表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/325

11

3/8投稿分、三話目です。

これにて第一章(短編【狂犬の初恋】部分)終了となります。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

 パン! パン!




 前ジーピン男爵夫人キャル様が手を叩き注目を集める。

 皆の視線が集まったのを見て発言される。



「お嬢さんたち、あなたたちの趣味にどうこう言うつもりは無い。

 だが、本来の目的。

『ニフェールがロッティ様のことを教えられていなかった件』について。

 こちらは片付いたと思っていいかい?」



 カールラ様とロッティは互いに顔を見合わせ――



「申し訳ありません。

 はしゃぎすぎましたわ、『お義母様』」


「申し訳ありません。

 それと、目的の方は謝罪を受け入れました。

 なのでこれで終わりということでお願いいたします、『お義母様』」



 ――謝罪までし始めた。



 うっそでしょ、ロッティがこんなに早く暴走から立ち直るなんて!


 ひどいときは一時間くらいしゃべりっぱなしだったのに!

 ロッティがまともになったのか、前男爵夫人が凄いのか。



 ……どう考えても後者でしょうね。

 本当に【女神】様ですわ。

 そのようなことを考えていると【女神】様から次の指令が。



「ラーミル様、このあとあなたに二つ話がある。

 すまんがニフェールの話を聞いてはもらえないだろうか?」




 二つの話?




 何の話か分からないけどニフェール様も真面目な表情をしている。

 先ほどと同等の驚かされる話だろうか?




 不安になりつつも覚悟を決め頷く。

 ニフェール様は緊張しているのか大きく息を吸って――



「まず、先の婚約解消の件。

 グリース嬢の暴走をうまく止められず誠に申し訳ありませんでした!」



 ――は?



「え?

 いや、あれって、完全にグリースのやらかしですよね?

 それをニフェール様が気にされなくても……」


「あ、いや。

 元の予定では食堂で一通り説明。

 そしてグリース嬢が謝罪の流れだったじゃないですか?」



 そうですね、それをバックレたあのバカ義娘は!



「ですが、打ち合わせの時点で既にやる気のなさが見え隠れしていた。

 それなのに対応を怠ったこと、それが謝罪の理由となります」



 え?

 いやいやいや、それは無理じゃない?



「あの子から聞いた話では、あの事態を回避するのは正直無理なのでは?

 私には思いつきませんでしたが?」


「ぱっと思いつくのだけでも……。

 事前に食堂の入口に人を配置して逃げられないようにするとか?

 ジル嬢のご友人に協力頂いてグリース嬢の両脇を固めて頂く?

 そして謝罪のタイミングで強制的に連れてきていただくとか?」



 ちょ、そこまでするんですか?

 あぁ、でもそこまでしないとあの義娘は無理かもしれませんね。



「被害を最小化させると言いつつも暴走の可能性を矮小化させ過ぎたこと。

 暴走する可能性があると判断したら補完しなければならなかった。

 それなのに手を打たなかったこと。

 これが今回の作戦失敗の理由と考えております。

 なので、僕としては謝罪するのは当然と考えております」



 はぁ……全く。



 赤の他人である私どもに対してそこまで気を使っていただけた。

 むしろ被害者なのに手助けをする。

 貴族でいられるようフォローまで考えていただいた。

 本当に、そこまで私どものために苦労されなくてもいいのに。



 正直、セリン家の愚かさが際立ってしまうのですよ。

 元夫や元義娘はそこまで気が回らなかったようですが。


 全てニフェール様におんぶにだっこ。

 それでよく恥ずかしげもなく伯爵の地位でいられると考えましたわね。

 ありえないでしょうに。


 周りで少しでも頭が回る人ならセリン家がおかしいこと気づいてますわよ!

「善人の家」なんてあだ名をつけられてますけどね!

 本当に善人なら自分たちでケリを付けなさいよ!



 まぁ、義娘を修道院に送ったこと、伯爵位を売爵し平民となったこと。

 そして私に離縁を申し出たことはありがたかったですけどね。


 義娘のために結婚を求められましたが……。

 没落までは付き合わなくていいと判断したこと。

 これは、夫と出会って最も好評価な行動でしたわ。



 あぁ、ニフェール様が不安げな表情をされてますね。

 少々考え事に集中し過ぎてしまったようです。


 まぁ、ニフェール様だけに謝罪をさせるのは流石に心苦しい。

 なので、こちらからも元夫や元義娘の謝罪をして相殺としましょうか。



「ニフェール様、元セリン伯爵夫人として謝罪を受け入れます」



 ニフェール様の表情が笑顔になりますが、まだ話は終わってませんよ?



「また、私からも謝罪させてください。

 まずは義娘グリースがニフェール様を婚約者だと勝手に勘違いしたこと。

 そして学園で婚約破棄を申し出た件」



 ホント、これがなければ今回の騒動は無かったんですよね。

 迷惑極まりない義娘でしたよ。



「次にグリースがニフェール様への謝罪を拒否した件」



 次のこれ、迷惑かけた相手に謝罪もできないとは!

 ちゃんと義母として指導してきたのに、流石にショックでしたわ。



「三つ目、グリースがアムル様に婚約半年以降手紙を送らなかったこと。

 また、贈り物を一切送らずにいたこと」



 これを聞いたときはショックで倒れそうでしたわ。

 こんなふざけたことをするとは!


 こちらの有責でさっさと婚約解消すればまだマシだったのですけど……。

 本当にあの子は!



「四つ目、グリースがニフェール様の策をぶち壊して学園の食堂から逃げた件」



 ニフェール様から作業の流れ聞いてたわよね?

 私からも説明したわよね?

 なんであのタイミングでバックレるのよあの子は!



「最後にニフェール様にあれだけご尽力いただいた。

 それにも関わらず売爵と平民になったことをご報告できなかった件」



 ロッティは驚いてますね。

 ジル様から聞いてませんか?

 他は……皆ご存じのようですね。



「これら全てセリン家の責。

 今更と仰られるかもしれませんがこの場にて謝罪させていただきます」



 久しぶりに淑女らしい行動を取りましたが、おかしくありませんかね?

 最近メイド仕事しかしてないので、貴族っぽい事忘れかけているもので。



 ん?

 ニフェール様を見ると顔を赤くして慌てているようです。


 このくらいの謝罪想定してなかった?

 流石にそれは無いですよね?



 困惑しているとニフェール様が視線を逸らして?

 指でご自分の首を指し示してきました。



 首?



 違うわね、喉元?



 いや、指がもっと下の方向を向いて……まさか!

 最初にお会いした時と同じ?



 いや、ジル様にお借りしたドレス、妙に胸元開いていると思ったけど!

 ジル様を睨みつけると「グッジョブ!」とばかりにサムズアップしてきました。



 ちょっと、人を娼婦か何かのように扱わないでくださいよ!



 私も顔を真っ赤にしていると、ジル様がニフェール様と私をとりなそうとする。

 胸の谷間ニフェール様に見させておいて言うセリフじゃないですよ!



「ニフェール様、セリン家側からの謝罪を受け入れますか?」


「はい、受け入れます」



「では提案ですが……。

 ニフェール様とセリン家、というかラーミルとの間でこの件は手打ちとしては?

 お二人とも互いの謝罪と許しがあっても引きずる性格のようですし?

 ここできっぱり終わらせた方がいいと思うのですけど?」



 ふむ、確かに私も引きずりそうな気がするので個人的には賛成です。

 ですが、谷間見させようとしたことは忘れないですからね!



「元セリン家として賛成いたします」


「ジーピン家、というかニフェール・ジーピンとして賛成いたします」



「よかった、ではこれで一つ目の話は終わりですね。

 ではニフェール様、二つ目の話をお願いします」



 ジル様が妙にニヨニヨしながら話を進めるよう指示される。


 ねぇジル様、何狙ってますの?

 正直、あなたのその笑い、物凄く不安なんですけど?



「ラーミル様……」



 おっと、ニフェール様が真面目な顔でこちらを見ておられますね。

 静聴、静聴。



 って、あれ?



 なぜ、席から立ちあがるので?

 なぜ、ぐるっと回ってこちらに来られているので?

 なぜ、跪いておられるので?



 困惑する私を置き去りにしてニフェール様は私に視線を向け言われました。



「会談でセリン家側で唯一まともに対応して頂いたこと。

 あの場所において真面目にセリン家の未来を考えて下さったこと。

 その場面を見た時からお慕いしておりました」



 え?

 お褒め頂くのはうれしいですが、その頃人妻ですよ?

 まさか人妻スキー?



「当然、セリン伯の奥方である以上この初恋は実らないものと諦めておりました」



 あ、初恋だったのですね。

 それは光栄です。


 それと諦めてはいたのですね。

 よかった、NTRが趣味ですなんて言われたらどうしようかと。



「ですが離婚されたとお聞きし、初恋の時の想いが再燃してしまいました」



 ……あ。

 やばっ、そういや離婚してましたね。

 え、ということは、この場ってまさか?



「ラーミル様、僕の妻になっていただきたいのです」



 ま、マジですか?

 いや、嬉しいですよ?


 でも、その、年上ですよ?

 それに離婚歴付きですよ?

 最近だとバツ1と言うんでしたっけ?


 お若いニフェール様に私のような女よりもっと若い……。

 いや、私もまだ若いですけど!



「一応申し上げますが、過去に離婚してようと思いは変わりませんからね」



 考え読まれてます?!



「それとお恥ずかしながら……。

 僕と同年代、婚約者なしの娘でまともな判断が出来そうな女性がいないのです。

 口が軽いとか、股が緩いとか、頭がお花畑とかまともな方が残っていなくて」



 あぁ、私たちの代にもおりましたわ。

 遊び過ぎて性病うつされた者とか。

 親の溺愛と子の散財のコンボで家傾けたとか。



「そういう意味でもまともな方。

 それどころかロッティ姉様の話では学年五位の学力をお持ちだそうで。

 また周りから好かれ、会話からは知性を感じられたと聞いております。

 そんな素晴らしい方を手放したいとは思いませんよ」



 ロッティ、あんたどこまで言ってるの?



 睨みつけるとめっちゃイイ笑顔で微笑んできやがった。

 ジル様もわくわくしながらガン見してるし!



 ああ、どうしよう!

 優良物件だけど!


 フェーリオ様の側近ってことは能力的にも問題なさそうだけど!

 むしろ、セリン伯より良さげだけど!



 そんな感じで頭の中が沸騰しそうなところで……。

 ニフェール様が立ち上がり自席に戻られた。




 ……あれ?




「ラーミル様、いきなり驚かせて申し訳ない」



 なんか、普通に謝罪されてしまいました。



「会談以外の接点が無い。

 それなのに急に告白されてノータイムで回答できるとは僕も思ってません」



 ま、まぁそうですけど。



「なので、今後求婚し続けます。

 僕で構わないと思われたら返答頂けたらありがたいです。

 また、断られても文句言いませんので」



 ん~、よろしいのですか?



「とても私に都合の良い提案に聞こえますが?」


「えぇ、それだけあなたを想っております」



 ちょ、ちょっと!

 顔真っ赤になっちゃうじゃないですか!


 一人でモジモジしていると、【女神】様がニフェール様と話し始めました。



「ニフェール、言いたいことは言ったね?」


「ええ、母上。

 後は僕が努力するべきことなので今はこれで十分です」



 ニフェール様の宣言を聞き頷く【女神】様はこちらを向き――



「一応話しとこうかね、ラーミル嬢。

 ジーピン家としてはニフェールが選んだ相手なら無条件で受け入れる。

 なので、後はあなたの気持ちだけだ。

 年齢、爵位、そんなものは関係ない。

 ニフェールが信じられる相手であればそれでいい。

 それを踏まえて検討しておくれ」



 ――ジーピン家としても受け入れ態勢が整ってること明言してくださいました。



 何というか元夫より漢らしいんですよね【女神】様。

 私が男性だったら多分堕ちてた。



 ん?

 と言うことは、ニフェール様も未来は【女神】様のような漢らしい感じに?

 もしかして別の意味でも有望?



◇◇◇◇



 一世一代の告白が終わりジーピン家の一部は領地に戻ることになった。

 父上、母上、アムル、この三人だ。


 兄二人は婚約者ともう少しイチャつきたいということで三日後に帰るとのこと。

 ……流石に孕ませちゃダメだよ?



 僕は当然学園に戻るつもりだった。

 だが、フェーリオとジル嬢に阻まれてしまっている。

 いや、ガニマタで両手広げて阻もうとされても。


 なぜだろう、「ディーフェンス!」という単語が頭に浮かんだ。

 いや、意味は分からないのだがね。



「ニフェール、あれは無いだろう?」



 いや、お前がグチグチ言うなや、フェーリオ。



「そうですわ!

 もっと激しく『もう君を離さない!』くらいぶちまけて欲しかったですわ!」



 なにジル嬢、フェーリオにそんなこと言われたの?



 え?

 実体験ではなかったからここで見てみたかった?

 僕にくだらないこと言う前にフェーリオにおねだりしなさい!



「元々ラーミル様に思いを伝えるのだって確定ではなかったはずだぞ?

 お前ら期待し過ぎだ」


「ブゥ……」



 むくれても回答は変わらんぞ、フェーリオ。



「それとジル嬢。

 どうせラーミル様に会いにチアゼム家にお邪魔することが増えるんだよ?

 なら、そこで見てりゃいいのでは?

 まぁあなたからすれば焦れ焦れでイラつくかもしれませんが」


「いえいえ、下手な恋愛小説よりも楽しませていただいてますわ♡

 胸元見て赤くなるニフェール様を見ていると笑顔がこぼれてしまいますの」



 やっぱりガッツリ見てたんかい!





 この後僕たちはまだまだデートしたり厄介事に巻き込まれたりします。

 ですが、今日はこれまで。

 ……いつ婚約できるのやら。


3/9からは第二章(短編【狂犬のデート】部分)を始めます。

全八話予定です。


なお、第二章からは一日一話更新とさせていただきます。

正直、第三章の作成時間を捻出するための時間稼ぎです。

遅筆な作者をお許しください。

何とかこれで第二章終了までに八割程は書ききりたいなと考えております。

ではまた第二章で。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 父親はどうなった?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ