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6 スプリンクラー

 成り行きで陸上部に入ってしまった。こう書いてしまえば何の変哲もないただの一般生徒にしか思えないのだが、この陸上部というのがあまりにも特殊すぎる。相対性理論よりも遥かに特殊かもしれない。世の中のまともな陸上部員たちの様子をビデオに流して一回勉強会でも開いたらどうだろうか。


「せんぱーい! おっひさー!」

「うわぁ……」


 おれが陸上部に入って何日か経過し、おれが一人で学園生活改善部で本を読んでいると例のきらりんがやって来た。そういえばこいつの本名がなんだったのかおれはいまだに把握し切れていないので聞いておくことにした。


「お前本名なんて言うんだ?」

「えへへっ、先輩私に興味あるんですかぁ? エッチですね!」

「はっ倒すぞ。この会話の流れだとまたこの間みたいに長々と話するハメになるから、さっさと答えろ」

「えぇ。しょうがないなぁ。私、青葉きららって言います」

「青葉ね。忘れた」

「ひどっ! 先輩なんなんですか一体! 聞いておいてその態度なんなんですか!? 先輩死んで下さい!」

「お前の方がひでーわ。おれ死ぬ義理ないからな」

「そんなぁ。私名前教え損じゃないですかぁ」


「おれだってこの間名前教えてやったじゃねぇか。不本意ながら入部届に名前書かれたとき」

「え? 先輩って陸上部なんですか? 入部届だしまたっけ?」

「お前忘れてんのか!? マジで言ってんのか!? おれ入部届出したじゃねぇか! 出したくなかったけど!」

「あぁそうなんですか。それじゃこれからよろしくお願いしますねー」

「……くっ、なんなんだこいつ!」

「先輩は今日はガクセカ部に何の用なんですかー?」

「アァおれか? 聞いて驚くなよ! 学園生活改善部に入ることにした!」

「うっっそぉ! あの先輩がですか!? まさか陸上部との兼部! わぁ、私と一緒ですね先輩! 今日から頑張りましょーね! でもどういう経緯で入部したいって思ったんですかぁ? そこが知りたいです!」


 青葉こときらりんは目を輝かせて、ついでに言うと机に身を乗り出して聞いてくる。行儀があまりにも悪すぎるので注意してやろうかとも思ったけれども、やめておく。こいつと今日会話しに来たわけじゃないからな。


「まぁ経緯っつうか。部活に入っておくのも悪くねーかなと思ったんだよ。陸上部だけ所属してるって言うのもなんだかやだしな」

「あー、もしかして先輩周りの目とか気にしちゃうタイプです?」

「そうだな。まぁそういうことにしておけよ」

「ひどっ! なんか先輩私の扱いだんだんひどくなってないですか? 私のこと嫌いなんですか? えぇ? 嫌いなんですよね?」

「怖いよ! お前目が輝いてんだよ! なんで急にそんな目になんの!? お前なに? 多重人格者なの!?」


「多重人格かはさておいてー、まぁ人格者ではありますかねー!」

「嘘つけ! 盛大な嘘だ! 小学生レベルの嘘じゃねぇか! お前に人格者という言葉を使える権利はねぇぞ!」

「先輩、一応私、学園生活部では先輩なんですけど、その辺わかってます?」

「わかってたまるか! 腐った上下関係持ち出すな! それとお前幽霊部員なんじゃねーの!? そこまで言えるだけ参加してねーだろ?」

「それもそうですねー」


 きらりんはあっさり認めて座席に着いた。やれやれだ。こいつとかかわっていると時間の浪費というものを激しく実感してしまう。もしかしたらこいつ自身が時間を操っているのかも知れない。もしかしたら時間操作系の念能力者かも知れない。ケド時間操作系の念能力者って存在していただろうか。いや記憶にない。もしいたとしたらおれはまだまだHUNTER×HUNTERの読み込みが足りていないのだろう。


「先輩お茶入れて下さい」

「ふつうはお前がやんじゃねーの!? おれがやんの!? 今ビックリした! おれすっと命令されたぞ!?」

「ごちゃごちゃうるさい人ですね。そんなんだから女の子にもてないんですよ。一重まぶた!」

「一重! 一重バカにした! 一重にだってイケメンいるのにバカにした! 謝れ! 全一重まぶた男子に謝れ!」

「先輩だからごちゃごちゃうるさいんですってば! もうちょっと静かにしてくれませんか? あとお茶」

「ふざけんな! 誰が淹れてやるか誰が! お前には水道水で充分だ!」

「マジで言ってんすか、先輩! 女子高生に水道水飲ませる男子高校生とか絶対もてませんよ!」


「くっ! たしかに! 納得してしまう自分が情けない! 女子高生に水道水飲ませる男子はさすがにちょっとなってなる!」

「ふふん! わかったら早くお茶入れて下さい。私ココアがいいです!」

「茶じゃねぇ! ココアは茶じゃねぇよ!」

「うるさいんですよ先輩! ココアは私にとってはお茶なんです!」

「絶対にちげーよ!」

「先輩って意外とめんどくさい人ッすね。いいから早く。はーやーくーーーー! 先輩おっそ~~~い!」

「出た! 出た出た! ウザカワ女子の常套句! おれがそんなんに屈すると思うなよ! たしかに女子のあざとさには弱いけど、おれはお前の本性を知ってるからな!」


 おれたちがお茶淹れるか淹れないかでもみ合っていると、ふと扉が開かれた。なんだ、とそちらの方を見ると、あら意外なことに、西園寺ミカエラくんが立っていた。


 忘れちゃった人も多いので再度容姿の説明をしておこう。銀髪ロングのストレート、今日は学校なので制服をかっちり着こなしていてキュートと言うよりチャーミングだ。まさしく天使。学園の天使様はここにいたのかとよくわかる瞬間だ。そしてなにを隠そうこのミカエラは生物学上のオスだったりする。


「あのー……」

「うっすー、どうしたんすか? ミカエラ先輩じゃないですか? 先輩に殴り込みにきたんですか?」

「そうじゃないよ~~~。いくらみかげが嫌いだからって、殴ったりはしないよ! せいぜい蹴り飛ばすくらいだよ!」

「そうっすよね~。いくらクズでも、殴る人はちゃんと選びますよね~。殴る価値がちゃんとある人とない人ってこの世の中にはいますもんね!」

「そーそー。ってあれ、みかげどうしたの? なんか顔が暗いよ?」


「おれのことはほっておいてくれないか」

「で、先輩何の用っすか? 人に寄りますけど、私はけっこう本題から聞き出したいタイプなんでよろです」

「えっとぉ、実は困ってることがあるんだ」

「なんすか? もしかしてバレンタインデーチョコレートもらいすぎたとかですか? なら私に下さい! 一個二百円で買い取ります!」

「それは違うよ! も、もらうことはもらうけど、でもどっちかというと男の人からの方が多いって言うか」

「だから欲しいんじゃないですか!」

「み、みかげぇ…………! なにこの人……!」


 ミカエラは本気で困惑したような表情を浮かべておれの方を向いた。まぁ気持ちはわかるけれども、おれにどうか助けを求めないで欲しかった。なぜならおれにだって、きらりんという人間の本性がよくわかっていないのだから。


「ミカエラ、お前おれに会いに来たんじゃねーのか?」

「違うよ。それは絶対にないよ!」

「圧倒的全否定じゃねーか! もうちょっとためらいをもてよ! おれだって人間の心が備わってるんだぞ! 雨には負けてもいい! 風にだって負けてもいい! ケド自分にだけは負けたくない!」

「なに言ってるんすか先輩……!」「みかげ言ってる意味がよくわかんない……」

「く……お前らに男の美学はわからねぇのかよ! あぁそうかよ! わかったよ! おれなんかもう用済みなんだな! この世から消えればいいんだな!」


「みかげが変な方向に暴走してる!」

「ミカエラ先輩落ち着いて下さい! この人いつものことじゃないですか。それより私たちだけで語り合いましょう! ズバリ男の子からどれくらいモテるんですか!?」

「みかげぇ……! なんかこの人怖いよぉ……!」

「おいきらりんそれくらいにしておけよ。ミカエラだって聞かれていいことと聞かれたら困ることくらいあるんだよ」


「へ~、」きらりんは意味深な笑みを浮かべて、「まぁそうですね、私が悪かったです」

 と答えた。なんだ今の間は。おれなにか変なこと言っただろうか。


「あのね! 僕二人にお伝えしたいことがあってきたんだ! その……いやごめんね、たいしたことじゃないんだけど、事務員さんにも伝えづらくて……! ここが学園生活改善部だってこと知ってるんだけど、僕が困っているというよりかは、学校のみんなが困っていることで相談に来たんだ」

「ほう。つまりミカエラは困っているみんなのためにわざわざ相談しに来てくれたってことだな! お前偉いな! 尊敬に値するぞ! ついでに結婚してくれ!」

「いやだよ! だから突飛すぎるんだよ! みかげはもっと性欲を抑えてよ!」

「やだね!」

「即答! 僕もうみかげのこと信じられなくなっちゃうじゃん……!」

「ミカエラ……! もしかしてお前おれのこと友達だと思ってくれてたってことか!?」

「もうどうでもいいよ。話逸らしてばっかりのみかげ嫌い! と、とにかく一大事なんだよ!」

「ほう、でどうしたんだ? もしかして番犬のチャッピーが逃げ出したとか!?」

「ち、違うよ。みかげって本当にめんどくさいよね。その、ビックリしないで聞いて欲しいんだけど……」


「なんすか?」「なんだ?」

「スプリンクラーが壊れて校庭が水浸しになって、男子も女子もユニフォームとか制服がびしょびしょになってパニックになってるんだ……!」

「……」

「……」


 想像以上のことが起こっていた。




 青春の代名詞と言えばズバリ廊下を駆ける行為と言えるだろう。『渡り廊下駆け抜け隊』とかそんな名前のアイドルグループもあったような気がする。詳しくないから、ファンの方々すみません。


 左にきらりん、真ん中におれ、右にミカエラという並びで廊下を駆け抜けていく。これぞ青春っていう感じはしなかった。なぜなら廊下の窓の外から悲鳴とも叫びともつかない声が聞こえてきたからだった。


「きゃああ~~~~~! み、見ないでぇええええ~~~~!」「ちょっとー! 藤崎くんのエッチ!」「きゃあっ、もう先生ったら、どこ触ってるんですかぁ! 透けてるからって欲望丸出しにしないで下さいよ、も~~~!」「スプリンクラーの中からなんか出てきた! ………………ふぇえっ! なに小人!? …………………………きゃぁあっ、入ってきちゃダメだってばぁ! …………………………ん、いや………………………………はぁん………………!」


 とんでもない事態だった。これはゆゆしき事態と言えるだろう。またの名を眼福と呼ぶ。


 廊下の角を曲がった辺りで人影が見えた。その瞬間きらりんが大声でその先生を呼び止めた。どうやら知り合いらしかった。


「うお~~~い! あすちゃ~~~~~ん!」


 ん、ずいぶんフランクな呼び名だなと思ったのもつかの間、あすちゃんと呼ばれた若い女教師がこちらを振り返った。長い黒髪ストレート。年齢は二十七歳といったところか。やっぱり女教師っていいよね! って思ってしまうほどには美人な先生だ。彼女はジャージ姿で、なんとも艶めかしい表情でこちらを見た。


「お! なんだ学園生活改善部じゃないか! 元気してたか! ってあれ!? 何やら私の知らない連中も紛れ込んでいるようだが、青葉ー、まさかお前の知り合いか?」

「なにを呑気なことを言ってるんですか! 一大事じゃないですか! あとこの人たちは、えっと、説明が面倒なんで学園生活改善部の新規メンバーの皆さんです!」


 おれは「え!?」と言いそうになってしまったが、もとより今日からそのつもりだったのでていねいに挨拶することにした。


「いやどーもこんにちは! 神崎みかげって言います。今日から学園生活改善部の部員になりました! よろしくお願いします!」

「えっと、僕は西園寺ミカエラと言います。正確に言うと部員じゃないけど、とりあえず今日は部員って言うことにしようかな」


 ミカエラは最初戸惑っていたようだったが、話を合わせるスキルというのを持ち合わせているらしかった。さすがはミカエラだ。大人だ。


 あすちゃん先生はにかっと笑って答えてくれた。大人の女性って素敵だね!


「おうよろしく頼むぞ! 学園生活改善部顧問の水卜あすかだ! これからも末永くよろしくな神崎! そしてミカエラくん!」


 なんかとっても感じのいい先生だ。おれはついつい頭を下げてしまう。そして何故だか知らないが耳まで熱くなってるのを感じる。もしかしたらおれは年上も好きなのかも知れないと思った瞬間だった。べ、べつに恥ずかしくないよな!


「先生! それで状況はどうなってるんですか? 生徒たちの避難はすんでるんですかぁ?」

「あぁそのことか! それならもう一安心だぞ! 業者に一応連絡しておいたからな!」

「そっかぁ、安心ですね! それならそうと私たちに早く伝えてくれればよかったのに!」

「そっか、それはすまなかったな! いやでも青葉が部室にいるとは思ってなかったって言うのもあるしなぁ」

「誰かしらはいますって。それで先生、どこの業者に連絡したんですか?」

「ん!? アァよくぞ聞いてくれたな! もちろんねずみ取り業者だぞ!」

「「「なんでだよ(なの)(ですか)!?」」」


 おれたちの声が一緒に重なり合った。あすちゃん先生は反対に胸を張って満足げだ。いやなんでそんなに満足げなんだよ。ねずみ取り!? 冷静に考えておかしいと思わなかったんですか!?


「先生なに考えてんですか!? ねずみ取りなんか呼んでも仕方ないことくらいわかんないんですか!?」

「む。青葉ー! いいか、私はこう見えても先生なんだからな! きちんとした言葉遣いを使いなさい!」

「あんたが無能だからだよ! 下に見られてること今そんなに怒ってんじゃねぇよ! あんた人間として問題あるんだよ!」


 おれは思わず声を荒らげてしまった。極めてストレートな物言いだった。もしこれをきらりんやミカエラ以外の第三者が聞いていたのなら、それは大バッシングを暗いそうなほどはっきりと言った。


「そ、そんなことない! 私を無能扱いするな!」

「じゃあなんでねずみ取りなんか呼んだんだよ! 頭おかしいのかあんた! ふつうは水道会社とかだろ!」

「な! なんだって! 神崎お前天才か!? 天才がここにいるぞ! やばい! これは現代の救世主かも知れないぞ! メシアだ! すぐに他の先生にも伝えてこないと!」

「だぁもう! 学園生活改善部! お前ら問題ありすぎだ! 生徒もそうだが、顧問も大概だな! このアダルト女優みたいな名前の顧問! ポンコツだったわ! ひろゆきが目の前にいたら『あんた無能ですね! あはは、とっても無能だわ』とか言われちゃうぞ!」

「んなっ! 私を無能扱いするなんて………………! うわーん、神崎がいじめるぅううううう~~~~~!」


「あ、みかげ女の人泣かした」「先輩最低ですね!」


「待って! これに至ってはおれ間違ったこと言ってないからね!? 問題ありなのこの人だから! ふつう呼ぶなら水道会社だよ! クラシアン呼べよ! 水のトラブルだぞ!」

「わ、私はだな神崎! 私はスプリンクラーから小人が出てきたから、とりあえずねずみ取りを呼んだんだ!」

「そうだった! なんか叫んでた奴いたわ! こびといたわ! 嘘だろ!? 今冷静に考えるとおかしくね!? 超常現象だよ! 借りぐらし! オティヌス! 先生なんかすんません! むしろ先生の方が現実に対処してましたね!」

「ふふ、だろ! わかればいいんだよわかれば! 君も大人になれば大人の気持ちがわかるようになるぞ!」


「ケド水道会社は呼べよ! ねずみ取り呼ぶのはわかるけど、水道会社も呼べよ!」

「なっ! それは神崎の意見か! 素晴らしいじゃないか! そうか! ねずみ取りも水道会社も呼べばよかったんだな!」

「うわなんだこいつめんどくせぇ! って言うか水道会社よく考えたら、べつの先生でも呼べたわ! 救急車とかと同じで、誰かしら呼んでる原理働いてるわこれ!」

「ねぇねぇみかげ、あれ見てよ……! 校庭がすごいことになってる!」

「本当だ……! なんか学校が危機に陥ってる状況って涼宮ハルヒ思い出しますね!」

「みかげ! お願いだから現実逃避しないで! みかげが一番現実ややこしくしてることに気づいてよ!」

「おれのせい!? どう考えても水卜先生のせいだよねぇ!?」

「コラ神崎! 私のことはあすちゃんと呼びたまえ。ちなみに私は若い男の子が大好物だぞ!」

「なんなんだ! もうなんなんだ! 男の子好き多すぎない!?」


「おっと! 私と青葉を一緒にするなよ! 私は鑑賞するタイプじゃなくて、私自身が直接食したい派だぞ!」

「なんだこいつ! 教師辞めちまえ! 高校生食ってんの!?」

「し、失敬だな君は! 私は若い男の子が好きだが、べ、べつに生徒に手を出すような真似はしないぞ! 女の子用の風俗は行くけどな!」

「ごめんなさい! なんか聞いちゃいけないこと聞いちゃいました! べつにもうビックリしねーわ! ここの世界の住人壊れてんだわ! 忘れてた! そして忘れてた自分がばかだった!」

「先生な。貧乳がコンプレックスなんだ。神崎いい方法ないだろうか」

「知るか! そして今聞くことなの!? ねぇ教師! あんた教師だよね!? いい加減自分の立場理解して!?」


「みかげあれ見て! 業者さんが来たよ!」

「うお! ほんとですね! 先輩やりましたよ! 業者さんが瞬く間にスプリンクラーの作動を止めてきます! すごいですね! 私、今まで生きてきた中で一番感動したかも知れません!」

「お前の感動やっす! スプリンクラーの作動止まっただけじゃねぇか! そして今のおれたちのやり取りなんだったの!?」

「先輩あれ! あれ見て下さい! 小人たちがねずみ取り業者に捕まえられていきます! 壮観ですよ!」

「ほんとだ! けっこういたわ小人さん! って言うかこの世界観なに!? 小人いる世界だったんだ! おれの世界こびといたんだ!」

「みかげ、あの人図鑑作ってるよ! 捕まえた小人捕まえて、図鑑に登録してるよ! いいなあれ僕も欲しい!」

「いらねぇーよ! 断じていらない! お前あれ家で飼う気なの!? だったら尚更辞めて! ゴキブリみたいに繁殖して雨樋伝ってうちに来られるのやだから!」

「ほらな神崎! 私の言ったとおりだったろ!」


「すごいなあんた! ここまで未来予測してたとか、ある意味尊敬だわ!」

「そ、そそそそそうか!? なんだ神崎! ほ、褒めるの上手だな……! お、お前、も、もしかして私のことが好きなのか…………?」

「はい! 今日のできごとで先生のこと大好きになりました!」

「………………な……………………んだと…………!」

「あすちゃん先生これからもよろしくお願いします!」


 こうして。


 スプリンクラー誤作動事件は無事に水道会社さんとねずみ取り業者さんの力によって解決されたのだった。まぁおれたちの出番はなかったけれども、これはこれでよかったことだろう。


 だってあすちゃん先生という素晴らしい先生に出会えたのだから!




 ちなみにあすちゃん先生は翌日以降おれと喋るとき、顔を真っ赤にするという悪癖を身につけた。先生もしかしてチョロいんですか………………?

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