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第6話:紅き竜の槍

 救世主(メシア)がシャイニング・ビンタで大聖堂の外へと追い出された後、半狂乱になりながら、アリス=アンジェラを怒鳴りつける人物が居た。その者の名はサラーヌ=ワテリオン。聖職者風の衣服に身を包み込んでいるが、血がこびりついた装飾品をその身に纏っていた。アリス=アンジェラは不快感たっぷりな表情となりながら、その者の横っ面を平手打ちしたのである。


 サラーヌ=ワテリオンはブベェェェェェェ! と豚ニンゲン(オーク)のような鳴き声をあげながら、救世主(メシア)が開けた穴をさらに拡大させながら、大聖堂の外へと追い出される。アリス=アンジェラは心の底から本当に良いことをしたとばかりの表情となる。


 アンドレイ=ラプソティは首級(くび)を左右に振りながら、アリス=アンジェラの下へと近づき、追い越してしまう。アリス=アンジェラは誉め言葉のひとつでも言われると思っていたのに、期待した言葉を一切もらえず、思わずアンドレイ=ラプソティを糾弾してしまいたくなってしまう。


 だが、そんな不満たらたらな表情となっているアリス=アンジェラを振り向きもせずに左手でアリス=アンジェラを静止させるのであった、アンドレイ=ラプソティは。


「アリス殿は救世主(メシア)という存在を舐めています。私の声に応えなさい、紅き竜の槍レッド・ドラゴン・ランス!!」


 アンドレイ=ラプソティが右手を身体の前に持っていき、空中で何かを掴むような所作を取る。その右手を中心として、紅い竜鱗に覆われた槍が現出する。アリス=アンジェラは思わず、オォ! と感嘆の声をあげてしまう。


 『天界の十三司徒』にはそれぞれ、鍛冶神が鍛え上げた神話クラスの武具が与えられる。アンドレイ=ラプソティは先代から譲り受けた紅き竜の槍レッド・ドラゴン・ランスを手にとり、身構えるのであった。そして、その槍を救世主(メシア)が飛んで行った方向へと突き出すや否や、稲光のように速いスピードで猛火がその槍の先端から飛び出ることになる。


「チッ! さすがは救世主(メシア)と、その守護者である預言者ですねっ!」


 大聖堂に空いた大穴に向かって、アンドレイ=ラプソティが猛火を発したのは良いが、その猛火は預言者の手によって、四散することになる。飛び散った猛火は大聖堂の内側を焼き始めることになる。


「カッパッパ! 金色の聖書(ゴールド・バイブル)は創造主:Y.O.N.N様が自ら直筆された聖書(バイブル)よッ! たかだか『天界の十三司徒』の攻撃でどうにかなるシロモノではないわッ!」


 預言者ことサラーヌ=ワテリオンは左手に金色の聖書(ゴールド・バイブル)を持ち、右手で金色の聖書(ゴールド・バイブル)から引き抜いた神力(ちから)を用いて、防御結界を張っていた。そこにアンドレイ=ラプソティが握っている槍から産み出された猛火が当たることになり、その防御結界を貫通出来なかった猛火は救世主(メシア)たちを焼くのではなく、歴史ある大聖堂に火をつけてしまう結果となってしまう。


 しかしながら、アンドレイ=ラプソティはそこで攻撃の手を止めることは無かった。今度は右手のみで操っていた紅き竜の槍レッド・ドラゴン・ランスを両手で大車輪のように回し、火車を創り出す。この世に産まれた火車は炎の独楽(こま)となり、預言者:サラーヌ=ワテリオンが創り出している結界に真正面から突っ込んでいく。


 さすがのサラーヌ=ワテリオンもこの火車には手こずることになり、防御結界ごと、後ろへと2本の線を地面に残しながら移動させられる。しかし、後退していくサラーヌ=ワテリオンの脇をすり抜けるように交代して前に出てきたのが救世主(メシア)であった。


 救世主(メシア)の右手には黄金(こがね)色の光を放つ長剣(ロング・ソード)が握られていた。アンドレイ=ラプソティは炎が纏わりつく紅き竜の槍レッド・ドラゴン・ランスで、頭上から振り下ろされてきた光り輝く剣を振り払う。


「くふっ! くふっ! 異端狩りが禁忌なのは知っている。しかし、それを見過ごすのは自分にとっては『恥』そのものよっ!」


救世主(メシア)救世主(メシア)でも、かなり最悪な人物を救世主(メシア)にしたようですね、創造主:Y.O.N.N様はっ!!」


 アンドレイ=ラプソティと救世主(メシア)は剣と槍を交え、1合、2合、3合と互いの武具をかち合わせる。その数、10合に達した時点で、アンドレイ=ラプソティはハアハアゼエゼエ……と肩で息をし始める。その姿を見た救世主(メシア)はニヤリと口の端を歪ませ、アンドレイ=ラプソティの腹に前蹴りを喰らわし、物理的に距離を開けさせる。


「どうやら、天界の十三司徒様は本調子じゃなさそうだ」


「貴方程度の相手など、通常の3割程度の神力(ちから)しか出せぬ、私でも余裕ですね」


 救世主(メシア):シュージュ=ボウラーは減らず口をよくたたく天使だと思ってしまう。神話クラスの武具から神力(ちから)を引き出すだけで手いっぱいなのが、武具をぶつけ合っているだけで手に取るようにわかってしまっていた。こんな奴を倒したところで、何の価値も無いとも言いたげな所作をしだす。


「逃げるのですか!?」


「いいや? 自分は『混ざり者』が大嫌いなんでな? 先に半天半人(ハーフ・ダ・エンゼル)の方をこの赦しの光(ルミェ・パードゥン)で串刺しにしてやろうと思ったまでよ」


 アンドレイ=ラプソティがまるで老人のように息も絶え絶えに、紅き竜の槍レッド・ドラゴン・ランスを杖代わりにしていると、救世主(メシア)であるシュージュ=ボウラーは興が削がれたとでも言いたげに、身体の向きを先ほど平手打ちしてきた小生意気な小娘の方へと向ける。


 アンドレイ=ラプソティはアリス=アンジェラでは、到底、救世主(メシア)の相手は務まらないと見て、彼女に代わり、救世主(メシア)との交戦を開始した。しかし、現出させた紅き竜の槍レッド・ドラゴン・ランス神力(ちから)を吸われ、今のアンドレイ=ラプソティは立っているのもやっとの状態となってしまう。


 そんなアンドレイ=ラプソティに対して、幾筋もの光線(ビーム)を放ってきた人物が居た。それは預言者であるサラーヌ=ワテリオンであった。彼は救世主(メシア)が天界の十三司徒なぞ、ちり芥に等しいと言わんばかりのの力量を見せつけた。それゆえに救世主(メシア)が為そうとしていることの手伝いをするために、防御結界を解き、金色の聖書(ゴールド・バイブル)から神力(ちから)を引き出して、多数の光線(ビーム)を右手から発射したのである。


 アンドレイ=ラプソティは不意打ちに近い形で預言者からの攻撃を受ける。しかし、事の成り行きを見ていたコッシロー=ネヅがアンドレイ=ラプソティの眼の前に飛び込み、防御結界を生み出すのであった……。

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