表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/30

第十五話

 エビルオークの体長は人間と比べて五倍近く、棍棒を持つ腕は丸太のようにガッシリと太い。そして、やたら分厚い鎧も身に付けている。


 親玉の登場……遅すぎるだろ。


 これは死ぬ。


 間違いなく俺はここで死ぬ。


 エビルオークを見た途端――ゴンゾウは圧倒的な力の差を察して、この先に起こるであろう未来を絶望視した。あれだけ倒したオーク達ですら、最初に広場にいた数より増えている。


 だが――“皆を守りたい”という心だけは、まだ折れていない。


 こんな怪物を逃したら、それこそ街の人々は一瞬で蹂躙されてしまう。少しでも、皆が逃げる時間をここで稼がなければならない。

 

「……ぅぉぉおおおらぁぁあああ!!」


 右手を庇いすぎて“枝”と化した左腕のみでエビルオークへ剣を振る。


 しかし、棍棒で弾かれた剣が手元から飛んでいったかと思いきや――ゴンゾウの体が片手で掴まれ、脚が浮くほど持ち上げられてしまう。


 “ボキボキッ”


 肋骨が数本折れる音。


 それでも、ゴンゾウは激痛に耐えながらも叫ぶことはしなかった。


 自分の悲鳴が、民達の耳に入ってはいけない。


 “希望の象徴”である守護神が、悲鳴を上げるなど許されないのだ。


 エビルオークを相手に、何も出来なかった。


「……ゴフッ」


 吐血したゴンゾウは、折れた肋骨が肺に刺さっていることを察知する。


 意識が少しずつ薄れていく中でも、エビルオークを睨み続けていた――すると突然、ゴンゾウがエビルオークの()()()地面に落下した。


 何が起きた。


 完全に脱力した手から抜け出たゴンゾウがエビルオークを見遣ると、なぜかあの太い腕が綺麗に切断されている。


 そして、エビルオークの目の前には――見慣れない“白と黒の迷彩服”を着た男の後ろ姿が見える。その手には、ゴンゾウが手放した剣が握られていた。


 迷彩男がゆっくりと振り向く。


 吹く風によって緩やかに靡く金色の髪。


 鼻筋の通った端正な顔立ちに澄んだ碧眼。


「いい切れ味だ……さすがゴンゾウの剣だな」


 聞き覚えのある低い地声に、仰向けで横になっていたゴンゾウが辛うじて声を漏らす。


「……レ、レイ……なのか……?」


「遅くなってすまなかったな」


 迷彩男は――レイだった。


 間一髪のところで彼に救われたゴンゾウの元に、紅い長髪をした女性が突如現れた。


「大丈夫ですか!? ひどい怪我だわ……」


 絶世の美女とも言える彼女から、心配そうに声をかけられる。


「……あ、あんたは……?」


「私は“女神”のリネットと申します。今から回復魔法をかけますから、安静にしてて下さい……」


 リネットが緑に発光する両手をかざすと、ゴンゾウの体が芯から温まる感覚で癒やされていく。


 それを見ていたレイが、再びエビルオークへと視線を移した――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ