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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
7:義兄救援
129/357

27

 その後、珍しく早く寮に戻りさっさと試験準備に向かう。

 ……もしかして今季でこんなに前日に事前勉強できたの始めてじゃないのか?


 そんなこんなで朝を迎え、試験終了で浮かれている奴らを横目に領主科校舎に向かう。

 各校舎一人ずつしかいないのでバラバラにやるくらいなら一か所に集めて試験をするようだ。


 そんなわけで指定された教室に行くと、フェーリオとジル嬢、そして先生方三名が既にお待ちになっていた。


 皆早いですね、まだ時間ありますよ?

 って、オーミュ先生にティアーニ先生、なんでお二人が?



「おや、驚いているようね?」

「驚かないはずがないじゃないですか!

 今日明日はティアーニ先生を暴走させないようにオーミュ先生が監視してるのかと思っていたのに……」

「そんなことしないわよ!」



 勘弁してくれとばかりに叫ぶオーミュ先生。

 でも面倒見てるよね?



「よかった、来れたのですね」

「いや、ちゃんと来ますよ!」

「昨日の父上たちのドタバタに巻き込まれているかと思ったんで皆で心配したんだよ」



 フェーリオの言葉で納得してしまう。

 あれのせいか。



「あのドタバタは解決させたよ。

 まぁ、遅れは少し出ているけど取り戻せない程では無いから安心して。

 昼にでも少し内容を教えてあげる」



 フェーリオたちが安堵の声を上げる。

 まぁ、事実は言えないけどね。

 一人首へし折って殺し、一人玉竿引きちぎったなんて言ったらショックだろうし。



「まぁ、そんなわけで安心して試験できるからこちらは気にしないで。

 むしろ僕としてはティアーニ先生が大人しくできるかの方が不安なんだけど?」

「……何とかやってみるわ」


「明日の最終盤に我慢できなくて貧乏ゆすりとかしないでくださいね?」

「……」



 大丈夫って言ってよ!

 やっぱり不安だ……。



 そんなことを話していると最後の一人、スティーヴン先生が試験の説明を始める。


 前回と同じように、特有科目と同名の科目でも内容に差がある科目の試験を行う。


 試験時間は今までの試験と同じ。

 だが、終わったら挙手して連絡することで時間内でも終了させることが可能。


 また、休み時間は最大十分、短くすることは可能。

 つまり、試験ニ十分、休憩一分とかにすることも可能。


 昼休み時間は時間を確保するように考えた上で自分で判断して休むように。

 午後の試験は十三時から。


 ……最初この説明を受けたとき「はぁ?」とか声を上げてしまった。

 フェーリオ辺りは「気持ちは分かる」と頷いていた。


 本日はフェーリオが淑女科専門科目と騎士科。

 ジル嬢が領主科専門科目と騎士科。

 僕が領主科&淑女科(両科共通、専門科目とも)。


 僕は前回やってみた科目だけど、フェーリオたちは初めての騎士科科目。

 ざっくりとはコツを教えたけど、どうなんだろう?


 試験順序を見る限り基本は一般科目が先に、専門科目が後になってるな。

 フェーリオたちはわずかに残っている領主&淑女専門をすませてから騎士科基本、騎士科専門の順のようだ。

 こりゃ、午前中にさっさと進めて午後はじっくり解くようにするか。



「では、準備よろしいですね?

 名前の書き忘れ、無いように。

 では、始め!」



 三人一斉にスタート!

 ……といっても時間で競うわけでは無いので各自淡々と進めるんだけど。


 前回の時点でも高得点を取れた科目は詰まる所なくサクサクと進んでいく。


 不安要素の強かった算術、外国語も今回はあまり悩むことなくクリア。

 これは高得点期待できるかな?


 昨日までの試験であれば三科目しかできないが、今回は午前中で六科目程進められそうだ。


◇◇◇◇


「(全く、何でこんなにさっさと進められるのよ!)」



 今回私、オーミュはフェーリオ君の担当として開始・終了のチェックと監視をしている。

 先日までやっていた試験は時間五十分、休み十分で進めていた。

 ……というのに、この三人は特別ルールに変えた途端一科目三十分とかニ十分とかで終わらせてくる。


 一応言うと、こんな速さで進めるなんて正直無茶だ。

 いや、自分の得意科目ならこの条件で進めることもギリギリ可能だろう。

 でも、全科目でこの速度を維持することは絶対にできない。


 チラッと本日のスケジュールをチェックすると、十科目以上ある試験科目が既に五科目終わっている。

 多分、午前中六科目の想定で進めているのだろう。



 普通出来ないからね!

 いや、三科狙う学生って時点で無茶苦茶なのはわかるんだけど、この子たちの年は豊作過ぎない?



 フェーリオ君にジル嬢にニフェール君。



 この三人が桁外れ過ぎて他の子たちかわいそうな位なんだけど?

 まぁ、この子たちから他の子たちへ何かしているわけでは無いからそこらへんは安心して見れられるけど。


 むしろ、この子たちに突っかかる自殺志願者がパラパラと出ていると聞いている。

 確かそれぞれの科の二番手が勝負を挑んだけど説得されて自殺回避したと聞いているが……。


 多分、ニフェール君辺りが止めたんだろう。

 ……まともな方法かは知らないけど。



「オーミュ先生……」



 おっと、何かな?

 ……ってもう終わったんかい!(裏手ツッコミ)


 この子たちに騎士科の科目は専門的なところはともかく、基本は簡単すぎるんだろうなぁ。

 多分スティーヴン先生担当のジル嬢もかなり進んでいるんでしょうねぇ。



「ちなみにこれからは専門分野の試験だけど、一教科くらいは午前中にやっちゃう?

 それとも昼後にする?

 ちなみに、あとニ十分で十二時だけど?」

「なら、事前にチェック入れておきたいので休憩に入ります」



 チラッと見ると、ジル嬢もほぼ似たような時間で休憩に入りましたね。

 ニフェール君は……うっわ、あっちももう少しで六科目終わる?!


 こっちの二人のように格下の試験を受けているわけでは無いのに喰らいついてるし。

 やっぱどっかおかしいわ、この子たち。



◇◇◇◇


 十二時ちょっと前に六科目の試験が終わった。

 集中し過ぎて首が凝った気がする。

 昼食を食べに食堂に向かうと既に食事を終えたフェーリオとジル嬢が午後の勉強をしていた。



「ここいいか?」

「お、ニフェール、終わったのか?」

「なんとかね。

 そっちも午前中は楽だったろ?」


「まあ自分の科でも一部学んでいる部分だからなぁ。

 その分午後が厄介なんだけど」

「そうなんですよねぇ。

 前に教えていただいた情報から学んでは見ましたがイメージが湧かない部分もありまして……」



 トラパネーゼ(バジルソースとアーモンドのパスタ)を食べながら話を聞いていると二人、特にジル嬢の弱点が何となく分かってきた。



「特にジル嬢が関わる問題になるんだけど、王都を出て隣の街まで行ったことってないでしょ?」

「え?

 まぁ、王都住まいですからわざわざ行く理由がありませんわねぇ」


「となると、移動の苦労や道の荒れ方、橋が架かった川とか絵画以上の知識ってないんじゃない?」

「……そうですわね」


「そうなると、イメージ掴みずらいかなって思ったんだけど?

 例えば森を突っ切るしかなくなった場合の移動速度の低下とか?

 書物に書いてあることまでしか分からないんじゃないかな?」

「……ッ!」



 当たりっぽいな?



「ちなみにフェーリオはまだちょっと有利かも。

 ジャーヴィン侯爵領に行くまでに川を橋で越えたりとか経験しているからね。

 ただ、実際歩いて移動した場合の苦労のイメージが掴めないんじゃない?」


「……あぁ、その通りだ。

 何となくは分かるんだけど、立場的に長時間自然に満ち溢れた場所を歩くなんてほぼ無いな。

 あっても安全な原っぱで走るくらい?」



 こういうのは王都生まれ王都育ちだとその辺りは分かりずらいのだろう。

 経験があると受け入れやすいんだけど。



「今回は慣れるための試験と割り切ってやってみるしかないんじゃない?

 弱点の理由が分かっただけでも良かったと思うけどな」

「……そうですわね。

 久しぶりにまだまだ勉強不足であることを思い知らされそうですわ」



 ジル嬢、自信あったんだろうなぁ。

 でも、久しぶりって……?



「多分、春季試験だよ。

 あの時二人して文官科の難しさに叩きのめされたからなぁ」

「あぁ、なるほど。

 僕はまとめて潰されておしまいだけど、二人とも二度目になるのか……」



 フェーリオに教えてもらって納得する。



「ちなみにニフェールは午後大丈夫なのか?」

「ん~大丈夫とは言わんけど、前回ある程度学ぶコツを掴んだからなぁ。

 後はどこまで今の領主科&淑女科に追いついているのかだけかな」



 前回苦労した分、そこはちょっと楽なんだよね。



「ちなみに、お二人のお父上は昨日楽しまれたようです……ニフィの方を」




「え゛?」




「詳細は当人たちに聞いて。

 昨日謝罪された件をマーニ兄と一緒に終わらせたんだ。

 その時に知らない人たっぷり状態で、ニフィ化した」


「……楽しんだんだろうなぁ、父上たち」

「ウッハウハだったんでしょうねぇ、父上たち」




 まぁ、大体合ってるよ。




 そんなことを駄弁っていると午後の試験の時間が近づいてきたので皆で教室に移動し、午後の試験を開始する。


 夏季試験の時点で一度経験しているからか、結構順調に回答できた。

 とはいえ午前の科目程あっさり終わらせることはできず、全てが終わったのは夕方だった。

 この調子だと、明日はもっと時間かかるかもしれないな。


 ティアーニ先生が情報欲しがっているけど明日まで待ってと説得し、急ぎノヴェール家に向かう。


 屋敷に入るとサバラ殿の部下たちがにこやかな表情で仕事をしていた。

 余程順調そうでなによりですね。



「お、ニフェール戻ってきたな?

 なら別件の話し合いをしたいんだが?」

「構いませんよ」



 急ぎ関係者が集まり話し合いが始まる。

 なお、マーニ兄は今回は仕事の都合で不参加。



「さて、国としての方針だが、一部メンバーのみ情報を保有する形にする。

 陛下と王妃、王太子両殿下、大公様、それと儂ら二侯爵家。

 そしてジーピン家。

 ただし、メインは王都にいるマーニとニフェールとし、アゼルは補佐の形で対応してもらう」



 まぁ、領地にいる人間にそこまでやらせるのはちょっと無理だしね。



「大体想像通りですね。

 今後教える人が増えるかもしれませんが、その時はこちらにも情報ください。

 それと、アゼル兄には先に僕の方から手紙送っておきます。

 多分、明日か明後日辺りには手紙書き終えると思うので。

 その後に王宮側として手紙送っていただけると助かります」


「確かに、情報なしに送ったら頭抱えるだろうしな。

 そこは時間差付けて送っておく」



 後は……カル達の方か。



「カル、これで他ギルドにメッセンジャー出せることになったけど、一筆書くのか?」

「いや、言伝で十分だ。

 時間は……夜、夕飯過ぎ位の時間にしておくか。

 場所はいつもの場所だから、伝えておけば場所取りは任せておけるだろう」


「関係全ギルドにメッセンジャーとして動くのか?」

「いや、取り纏め担当ギルドに連絡するだけだ。

 なので、そこからの展開はお任せって奴だ」



 取り纏め担当までいるのか。



「元々の暗殺者ギルドって何か役割とかあったの?」

「いや、うちは元々そこまで人員多くないんだ。

 なので、もっと大きなギルドに任せる形になっているんだよ」


「爵位みたいな感じ?

 暗殺者ギルドは子爵くらいで、人員多いギルドは侯爵とか?」


「ん~、ちょっと違う。

 元々人海戦術が得意で、仕事上も含めて王都、そしてギルドがある辺りから出ることの無いギルドが担当になっているというだけだ。

 まぁ、具体的に言うと娼館ギルドなんだけどな」



 え゛?

 ちょっとイメージが違うんだけど?



「人海戦術って無理じゃね?

 娼婦の面々がそんな簡単にウロチョロできないでしょ?」


「娼婦はそうだ。

 でも娼館で働いている男どもは自由に動ける。

 それも娼館・娼婦を守るためにそれなりに屈強な面々もいる。

 王都で一番大きな犯罪者ギルドだよ。

 それも、表のギルドとしても結構大きいしな」


「表でも裏でも娼館ギルドと名乗っているってことか……まて、表は理解できるが、裏ってなんだ?」

「ざっくり言うと、誘拐してきた女達を娼婦として働かせる。

 なお、誘拐は別のギルドがやっているから娼館ギルドとしては女買って店に出すくらい?」



 両侯爵も頭抱えてる。

 王宮としても娼館からの税が入る以上文句は言えない。

 それにかなりの王宮職員は遊びに行っているのだろう。

 弱みの一つや二つ握られているんじゃないかな?



「ちなみに、他に出てくる予定のギルドって教えてもらえる?」


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― 新着の感想 ―
[一言] 投稿感謝です^^ 娼館ギルドみたいな組織があると「歴史は夜作られる」だけでなく夜に作り変えられるケースも多そうです( ̄▽ ̄;)
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