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必要な殺人、不要なのは自分

作者: じだらく屋

真夜中、目の前には血まみれの男が倒れている。


俺は男から目を離して建物に入り吊り下げられた果物を手に取った。

それを一息に食べ尽くしてから近くにあった水瓶から水をすくい上げ喉を潤す。


間違いなく殺したのは自分だ。


神様を名乗る人物から与えられたチートを使い、何の罪も無い人間を殺した。


魔力はどうやら強すぎると質量を持つらしい、与えられた無限の魔力は自分の意思で形を変えて男の腸を貫いた。


殺した理由はシンプルだった、腹が減ったから。


チートさえあれば何とかなると思った。


降り立った草原では満面の笑みで辺りを見回した。


いきなり魔物やらに出くわさなかったことに感謝して辺りを探索した。


その時、明らかな人工の道を見つけたのも幸運だった。


不幸だったのは自分の浅はかさに気付くことがなかったことだった。


見つけた村で門前払いされた。


当たり前だ、金もなければ身分の証明も無い。

かろうじて言葉は通じるがそれが何だというのか。


チートを使った用心棒として自分を売り込んだがダメだった。

これもまた当たり前の話だが警備が必要な環境ならなら既にいなければおかしい。

外敵がいるにもかかわらず備えないのは馬鹿のやることだからだ。

居ないならそれは不要だからだ。

今回の場合は前者だった。

同じ村で育った、村を守る分には不自由しない程度の彼と見たこともない身なりをした自分、どちらを優先するかなど子供でも分かる。


俺は俺自身が外敵として映るであろうことなど考えもしていなかった。


明らかな敵意と共に俺は追い出された。


思っていた理想と明らかに違う現実。

異なる世界でも考えることは同じなのだ。


俺はむかっ腹を立てながらその場を離れた。


魔力を与えられたが使い方は教わっていない、ステータスと唱えても何も出ないし頭に響くガイドのような声も聞こえない。

つまりもらったチートは無限の魔力というただの名前だった。


俺は慌てて使い方を模索した。

同じような話は地球で腐るほど読んだ。

そこから魔力を認識する方法とかそういうのをかたっぱしから試しまくって日が暮れる頃にようやく形になった。


これでようやくどうにでもなる、後は人に拾ってもらって街に行ってこの魔力を使えば良い。

それだけだ。


だがそれだけが出来なかった。


人間は何も食べなければ死ぬ。

それを俺の腹は誰よりも分かりやすく伝えていた。


そしてこれもまた当たり前の話だが食べられるものとはその辺に落ちているものでは無い。

いや、落ちているのかもしれないが分かるはずがない。

コンクリートに覆われた街の中で普通に生きてきた人間が野草の種類や木の皮の食べ方を知る機会が何度あるだろうか、更にそれがこの異世界でも活かせると誰が保証してくれるのか。


端的に言って魔力はいくらあろうと食べられないのだ。


そして空腹も限界になりかけ辿る道も暗く見えなくなりかける時に思い出した、思い出してしまった。


あそこに村があった。


当然そこには火を焚いて周りを警戒する昼間の彼がいる。

彼はただ仕事をしている、なんなら今日は怪しい奴がきたからその警戒は強くなっているだろう。


それがどうした、もはや空腹でまともな思考もできやしない。


暗闇から、背後から、神に愛された男が闇討ちを実行した。


質量を持った魔力による首締め。大声を出さないための処置だ。

迅速に火の元を離れ少しばかり火の照る暗闇で男を脅した。

食い物を保管する倉庫はどこだ、と。

もがき暴れるので思い切り足先に魔力を叩きつけてやると左足の先半分が原型を留めない程に潰れる。


痛みに意識を手放そうとする男を別の魔力の手で叩きもう一度聞く。


男は震える手で1つの建物を指差した。

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