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第二十話

 その後。


 仮説を証明するにはまず女神との接触する必要があるため、レイは最寄の神殿を目指していた。


 ところが神殿へ向かう道中に、魔王軍の幹部である『ヴィルフレア』という暗黒騎士と遭遇してしまう。


「――お前から唯ならぬ気配を感じる。厄介事になる前にここで死んでもらおうか」


 レイは否応なしに襲いかかってきたヴィルフレア相手に、かなりの苦戦を強いられた――しかし。


「――クソ……無念……だ……」


 下手をすれば差し違えていたところ、間一髪でヴィルフレアを打ち倒したレイは、戦利品として凄まじく頑丈な『漆黒の鎧』をここで手に入れることとなる――。


 レイが無事に神殿へ到着すると、中から純白のドレスを身に纏う天使のような女神が姿を現した。


「――初めまして、女神のリネットと申します」

「レイだ」


 自己紹介も早々に切り上げたレイが、本題の魔王討伐について彼女から話を聞いてみると。


「各国で私以外の女神達も転生者を召喚しているのですが、なかなか魔王討伐には至っておりません……」


 リネットも転生者をこの世界に解き放ち、その転生者は前世の名である『ヨシヒサ』を名乗って旅をしている。しかし、性格に難があって制御が利かないという苦言を嘆いていた。


「そんなのはとりあえず放っておいて構わん。それより、今から私が話すことを良く聞いてくれ」


「……あ、はい」


 仮説を伝えたレイはリネットに協力してもらい、彼女が探し当てた物質転移能力を保有する転生者である『カズオ』という男を神殿に呼んでもらった。短めの茶髪で何とも爽やかな青年である。


「――い、異世界物質転移!?」

「そうだ。これを実現して魔王を討伐するためには、君の力が必須となる」

「魔王討伐か……わ、わかった! 精一杯協力させてもらうよ! ――」


 そして『開門』と『転移』、二つの能力を融合させる魔法陣を用いた実験を試みてみると。


「ん〜、これ何だろ?」

「あまり見慣れない花ですね……」


 最初は小石や葉っぱなど“絶対に異世界から来た”とは到底判別し難い物ばかりが召喚されていた――。


 そんな時。


 神殿の別室で漆黒の鎧を分析していたレイに、リネットが声をかけてきた。


「そういえば、レイ様が着てらっしゃるその鎧は……もしかしてヴィルフレアのものではないですか?」


「なぜそれを知っている?」


「魔王軍の中でも、とてつもなく凶悪で有名な幹部でしたからね……まさか、貴方様が倒されておられたとは驚きです」


 そこへ、レイが「これを着ていると、人々から魔王軍の幹部と間違えられてしまう」という悩みを相談してみる。するとリネットは。


()()に戦闘時以外の場面では収納しておく……というのはいかがでしょうか? 一つだけしかございませんが、必ずお役に立てるはずです」


 と、レイはリネットから『魔法のブレスレット』を差し出され、敵に奪われないよう左手首へ巻きつけて貰った。


「収納にはブレスレットに蓄えられた魔力を消耗してしまいますが、私が頃合いを見て補充致しますわ」


「助かる。それと出来たらで構わんのだが、鎧に魔物を惹きつける『誘き寄せ』の魔法を付与することは可能か?」


「めっちゃ余裕で出来ます……一応、女神ですから――」


 その後も実験は続いて何度か失敗を重ねていくうちに、突如――カズオ曰く『炊飯器』と呼ばれる物体が出現した。


「うおーすげぇ、成功した!!」

「ホントにすごいです!!」


 リネットとカズオが手を取り合って飛び跳ねる横では、レイが「仮説は正しかったようだな」と静かに呟いていた。


 こうして、明らかに現在の科学技術では生産不可能な物体の召喚に成功し、三人は希望を見出したのである。


 その間にもレイは漆黒の鎧を解析し終え、宇宙から飛来した隕石に含まれる“黒絃石”と呼ばれる素材を使用して、ほぼ同等の強度を持つ『レプリカ』の作製に成功していた。


 すると、神妙な顔をしたカズオが首を傾げる。


「ん〜……でも、ぶっちゃけ炊飯器なんかいらなくね? この世界に電源とかないし」

「え、これ使えないんですか?」


 異世界物質転移の問題は、召喚されるものの“ランダム性”であった。


 何が出るかは召喚してからのお楽しみ。


 こんな“宝クジ”かとも言えるような不確定さでは、異世界から狙ったものを召喚するのは不可能に近い。

 カズオも感覚的に「見えない袋に手を突っ込んで引っ張ってる感じ」だと、何とも言えない微妙な表情をしていた。


「私もただこの世界と異世界を繋ぐだけですからね……」


 女神は異世界の魂に狙いを定めるのは得意だが、今回においては物質転移なのでそれはまた別の話である。


 そこへ顎に手を添えていたレイが、しばらく悩んだ末に口を開いた。


「ならば、異世界側からこちらに“転送”するってのはどうだ?」


「……なるほど、確かにそな方が確実だわ!」

「え、私達が異世界に行くということですか?」


「そうする他あるまい」


 カズオは“人体”も転移が可能なため、理屈で言えば異世界に飛ぶことも出来るということだ。


「マ、マジで行くよ?」

「はい……私は心の準備万端です」

「ほ、本当に行っちゃうよ!?」

「早くしろ」


 こうして三人は手を繋ぎ、異世界に向けて自分達を転移させた――。

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