんからキスされた。



「……必ず戻ってきてくださいね?」

「……必ず戻ります!」



 寝室から二人で出てくると、四人組がニヨニヨした表情でこっちを見る。



「あ~ニフェール様、実家の方には黙っておきますぜ」


「期待されているようなことはして無いぞ?

 というか、早すぎるだろ?」

「早いって?」



 カル、しつこいな。



「カル的には長く感じたのかもしれないが、僕そこまで早漏じゃないし」



 ブハッ!



 他の面々も一斉に噴出した。



「おまっ!

 言うに事欠いて何抜かす?!」


「化粧で頬の傷を隠すのをサカってると勘違いしたカルが哀れすぎて……」

「と言うか童貞の癖に早漏じゃないってなんだよ!」



 確かに言っていることは正しいんだけどね。



「まぁ、僕は未経験だから早漏かどうか分からない。

 でも、兄たちの結婚初夜とか領地への移動中とかのサカリっぷりを考えるとねぇ。

 さっき程度の時間で終わるのは早すぎるんじゃないかなと……」



 四人とも、いや、ラーミルさんを含めて皆黙ってしまった。

 アゼル兄もマーニ兄も激しかったからなぁ。



「ニフェール様、一応言っとく。

 あのお二人を比較対象にするのは止めておけ。

 まぁ兄弟だからニフェール様も同じくらいぶっ飛んだサカリっぷりを見せつけてくれるのかもしれないが、あまりヤリ過ぎるな。

 ラーミル様の体力を考えてサカれ」



 カルはなぜか真面目な顔で指摘してくる。

 もしかして、兄たち……ベッドの上でも【魔王】や【死神】ってこと?



「何となくは理解した。

 実体験する際には記憶の片隅に留めておくように努めよう」

「あぁ、とりあえずはそれでいい」



 大事なことなんだろうが何とも締まらない会話を終わらせ、ノヴェール家を出て五人で移動する。


 元々僕、カル、ルーシーの三名で行こうかと考えていたんだが、カリムとナットが護衛として行きたいと直訴。

 最悪逃げ出すことを考えると二人がいた方がいいのは事実なので、連れて行くことにした。


 ちなみに、傷を消した男性時の名はニフィ。

 捻るのも面倒くさくなってしまったので、女装時の名と一緒にしてしまった。



 そうしてやってきたのは娼館街。

 ある意味娼館ギルドの城ともいえる場所。


 周りは鼻の下伸ばした親父共やヨダレ垂らしたオバハン共が闊歩している。

 そんな中、僕たちは硬い表情を崩さないままその中心である館に向かう。



「失礼、そこで止まってください……あぁ、カル様ですね。

 お待ちしておりました。

 この侍女がご案内いたします」


「カル様、皆様方、ではこちらへ」



 衛兵から誰何され暗殺者ギルドの長であることを確認されると屋内に案内される。

 すっげぇキラキラした(語彙力低下中)廊下を通り抜け、到着したのはかなり広い会議室。


 ノヴェール家どころか両侯爵家の会議室より広い。

 今いるのは噂に聞いた【妖魔】ピロヘース。


 カルの説明通り四十くらいにしか見えない。


 ……これで本当に七十とか八十なの?

 確かにこれは【妖魔】だわ。


 その後ろには眼鏡かけた秘書としか言いようのない女性と鎧を着こみ剣を持った男性が傍に控えている。

 男性の方は……ラクナ殿クラスか?


 流石に女性の方の頭の良さまでは分からないが、ここに連れてくる位だからかなりの才女なんだろう。



「カル、やっと来たね」

「やっとって、二番目じゃねえか?」


「待たされている妾の気持ちも考えておくれ。

 暇なのじゃよ」

「茶でも飲んで大人しく待つ以外にできることなんてねえだろうがよ」



 はたから見るとただのおしゃべりだし笑顔も見せるんだけど……。

 ピロヘースの目がこちらの僅かな反応も見逃さないとガッツリ見てくるんだよね。

 本当に海千山千の【妖魔】だよ。



 コ ン コ ン ッ



「おや、私たちより早く来るとは珍しいですね、カル殿」

「本当に珍しいこともあるもんですなぁ」



 新しく二名が入ってきたが、二人とも太目……というかデブ。

 筋肉も無さそうだし、商業ギルドの長リシアシスと生産ギルドの長シロスかな?



「そこまで珍しがられるほどかね?

 特に今回うちが発議したんだ。

 それなりに早めに来ないとな」


「ほぅ?

 それは余程の事なんでしょうなぁ。

 拝聴させていただきますよ」

「然り然り」


「そんな気を使わなくても、アンタらなら既に知っていることを報告するだけさ」



 こいつらも【妖魔】ピロヘースほどではないにせよ面倒そうだなぁ。

 両侯爵や大公様ほどじゃないけど。



 コ ン コ ン ッ



「おっ、皆早えな?」

「私たちが最後か、すまんな待たせて」

「いいや、遅れては無いから気にせんでええよ」



 こいつらが強盗ギルドの長ザイディと詐欺師ギルドの長ダメンシャか。


 ザイディは腕っぷしは強そうに見えるけどピロヘースの護衛の方が強いな。

 ダメンシャも商業・生産ギルドと比較すると小物としか言えん。


 うちのカルもこれと同レベルとみられていたんじゃないのか?


 となると、この集まりは商業・生産・娼館の各ギルドが犯罪者共を抑えるためのものでしかない?


 ついでに自分たちが犯罪者共に寄り添うことで各ギルドが味方だと思わせる。

 結果、襲い掛かって来そうな犯罪者を手懐け、自分たちに敵対しそうな輩は犯罪者に襲撃させるとか?


 下手なことは言えないけど、ちょっとこの集まりの意図が不安になってきたな。

 後でルーシーあたりと答え合わせしておくか。




「皆揃ったようじゃな。

 では会議を始める。

 本日は暗殺者ギルドからの緊急事案発議だそうじゃ。

 では暗殺者ギルドのカルよ、説明の方頼むぞぇ」



 ピロヘースから振られカルは説明を始める。



「まずは急な招集にもかかわらず来てくれたこと感謝する。

 もしかすると既に知っている者もいるかもしれない。

 だが、現場にいた者の報告もここでさせるので一通り聞いて欲しい」


「おいおい、もったいぶらんでいいからさっさと説明してくれよ」



 ザイディか。

 こちらを舐め腐った顔して見ているが……ってもしかしてルーシー狙いか?

 目だけエロ親父モードっぽいんだけど?



「分かったよ、先に簡単に結論を言うと、暗殺者ギルドは先日壊滅した」


「……は?」



 全ての長たちが唖然とした顔を隠さない。

 あのピロヘースまでも口をポカンと開けて間抜けな顔を隠さずにいる。



「皆の反応を見る限り、誰も知らなかったようだな」


「あぁ、妾も知らなんだ。

 他の長たちも知らなかったのであろ?」

「私たちも知りませんでしたよ」



 リシアシスがピロヘースの問いに答え、他ギルドも同様に頷く。


 ん~、娼館ギルドは騎士たちが黙ってた?

 商業ギルドはどうなんだろ?

 ダッシュの酒場は商業ギルドに属していると思ったんだが……。


 もしかして死体の方が目立ちすぎてギルドの壊滅には行きつかなかった?

 それとも、娼館・商業・生産は初めて知ったフリしてる?


 全く面倒だな、この会議は。

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