4.1人の少女の覚醒
時間は少し戻る。
「誰か助けてよ……」そう小さく私は呟いた。
だがそんなところに誰かが来るはずもなく...……
『ピロンッ』
突如としてそんな音が頭の中に響いた。
『ユニークアクティブスキル『燃上熱火』 を取得しました。』
アクティブスキルとは発動者が任意で発動可能なスキルを指す。
???突如としてそんな音が聞こえてきた。
彼女には今聞こえたことが理解できるはずもなかった。というか、したくても出来なかった。
(なぜ私が...)
周りには死にゆく者ばかりなのに自分だけスキルを獲得して生きている。そう思い込んでたからだ。
でもそれは勘違いだった。
彼女はスキルを獲得したことによって回復などしていなかった。
彼女の目の前にはにはステータス画面が表示されていた。
それがステータス画面だとわかったのは彼女の弟がゲーム好きで、よくゲームを弟としていたからという...。
回復はおろか、減少中だった。
彼女は死にかけていたことを思い出す。
スキルがゲット出来て自惚れていたのだろうか。
分からない。
ハッとして、現実世界に戻される。
誰かが声をかけてきたからだ。
「大丈夫ですか?」
そんな女の子の声が聞こえる。その声は優しくて耳にずっと聞き入れたくなるような透き通った声だった。
彼女の好きな声だった。
「だ、大丈夫じゃないですね、はい。」
嫌味ったらしく言ってしまった、やばい!助けて貰えなくなんじゃん。
「今回復魔法かけますから、待ってください」
「あ、ありがとうございます。」
年は自分が上だろうと思いながらもそう言った。命の恩人だからだ。彼女にとっては当たり前。
ステータスがずっと表示されたままだったが、その16歳くらいの女の子は気づいていない様子だった。
それには理由がある。だいして頭の中から響いてきている声。その時点で自分の頭の中で起こっていること。イコール自分にしか見えない。
自分の目からビームが出てステータスが見えているわけじゃない。
ないっったら無いっす。はい。
そんなことはどうでも良くて。
治療を受けたあと名前を聞いた。
「生瀬 咲良です。歳は16歳です」
やったァー!いぇーい。
16歳くらいか?っと思っていたから、当たってて自分の分析力を褒め喜んでいた。
あなたは?
「私は、白崎 千春です。歳は17」
どうだといった顔と口調で言った。
「あ、そうなんですね歳が近いなんて。20歳くらいかと思いましたわ。」
シバくぞ、このクソメガネ危ない危ない。
本当に口に出そうになったじゃないか。
??そんな顔を浮かべる咲良。
悪気はないようだ。どうやらどちらも癖者なのかもしれない。
それにしてもこのスキルはなんだろうか。
周りにはまだ戦っている魔法士達がいる。
相手はもちろん魔物だ。
本能的に理解した。
理解させられたのかもしれない。
私は戦わなければならないと。
だが許してくれるだろうか。
私の能力を説明しても戦いに参加させてくれるだろうか。
そもそも、スキルとか頭の中から聞こえるとか言っても信じて貰える気がまだその時はなかった。
さっきまでの会話はわずかの1分程度だった。
今、治療を終え立ち上がろうと、咲良はした。
すると、1匹のレッサーゴブリンが彼女を不意に襲おうとしていた。
危ない!千春はそう思った。だが口には出なかった。
その代わり呟いた。
『燃上熱火』
突如として目の前が高温の炎で包まれた。30メートル先にも届きそうな勢いだった。
「なっ....」彼女は後ろを振り返りその景色を目の当たりにした。
(何が起きたんだ。こんなことは...魔法?だったら今聞こえたあれは何?)
魔法ではないと、彼女は悟った。魔法は口に出す時、名称と効果に応じた時間(間)が少なからず必要だったからだ。
もちろん治療の時も間は存在していた。
【ヒーリング・サステナビリティー】と呟き3秒ほど。
ところが今その間が存在しなかった。
何故かは分からない。
だが、魔法において間を要しないことはない。目には見える人もいるらしいが、術式を構築して発動させる、が一連の流れだからだ。
私には当然術式なんて見えやしない。
だが今間がなかった。その言葉を呟いた瞬間発動していた。
もしかしたら高速で術式を構築して発動したのかもしれない。
だがそんなことできない。
世界最高峰と言われているファランス国魔法特別教育学校の生徒でも1、2秒は掛かる。(個人差はもちろんある。)
はずだった。
「大丈夫?」
今度は千春が声をかける番だった。
さっきまでとは逆に。咲良の後ろにはゴブリンらしき死体が黒焦げてあった。
「あ、うん、そんなことはどうでも良くて.....」
千春の顔が不機嫌そうになる。
「あ、ごめん、そんなつもりなはないの。」
「ただ、今術式構築時間が存在していなかった気がしたのだけど気の所為?」否気のせいじゃない。
「あ、あの実は...」千春はこれまでの経緯を全て話した。
「声が頭に響いて、、、スキルを入手したとか言われたから使った。要約するとこんな感じか。」咲良が疑問な感じを見せながらも冷静に言った。
「わかった。付いてきて。」
千春はこくりと頷きついて行った。
その先には魔物の群れがいた。固まっていたのだ。ボスがポータル
から出てくるのに守っているかのようだった。