第9話:懺悔
思わぬ形でニコルの童貞を食べてしまったアリス=アンジェラに対して、ニコルはペコリと礼儀正しくお辞儀をして、アリス=アンジェラが寝泊まりしている部屋から退出していく。ニコルは粗末なおちんこさんでも女性を満足させられることに自信を持つことになる。
そして、夜道をひとりで歩き、家族が待つ家へと帰る。
「おう。お疲れさん。アリス様は満足してくれたか?」
「はい! パパ、僕は今日ほど、自分が男だってことを強く認識したことはありませんでしたぁ!」
「はははっ。でも、男の娘の恰好はやめるじゃないぞ? お前の可愛い男の娘の姿を求めて、お嬢様方がうちの良いお客様になってくれるんだからなっ!」
ニコルの父親は自信に満ち溢れたニコルの頭を右手でワシャワシャと撫でまわす。ニコルの父親にとって、ニコルもまた『男の娘』という商品なのだ。いくら、男としての自覚に芽生えようが、まだまだニコルで稼ごうと思っていた。そんな父親の心情を知っているニコルはニッコリと微笑む。
「パパ。これからはボーイッシュ男の娘として活動させてください。さすがにスカートは卒業させてもらうのですぅ」
「わかったわかった。お前の好きな路線で、自分を売り出してくれりゃあ良い。お前には将来、逆玉の輿してもらうからなっ。うちはただの肉料理屋で終わる気はさらさらねえっ!」
この子にして、この親ありとはまさにこのことであった。どっちもどっちでちゃっかり者である。ニコルの父親がニコルを最大限に利用するとなれば、ニコルはニコルで、男の娘として、売り所をさらに増やそうと画策するのであった。ニコルが自分が男の娘であることに自信を持てたのは、やはりアリス=アンジェラが彼の童貞を鼻の穴で食べてしまったことであろう。
結局のところ、男に自信と誇りを与える役目を担うのは女性なのである。ニコルは大層、運が良い男の娘であったと言えよう。これからの人生、お尻の穴を殿方に捧げることになるかもしれないし、もしかすると、鋼鉄くらいに硬いおちんこさんを気に入ってくれるお嬢様がひょっこり彼の前に現れるかもしれない。しかし、どちらに転ぼうとも、ニコルは男の娘として、たくましく生きようと思うのであった。その決心をさせてくれたアリス様には、感謝しかないニコルであった……。
「ん? こんな夜更けに歯磨きか?」
「ちょっと計算外なことが起きたので、洗顔しておこうと思いマシテ……」
ベリアルは小便がしたくなり、厠に行こうとしたのだが、その道中にある洗面所に光が灯っていた。こんな時間に誰が洗面所を使っているんだ? と思い、覗き込んでみたところ、何故かアリス嬢ちゃんが居たのである。ベリアルは何してんだ? と思いつつも、夜更けの寒い空気で身体がブルブルッ! と震えあがることになる。
「じゃあ、我輩は小便して、寝るから、アリス嬢ちゃんもさっさと寝るんだぞ? 夜更かしはお肌に悪いからなっ」
「わかりましたのデス。ベリアル、おやすみなさいなのデス」
ベリアルはアリス=アンジェラにそう告げると、厠へと急ぐ。あんなところで足止めされると思ってはおらず、ベリアルの膀胱は危険を示すサインをベリアルの脳にけたたましく送っていた。ベリアルは男性用便器の前で仁王立ちになり、チャックの隙間からボロンッと飛び出させたおちんこさんの先端からジョロロロロ……と盛大に黄金色の液体を噴射させるのであった。
「ふぅぅぅ。出すのは白いおしっこでも、黄色いおしっこでも気持ち良さはかわらねえなぁっ!」
ベリアルほどのおちんこさんのサイズとなれば、わざわざ、自分の手でおちんこさんを支えずとも、おしっこの水圧でちょうど良い角度におちんこさんが向いてくれる。ベリアルは腰に手を当てたまま、身体をゆっさゆっさと揺らし、おしっこを切ってみせる。
(アンドレイじゃ、こんな風に出来ねえだろうな。あいつはふにゃちんくさいしなっ)
ベリアルはとことん失礼なことを考えていた。自分のほうがアンドレイ=ラプソティの3倍以上、生きているというのに、アンドレイ=ラプソティをおっさん扱いしているのだ。それもそうだろう。誰がどう見ても、ベリアルのほうが若く見えるし、行動も若者らしい傍若無人ぶりを発揮している。
ベリアルはプフッ! プフフッ! と不気味な笑い声をあげながら、ご自慢のおちんこさんをパンツの中へとしまうのであった。そして、またもや洗面所の前を通り、いつまでやってんだ? とアリス=アンジェラに声をかける。
「うっさいのデス! とっとと寝るのデス!」
「はいはい。美容に気を使う年頃なんだろうけど、何度も言うが、夜更かしのほうがよっぽど肌に悪いからな? 若いからって油断するんじゃねえぞ?」
ベリアルは言いたいことは言ったと思い、邪険にしてくるアリス=アンジェラの前から消えることにする。アリス=アンジェラは未だ、鼻腔の奥に残っている気持ち悪さを洗い流すために戦闘中なのである。ベリアルはアリス=アンジェラとニコルの間に起こったことを全く知らない。そして、アリス=アンジェラとしても、ベリアルに何があったのかを告げる気もさらさらなかった。
アリス=アンジェラはベリアルが洗面所の出入り口からいなくなったことを確認すると、念入りに洗顔し直す。そして、ようやくさっぱりした顔をパンパンと軽く両手で叩くと、乾いたタオルで顔を拭き、ようやく洗面所から自室へと戻るのであった。
「創造主:Y.O.N.N様……。アリスを叱ってください。マルコの時はその場の流れでそうなってしまいましたが、ニコルは自分から買ったのデス……。アリスはどんどん悪い子になっていきマス……」
アリス=アンジェラはベッドの上で横になりながら、両手を握り合わせていた。自分の犯した罪に身体を振るわせ、涙をハラハラと美しい瞳から流していた。いくら金でニコルを買ったとは言え、それは許されざる行為だと、アリス=アンジェラは感じていたのだ。
しかしながら、創造主:Y.O.N.Nは慈愛に溢れた御方だ。罪悪感で涙を流すアリス=アンジェラの頬をその御手で優しく撫でる。アリス=アンジェラは流す涙の量をますます増やす。
「ありがとうございマス、創造主:Y.O.N.N様。アリスは自分の行った行為を誇りに持って良いのデスネ?」
アリス=アンジェラは眼を閉じていたが、脳裏にありありと後光が差している創造主:Y.O.N.N様の御姿が浮かび上がる。創造主:Y.O.N.N様は微笑みはアリス=アンジェラにとっての糧であった。アリス=アンジェラの右手は自然と右乳首に、左手はお尻の穴に向かっていく。そして、創造主;Y.O.N.N様に見せつけるようにアリス=アンジェラは自分の身体の奥底から沸き上がってきた熱を覚ますための自慰行為を始めるのであった。
「創造主;Y.O.N.N様、どうか、やらしいアリスを見てくだシャイ……。アリスはニコルのを咥えながら、自分でも興奮していたのデシュゥゥゥ!」