第8話:お粗末
「えっと……。今、どんな状況なのデスカ!?」
「アリス様が酔いつぶれてしまったので、お部屋まで運ばせていただきましたぁ。服に肉汁の染みが付いていたので、脱がしている真っ最中ですぅ」
アリス=アンジェラはとある一室のベッドの上で仰向け状態で寝かされていた。しかし、アリス=アンジェラがぐわんぐわんと揺れる頭の中で思考を無理やり働かせるきっかけを作ったのは他でもない、あのニコルであった。ニコルはにっこりと微笑み、何も心配することは無いと言ってくる。
「透き通るようにキレイな肌をしているのですぅ。僕は半狼半人なので、どうしても毛深くなってしまうのですぅ」
ニコルは肉汁が染みついてしまったアリス=アンジェラの服の前ボタンを全部外していた。その服の隙間からはアリス=アンジェラの可愛らしいおへそとお腹が見え隠れしていた。しかし、その透き通る肌を見ているだけで、ニコルはアリス=アンジェラに吸い込まれたい気持ちになってしまっていた。
ニコルは男の子とは思えないほどの柔らかい手であった。アリス=アンジェラはその手でお腹をさすられただけで、ビクンッ! と強くベッドの上で跳ね上がってしまうことになる。
「数々のお嬢様方のお肌に触れされてもらいましたけど、アリス様の肌はまさに絹も裸足で逃げ出すほどなのですぅ」
ニコルはうっとりとした恍惚の表情となっていた。彼の頬は紅く染まっており、ハァハァ……と途切れ途切れの吐息をその口から出していた。そして、まるでガラスに温かい空気を吹きかけるように、ハァァァ……とその熱い吐息をアリス=アンジェラのお腹に吐きかける。アリス=アンジェラはそれだけで、ビックンビックンと身体全体を跳ね上げてしまう。
「フフッ……。パパから話を聞いた時には、黙っていましたけど、アリス様に御奉仕せよとは、他のお嬢様にしてきたことをすれば良いってのは気づいていましたぁ」
「そ、そ、それは……、そうなん……ですけど、ちょっと察しが良すぎまセンカ!?」
アリス=アンジェラは以前、これと似たようなことをしている。それゆえに屋台の店主が金貨1枚渡された時に困り顔になってしまったとしても、その返せない分を店主の息子にさせようとしたのは事実である。だが、アリス=アンジェラにとっての計算外は、ニコルがこの手の依頼に慣れっこであったことなのだ。
「世の中のお嬢様という種族は、ぼくのような男の娘を見ると、いじめたくてしょうがないようなのですぅ。でも、僕にもついてるモノはついているんですぅ」
ニコルはアリス=アンジェラのへそ周りをさわさわと円を描くように撫でまわす。その触り方がその筋の熟練者であることをアリス=アンジェラに痛感させることになる。だからこそ、アリス=アンジェラはすぐさま、ニコルの手をどかそうとした。しかし、ニコルの手首を右手で掴んでみても、ぴくりとも動かないのであった。
「残念でしたぁ。僕は男の娘である上に男の子でもあるんですぅ。力で押しのけようとしても、無駄無駄無駄無駄無駄無駄なのですぅ」
アリス=アンジェラはギョッとした顔つきになってしまう。ニコルの手首を掴んだというのに、次の瞬間にはその右手の手首を掴み返されてしまうことになったのだ。しかし、ニコルがそこで手を止めるはずもなく、アリス=アンジェラの右手を無理やり、自分の股間へと当てるのであった。
「ほらぁ。ついてるでしょぉ? 僕は男の娘ですものぉ」
「えっ!? これはちょっと小さすぎるんじゃ……」
アリス=アンジェラは二重の意味でびっくりしていた。ズボン越しと言えども、殿方にむりやりおちんこさんを手にあてがわれるのは初めての経験であった。しかし、ズボン越しからわかることは、ニコルのおちんこさんが、あの卵料理屋の息子ことマルコ=ポーニャのおちんこさんよりも小さかったことである。
「ぐぁぁぁ!? 僕の気にしていることを言い当てましたね!? そうです、男の娘ゆえに小さいんですぅぅぅ!!」
ニコルが頭を両手で抱え込むような仕草をし始めたので、アリス=アンジェラのほうがよっぽど挙動不審になってしまう。ニコルの取った行動も大概であるが、彼は宿屋の外にまで筒抜けになってしまうほどの大声をあげたのだ。アリス=アンジェラは今、この宿屋の一室で起きようとしていることを、外のニンゲンたちに知られたくはなかった。それはニコルの名誉を護ると言う意味も含めてだ。
それゆえにアリス=アンジェラは急いで、両手を握り込み、創造主:Y.O.N.N様に対しての祈りの念を込める。そうすることで、アリス=アンジェラの両手からピンク色の蝶が数匹、現出することになる。数秒後にはこの一室に静寂の冥宮が施され、苦悶に震えるニコルの絶叫は外に漏れだすことは無くなってしまう。
しかし、もしかするとだが、ニコルの絶叫が外に漏れだしてくれていた方がマシだったかもしれない。そうすれば、アリス=アンジェラがニコルに乱暴なことをされている真っ最中に、誰かしらがアリス=アンジェラを保護していたかもしれないからだ。
「ニコル、落ち着いてほしいのデス。男はそ、その……。おちんこさんで決まるわけではありまセン」
「ハハッ! じゃあ、これを見ても同じことが言えますかぁ!? ほら、しっかり見てくださいよぉ!」
ニコルの顔からは給仕役を務めていた時の表情はすっかりどこかに消え失せていた。それほどまでに、自分のおちんこさんのサイズに関して、ネガティブな感情を持っていたからだ。
「お嬢様たちはいっつも、いっつも、いっつも僕を可愛い男の娘だと揶揄するんですぅ。ほら、情けない僕のおちんこさんをその眼に焼き付けてくださいよぉ!」
ニコルは気が狂っているかのようでもあった。スカートを両手でずり降ろし、パンツを破いてしまうかのような勢いで剥ぎ取る。そして、露わになってしまった股間で、その存在を主張してやまない勃起したおちんこさんをまざまざとアリス=アンジェラに見せつける。
だが、そこで止まるはずも無いのが今の状態のニコルであった。ニコルのおちんこさんは若さゆえに彼の下腹にくっついていた。半剥けのおちんこさんの裏筋には血管が浮き立っている。いくら粗末と言えども、アリス=アンジェラにすら、それがおちんこさんであることは認識できた。
しかし、認識できたからと言って、それが本当におちんこさんかどうかをわからせてやろうと動いたのがニコルである。ニコルはアリス=アンジェラの上半身を無理やり両手で起こし、あろうことか、アリス=アンジェラの眉目秀麗な顔に、成長しきってないおちんこさんの筋を押し当てたのである。
「イカのような栗の華のような匂いがするのデスゥ。頭がバカになっちゃいそうなのデスゥ……」
アリス=アンジェラは一度だけであるが、この匂いを思う存分堪能したことがある。マルコ=ポーニャの初めての精通相手となったのが他でもないアリス=アンジェラであった。しかし、とっくの昔に精通を終えているニコルのそれはアリス=アンジェラの頭の中を本気でおかしくさせるには物足りないモノであった……。




