表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/25

20. 『CONTINUE』とツーマンライブ!!ドッキリドキドキ熱愛報道!?

「ツーマンライブのオファーが来てる。あの『CONTINUE』からだ」

 

「えっ!?」

 

 この日、笹竹さんに呼び出されたわたしは、驚きのオファーを受けた。

 わたしが『CONTINUE』とツーマンライブだと……!?

 

 国民的バンドと呼ばれる『CONTINUE』を知らない人はいない。

 これが現実になれば、まさに夢の共演である。

 

 子供の頃からよく聴いていた『CONTINUE』の音楽。

 そんな偉大なバンドとライブができる!?

 

「何やら、『やけど』を聴いたボーカルのKAZUTOさんが、君と一緒に歌いたいと言っているみたいだ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「やはり、裏は表だったかな……?」

 

 もはや『やけど』が裏と呼ばれていた事実は、事務所内の人間しか知らないだろう。

 他が霞むほどの表じゃないか。

 

『CONTINUE』が、いろんなアーティストとツーマンライブをするようで、その中の候補にわたしの名前があがったらしい。これほど嬉しいことがあるだろうか。

 

 佐藤美空が『CONTINUE』とツーマン!!という話題は、たちまち世間を賑わせた。

 

 わたしは、そんな周囲の反応に、やっとシンガーソングライターになれたのかな?と思った。

 

『CONTINUE』は、4人からなるバンドである。

 

 ボーカルKAZUTO

 ギターARATA

 ベースMASAKI

 ドラムTAKUMA

 

 というメンバーである。

 わたしとは、一回り以上、いや、もっと離れているスーパースター達だ。

 

 実は、ARATAさんは、過去に不倫した経験がある。

 TAKUMAさんはというと、ひとり今も独身で、自由奔放に生きている。

 

 不倫報道に振り回されたわたしから見ると、そんなことも音楽の力で吹き飛ばしてしまうのが、真のアーティストなのかなと思えてくる。

 いや、わたしは未遂だ。そうだと思いたい……。

 

 

『CONTINUE』ファンの方々の前で歌うのは、当然初めての経験となった。

 自分なんぞ、アウェイ過ぎるだろうと、ステージに立つまでドキドキしていた。

 しかし、皆あたたかく迎えてくれて、声援を送ってくれた。

 わたしは、素直に嬉しかった。

 

『だたた、春よ』や、わたしの人生になくてはならない『青い涙』、『生きる』など代表曲を披露していく……。

 

 そして、『CONTINUE』のバンド演奏で、KAZUTOさんと歌う『やけど』に、客席の興奮は最高潮に達した!!

 

『やけど』を歌うKAZUTOさんの腰つきはセクシー過ぎて、正直、わたしは直視できなかった。

 歌う人が変われば、曲も姿を変える。もはや、これは自分の曲ではない気がした。

 

 ツーマンライブは無事成功した。

 とても幸せな時間だった。

 

 わたしは、あまり見ない方がいいかなと思いながらも、SNSで反響を覗いてみた。

 

『そらちゃんって、アーティストだったんだ!』

 

 そんな呟きを見つめ、ああ、これだ、わたしが目指してたのは……。

 その夜、わたしはひとり泣いた。

 

 

 ×  ×  ×

 

 

 約1年におよぶツアーと、ツーマンライブが終わり、わたしは久々にバラエティー番組へ出演した。

 

 出演というより、気付いた時には出演させられていたと言った方が正しいだろう。

 それは、なんと『ドッキリ番組』だったのだ。

 

 ツアーが終わり、音楽雑誌の取材と言われて受けたのが、どうやらドッキリだったらしい……。

 

 取材では、ライブツアーを語り、シンガーソングライターとしての今後を語り、音楽について熱弁していた記憶がある。

 ただ、取材の中でこんな質問があったのは確かだ。

 

「佐藤さんは、もしまた爆エン! のような番組をやろうと、オファーがあった場合、参加されますか?」

 

 それは、他とは毛色の異なる質問だった。

 

 どうやらこの質問は、現在のわたしに対する、お笑いへの愛を勝手に図るドッキリだったらしい。

 

「そうですね、また機会があれば、やってみたいですね。今のわたしがあるのも、今の曲が書けたのも、爆エン! のおかげだったりしますし……。いろんな経験がわたしを成長させてくれたと思います。それをまた、音楽に還元していけたらなって思うんです」

 

「この1年、音楽活動のみに制限されていたようですが、今でもお笑いを見ることはありますか?」

 

「ありますよ。仕事としては音楽のみでしたけど、ツアー中その合間に、若手芸人さんが出演されてるライブに足を運んで見に行ってたり、地方公演で、たまたま有明モンタージュの単独ライブツアーとちょうどかぶってるところがあって、前乗りして、こっそり見に行ったりとか……」

 

 スタジオで自分のドッキリVTRを見つめる。

 わたしは、まだ、有明モンタージュと言っていた……。

 

 MCの芸人さんが、ニヤニヤしながらわたしに言う。

 

「ライブとか、行ってんだね? お笑いからてっきり離れてるかと思ってドッキリかけたのに、冷たいね、忘れちゃった? って言おうとしたら、まさかのこっちが刺さるっていうね……。バラエティに戻ってくる気はあるの?」

 

「オファーがあるのなら、是非! コントでもなんでも」

 

「ドッキリでも?」

 

「ドッキリでも!?」

 

「またかけていい?」

 

「えぇ、ドッキリを!? えぇ、まぁ……はい。いつでも、是非!」

 

 わたしは笑いながら、そう答えた。

 

 正直、嬉しかった。

 一度出演を断ったら、二度とオファーが来ることはないかもしれない。そんな不安もありながら、この1年バラエティ番組を断ってきた。

 シンガーソングライターとしての活動に集中したいわたしもいて、葛藤はあった。

 でも、仮に二度と呼ばれなかったとしても、シンガーソングライターだと胸を張れるわたしになろうと覚悟を決め、ツアーという旅に出たのだ。

 

 このドッキリを仕掛けた側としては、思っていた映像にはならなかったようだが、これはこれで喜んでもらえたらしい。

 このドッキリをきっかけに、わたしは求められるなら、バラエティ番組にも戻ってこようと思うのだった。

 そう、わたしにNGはないのだから。

 

 

 

 ライブ漬けの日々が終わり、ひとまず日常が戻った頃、わたしは笹竹さんに呼び出された。

 

 また新しい仕事の話かと思えば、笹竹さんが眉をしかめている。

 なんだか、嫌な予感がする……。

 

 笹竹さんは、無言で、わたしの前に1枚の記事をスッと置いた。

 

 そこには、『佐藤美空にやけど? 車中で育む年の差愛!!』と見出しがあり、運転席でニコニコしている『CONTINUE』のドラマーTAKUMAさんの姿と、助手席に座るわたしの笑顔があった。

 

「!!」

 

「この記事が出ることになった」

 

「なっ……!」

 

 決して油断していたわけではない。

 しかしそれは、“不倫ランド”以来の熱愛記事だった……。

 

 

「で、これは? 事実?」

 

「ま、まさか! そんなわけありません!」

 

『CONTINUE』のTAKUMAさんとは20歳近く離れている。

 そして、手の届かないような大スターだ。何かあるはずがない!!

 

 TAKUMAさんは独身だ。

 救いがあるとするならば、この熱愛報道が出たとしても、以前のような問題はないということ。

 

 しかし、誰もが知るバンドのドラマーだけに、この記事が出れば、双方の事務所は対応に追われ、ワイドショーを賑わすことは間違いなかった。

 

 ツーマン終わりにこの報道は、あまりにも尻軽すぎる。

 

 実際のところ、車内で育む年の差愛はどこにも存在していない。

 

 しかし、この記事が撮られた日、わたしはTAKUMAさんと二人きりで映画に行っていた。

 

 それは事実だった。

 

「熱愛というのは事実ではないんだな?」

 

「はい」

 

 笹竹さんは、大きくため息をついた。

 また怒っているに違いない。

 

「出すなら本当の熱愛スクープにしてくれよ……」

 

 笹竹さんは、ぼそっと吐き捨てた。

 

 えっ!? なんて!?

 本当の熱愛だったら、よかったの!?

 

 その意外な言葉に、わたしは何も返せなかった。

 

「で? なんでTAKUMAさんとこんなことに?」

 

「それは……。TAKUMAさんから、ドラムを……習ってたんです」

 

「ん!?」

 

「ドラムを教えて頂きまして、その代わり映画に付き合ってほしいと」

 

「佐藤は、ドラムを叩きたいのか?」

 

「はい……」

 

「!!」

ARATAのラジオで真相を暴露!?

TAKUMAとの熱愛報道の真相とは?

佐藤美空の恋愛観とは!!


来週に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ