19.『やけど』!シンガーソングライターに戻ります!47都道府県『ロザリア』ツアー!
爆エン! が終わり、わたしはもとの場所へと戻ってきた。
そう、シンガーソングライターという本来の姿である。
別に寂しくもないし、落ち込んでるわけでもない。
わたしは、至って前向きだ。
爆エン! 最終回の収録後、わたしは泣いた。
自分でも気付かないくらい、この番組への想いは強かったらしい。
ワンクールだけならと受けた仕事だったはずなのに。
ただ、有明モンタージュが好きで、不純な動機で受けた仕事だったはずなのに。
わたしは、これからの決意を胸に、これまで歌ってこなかった楽曲を世に送り出すようになった。
事務所『センチュリー』にも自身の考えを伝え、笹竹さんも納得の上である。
さまざまなことを経験した今なら、書ける曲にも変化があるはずだ。
わたしを“アーティスト”として大きく強く変えたのは、新曲『やけど』である。
この楽曲は、これまでにない過激なもので、大人な歌詞に、色気全開スタイル。
曲調はロックでクールなものだった。
わたしの中で、何かが爆発した瞬間でもあった。
× × ×
誰もが夜の顔を 隠し平然と過ごしている
なんかなんだか 嫌な気分?
だけど なんか快楽感じちゃってます
今日もあなたは当たり前に 朝帰りで帰宅する
なんかなんにも ないみたい?
なんて そんなの嘘に決まっています
愛情っていうか 動揺
ねえ もう どうにかしてよぉ
傷口に火を灯し
キリキリと傷みつけ
それも悶えるように 苦しみに身を任せ
傷口に火を灯し
ヒリヒリと縛りつけ
それももがれるように
ただ傷つくばかりで耐え抜く日々
墓場まで持ってく罪が多すぎるんです
誰もが苦しみに 板挟みで過ごしている
なんかなんだか どんな気分?
だけど なんか罪悪感だってまぁ
今日もあなたは当たり前に 清々しい顔をする
なんかなんにも ないみたい?
だけど キスするだけの関係って何?
愛情っていうか 同情
ねえ もう どうにかしてよぉ
ケロイドに火を灯し
ぐちゃぐちゃに泣き散らし
それにも耐えるように 淡くも期待をして
ケロイドに火を灯し
ギトギトに撒き散らし
震える胸の鼓動
ただ汚い裸体を晒すだけです
墓場まで持ってく罪が多すぎるんです
ねえ? どうしたら笑顔になれるの?
ねえ? どうしたら幸せになれるの?
心から 想うのに
なんか ちょっと違うかな
それでももう 進むから
壊さないでよ
傷口に火を灯し
キリキリと傷みつけ
それも悶えるように 苦しみに身を任せ
ケロイドに火を灯し
ぐちゃぐちゃに撒き散らし
震える胸の鼓動
それでも心は 恋をしてた
墓場まで持ってく罪が多すぎるんです
× × ×
『やけど』は、ファンの間では“不倫歌”とも呼ばれ、衝撃を与えた。
そして、佐藤美空はアーティストだと、世間は再認識した。
『やけど』は配信でのリリースで、同時にリリースされたのが『恋のジュース』だった。
こちらは、飲み物のジュースとバレーボールの“ジュース”をかけた、キュートな楽曲で、なかなか決着のつかない恋模様を歌ったものだった。
そして、この楽曲でわたしは水着姿を解禁!
カラフルな水着で、MVは海で撮影された。
一方『やけど』は、全編モノクロのMVで構成されており、白と黒の液体が混じるようなシーンが印象的だった。
事務所側は、『恋のジュース』をメインとしている節があり、こちらを表と呼び、『やけど』は裏と呼ばれていた。
しかし、『やけど』に対する反響はあまりにも大きく、予想以上だったため、やがて「裏こそが本当の表だ」と、笹竹さんは言うようになった。
水着のMVよりも刺激的だった裏の『やけど』は、『だたた、春よ』や『青い涙』の発売時のような注目を浴び、わたしは再びシンガーソングライターとして息を吹き返した。
新曲をいくつも書き下ろし、『乱雑』『ずっと』を含むアルバム『ロザリア』を発売。
ジャケットは真っ黒一色で、そこに小さく『ロザリア』と金の文字が入っている。
そして、春から1年かけ、47都道府県をめぐる『ロザリア』ツアーがスタートした!
× × ×
乱れる恋の歌、『乱雑』!
「晴れた惚れたの恋じゃなく 愛した証拠がここに欲しい この混沌とした 揺れる想いを乱れ狂って叫ぶ〜」
キュートでカラフルな衣装で登場、『恋のジュース』!
「キミとジュース(イェーイ) 恋のジュース(ワー) 痛みも悲しみも 君と一緒なら感じてみたいの キミとジュース(イェーイ) 恋のジュース(ワー) 想いを届けよう あなたと一緒に 恋のジュース飲みたいの」
切ないピュアなラブソング、『ずっと』!
「見つめるだけで それでよかったんだと 離れることで これでよかったんだと 思うの 愛を思い知る度に 時には笑って君に ありがとう さようなら 今日のわたしを愛してくれますか ねぇ、そう想った? ずっと 恋をする度に…ずっと…」
デビュー曲『だたた、春よ』や『青い涙』、『生きる』も熱唱し、初期の頃から応援してくださっているファンの愛と熱を感じた。
そして、『やけど』は、ライブを盛り上げる楽曲となり、今後のライブでもメインとなる曲の一つだと、わたしは歌いながら確信していた。
『ロザリア』ツアーファイナルは、東京で行われた。
このライブの最後は、アルバムにも入っていない、ライブで初公開となった最新曲『桜色のルージュ』で締めくくられることとなった。
× × ×
夕べは寝たのに 体がだるくて
傷ついた衝動に かられてしまうの
大胆なモーションに 想いは抱けど
震えるほどに 恋をしてしまうわ
優しくしないで 無理に抱いて
心もないわ 恋じゃなくたって
誰よりも 何よりも
傷つかなければ分かんないから
桜色のルージュ 傷つきたくはない
あなたの心は 恋の季節なの?
桜色のルージュ 傷ついてもなお
あなたへの想いがあふれる
ちょっと待ってよ!
× × ×
『桜色のルージュ』は、『やけど』の追曲、アンサーソングなどと騒がれた。
女優、コント、バラエティ、MC……
恋に、不倫報道に、ファーストキス……
いろんな経験をし、シンガーソングライター佐藤美空は、今までにないものを生み出した。
ツアーを行ったこの年、わたしはテレビ出演は音楽番組だけと制限し、完全にシンガーソングライターとしての1年を送っていた。
春から始まったツアーが終わり、すっかりまた冬である。
ふと、わたしは知ることになる。
一部の間で、わたしは“テレビから消えた”と言われていたことを。
ツアーに参戦してない者から見れば、爆エン! 終了と共に、確かにわたしをテレビで見る機会はめっきり減ったことだろう。
問題を起こしたのでは?
また不倫している。
今回は中絶しているらしい。
そこには、心ない、ありもしない噂だけが広がっていた。
あることないことというより、ないことないことが重ねられていく……。
でも、こんなことを言われてしまうのは、きっと自分自身の過去にある。
わたしは全部を飲み込んだ。
テレビに映っていなければ、人は勝手に消えたという。
あなたが見ている世界からわたしが消えているだけで、わたしの人生は今日も変わらず続いている。
もともと歩みたかった道を進んでいるのだから、わたしに後悔はない。
むしろ、これまでの経験がわたしに新しい歌詞とメロディーを与えてくれる。
こうして考えると、ドラマやコントをわたしに勧めてくれた笹竹さんは、やはり偉大だった。
気付けば、わたしはこれまで関わりを持っていた爆エン! メンバーとも疎遠になり、その距離はどんどんと離れていっていた。
離れていけば、きっと忘れられる。
恋のピリオドは、きっとつけられたのだと、わたしは自身を納得させた。
国民的バンド『CONTINUE』とツーマンライブ!?
そして、それは真実の熱愛報道ですか??
来週に続く